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前日の不眠が影響してかイオの就寝時間は早かった。だというのに、目覚めは遅く、なんとあのドクターに起こされてしまった。
自分にがっかりして、のろのろと検査着に着替えて、検査室に行く。
やはりドクターは先に来ていて、デバイスのチェックやらなんやらを黙々とこなしていた。
「体調は」
「問題ありません」
「ではいつもどおり、検査着を脱ぎ、座りなさい」
「え、……あの……」
目で示されたのは、昨日も座ったあの椅子だ。イオの分泌液はすっかり拭い去られてきれいになっている。
ここに座るのか? だってこれからするのは、昨日とは違って――。
ちら、とイオの視線が、部屋の真ん中にある簡易ベッドに向いたのを、ドクター・シグニールは見ていたらしい。
「昨日、規則の話をしたな、被検者SRT4567-M」
番号で呼ばれて、うなずくしかない。
しかし、ベッドの上以外での性交は、どうするのかもよくわからない。困惑しながら椅子に座りいつものように拘束された。問診が終わって、ドクターが手袋をはめる。
彼は普段となにひとつ変わらない。白っぽい照明の光を受けてきらきらする錫の色の髪の毛も、淡い茶色の瞳も。感情を表に出さないその顔も。
「では、はじめる」
イオは目をつぶった。
せめて都合のいい妄想くらいは許されたい。たとえば、こうして触れてくる彼も、甘くイオを求める声と熱を持っていて、目が合ったらそれを惜しみなく与えてくれるとか。
そんなことを思っていると、敏感な乳首を爪の先で軽く引っかかれる甘い痺れや、茂みをそっとかきわける指の軌跡、粘膜の上を触れるか触れないかの距離で行き来する指の存在感などが克明に感じられて、すぐに息があがってしまう。
身動ぎすれば、粘膜はとっくに期待で潤んでいて、これから起こることを受け入れようとしている。
「あぅ」
ぬ、と膣に細くて硬いものが侵入し、つい目を開いてしまった。
挿入されていた中指が数度行き来して、やがて人差し指を伴って挿入される。アイボリーの手袋につつまれた指の腹はてらてらと光り、時折、くちゅりと音を立てた。肘掛けに拘束された前腕の上に、ドクターの左手が添えられている。彼の手がひんやり感じられるほどに体が火照っていた。
「ん……う……」
指が出入りする様など見たくないのに、目が離せなかった。膣壁の状態を触診するため、そっと内側を探られる。ドクターも、当然ながらその様子をじっと見つめている。
見ないでほしいというお願いも、するだけむなしいとわかっている。だが、まつげが数えられそうな近距離にある茶色の目が、じっと自分の膣口に向けられていては、羞恥で体の芯が焦げるのだ。
抜かれた指が、つうっと溝を上に撫でる。触れた陰核の燃えるような快感に、うめき声を抑えられなかった。
「うぁ……っああ」
びくっと脚が震えてしまった。ひどく恥ずかしい。
陰核を指に挟むようにしてゆっくりなで上げられると、声すら出せないほどの快感に、目の前がちかちかした。
「あはっ、は、んあっ! ぁああ」
あっという間に追い詰められて、抗うこともできず、イオは高いところから落ちるような浮遊感に身を任せた。
一瞬だけ。絶頂の瞬間だけは、嫌なことを忘れられる。
けれどすぐに思考を取り戻して、さっきのは妄想で、ドクターは無表情のままだと思い知らされるのだった。
「あんっ」
絶頂の余韻に震える膣に指を再度挿入され、高い声が出た。きゅうきゅうと異物を締め付けてしまう。
「大丈夫そうだな。では次の段階へ進む」
ドクターが白衣を脱いだ。男性にしてはやや細身だが、イオから見ればやはり体も大きい。シャツの襟から覗く筋張った首筋や、まくった袖から突き出た腕の硬そうな線に、どきりとする。
彼の体を見てみたいと思うなんて、はしたなくて、好奇心に寄った子供っぽい発想なんだろうか。
ドクターは少しだけ襟元を緩め、椅子を操作した。かすかな稼働音をあげ、足置きがぐいっと上がる。
体を折り曲げられ、自分で膝を抱えるような体勢になり、イオは身じろいだ。
とろとろと愛液をこぼしている膣口を彼の前に晒すのは、恥ずかしくて嫌だ。泣きたくなってくる。すぐに我慢の限界を迎え、弱音を吐いた。
「ドクター、わたし、この検査は嫌です」
「痛むのは最初だけだ。あとの六度は、基本的に無痛であることを保証しよう」
「痛いのは大丈夫です。そうじゃなくて……ドクター、やめてください」
太もものロット番号のあたりにドクターの手が触れ、かあっとそこが熱くなった。嫌なのに、粘膜の部分がきゅうと疼く。
胸の奥も、引き絞られるように疼いた。痛いくらいに。
「どうした。なぜ嫌がる? 理由を述べよ、被検者SRT4567-M」
目頭が熱くなってくる。
なぜ嫌かなんて聞かれても説明できない。
――正直に、ドクターに気持ちを打ち明ける? そんなことをしたら、即不適合扱いだ。けれどもこのまま、検査のためだけに、モノ扱いで性交の義務を果たされたら、自分は……。
イオはぎゅっとまぶたを閉じた。目に膜となっていた涙がぽろぽろとこぼれる。一度こぼれてしまうと、止めようがなくなってしまった。
「うぅ……やだぁ」
泣き顔なんか一番見られたくない。くしゃくしゃで、きっとひどい。鼻水まで出てきている。拭いたくても手も足も出ない。
精一杯顔をそむけて見られないようにしたところでどんな意味があるか。
ドクターが動いた衣擦れの音がして、ああ、と期待と絶望がない混ぜになる。
くしゃりと髪の毛を掴まれた。頬の横のあたり。
「イオ、泣き止め。ここまでだ。シャワーを浴びて休みなさい」
個体名だ。
つまり、検査は終わりということ。
「え、あ……ドクター、その」
背を向けた彼は、椅子を元の状態に戻してくれる。さなか、彼は稼働音にかき消されそうなほど小さな、そして沈鬱なため息をついた。
「ごめんなさい」
「仕方ない。君のそれは、正常な反応だ。俺がそばにいては気が休まらないだろう。しばらくひとりでゆっくりするといい」
「……ありがとうございます」
気遣いの言葉が嬉しくもむなしい。
どっと出てきた涙を拭っているうちに、ドクターは部屋から先に出ていった。後ろ姿は、いつになく猫背に見えた。
自分にがっかりして、のろのろと検査着に着替えて、検査室に行く。
やはりドクターは先に来ていて、デバイスのチェックやらなんやらを黙々とこなしていた。
「体調は」
「問題ありません」
「ではいつもどおり、検査着を脱ぎ、座りなさい」
「え、……あの……」
目で示されたのは、昨日も座ったあの椅子だ。イオの分泌液はすっかり拭い去られてきれいになっている。
ここに座るのか? だってこれからするのは、昨日とは違って――。
ちら、とイオの視線が、部屋の真ん中にある簡易ベッドに向いたのを、ドクター・シグニールは見ていたらしい。
「昨日、規則の話をしたな、被検者SRT4567-M」
番号で呼ばれて、うなずくしかない。
しかし、ベッドの上以外での性交は、どうするのかもよくわからない。困惑しながら椅子に座りいつものように拘束された。問診が終わって、ドクターが手袋をはめる。
彼は普段となにひとつ変わらない。白っぽい照明の光を受けてきらきらする錫の色の髪の毛も、淡い茶色の瞳も。感情を表に出さないその顔も。
「では、はじめる」
イオは目をつぶった。
せめて都合のいい妄想くらいは許されたい。たとえば、こうして触れてくる彼も、甘くイオを求める声と熱を持っていて、目が合ったらそれを惜しみなく与えてくれるとか。
そんなことを思っていると、敏感な乳首を爪の先で軽く引っかかれる甘い痺れや、茂みをそっとかきわける指の軌跡、粘膜の上を触れるか触れないかの距離で行き来する指の存在感などが克明に感じられて、すぐに息があがってしまう。
身動ぎすれば、粘膜はとっくに期待で潤んでいて、これから起こることを受け入れようとしている。
「あぅ」
ぬ、と膣に細くて硬いものが侵入し、つい目を開いてしまった。
挿入されていた中指が数度行き来して、やがて人差し指を伴って挿入される。アイボリーの手袋につつまれた指の腹はてらてらと光り、時折、くちゅりと音を立てた。肘掛けに拘束された前腕の上に、ドクターの左手が添えられている。彼の手がひんやり感じられるほどに体が火照っていた。
「ん……う……」
指が出入りする様など見たくないのに、目が離せなかった。膣壁の状態を触診するため、そっと内側を探られる。ドクターも、当然ながらその様子をじっと見つめている。
見ないでほしいというお願いも、するだけむなしいとわかっている。だが、まつげが数えられそうな近距離にある茶色の目が、じっと自分の膣口に向けられていては、羞恥で体の芯が焦げるのだ。
抜かれた指が、つうっと溝を上に撫でる。触れた陰核の燃えるような快感に、うめき声を抑えられなかった。
「うぁ……っああ」
びくっと脚が震えてしまった。ひどく恥ずかしい。
陰核を指に挟むようにしてゆっくりなで上げられると、声すら出せないほどの快感に、目の前がちかちかした。
「あはっ、は、んあっ! ぁああ」
あっという間に追い詰められて、抗うこともできず、イオは高いところから落ちるような浮遊感に身を任せた。
一瞬だけ。絶頂の瞬間だけは、嫌なことを忘れられる。
けれどすぐに思考を取り戻して、さっきのは妄想で、ドクターは無表情のままだと思い知らされるのだった。
「あんっ」
絶頂の余韻に震える膣に指を再度挿入され、高い声が出た。きゅうきゅうと異物を締め付けてしまう。
「大丈夫そうだな。では次の段階へ進む」
ドクターが白衣を脱いだ。男性にしてはやや細身だが、イオから見ればやはり体も大きい。シャツの襟から覗く筋張った首筋や、まくった袖から突き出た腕の硬そうな線に、どきりとする。
彼の体を見てみたいと思うなんて、はしたなくて、好奇心に寄った子供っぽい発想なんだろうか。
ドクターは少しだけ襟元を緩め、椅子を操作した。かすかな稼働音をあげ、足置きがぐいっと上がる。
体を折り曲げられ、自分で膝を抱えるような体勢になり、イオは身じろいだ。
とろとろと愛液をこぼしている膣口を彼の前に晒すのは、恥ずかしくて嫌だ。泣きたくなってくる。すぐに我慢の限界を迎え、弱音を吐いた。
「ドクター、わたし、この検査は嫌です」
「痛むのは最初だけだ。あとの六度は、基本的に無痛であることを保証しよう」
「痛いのは大丈夫です。そうじゃなくて……ドクター、やめてください」
太もものロット番号のあたりにドクターの手が触れ、かあっとそこが熱くなった。嫌なのに、粘膜の部分がきゅうと疼く。
胸の奥も、引き絞られるように疼いた。痛いくらいに。
「どうした。なぜ嫌がる? 理由を述べよ、被検者SRT4567-M」
目頭が熱くなってくる。
なぜ嫌かなんて聞かれても説明できない。
――正直に、ドクターに気持ちを打ち明ける? そんなことをしたら、即不適合扱いだ。けれどもこのまま、検査のためだけに、モノ扱いで性交の義務を果たされたら、自分は……。
イオはぎゅっとまぶたを閉じた。目に膜となっていた涙がぽろぽろとこぼれる。一度こぼれてしまうと、止めようがなくなってしまった。
「うぅ……やだぁ」
泣き顔なんか一番見られたくない。くしゃくしゃで、きっとひどい。鼻水まで出てきている。拭いたくても手も足も出ない。
精一杯顔をそむけて見られないようにしたところでどんな意味があるか。
ドクターが動いた衣擦れの音がして、ああ、と期待と絶望がない混ぜになる。
くしゃりと髪の毛を掴まれた。頬の横のあたり。
「イオ、泣き止め。ここまでだ。シャワーを浴びて休みなさい」
個体名だ。
つまり、検査は終わりということ。
「え、あ……ドクター、その」
背を向けた彼は、椅子を元の状態に戻してくれる。さなか、彼は稼働音にかき消されそうなほど小さな、そして沈鬱なため息をついた。
「ごめんなさい」
「仕方ない。君のそれは、正常な反応だ。俺がそばにいては気が休まらないだろう。しばらくひとりでゆっくりするといい」
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