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第4章 侵攻
幕間ー8 揺らぐ想い
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〈ソフィアside〉
「ふうっ・・・」
一体何度目なのだろう?くだらない疑問が頭に浮かぶ。王城で起こった吸血鬼の一件から早2年が過ぎたけど、自分の時間はあの時から止まったままのよう。
溜息を吐くのはもう癖になったみたい。
これまでは自分のしてきた事に強い自信を持っていた。けどあの事件以降は何をしても身が入らない。
どれだけ剣を振るっても魔法の練習に打ち込んでも。
そしてその理由なら分かっているわ。
頭が否定するから。
『この程度の剣では届かない』
『この程度の魔法では敵わない』
何をしても頭で繰り返されるのはこの言葉。今までは王国最強と信じて疑わなかった自分の実力。
しかし私は目にしてしまった。
自分などでは及ぶべくも無いレベルの戦闘を。いや、正確には彼らがどう戦ったかすら分からなかった。それ程に彼らとは開きがあった。
「どうすれば・・・」
どう鍛えればあれ程のレベルに到達出来るのか想像さえ出来ない。今までのように剣の素振りを続けたところで到底彼らに一太刀入れることなど無理だろう。
悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい
今までは自分を女だと侮る奴らは誰だろうと叩き伏せてきた。
鍛えた剣で!魔法で!
でもよりによって・・・
敵わないと思い知らされた相手に限ってそうじゃないなんて。
彼らにある物差しは性別じゃ無かった。男か女かでは無い。
ある騎士が陰口を叩いた。私が女だから力が弱いと。だから真正面からきた剣の力を逸らし喉元で刃先を止めて黙らせた。
ある魔術師が陰口を叩いた。魔法で戦うなら女が自分に勝てる筈がないと。だから魔法使用可の条件で叩き伏せてやった。
でも彼らは・・・
あの人達にある物差しはただ一つ。
『強者か弱者か』
それだけだった。そして自分は後者だった。どうしようもなく。
「ふう・・・」
何度目かも分からない溜息が出る。もどかしくて仕方が無い。
「はぁ、もう行かなくちゃ・・・。」
あれから毎日王城にある書庫に通うのが日課になった。蔵書を読み漁って何か手がかりになるものが無いかと探す毎日。でもあれほどの強者へと至るヒントとなるものは何一つ見つかっていない。
「今日も駄目か・・・」
今日も見つける事が出来なかった。本当に八方ふさがりだわ。
重い足取りで自室へと戻る途中にふと足が止まった。王城の中にある庭園に差し掛かった時、聞こえて来たのは王城で働くメイド達の会話。
「ねぇ知ってる?ミアがこの前してた自慢話し!」
「知ってる知ってる!第2騎士団のトーマス様に食事に誘われたってやつでしょう?あれって本当なのかしら!?」
「さぁ?でも本当なら私達にも騎士様を紹介してもらわなきゃ!」
姦しいとでも言うのかしら。いつもなら聞き流す取るに足らない下世話な話し。くだらない、そう思いながら通り過ぎようとした時だった。
「はぁ~、やっぱり羨ましいな。ねぇ私達もあの子がやってたっていうの教えてもらおうか!」
「ああ!あの狙った男を落とすための女のテクニックってやつね!じゃあまずはかっこいい騎士の人達を紹介させることから約束させなきゃ!」
キャッキャッとはしゃぎながら走って仕事へと戻るメイド達。その時不意に頭にさっきの会話が思い出された。
「狙った男を落とす・・・?」
知らずに言葉がこぼれていた。
「い、いや、しかし・・・」
今まで男などくだらないと思ってきた。
呼びもしないのに勝手に近づいてくるにもかかわらず私の興味を引くような者は居なかった。しかもそんな男に限って傲慢で矮小だ。腕で勝てないと分かれば自己弁護の言葉しか吐かない。
しかし遂に私は違う者に会った。最も得意とする戦闘という分野で自分を圧倒する相手が現れたのだ。興味が湧かない筈が無い。
でも自分は女らしいことなど何一つ覚えてこなかった。そんな自分に興味を持ってくれるだろうか?実力で言う事を聞かせることが出来ない相手なのだ。ならば向こうに「私の言う事を聞いても良い」と思わせなければならない。
「だ、だがっ、私は決して・・・」
自分を女として売り込みたい訳では無い。伴侶になって欲しいとは思っていない(向こうがそう思ってくれたなら嬉しいが・・・)。相手にされなくても良いから、せめて話しがしたい。どうやって腕を磨いたのか、どうやってその修行法を編み出したのか?聞きたいことが山ほどある。
「こ、困りましたわね・・・」
父親アンドリューをして制御不能と言わしめた兄弟きっての問題児。自分が持つ興味の為ならいかなる努力も厭わないが、興味を持てないことは誰に何を言われようと拒絶してきた長女ソフィア。年頃の娘として、また王族に連なる女性として淑女であって欲しいという親の願いなど聞く耳も持たなかったソフィアに感情の変化があったようである。
「こんなことなら相談出来る相手くらい考えておくべきでしたわ・・・。ま、まずはスカートでも穿こうかしら・・・」
その数日後、ソフィアのスカート姿を初めて見たアンドリューが喜びに涙を流す。
ただでさえ整った端整な顔に日ごろの鍛錬で引き締められたスレンダーながらも抜群のプロポーションであるソフィア。王城ではその姿に見とれる男性が続出したという・・・
「ふうっ・・・」
一体何度目なのだろう?くだらない疑問が頭に浮かぶ。王城で起こった吸血鬼の一件から早2年が過ぎたけど、自分の時間はあの時から止まったままのよう。
溜息を吐くのはもう癖になったみたい。
これまでは自分のしてきた事に強い自信を持っていた。けどあの事件以降は何をしても身が入らない。
どれだけ剣を振るっても魔法の練習に打ち込んでも。
そしてその理由なら分かっているわ。
頭が否定するから。
『この程度の剣では届かない』
『この程度の魔法では敵わない』
何をしても頭で繰り返されるのはこの言葉。今までは王国最強と信じて疑わなかった自分の実力。
しかし私は目にしてしまった。
自分などでは及ぶべくも無いレベルの戦闘を。いや、正確には彼らがどう戦ったかすら分からなかった。それ程に彼らとは開きがあった。
「どうすれば・・・」
どう鍛えればあれ程のレベルに到達出来るのか想像さえ出来ない。今までのように剣の素振りを続けたところで到底彼らに一太刀入れることなど無理だろう。
悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい
今までは自分を女だと侮る奴らは誰だろうと叩き伏せてきた。
鍛えた剣で!魔法で!
でもよりによって・・・
敵わないと思い知らされた相手に限ってそうじゃないなんて。
彼らにある物差しは性別じゃ無かった。男か女かでは無い。
ある騎士が陰口を叩いた。私が女だから力が弱いと。だから真正面からきた剣の力を逸らし喉元で刃先を止めて黙らせた。
ある魔術師が陰口を叩いた。魔法で戦うなら女が自分に勝てる筈がないと。だから魔法使用可の条件で叩き伏せてやった。
でも彼らは・・・
あの人達にある物差しはただ一つ。
『強者か弱者か』
それだけだった。そして自分は後者だった。どうしようもなく。
「ふう・・・」
何度目かも分からない溜息が出る。もどかしくて仕方が無い。
「はぁ、もう行かなくちゃ・・・。」
あれから毎日王城にある書庫に通うのが日課になった。蔵書を読み漁って何か手がかりになるものが無いかと探す毎日。でもあれほどの強者へと至るヒントとなるものは何一つ見つかっていない。
「今日も駄目か・・・」
今日も見つける事が出来なかった。本当に八方ふさがりだわ。
重い足取りで自室へと戻る途中にふと足が止まった。王城の中にある庭園に差し掛かった時、聞こえて来たのは王城で働くメイド達の会話。
「ねぇ知ってる?ミアがこの前してた自慢話し!」
「知ってる知ってる!第2騎士団のトーマス様に食事に誘われたってやつでしょう?あれって本当なのかしら!?」
「さぁ?でも本当なら私達にも騎士様を紹介してもらわなきゃ!」
姦しいとでも言うのかしら。いつもなら聞き流す取るに足らない下世話な話し。くだらない、そう思いながら通り過ぎようとした時だった。
「はぁ~、やっぱり羨ましいな。ねぇ私達もあの子がやってたっていうの教えてもらおうか!」
「ああ!あの狙った男を落とすための女のテクニックってやつね!じゃあまずはかっこいい騎士の人達を紹介させることから約束させなきゃ!」
キャッキャッとはしゃぎながら走って仕事へと戻るメイド達。その時不意に頭にさっきの会話が思い出された。
「狙った男を落とす・・・?」
知らずに言葉がこぼれていた。
「い、いや、しかし・・・」
今まで男などくだらないと思ってきた。
呼びもしないのに勝手に近づいてくるにもかかわらず私の興味を引くような者は居なかった。しかもそんな男に限って傲慢で矮小だ。腕で勝てないと分かれば自己弁護の言葉しか吐かない。
しかし遂に私は違う者に会った。最も得意とする戦闘という分野で自分を圧倒する相手が現れたのだ。興味が湧かない筈が無い。
でも自分は女らしいことなど何一つ覚えてこなかった。そんな自分に興味を持ってくれるだろうか?実力で言う事を聞かせることが出来ない相手なのだ。ならば向こうに「私の言う事を聞いても良い」と思わせなければならない。
「だ、だがっ、私は決して・・・」
自分を女として売り込みたい訳では無い。伴侶になって欲しいとは思っていない(向こうがそう思ってくれたなら嬉しいが・・・)。相手にされなくても良いから、せめて話しがしたい。どうやって腕を磨いたのか、どうやってその修行法を編み出したのか?聞きたいことが山ほどある。
「こ、困りましたわね・・・」
父親アンドリューをして制御不能と言わしめた兄弟きっての問題児。自分が持つ興味の為ならいかなる努力も厭わないが、興味を持てないことは誰に何を言われようと拒絶してきた長女ソフィア。年頃の娘として、また王族に連なる女性として淑女であって欲しいという親の願いなど聞く耳も持たなかったソフィアに感情の変化があったようである。
「こんなことなら相談出来る相手くらい考えておくべきでしたわ・・・。ま、まずはスカートでも穿こうかしら・・・」
その数日後、ソフィアのスカート姿を初めて見たアンドリューが喜びに涙を流す。
ただでさえ整った端整な顔に日ごろの鍛錬で引き締められたスレンダーながらも抜群のプロポーションであるソフィア。王城ではその姿に見とれる男性が続出したという・・・
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