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一章
ループス
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「いい。姉ちゃんはもう、僕を弟だとは思っていないから」
そう言ってライオットは首を横に振る。
いつも傍にいてくれた姉と、恋に生きることを決めた姉。
その姿を重ねてしまう。
優先順位が変わってしまったエゴ。
ライオットにはたった一人の家族だった。
たった一人の大好きな姉だった。
「教会に戻っても、姉ちゃんと一緒にご飯を食べることは出来ない。あの狭い部屋を、一人で使わないといけない……」
服の裾を握りしめ、堪えきれず飽和状態になった涙が足元をぽたぽたと濡らした。
「……僕にはもうっ、心配してくれる家族はいないんだ」
ライオットは嗚咽を噛み殺しながら声を絞り出す。
人狼である彼女にそんな話をしても理解してくれるとは思っていない。それでも、この虚無に近い苦しみを、誰でもいいから聞いて欲しかった。この寂しさを、死ぬことで紛らわしたかった。
そのまましゃがみこんで泣き喚いてしまいたかった。
しかしそうしなかったのは、彼の様子を見ていた人狼の涙腺が崩壊したから。
「ぞうかっ!づらがっだなっ!」
もらい泣きをした人狼は、ライオット以上に涙と嗚咽を漏らして彼の両肩を強く掴んだ。
「私でよければお前のお姉さんになってやるぞ!名前はなんという?」
「ら、ライオット……」
「ライオット!ライオットか!私はループスだ!いや、これからはお姉さん、もしくは姉ちゃんと呼ぶがいい!耳と尻尾は気にするな、コスプレをしているとでも思え!」
ループスと名乗った人狼は、母性本能全開でライオットを自分の胸に押し付けた。
「もう離さんぞ弟よ!」
なんと暑苦しい姉だろうか。
押し付けられて窒息しかけたライオットを見て、ループスはようやくはっと我に返る。
「すまん。つい感情的に」
すっかり涙が引っ込み、息苦しさから開放されたライオットは、酸素を求めてぷはっと息を吐いた。女性の胸で窒息して死ぬ……死因としては少々恥ずかしい。
するとループスは、ライオットのぼさぼさに伸びた髪を人束掴んで煩わしそうにそれを見た。
「そうだなぁ、私の弟になるならまずはこの邪魔な髪を短く切ろうか」
ライオットの髪を掴んでいた左手とは反対の右手の爪がじゃきんっと長く伸びる。
とてつもなく嫌な予感がした。
「爪で切るの?」
「手短なものがこれしかなくてな。安心しろ、何かを狩るのは慣れている」
ループスの満面の笑みに、こんな恐ろしい笑みを見たことがないとライオットは額に青筋を立てた。
その夜、森にジョリジョリという不気味な音と、人の悲鳴がこだました。
孤児のライオット、そして人狼のループス。
この二人が奇妙な形で出会いを果たしたのは運命か、あるいは偶然か。
それとも、神様が与えた試練なのか……。
そう言ってライオットは首を横に振る。
いつも傍にいてくれた姉と、恋に生きることを決めた姉。
その姿を重ねてしまう。
優先順位が変わってしまったエゴ。
ライオットにはたった一人の家族だった。
たった一人の大好きな姉だった。
「教会に戻っても、姉ちゃんと一緒にご飯を食べることは出来ない。あの狭い部屋を、一人で使わないといけない……」
服の裾を握りしめ、堪えきれず飽和状態になった涙が足元をぽたぽたと濡らした。
「……僕にはもうっ、心配してくれる家族はいないんだ」
ライオットは嗚咽を噛み殺しながら声を絞り出す。
人狼である彼女にそんな話をしても理解してくれるとは思っていない。それでも、この虚無に近い苦しみを、誰でもいいから聞いて欲しかった。この寂しさを、死ぬことで紛らわしたかった。
そのまましゃがみこんで泣き喚いてしまいたかった。
しかしそうしなかったのは、彼の様子を見ていた人狼の涙腺が崩壊したから。
「ぞうかっ!づらがっだなっ!」
もらい泣きをした人狼は、ライオット以上に涙と嗚咽を漏らして彼の両肩を強く掴んだ。
「私でよければお前のお姉さんになってやるぞ!名前はなんという?」
「ら、ライオット……」
「ライオット!ライオットか!私はループスだ!いや、これからはお姉さん、もしくは姉ちゃんと呼ぶがいい!耳と尻尾は気にするな、コスプレをしているとでも思え!」
ループスと名乗った人狼は、母性本能全開でライオットを自分の胸に押し付けた。
「もう離さんぞ弟よ!」
なんと暑苦しい姉だろうか。
押し付けられて窒息しかけたライオットを見て、ループスはようやくはっと我に返る。
「すまん。つい感情的に」
すっかり涙が引っ込み、息苦しさから開放されたライオットは、酸素を求めてぷはっと息を吐いた。女性の胸で窒息して死ぬ……死因としては少々恥ずかしい。
するとループスは、ライオットのぼさぼさに伸びた髪を人束掴んで煩わしそうにそれを見た。
「そうだなぁ、私の弟になるならまずはこの邪魔な髪を短く切ろうか」
ライオットの髪を掴んでいた左手とは反対の右手の爪がじゃきんっと長く伸びる。
とてつもなく嫌な予感がした。
「爪で切るの?」
「手短なものがこれしかなくてな。安心しろ、何かを狩るのは慣れている」
ループスの満面の笑みに、こんな恐ろしい笑みを見たことがないとライオットは額に青筋を立てた。
その夜、森にジョリジョリという不気味な音と、人の悲鳴がこだました。
孤児のライオット、そして人狼のループス。
この二人が奇妙な形で出会いを果たしたのは運命か、あるいは偶然か。
それとも、神様が与えた試練なのか……。
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