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随分長く寝たかもしれない。
そう思って瞼を開くと、そこは私の部屋だった。
電車に乗っていたはずなのにどうして自分の部屋にいるんだろう?……あぁ、またお屋敷に着く前に現実に戻ってきてしまったのかな。
私が少し気落ちしていると、ドアからあのてるてる車掌が現れた。
「お目覚めになりましたか?」
優しく微笑むてるてる車掌。顔ないけど。
ってあれ?ここは夢の中?そう言えば若干揺れているような……。
夢か現実か不安になった私は、横たわっていたベッドから飛び起きて、窓から外を見た。景色は車窓から見た時のように時間も天気も不安定。
なぁんだ、まだ夢の中だったのか。
「お客様、切符を拝見してもよろしいですか?」
てるてる車掌が私の前に白い手を差し出す。
「あの、私切符……」
持っていないと言う前に、私のポケットから和紙のようなものが落ちた。てるてる車掌はその和紙を拾うと胸ポケットからスタンプを出して和紙に押す。
「ご協力ありがとうございます」
渡された和紙には『お屋敷行き』とだけ書かれており、普段見る切符とは随分違った。
「終電までのお客様には、食堂にてシェフが料理を振る舞います。宜しければご利用ください」
てるてる車掌は一礼して私の部屋を去っていく。後をつけて部屋の外を覗くと、既にてるてる車掌の姿はなく、見慣れた家の風景がそこにあった。
一体どうなってるの?
「夢唯ー、ご飯よ。早く降りてらっしゃい」
一階からお母さんの声が聞こえる。一応返事はしたけれど、現実なのか夢なのかイマイチ分からない。
もう一度部屋の窓を確認してみると、空には月が出ていて、辺りは薄暗い。私が住む町そのものの風景に小首を傾げた。
私は、いつの間にあの夢から覚めたのだろう?
あのてるてる車掌は、一体なんだったんだろう?
もやもやとした感情が残ったまま、右手に違和感を感じて恐る恐る目線を下げる。
車掌から渡された和紙の切符。しかし違ったのは記入された字。多分、ひらがなを覚えたばかりなのだろう。拙い字で「おやしきいき」とクレオンで書かれていた。
「嫌っ!」
気味が悪くなって、反射的に切符を落とす。左右にゆらりゆらりと降下しながら、切符は音も立てず私の足元で動きを止めた。
それから私は、ほぼ毎日電車に揺られる夢を見た。いつもなら一期一会の夢でも、今回だけは寝る度に以前の場所から物語が始まる。
最初はゲームみたいで面白いと思った。乗客が話しかけてくれたりするし、彼らの話はとても幻想的で聞いていて楽しかった。
……ただ、夢から覚めたのがいつなのか曖昧なのが難点。
一度両親がいるときに、「ねぇ、いつ次の駅には着くの?」とうっかり聞いてしまった。両親は何を寝ぼけているんだと笑っていたが、その時なぜ笑われているのかが理解出来なかった。
その恥ずかしさもあってか、早くこの夢を終わらせなきゃと強く思った。そのためにはたくさんの睡眠量がいる。
早くお屋敷へ着いて、電車から降りないと。
一週間経って、ようやく『イデオモ駅』に辿り着いた。
自然が綺麗なところで木々が立ち並び、野鳥の声が聞こえる。私は自分の部屋のような席で窓の外を眺めていた。
ふと、1箇所だけ草原のように開けたところを見つける。そこでは四人の小さい子達が鬼ごっこをして遊んでいた。
見た目的に幼稚園の年長さんかな。髪を結んでいる女の子が一人、あとの三人は髪型的に男の子だろうか。女の子は男の子達を必死で追いかけている。そして何かに躓いたのか、女の子は派手に転んだ。
「あっ……」
思わず声を出す。その様子を見ていた三人の内一人が、泣いている女の子の元へ近寄った。しかし中々女の子が泣き止まないのか男の子の方もおろおろとしている。
「発車致します。閉まるドアにご注意ください」
アナウンスが流れる。彼らのことが心配になったが、私の目的地は『イデオモ駅』じゃない。ポケットに入っている切符を握りしめる。どうしてだか切符はくしゃくしゃの和紙にクレオンで書かれたままだ。
いつ書かれたのか分からない。尚且つ私の字でもない。
……とにかくお屋敷に行けば全て分かるよね。
根拠はないけど、今はそう思えてならない。
再び電車が走る。
もう一度窓から外を眺めると、女の子は男の子の手をとって再びみんなと遊んでいた。
あぁ、よかった。私はもう泣き止んだみたい。
そう思って瞼を開くと、そこは私の部屋だった。
電車に乗っていたはずなのにどうして自分の部屋にいるんだろう?……あぁ、またお屋敷に着く前に現実に戻ってきてしまったのかな。
私が少し気落ちしていると、ドアからあのてるてる車掌が現れた。
「お目覚めになりましたか?」
優しく微笑むてるてる車掌。顔ないけど。
ってあれ?ここは夢の中?そう言えば若干揺れているような……。
夢か現実か不安になった私は、横たわっていたベッドから飛び起きて、窓から外を見た。景色は車窓から見た時のように時間も天気も不安定。
なぁんだ、まだ夢の中だったのか。
「お客様、切符を拝見してもよろしいですか?」
てるてる車掌が私の前に白い手を差し出す。
「あの、私切符……」
持っていないと言う前に、私のポケットから和紙のようなものが落ちた。てるてる車掌はその和紙を拾うと胸ポケットからスタンプを出して和紙に押す。
「ご協力ありがとうございます」
渡された和紙には『お屋敷行き』とだけ書かれており、普段見る切符とは随分違った。
「終電までのお客様には、食堂にてシェフが料理を振る舞います。宜しければご利用ください」
てるてる車掌は一礼して私の部屋を去っていく。後をつけて部屋の外を覗くと、既にてるてる車掌の姿はなく、見慣れた家の風景がそこにあった。
一体どうなってるの?
「夢唯ー、ご飯よ。早く降りてらっしゃい」
一階からお母さんの声が聞こえる。一応返事はしたけれど、現実なのか夢なのかイマイチ分からない。
もう一度部屋の窓を確認してみると、空には月が出ていて、辺りは薄暗い。私が住む町そのものの風景に小首を傾げた。
私は、いつの間にあの夢から覚めたのだろう?
あのてるてる車掌は、一体なんだったんだろう?
もやもやとした感情が残ったまま、右手に違和感を感じて恐る恐る目線を下げる。
車掌から渡された和紙の切符。しかし違ったのは記入された字。多分、ひらがなを覚えたばかりなのだろう。拙い字で「おやしきいき」とクレオンで書かれていた。
「嫌っ!」
気味が悪くなって、反射的に切符を落とす。左右にゆらりゆらりと降下しながら、切符は音も立てず私の足元で動きを止めた。
それから私は、ほぼ毎日電車に揺られる夢を見た。いつもなら一期一会の夢でも、今回だけは寝る度に以前の場所から物語が始まる。
最初はゲームみたいで面白いと思った。乗客が話しかけてくれたりするし、彼らの話はとても幻想的で聞いていて楽しかった。
……ただ、夢から覚めたのがいつなのか曖昧なのが難点。
一度両親がいるときに、「ねぇ、いつ次の駅には着くの?」とうっかり聞いてしまった。両親は何を寝ぼけているんだと笑っていたが、その時なぜ笑われているのかが理解出来なかった。
その恥ずかしさもあってか、早くこの夢を終わらせなきゃと強く思った。そのためにはたくさんの睡眠量がいる。
早くお屋敷へ着いて、電車から降りないと。
一週間経って、ようやく『イデオモ駅』に辿り着いた。
自然が綺麗なところで木々が立ち並び、野鳥の声が聞こえる。私は自分の部屋のような席で窓の外を眺めていた。
ふと、1箇所だけ草原のように開けたところを見つける。そこでは四人の小さい子達が鬼ごっこをして遊んでいた。
見た目的に幼稚園の年長さんかな。髪を結んでいる女の子が一人、あとの三人は髪型的に男の子だろうか。女の子は男の子達を必死で追いかけている。そして何かに躓いたのか、女の子は派手に転んだ。
「あっ……」
思わず声を出す。その様子を見ていた三人の内一人が、泣いている女の子の元へ近寄った。しかし中々女の子が泣き止まないのか男の子の方もおろおろとしている。
「発車致します。閉まるドアにご注意ください」
アナウンスが流れる。彼らのことが心配になったが、私の目的地は『イデオモ駅』じゃない。ポケットに入っている切符を握りしめる。どうしてだか切符はくしゃくしゃの和紙にクレオンで書かれたままだ。
いつ書かれたのか分からない。尚且つ私の字でもない。
……とにかくお屋敷に行けば全て分かるよね。
根拠はないけど、今はそう思えてならない。
再び電車が走る。
もう一度窓から外を眺めると、女の子は男の子の手をとって再びみんなと遊んでいた。
あぁ、よかった。私はもう泣き止んだみたい。
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