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一章
出会い
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「もう、うんざりなのよ」
薄い唇を震わせて、次の瞬間エゴはライオットに声を上げた。
「いつもいつもあたしの後をつけて、いい加減自立してよっ!あたしは悪いことなんてしていない!あれはあたしが生きるためにしたこと!神様は許してくれる!」
身勝手な言い訳をして、強く握った拳を胸に当てた。そして、ライオットの後ろにエゴを迎えに来た男が現れる。
彼女は迷いなく、男の元へ向かった。
「帰って」
「……でも」
「帰ってよ!」
都市のきらびやかな波にのまれて行った男女を、ライオットはただ眺めることしか出来なかった。
しばらく路地裏で呆然と立ちつくしていると、怪しい男たちがライオットを邪魔だと言って突き飛ばした。彼らは占領した路地裏で、注射器を取り出し、高笑いをしている。
……あぁ、ここは僕の居ていいところじゃない。
舗装された地面に散りばめている小さな砂を振り払い、ライオットはとぼとぼと都市後にして森の中を歩み続けた。
シスターになんて言おう?
弟である僕も追い出されるのかな?
胸を圧迫されるような痛み。自分の部屋に辿り着くまでは泣くまいと、必死で込み上げる涙を堪えた。
その瞬間、獣の唸り声がライオットのすぐ近くで聞こえる。
夜の森は彼らのテリトリー。この暗闇の中、夜眼の効かない人間は、すぐに彼らの餌食となる。
「美味そうだな」
舌なめずりと共に聞こえた声に、ライオットはぶるっと身震いをする。
ふと、いつの間にかライオットの目の前に人影が現れた。
すらりとした長身の体型、腰まで伸びた長い金髪、ぱっくりと首元が開いた際どい服。そこには暗闇でも淡く光る金色のペンダント。胸部が膨らんでいたことから女性であることが認識出来た。
しかし、雲で隠れていた月明かりが地上を照らすと、頭頂部からイヌ科を連想させる獣耳と、足の間から細くごわごわとした尻尾が生き物のように動いていた。
人の形をしていながら同時に狼でもあるもの。人は彼らをこう呼んでいた。
『人狼』と。
彼らの主食は主に生肉。その中にはもちろん、人肉も含まれている。
「美味そうだな、人間。喰っていいか?」
人狼は再びライオットに尋ねる。
その爛々とした瞳には、彼が獲物として映っているのだろうか。
「……いいよ」
「へっ?」
ライオットの言葉に人狼は腑抜けた声を漏らす。
「だから、食べていいよ」
ライオットは念の為もう一度答えた。
普通こういう状況に遭遇して動揺するのは人間側だろう。しかし皮肉にも動揺していたのは人狼側だった。
「い、いや……そこは普通に驚くとかだな。ほら、私は人狼だぞ!」
「人狼の存在はシスターから聞いていたから。でも本物を見たのは今日が初めて」
「もっとちゃんと驚け!あと、さっきのは狼としてのプライドというか、お決まりというか……とにかく実際には喰わんぞ!いや昔は食べてたけどっ!」
人狼はどうやっても動揺しないライオットに頭を抱えて、やがて自棄を起こす。
「あぁぁっ!夜の森は危険だぞ、気をつけろよ☆って親切に教えてやったんだ!お姉さん実はいい人でした!はい!分かったか!」
「……よく分からないけど、食べないんだね」
随分思っていた人狼と掛け離れたタイプ人狼に、ライオットは苦笑いをする。本音をぶちまけた人狼はライオットに顔を寄せ、匂いを嗅いだ。
「ん?お前、よく嗅いだら人間のオスか。髪が長いからメスだと思った。まあ、どっちにしろ子どもは私の守備範囲外だ。早く帰って寝ろ」
人狼は左手をくびれた腰に当て、右手でしっしっとライオットを振り払う。彼女の言葉に、ライオットは黙り込んだ。
「……な、なんだよ。そんな暗い顔して。まさか、お姉さんに惚れた?」
「違う」
きゃっと一人で盛り上がっていた人狼に、ライオットは冷静な一言を浴びせる。
「……教会に、帰りづらい」
目を伏せるライオット。彼を見た人狼は栗色の瞳を向けながら頬に両手を当てる。
「……っていうのは言い訳で、実はお姉さんに惚れたんだろ?このマセガキめっ」
はたはたと尻尾を振っていたが、またしてもライオットの「違う」の一言で撃沈する。
「じゃあどうしたいんだ。お前に何があったかは知らんが、このまま森で一晩過ごすつもりか?それこそ他の人狼に喰われてしまうぞ」
薄い唇を震わせて、次の瞬間エゴはライオットに声を上げた。
「いつもいつもあたしの後をつけて、いい加減自立してよっ!あたしは悪いことなんてしていない!あれはあたしが生きるためにしたこと!神様は許してくれる!」
身勝手な言い訳をして、強く握った拳を胸に当てた。そして、ライオットの後ろにエゴを迎えに来た男が現れる。
彼女は迷いなく、男の元へ向かった。
「帰って」
「……でも」
「帰ってよ!」
都市のきらびやかな波にのまれて行った男女を、ライオットはただ眺めることしか出来なかった。
しばらく路地裏で呆然と立ちつくしていると、怪しい男たちがライオットを邪魔だと言って突き飛ばした。彼らは占領した路地裏で、注射器を取り出し、高笑いをしている。
……あぁ、ここは僕の居ていいところじゃない。
舗装された地面に散りばめている小さな砂を振り払い、ライオットはとぼとぼと都市後にして森の中を歩み続けた。
シスターになんて言おう?
弟である僕も追い出されるのかな?
胸を圧迫されるような痛み。自分の部屋に辿り着くまでは泣くまいと、必死で込み上げる涙を堪えた。
その瞬間、獣の唸り声がライオットのすぐ近くで聞こえる。
夜の森は彼らのテリトリー。この暗闇の中、夜眼の効かない人間は、すぐに彼らの餌食となる。
「美味そうだな」
舌なめずりと共に聞こえた声に、ライオットはぶるっと身震いをする。
ふと、いつの間にかライオットの目の前に人影が現れた。
すらりとした長身の体型、腰まで伸びた長い金髪、ぱっくりと首元が開いた際どい服。そこには暗闇でも淡く光る金色のペンダント。胸部が膨らんでいたことから女性であることが認識出来た。
しかし、雲で隠れていた月明かりが地上を照らすと、頭頂部からイヌ科を連想させる獣耳と、足の間から細くごわごわとした尻尾が生き物のように動いていた。
人の形をしていながら同時に狼でもあるもの。人は彼らをこう呼んでいた。
『人狼』と。
彼らの主食は主に生肉。その中にはもちろん、人肉も含まれている。
「美味そうだな、人間。喰っていいか?」
人狼は再びライオットに尋ねる。
その爛々とした瞳には、彼が獲物として映っているのだろうか。
「……いいよ」
「へっ?」
ライオットの言葉に人狼は腑抜けた声を漏らす。
「だから、食べていいよ」
ライオットは念の為もう一度答えた。
普通こういう状況に遭遇して動揺するのは人間側だろう。しかし皮肉にも動揺していたのは人狼側だった。
「い、いや……そこは普通に驚くとかだな。ほら、私は人狼だぞ!」
「人狼の存在はシスターから聞いていたから。でも本物を見たのは今日が初めて」
「もっとちゃんと驚け!あと、さっきのは狼としてのプライドというか、お決まりというか……とにかく実際には喰わんぞ!いや昔は食べてたけどっ!」
人狼はどうやっても動揺しないライオットに頭を抱えて、やがて自棄を起こす。
「あぁぁっ!夜の森は危険だぞ、気をつけろよ☆って親切に教えてやったんだ!お姉さん実はいい人でした!はい!分かったか!」
「……よく分からないけど、食べないんだね」
随分思っていた人狼と掛け離れたタイプ人狼に、ライオットは苦笑いをする。本音をぶちまけた人狼はライオットに顔を寄せ、匂いを嗅いだ。
「ん?お前、よく嗅いだら人間のオスか。髪が長いからメスだと思った。まあ、どっちにしろ子どもは私の守備範囲外だ。早く帰って寝ろ」
人狼は左手をくびれた腰に当て、右手でしっしっとライオットを振り払う。彼女の言葉に、ライオットは黙り込んだ。
「……な、なんだよ。そんな暗い顔して。まさか、お姉さんに惚れた?」
「違う」
きゃっと一人で盛り上がっていた人狼に、ライオットは冷静な一言を浴びせる。
「……教会に、帰りづらい」
目を伏せるライオット。彼を見た人狼は栗色の瞳を向けながら頬に両手を当てる。
「……っていうのは言い訳で、実はお姉さんに惚れたんだろ?このマセガキめっ」
はたはたと尻尾を振っていたが、またしてもライオットの「違う」の一言で撃沈する。
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