偶然の旅人

池田 瑛

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2017年3月17日

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 2017年3月17日に、私はスーパーで買い物をした。普段はクレジットカードで支払うのだが(マイレージが貯まる)、クレジットカードが別の財布に入っていた。昨日まで名古屋に出張に行っていて、旅行用の財布にクレジットカードを入れっぱなしにしていた。
 牛乳とパンとベーコンとレタス。千円にも満たない金額だったのだけど、一万円札しか財布に入っていなかった。ちなみに、スーパーのポイントカードは財布に入っていた。

 そしてお釣りを貰った。二千円札が混じっていた。レジに入れておくと紛らわしいから、さっさとお釣りとして使ってしまいたいのかな? なんて思った。釣り銭を誤魔化された訳でも無いし、立派な日本銀行券だし、支障はない。私もさっさと使ってしまおうとだけ思った。

 私は家に帰って、家計簿を付けた。
 クレジットカードでの買い物が良いのは、明細書が貰えることだ。スーパーでの決済履歴は、食費に分類できるし、アマゾンの明細は書籍だし、いちいちレシートを見ながら記入しなくて済む。今回は現金で支払ったから、レシート見ながらパソコンに金額を記入する。

 私は、財布からレシートを取り出した。

 どうして私は気付いてしまったのか。二千円札を表裏逆に入れていれば、私はその二千円札が、2001年の4月某日、桜の咲いている時期に、私がJR線の上野駅で使った、使ってしまった二千円札だと気付かなかったかもしれない。何事もなく、私の手元を離れていたかもしれない。

 どうして気付いてしまったのか。どうして今頃になって、その二千円札は私の手元に戻ってきたのか。
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