婚約破棄されたけど、転生前の獣医師だったときの記憶を思い出した私は、ドラゴンの王子を助けました。

惟名 水月

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5話 実家に帰らせて頂きます

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 リンドヴルムと共に、アストルフィア領へと帰還した私。久しぶりの実家の門をくぐると、私の両親始め、関係者は皆驚きの表情を浮かべ、駆け寄ってきた。

「シャルロット!? 生きていたのか!?」
「ええ、どうにか生きていました」
「……シャルロット、本当に…… ドラゴンに襲われたと聞いて…… 私……」

 久しぶりの再会に涙を目に浮かべながら喜ぶ両親。既に話は両親の元へも届いていたらしい。私がアストルフィアに帰還する途中に、ドラゴンに襲撃され、全滅したと。アレン・カルミナは婚約者を失ったことに深く悲しんだと。全くのでたらめである。

「……お父様、お母様。その話は嘘よ。私を襲撃したのは、『アレン・カルミナ』。ドラゴンは私を助けてくれたの」
「……まさか!? どうして、アレン様がお前を! お前は婚約者のはずだろうが! それに契約が……」

 驚きを隠せない両親は、私の話を受け入れられないようだった。しかし、これは紛う事なき事実。私の説明を、未だ半信半疑ながらも、両親は最後まで聞き入れてくれた。もちろん、生け贄云々の話は隠したが。

「そうか…… シャルロット…… お前も大変だったのだな…… リンドヴルム殿、本当にありがとうございました!」
「いや、俺は……」
「そうだ、どうでしょう? リンドヴルム殿、うちの娘をあなたの妻になど? ドラゴンの王子なのでしょう?」
「ちょっと……! お父様!」

 勝手に話が進む。リンドヴルムも突然の父の提案に動揺していた。それにしてもお父様は悪い人ではないのだが、こういう強引なところもある。もう少し、娘のことや相手のことも考えてくれても良いものだとは思うけど……

「シャルロット、リンドヴルム殿はそなたの命を救ってくれたのだろう? ならば、相手として、これ以上の相手はいないだろうに」
「そうかもしれないけど……」
「とにかく、そういうことなら、我々アストルフィア家もドラゴンの一族にぜひ協力させて頂く。見てもらえればわかると思うが、我が領はなにもないが、綺麗な水や、新鮮な食べ物については余るほどあるのだ!」
「……ありがとう、アストルフィア殿」

 快く協力してくれると言ってくれた父に感謝の意を示したリンドヴルム。父の強引な誘いを断れず、結局その日は彼も私の家に泊まっていくことになったのだ。

 そして、夜。私はリンドヴルムの元を訪れた。リンドヴルムがあてがわれたのは、客室の一つ。こんこんとドアをノックすると、客室で1人、外を眺めるリンドヴルムの姿があった。

「おお、シャルロットか、どうしたこんな夜に?」
「ごめんなさい、リンドヴルム。うちの父が強引で」

 リンドヴルムにとっては、大層迷惑な話だっただろう。なにせ、彼はドラゴンの王子。なのに、生け贄として捧げようとして誘拐してきた女を妻にあてがわれそうになっているのだ。

 私の謝罪にリンドヴルムは、複雑な表情を浮かべながら答えを返してきた。

「いや、いいんだ。それより…… そなたはどう思うんだ?」
「どうってなにが?」
「さっき、そなたの父が言っていたことだ。俺は一度、お前を殺そうとした」
「ああ、そのことならもう気にしてないから大丈夫よ。もっと酷い目にあったんだから」
「ふっ」

 突然に、笑みを浮かべたリンドヴルム。思い返せば、リンドヴルムが笑った所なんて、初めて見た気もする。恐ろしいドラゴンの時の姿とは裏腹に、その笑顔はすごく温かく、そして優しい笑顔だった。

「なにか、可笑しかった?」
「やっぱりそなたは、変わってるなシャルロット」
「そうかもしれないわね。確実に私の人格はねじ曲がったわ」
「人間とドラゴン、手を取り合っていける未来もあるのかも知れないな……」
「まあ、何にせよまずは『呪い』が解けないと、話にならないんじゃない? 結局、生け贄になるのが後回しになっただけで、『呪い』の治療はまだ終わってないのよ」
「ありがとう、シャルロット。あのとき、出会ったのがそなたで良かったよ」
「なによ、急に」
「いや、なんでもない。ドラゴンの一族のこと、よろしく頼む」
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