115 / 122
#EXTRA 朝な
しおりを挟む
薄手のカーテンごしに、朝日を感じる。そろそろ目覚めの時間だ。
ベッドの上でそろりと伸びをして、ゆっくり目を開けた。潮騒が聞こえる。
この家に引っ越してきてから三週間。生活にも慣れてきて、不自由はベッドが二人で寝るのには狭苦しいことくらいだ。
正面に、枕に側頭部を預け、静かに寝息を立てているアンデルがいた。裸の肩はずいぶん逞しくはなったけれど、それでも私の見慣れた男たちのものと比べたら、華奢だ。日焼けしても白い肌に、繊細なつくりの鼻筋。こうして目を閉じているとびっくりするくらいまつげが長くて、思わず指で触れたくなってしまう。
手が届く位置にアンデルがいる。それを確かめようと、頬に落ちている柔らかな黒髪を指で摘んで払った。明るくなってきた部屋の中で、そうしているとなんだか現実味がない気がする。
「アンデル」
返事も、起きる気配もない。
彼のことは人前以外では旧い名前で呼んでいる。昔のことを忘れないように、戒めに呼んでほしい、この国に来た目的を忘れたくないと彼の方から頼まれたから。もちろん、私はどちらの名前も好きだし、かまわないけれど、うっかり人前で旧い名前を呼びそうでたまに緊張する。
「アンデル」
やはり、反応はない。
起き出して、体を動かしたい。昨日もすっかり遅くまで、……いろいろして、寝る前に体を洗ったりして、瓶の水を使い切ってしまったから、日が高くなる前に井戸から汲み上げて補充しておきたい。べたべたになって床にまるめて退けてあるシーツを洗って干さなければ、夜に敷くものがなくなってしまう。私の下着だって、枚数がない。
なんとかしてそっと起きられないものか。このベッドは備え付けのもので、古いからかなりきしむ。慎重に身を起こそうとして、片方しかない腕を掛布のなかで動かし、ふと変なものに触った。いや、変なものというか、あまり馴染みがないというか、ようやく馴染み始めたものというか。
そろり、薄手の掛布を持ち上げてみると、やっぱり、アンデルのものが少し立ち上がっている。
瞬きする。昨晩、それなりに時間も体力も費やして、互いを慈しんだわけだが、……あれじゃ足りなかったのだろうか。私は結構疲れて、体をきれいにしたあと速攻で寝入ってしまったのだが、もしかしたらアンデルはまだ満足していなかったとか? 彼、そんなに体力があったのか?
これ、どうするべきなんだろう。
しばらく、すうすうと寝息をたてているアンデルの顔と、先に目覚めている分身との間を、目だけいったりきたりしていたけれど、昨晩のことを思い出して、なんとなしにそろりと彼の陰茎を手で掴んでみた。
挿入したときほど硬くはないし太くなってない。夜に、これを優しくこすってあげると、彼は困ったように、でも、嬉しそうにキスしてくれた。気持ちよくて嬉しいことらしい。
じわじわ硬度を増していくそれを撫でさすっていると、かすかに鈴口から体液が滲み出てくる。掛布を退かして、彼の腰に顔を埋めた。舌先で一度ぺろっと舐めてみると、苦いような甘いような、不思議な味がする。美味しくはないけれど、きらいでもない。気持ちよくなってくるとこれが出てしまうと聞いたから、たぶん、アンデルが少しはよくなってくれてるんだろう。
嬉しくなって、根本を手でしごきながら、先を舌でさすったり口づけて吸ってみたりした。
この硬い膝の感じとか、骨ばっていてまっすぐな脛とか、好きだ。あとはこうして頭を優しく撫でられるのも。
「ん……アンデル、起きた?」
「起きるよ。どうしたのハイリー……。朝から」
苦笑して、私の頭を撫でるアンデルは、まだ少し眠そうだ。
「起きたら、なんだか君のこれが元気だったから、もしかして昨晩のが足りなかったのかなと思って」
「男性の生理現象だよ」
「そうだったのか。勝手によけいなことをしてしまった? やめたほうがいい?」
「ここまでしておいてそれは……拷問だよ」
拷問。
たしかに、穏やかな口調で話しているわりに、アンデルのものは赤黒く怒張して、私のそこを満たしてくれるときの形状と質量に成長しきっている。この状態で我慢するのは辛いのかもしれない。こうなると、いつも、切羽詰まった様子で私に「もういいかな」と甘えたように尋ねてくるのだ。昨晩だって。
思い出して、下腹がきゅうっと疼いた。
「それじゃあ、やめない」
できるかぎり奥深くまで口の中にそれを導いて、太くふくれている茎に舌を這わせる。そして擬似的な性器のように口を使って抜き差しする。
「あ……う……」
アンデルが鼻にかかった甘い声で呻き、ぽんぽんと軽く私の頭を叩いた。その眉間にシワを寄せて、感じている顔が好きだ。明るさがあるからよく見える。
「出ちゃうよ、これ以上したら……っ」
「出していいよ」
切なく歪めたその顔をもっと見たい。私の口で達してしまうところを、見たい。遠慮がちに息を荒くするところを、見たい。普段の穏やかで、欲を表に出さない姿を崩してしまいたい。私だけが知っているアンデルの顔を、観察したい。
思い切り口をすぼめて吸ったところ、ずず、と下品な音がたってしまった。
「……っあ」
アンデルが、高い声をひとつ。それに合わせて、白濁したえぐみのある液体が、陰茎の先端から吹き出す。ちょうど唇を離してしまっていた私は、間抜けなことに、顔面にそれを浴びてしまった。第二波が吹き出る前に慌てて、口で受け止める。
ほとばしるものがなくなって、そっと顔をあげた。アンデルが口を薄く開けて深く息を吐いていた。ぼんやりしていた黒い目が、徐々にしっかりしてくる。
唇の上についたものを舌で舐め取っていたら、手の届くところにあったリネンタオルで、アンデルが頬を拭いてくれた。丁寧に丁寧に。真剣な顔で、頬にかかる髪についてしまったものを拭ってくれる。だから膝を畳んでベッドの上で向かい合って座る。
朝から裸でなにをしているんだか。
でも気分はいい。
「はぁ……おはよう、ハイリー。刺激的な朝の挨拶だね」
「そうかなあ。おはよう、ふふ」
「なにか面白かったの?」
「ううん、そうではなくて。君が小さかったころ、剣の試合が終わったときに、こうしてよく、ハンカチで顔や首の汗をぬぐってもらったなって」
「そうだね。僕の役目だ、僕の特権だってずっと思っていたんだ。今もそうだね」
「君に世話してもらうのは、ちょっと嬉しい」
「そう? ……まあ、僕もハイリーにお世話されるのが好きだったから、してあげたかったんだと思うんだ」
アンデルも小さく笑って、長い指で私の正中線をたどった。くすぐったくて身じろぐ。指は躊躇いなく茂みを進んで、くるりと上下を返し、腹の部分で私の秘密の溝の部分に触れてきた。くちゅ、と小さな水音が立つ。
「はぁ……」
何度も指先でゆっくりそこをくすぐられ、思わず声が漏れた。じん、と腰の奥が熱くなるような、切ないしびれ。
明るくなりつつある部屋の中で、向かい合ってすることじゃない気がする。
「実はね、女の人にも、そういう生理現象はあるんだよ」
「そうなの?」
「論文によれば、ね。僕は体験したことないけれど」
「なんの論文を読んでるの、君はっあっ」
「学術的な興味と、まあ、少しだけの下心が、読了の動機かな。ハイリー、あなたのそういうときは、僕がお世話をしてもいいかな」
肩を支えられて横になり、軽く膝を立てた。覆いかぶさられ、温かくて少し皮の硬い手の平で体中をそっと撫でられる。くすぐったくならない、ぎりぎりの感触。胸を撫でられると、吐息が漏れた。優しい快感に緊張が解ける。
「きれいだね、ハイリー」
うっとりとつぶやいて、アンデルが乳房を手で包み、指先で乳首を弾く。切ない快感がやってきて、私はまた吐息をもらした。ゆったりと触れられるのも、好きだ。
「部隊の男たちはよく我慢したよね。一緒に寝起きしていたら、命がけで夜這いもあり得そう」
「一度もなかったし、ん……そ、んな気概のある男、ひとりもいなかった。……あぁ……」
「本当に手の届かない相手だと思っていたのかなぁ」
「私が怖かったんじゃ、ない、かな……。ぁ……う……。証拠隠滅、で、……殺そうとしたって殺せないだろうし、っあ、悪事がばれて逆に復讐で殺されると。実際、……そんなことあったら、……許さないっ……ん」
「それじゃあ、僕は許されているって解釈でいいのかな。殺されてない」
「もちろん、君のことは好きだし愛してるし……こうして気持ちよくしてくれるし……」
「ねえ、こうやってまたしたくなったら、僕がお世話してあげる。だから遠慮なく言ってね」
「そのお世話って……」
「うん。そろそろこっち集中しようか、気持ちよくなりたくない?」
膝を掴まれたので、開かれるのにまかせた。この明るいのに全部見えてしまうかな、と恥ずかしく不安に思いながらも、ギフトを失ってからの傷いっぱいの私の体をきれいと言ってくれたアンデルなら、馬鹿にしたり嫌悪したりしないだろうとも思うから。
「ああ、きらきらしてる。とろとろに蕩けて、すごくきれいでいやらしい」
「……それ、褒め言葉? ふ、ぁあ……」
ぬ、とゆっくり異物が体内に侵入してきた。触れたところが甘くしびれる。様子を確認するように、中をそっと探られる。昨夜も散々悦ばされた場所だ。
お腹側の、触れられるとじんわり温かくなるところをそっと撫でられ、立てていた膝が折れた。内側をちゅくちゅく左右に指でこすられると、そこがかあっと熱くなる。絶頂を予感して、私は枕を引き寄せた。
「温かい。それにふっくらしてる」
「んぅ……ぁ……もう、……だめ……はぁ」
「あなたが気持ちよくなっているところ、よく見せて」
一定の動きで増幅させられた熱が、ヘソの下で弾けて拡散する。彼の指を飲み込んでいるところが、意図せずきゅうっと締まった。
「ひあっ……ぁあ……あー……」
あくびのような、高く間の抜けた声が出た。静かで優しい絶頂のあと、穏やかな多幸感が追いかけてくる。背中に、しっとり汗を掻いていた。
終わってくたりと脱力すると、隣に寝そべったアンデルが抱き締めてくれる。上機嫌に、私の頬に口づけたりして。ゆっくりキスしたり、触れ合うのが、アンデルの好みの後戯らしい。私も、さっき触りたかった彼のまつげを指先で確かめ、満足した。指先では足りず、唇でも触れてみる。ふさふさだ。
緊張した筋肉が弛緩したせいか、あくびが出た。かすかに眠気もやってくる。なんて自堕落な。
「私、なんだかまた眠くなってしまった」
「困ったなぁ……」
「……いや、起きるよ。水を汲んだり洗濯をしたり、やることが山積みだからね」
「そうじゃなくて」
起き上がろうとした私の腕を掴んで、アンデルはベッドに仰向けになった。胸に私を抱き込んで。
「続きをしたくなってしまって」
さっき熱を解放したはずのアンデルのものは、また力を持ち始めている。主張しているものとは対照的に、恥ずかしげに彼は含み笑い。
「する……?」
「お許しいただけるならあなたに触れたいな」
「それじゃあ、手早く済ませよう、やらなければならないことも山積みだから」
「そんな、もったいない。ごちそうは味わわないと」
「……お手柔らかに頼むよ、お手柔らかに」
一日のはじまりに、体力を全部奪われてはかなわない。
髪の一房に口づけられ、私はアンデルの顎にお返しのキスをした。
ベッドの上でそろりと伸びをして、ゆっくり目を開けた。潮騒が聞こえる。
この家に引っ越してきてから三週間。生活にも慣れてきて、不自由はベッドが二人で寝るのには狭苦しいことくらいだ。
正面に、枕に側頭部を預け、静かに寝息を立てているアンデルがいた。裸の肩はずいぶん逞しくはなったけれど、それでも私の見慣れた男たちのものと比べたら、華奢だ。日焼けしても白い肌に、繊細なつくりの鼻筋。こうして目を閉じているとびっくりするくらいまつげが長くて、思わず指で触れたくなってしまう。
手が届く位置にアンデルがいる。それを確かめようと、頬に落ちている柔らかな黒髪を指で摘んで払った。明るくなってきた部屋の中で、そうしているとなんだか現実味がない気がする。
「アンデル」
返事も、起きる気配もない。
彼のことは人前以外では旧い名前で呼んでいる。昔のことを忘れないように、戒めに呼んでほしい、この国に来た目的を忘れたくないと彼の方から頼まれたから。もちろん、私はどちらの名前も好きだし、かまわないけれど、うっかり人前で旧い名前を呼びそうでたまに緊張する。
「アンデル」
やはり、反応はない。
起き出して、体を動かしたい。昨日もすっかり遅くまで、……いろいろして、寝る前に体を洗ったりして、瓶の水を使い切ってしまったから、日が高くなる前に井戸から汲み上げて補充しておきたい。べたべたになって床にまるめて退けてあるシーツを洗って干さなければ、夜に敷くものがなくなってしまう。私の下着だって、枚数がない。
なんとかしてそっと起きられないものか。このベッドは備え付けのもので、古いからかなりきしむ。慎重に身を起こそうとして、片方しかない腕を掛布のなかで動かし、ふと変なものに触った。いや、変なものというか、あまり馴染みがないというか、ようやく馴染み始めたものというか。
そろり、薄手の掛布を持ち上げてみると、やっぱり、アンデルのものが少し立ち上がっている。
瞬きする。昨晩、それなりに時間も体力も費やして、互いを慈しんだわけだが、……あれじゃ足りなかったのだろうか。私は結構疲れて、体をきれいにしたあと速攻で寝入ってしまったのだが、もしかしたらアンデルはまだ満足していなかったとか? 彼、そんなに体力があったのか?
これ、どうするべきなんだろう。
しばらく、すうすうと寝息をたてているアンデルの顔と、先に目覚めている分身との間を、目だけいったりきたりしていたけれど、昨晩のことを思い出して、なんとなしにそろりと彼の陰茎を手で掴んでみた。
挿入したときほど硬くはないし太くなってない。夜に、これを優しくこすってあげると、彼は困ったように、でも、嬉しそうにキスしてくれた。気持ちよくて嬉しいことらしい。
じわじわ硬度を増していくそれを撫でさすっていると、かすかに鈴口から体液が滲み出てくる。掛布を退かして、彼の腰に顔を埋めた。舌先で一度ぺろっと舐めてみると、苦いような甘いような、不思議な味がする。美味しくはないけれど、きらいでもない。気持ちよくなってくるとこれが出てしまうと聞いたから、たぶん、アンデルが少しはよくなってくれてるんだろう。
嬉しくなって、根本を手でしごきながら、先を舌でさすったり口づけて吸ってみたりした。
この硬い膝の感じとか、骨ばっていてまっすぐな脛とか、好きだ。あとはこうして頭を優しく撫でられるのも。
「ん……アンデル、起きた?」
「起きるよ。どうしたのハイリー……。朝から」
苦笑して、私の頭を撫でるアンデルは、まだ少し眠そうだ。
「起きたら、なんだか君のこれが元気だったから、もしかして昨晩のが足りなかったのかなと思って」
「男性の生理現象だよ」
「そうだったのか。勝手によけいなことをしてしまった? やめたほうがいい?」
「ここまでしておいてそれは……拷問だよ」
拷問。
たしかに、穏やかな口調で話しているわりに、アンデルのものは赤黒く怒張して、私のそこを満たしてくれるときの形状と質量に成長しきっている。この状態で我慢するのは辛いのかもしれない。こうなると、いつも、切羽詰まった様子で私に「もういいかな」と甘えたように尋ねてくるのだ。昨晩だって。
思い出して、下腹がきゅうっと疼いた。
「それじゃあ、やめない」
できるかぎり奥深くまで口の中にそれを導いて、太くふくれている茎に舌を這わせる。そして擬似的な性器のように口を使って抜き差しする。
「あ……う……」
アンデルが鼻にかかった甘い声で呻き、ぽんぽんと軽く私の頭を叩いた。その眉間にシワを寄せて、感じている顔が好きだ。明るさがあるからよく見える。
「出ちゃうよ、これ以上したら……っ」
「出していいよ」
切なく歪めたその顔をもっと見たい。私の口で達してしまうところを、見たい。遠慮がちに息を荒くするところを、見たい。普段の穏やかで、欲を表に出さない姿を崩してしまいたい。私だけが知っているアンデルの顔を、観察したい。
思い切り口をすぼめて吸ったところ、ずず、と下品な音がたってしまった。
「……っあ」
アンデルが、高い声をひとつ。それに合わせて、白濁したえぐみのある液体が、陰茎の先端から吹き出す。ちょうど唇を離してしまっていた私は、間抜けなことに、顔面にそれを浴びてしまった。第二波が吹き出る前に慌てて、口で受け止める。
ほとばしるものがなくなって、そっと顔をあげた。アンデルが口を薄く開けて深く息を吐いていた。ぼんやりしていた黒い目が、徐々にしっかりしてくる。
唇の上についたものを舌で舐め取っていたら、手の届くところにあったリネンタオルで、アンデルが頬を拭いてくれた。丁寧に丁寧に。真剣な顔で、頬にかかる髪についてしまったものを拭ってくれる。だから膝を畳んでベッドの上で向かい合って座る。
朝から裸でなにをしているんだか。
でも気分はいい。
「はぁ……おはよう、ハイリー。刺激的な朝の挨拶だね」
「そうかなあ。おはよう、ふふ」
「なにか面白かったの?」
「ううん、そうではなくて。君が小さかったころ、剣の試合が終わったときに、こうしてよく、ハンカチで顔や首の汗をぬぐってもらったなって」
「そうだね。僕の役目だ、僕の特権だってずっと思っていたんだ。今もそうだね」
「君に世話してもらうのは、ちょっと嬉しい」
「そう? ……まあ、僕もハイリーにお世話されるのが好きだったから、してあげたかったんだと思うんだ」
アンデルも小さく笑って、長い指で私の正中線をたどった。くすぐったくて身じろぐ。指は躊躇いなく茂みを進んで、くるりと上下を返し、腹の部分で私の秘密の溝の部分に触れてきた。くちゅ、と小さな水音が立つ。
「はぁ……」
何度も指先でゆっくりそこをくすぐられ、思わず声が漏れた。じん、と腰の奥が熱くなるような、切ないしびれ。
明るくなりつつある部屋の中で、向かい合ってすることじゃない気がする。
「実はね、女の人にも、そういう生理現象はあるんだよ」
「そうなの?」
「論文によれば、ね。僕は体験したことないけれど」
「なんの論文を読んでるの、君はっあっ」
「学術的な興味と、まあ、少しだけの下心が、読了の動機かな。ハイリー、あなたのそういうときは、僕がお世話をしてもいいかな」
肩を支えられて横になり、軽く膝を立てた。覆いかぶさられ、温かくて少し皮の硬い手の平で体中をそっと撫でられる。くすぐったくならない、ぎりぎりの感触。胸を撫でられると、吐息が漏れた。優しい快感に緊張が解ける。
「きれいだね、ハイリー」
うっとりとつぶやいて、アンデルが乳房を手で包み、指先で乳首を弾く。切ない快感がやってきて、私はまた吐息をもらした。ゆったりと触れられるのも、好きだ。
「部隊の男たちはよく我慢したよね。一緒に寝起きしていたら、命がけで夜這いもあり得そう」
「一度もなかったし、ん……そ、んな気概のある男、ひとりもいなかった。……あぁ……」
「本当に手の届かない相手だと思っていたのかなぁ」
「私が怖かったんじゃ、ない、かな……。ぁ……う……。証拠隠滅、で、……殺そうとしたって殺せないだろうし、っあ、悪事がばれて逆に復讐で殺されると。実際、……そんなことあったら、……許さないっ……ん」
「それじゃあ、僕は許されているって解釈でいいのかな。殺されてない」
「もちろん、君のことは好きだし愛してるし……こうして気持ちよくしてくれるし……」
「ねえ、こうやってまたしたくなったら、僕がお世話してあげる。だから遠慮なく言ってね」
「そのお世話って……」
「うん。そろそろこっち集中しようか、気持ちよくなりたくない?」
膝を掴まれたので、開かれるのにまかせた。この明るいのに全部見えてしまうかな、と恥ずかしく不安に思いながらも、ギフトを失ってからの傷いっぱいの私の体をきれいと言ってくれたアンデルなら、馬鹿にしたり嫌悪したりしないだろうとも思うから。
「ああ、きらきらしてる。とろとろに蕩けて、すごくきれいでいやらしい」
「……それ、褒め言葉? ふ、ぁあ……」
ぬ、とゆっくり異物が体内に侵入してきた。触れたところが甘くしびれる。様子を確認するように、中をそっと探られる。昨夜も散々悦ばされた場所だ。
お腹側の、触れられるとじんわり温かくなるところをそっと撫でられ、立てていた膝が折れた。内側をちゅくちゅく左右に指でこすられると、そこがかあっと熱くなる。絶頂を予感して、私は枕を引き寄せた。
「温かい。それにふっくらしてる」
「んぅ……ぁ……もう、……だめ……はぁ」
「あなたが気持ちよくなっているところ、よく見せて」
一定の動きで増幅させられた熱が、ヘソの下で弾けて拡散する。彼の指を飲み込んでいるところが、意図せずきゅうっと締まった。
「ひあっ……ぁあ……あー……」
あくびのような、高く間の抜けた声が出た。静かで優しい絶頂のあと、穏やかな多幸感が追いかけてくる。背中に、しっとり汗を掻いていた。
終わってくたりと脱力すると、隣に寝そべったアンデルが抱き締めてくれる。上機嫌に、私の頬に口づけたりして。ゆっくりキスしたり、触れ合うのが、アンデルの好みの後戯らしい。私も、さっき触りたかった彼のまつげを指先で確かめ、満足した。指先では足りず、唇でも触れてみる。ふさふさだ。
緊張した筋肉が弛緩したせいか、あくびが出た。かすかに眠気もやってくる。なんて自堕落な。
「私、なんだかまた眠くなってしまった」
「困ったなぁ……」
「……いや、起きるよ。水を汲んだり洗濯をしたり、やることが山積みだからね」
「そうじゃなくて」
起き上がろうとした私の腕を掴んで、アンデルはベッドに仰向けになった。胸に私を抱き込んで。
「続きをしたくなってしまって」
さっき熱を解放したはずのアンデルのものは、また力を持ち始めている。主張しているものとは対照的に、恥ずかしげに彼は含み笑い。
「する……?」
「お許しいただけるならあなたに触れたいな」
「それじゃあ、手早く済ませよう、やらなければならないことも山積みだから」
「そんな、もったいない。ごちそうは味わわないと」
「……お手柔らかに頼むよ、お手柔らかに」
一日のはじまりに、体力を全部奪われてはかなわない。
髪の一房に口づけられ、私はアンデルの顎にお返しのキスをした。
0
あなたにおすすめの小説
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる
狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。
しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で………
こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる