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第1章 古代の魔法使い
夜空の散歩
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今、ロデリック村長の家は人で溢れかえっている。
マーサ婆さんやタニアは家で食べると言ったのだが、バダックの勧めで鬼ごっこで遊んだ全員が一緒に食べることになったのであった。
しかし、同席するのが王族のリリーということもありお付きのメイドや使用人が多数いる為に大変な人数になっている。
「狭っ苦しいな。」
「ク、クラウド・・・」
思ってはいたが、リリーを気遣い誰もが言わなかった一言を平然と言った男をマーサとタニアが批難する。
「お前にはデリカシーというもんが無いさね。」
「駄目よ、クラウド。殿下は私達みたいな平民とは違うんだから。」
頭の上がらない2人の言葉に分が悪いと見たクラウドが頭を下げる。
「悪いなリリーちゃん。」
「ん。」
そんなやり取りを見ていたバダックが不思議そうにクラウドに声をかける。
「一体どうなってるんだ?リリー殿下は人見知りが酷くて余り他人とは話さないはずなんだが。」
「前に誘拐されかけたって言ってただろう?彼女の人見知りや王族として特別扱いされるのを嫌うのもそれから来てるんじゃないか?」
「つまり?」
「つまり、彼女の中では自分を特別扱いする人間=王族として彼女を利用する人間ってな感じだろうな。それが自分を害する人かどうかの基準の一つになってるんじゃないか?」
「なるほど、リリー殿下を特別扱いしないクラウド殿にはそれほど警戒しないという訳か。」
それが正しいかどうかは分からないが、少なくともリリー殿下は今まで見たこともない程に寛いでいるなとバダックは考える。
「ここまで自然体のリリー殿下は久しぶりに見るな。クラウド殿、すまんがもう少し彼女に付き合ってやってくれるか?」
リリーには同年代の友達など居ないためルークやタニアのような年の近い者と遊んだ事自体が初めてなんだろうとバダックは言うのであった。
「(なるほどな。確かにあの歳でそんな環境なら心も閉ざすか。)でもな、気持ちは分からんでもないが彼女が王族なのは事実だ。王族としてのメリットも受けて来たはずだし結局は・・・」
そこまで言ったところでチョイチョイとクラウドの服が引っ張られる。
「ん?」
振り返ったクラウドの目に映ったルークの顔が危険を告げている。
「(・・・まずい!)と、思ったがせっかくトント村まで来たんだ。出来る限りは相手するよ、ははは。」
ルークの顔が何を意味するか、それに気づいたクラウドは瞬時に対応を変えた。
「・・・命拾いしたさねクラウド。」
ルークと同様に異変に気づいていたマーサ婆さんがギリギリセーフだったと告げる。
リリーが誘拐されかけた為に人見知りになったという話のくだりを聞いていたタニアとマーサ婆さん。「結局本当の王族なんだから利用しようとする人がいるのは仕方ない。その代わり良い暮らしもしてきたはずだ」と突き放しそうだったクラウドを見てタニアの表情が強張り始めていたのにマーサとルークのみが気づいていたのであった。
「何よ、皆して・・・」
どうも自分の性格に自覚のないタニアは周囲の反応に納得出来ていないようである。
「んじゃま、そう言う事でもう少しお付き合いしますかね。」そう前置きしたクラウド。同年代の友人と遊ぶことがないというリリーは普段一体何をして遊んでいるのかと尋ねた。
「ん、遊んだり・・・はしてない・・。」
「そうなのか?それじゃあ何か好きなことはあるかい?」
「ん?・・・空を見るのが好き。特に・・星・・・。」
「そうか、よし今夜は皆で星を見に行こう!」
「「「「「え?」」」」」
いきなりの申し出であったため、その後リリーの護衛を務める騎士より夜の外出を止められるがバダックが同席することとトント村からは外に出ないという約束を交わし何とか許可を貰うクラウドであった。
「しかし今夜は少し雲もかかっている。星を見るのにはむかないんじゃないのか?」
「ん。今夜は星もよく見えない。でも楽し・・・み!」
バダックは天気が星空の観賞むきではないと心配しているが、人と星を見に行ったことなどないリリーは非常に楽しみにしているようである。そんな話しをしているとクラウド、ルーク、タニアがやって来た。
「おっ、待たせたか?悪かったなバダックさん。」
ちなみにマーサ婆さんは次の日の仕事に差し支えてはいけないからと家で就寝している。参加はクラウド達3人とバダック、エリス、リリーの6人である。
「まあ人数の関係があるからな。コーランさん達には悪いけど6人でギリギリなんだよな。」
「人数?別に大勢で行っても構わないんじゃないのか?」
不思議そうな顔で尋ねるバダックにクラウドは実物を見せた方が早いとアイテムリングから目当てのアイテムを取り出した。
「「マジックポーチ!?」」
リリーとバダックが声を重ねる。滅多にお目にかかれないレアアイテムに驚こうとした2人の声は更なるレアアイテムを見ることで絶句に変わった。
「な・・何これ・・・?」
「宙に浮く絨毯だと・・・?」
「ふふふ、ルークにも好評だったからな。楽しんでもらえるといいんだけどね。あ、出所は内緒ね。」
「国宝級の魔導具か?個人所有しているとはな。国に伝えれば破格の金額で買い取ってくれるだろうに。」
「あんまり金に興味ないんだよな。それよりもこうして皆で遊びに行けるほうが余程良いだろう?」
そう言って笑うクラウドにバダックも笑顔を返す。
「はっはっは、違いない!よし、今夜の事は皆で秘密って事にして早く行こうじゃないか!」
バダックも待ちきれないようだ。その後クラウドが取り出した空飛ぶ絨毯は計3枚。くっ付けて使うことで横3m、縦7.5m程の1枚の絨毯のようにして皆で乗り込んだ。
「こ、こいつは凄いな!これからどうなるのかが楽しみだ、なあエリス!」
「はい!空を飛んで星を見に行くなんて素敵ですわ!」
「うわわっ、こんなに高くなってる!ルークはいつの間に乗ったの?ずるいんだから!」
「ミルトアの街から帰るときにクラウドに乗せてもらったんだ!」
「ほ・・星!き、き、綺麗!!」
雲の高さも越えたことで曇りなど全く気にならない。むしろ眼下に広がる雲海は絶景の一言であった。誰もが見たことも無いほどに綺麗な星の輝きに目を奪われている。
見慣れたはずの星空であるがリリーはあまりの美しさに言葉も無いようだ。
「・・・・」
ただただ無言で空を見上げるリリーにクラウドが声を掛けた。
「星が好きだと言ってたけど、その星空には地図があるって知ってたかいリリーちゃん?」
「星の地図?」
「ああ、簡単に言えば夜空に光る星には決まった配置があってな、それを知ることで昔の人々は方向を知ることが出来たんだ。その為に星の配置を記した地図が作られたのさ。例えば向こうは・・・」
光輝く夜空に抱かれながら、参加した全員がその光景を満喫していた。ある者はクラウドの講釈を聞きながら、またある者は愛しい者と寄り添いながら・・・
楽しい時間は過ぎるのが早いという。あっという間に時間は過ぎて予定していた帰宅時間が迫る中、リリーとバダック・エリスが中々帰ろうとしなかったのであった。この日クラウドが一番苦労したことは全員から帰宅の了承を得ることだったのは間違いないだろう。
「な、もう少しだけ!後少しくらい良いだろうクラウド殿?」
「あ、あっちの星は何?さ、さっき聞いた動かない星ってどれだった!?」
「頼むよ皆!小さい子供を夜遊びに連れまわすなって言われてんだ!もうマーサさんと約束した帰る時間が迫ってるんだよ~!!!」
マーサ婆さんやタニアは家で食べると言ったのだが、バダックの勧めで鬼ごっこで遊んだ全員が一緒に食べることになったのであった。
しかし、同席するのが王族のリリーということもありお付きのメイドや使用人が多数いる為に大変な人数になっている。
「狭っ苦しいな。」
「ク、クラウド・・・」
思ってはいたが、リリーを気遣い誰もが言わなかった一言を平然と言った男をマーサとタニアが批難する。
「お前にはデリカシーというもんが無いさね。」
「駄目よ、クラウド。殿下は私達みたいな平民とは違うんだから。」
頭の上がらない2人の言葉に分が悪いと見たクラウドが頭を下げる。
「悪いなリリーちゃん。」
「ん。」
そんなやり取りを見ていたバダックが不思議そうにクラウドに声をかける。
「一体どうなってるんだ?リリー殿下は人見知りが酷くて余り他人とは話さないはずなんだが。」
「前に誘拐されかけたって言ってただろう?彼女の人見知りや王族として特別扱いされるのを嫌うのもそれから来てるんじゃないか?」
「つまり?」
「つまり、彼女の中では自分を特別扱いする人間=王族として彼女を利用する人間ってな感じだろうな。それが自分を害する人かどうかの基準の一つになってるんじゃないか?」
「なるほど、リリー殿下を特別扱いしないクラウド殿にはそれほど警戒しないという訳か。」
それが正しいかどうかは分からないが、少なくともリリー殿下は今まで見たこともない程に寛いでいるなとバダックは考える。
「ここまで自然体のリリー殿下は久しぶりに見るな。クラウド殿、すまんがもう少し彼女に付き合ってやってくれるか?」
リリーには同年代の友達など居ないためルークやタニアのような年の近い者と遊んだ事自体が初めてなんだろうとバダックは言うのであった。
「(なるほどな。確かにあの歳でそんな環境なら心も閉ざすか。)でもな、気持ちは分からんでもないが彼女が王族なのは事実だ。王族としてのメリットも受けて来たはずだし結局は・・・」
そこまで言ったところでチョイチョイとクラウドの服が引っ張られる。
「ん?」
振り返ったクラウドの目に映ったルークの顔が危険を告げている。
「(・・・まずい!)と、思ったがせっかくトント村まで来たんだ。出来る限りは相手するよ、ははは。」
ルークの顔が何を意味するか、それに気づいたクラウドは瞬時に対応を変えた。
「・・・命拾いしたさねクラウド。」
ルークと同様に異変に気づいていたマーサ婆さんがギリギリセーフだったと告げる。
リリーが誘拐されかけた為に人見知りになったという話のくだりを聞いていたタニアとマーサ婆さん。「結局本当の王族なんだから利用しようとする人がいるのは仕方ない。その代わり良い暮らしもしてきたはずだ」と突き放しそうだったクラウドを見てタニアの表情が強張り始めていたのにマーサとルークのみが気づいていたのであった。
「何よ、皆して・・・」
どうも自分の性格に自覚のないタニアは周囲の反応に納得出来ていないようである。
「んじゃま、そう言う事でもう少しお付き合いしますかね。」そう前置きしたクラウド。同年代の友人と遊ぶことがないというリリーは普段一体何をして遊んでいるのかと尋ねた。
「ん、遊んだり・・・はしてない・・。」
「そうなのか?それじゃあ何か好きなことはあるかい?」
「ん?・・・空を見るのが好き。特に・・星・・・。」
「そうか、よし今夜は皆で星を見に行こう!」
「「「「「え?」」」」」
いきなりの申し出であったため、その後リリーの護衛を務める騎士より夜の外出を止められるがバダックが同席することとトント村からは外に出ないという約束を交わし何とか許可を貰うクラウドであった。
「しかし今夜は少し雲もかかっている。星を見るのにはむかないんじゃないのか?」
「ん。今夜は星もよく見えない。でも楽し・・・み!」
バダックは天気が星空の観賞むきではないと心配しているが、人と星を見に行ったことなどないリリーは非常に楽しみにしているようである。そんな話しをしているとクラウド、ルーク、タニアがやって来た。
「おっ、待たせたか?悪かったなバダックさん。」
ちなみにマーサ婆さんは次の日の仕事に差し支えてはいけないからと家で就寝している。参加はクラウド達3人とバダック、エリス、リリーの6人である。
「まあ人数の関係があるからな。コーランさん達には悪いけど6人でギリギリなんだよな。」
「人数?別に大勢で行っても構わないんじゃないのか?」
不思議そうな顔で尋ねるバダックにクラウドは実物を見せた方が早いとアイテムリングから目当てのアイテムを取り出した。
「「マジックポーチ!?」」
リリーとバダックが声を重ねる。滅多にお目にかかれないレアアイテムに驚こうとした2人の声は更なるレアアイテムを見ることで絶句に変わった。
「な・・何これ・・・?」
「宙に浮く絨毯だと・・・?」
「ふふふ、ルークにも好評だったからな。楽しんでもらえるといいんだけどね。あ、出所は内緒ね。」
「国宝級の魔導具か?個人所有しているとはな。国に伝えれば破格の金額で買い取ってくれるだろうに。」
「あんまり金に興味ないんだよな。それよりもこうして皆で遊びに行けるほうが余程良いだろう?」
そう言って笑うクラウドにバダックも笑顔を返す。
「はっはっは、違いない!よし、今夜の事は皆で秘密って事にして早く行こうじゃないか!」
バダックも待ちきれないようだ。その後クラウドが取り出した空飛ぶ絨毯は計3枚。くっ付けて使うことで横3m、縦7.5m程の1枚の絨毯のようにして皆で乗り込んだ。
「こ、こいつは凄いな!これからどうなるのかが楽しみだ、なあエリス!」
「はい!空を飛んで星を見に行くなんて素敵ですわ!」
「うわわっ、こんなに高くなってる!ルークはいつの間に乗ったの?ずるいんだから!」
「ミルトアの街から帰るときにクラウドに乗せてもらったんだ!」
「ほ・・星!き、き、綺麗!!」
雲の高さも越えたことで曇りなど全く気にならない。むしろ眼下に広がる雲海は絶景の一言であった。誰もが見たことも無いほどに綺麗な星の輝きに目を奪われている。
見慣れたはずの星空であるがリリーはあまりの美しさに言葉も無いようだ。
「・・・・」
ただただ無言で空を見上げるリリーにクラウドが声を掛けた。
「星が好きだと言ってたけど、その星空には地図があるって知ってたかいリリーちゃん?」
「星の地図?」
「ああ、簡単に言えば夜空に光る星には決まった配置があってな、それを知ることで昔の人々は方向を知ることが出来たんだ。その為に星の配置を記した地図が作られたのさ。例えば向こうは・・・」
光輝く夜空に抱かれながら、参加した全員がその光景を満喫していた。ある者はクラウドの講釈を聞きながら、またある者は愛しい者と寄り添いながら・・・
楽しい時間は過ぎるのが早いという。あっという間に時間は過ぎて予定していた帰宅時間が迫る中、リリーとバダック・エリスが中々帰ろうとしなかったのであった。この日クラウドが一番苦労したことは全員から帰宅の了承を得ることだったのは間違いないだろう。
「な、もう少しだけ!後少しくらい良いだろうクラウド殿?」
「あ、あっちの星は何?さ、さっき聞いた動かない星ってどれだった!?」
「頼むよ皆!小さい子供を夜遊びに連れまわすなって言われてんだ!もうマーサさんと約束した帰る時間が迫ってるんだよ~!!!」
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