6 / 7
6話 私幸せになっても、いいわよね?
しおりを挟む
それから、リンドヴルムと一緒に、ドラゴン達の国へと戻った私。アストルフィアから運んできた野菜や果物で栄養バランスを整えた食事に変えた結果、効果はすぐに現れたのだ。
『呪い』自体は消えたわけではない。やはり一度発症してしまった以上、そう簡単には治せない。だが、ドラゴン達、特に若い者は野菜や果物の摂取により、すぐに体調が良くなった。痛みに苦しむ者も次第に減っていき、しばらく経つ頃には、皆すっかり健康で生き生きとした暮らしを過ごせるようになっていったのだ。
もちろん、食事のアドバイスをしている間、私は何もしていなかったわけではない。できる限りの範囲で、彼らの健康上の悩み相談に乗った。いつの間にか、ドラゴンたちは私を仲間と受け入れてくれるようになったのだ。
そんなある日のことである。私はリンドヴルムに呼び出されたのだ。
「何の用事なの、リンドヴルム?」
「ああ、シャルロット、そなたのお陰で、ドラゴンの一族の皆もずいぶんと元気になった。それに、今や皆がそなたにここに残って欲しいと願っている……」
確かに、私も少しだけここが心地よくなっては来ていた。全てを失っていたと思っていた私に、久しぶりに居場所が出来たような気はしていた。
そんな私に向かって、リンドヴルムは更に言葉を続ける。
「そこでだな…… シャルロット、そなたさえ良かったら、あの話、もう一度考えてはもらえないか?」
「あの話?」
一体なんの話かと問いかけた私。リンドヴルムは、緊張しているようで、深く息を吸い込み、そして、覚悟を決めた表情でその言葉を継げたのだ。
「……俺の妻になってもらえないだろうか? シャルロット」
私の頭の中が真っ白になる。
「もう一度、言って貰ってもいい?」
「俺の妻になって欲しい、シャルロット」
やっぱり聞き間違えではなかったようだ。だけど、リンドヴルムはドラゴンの一族の王子、そして私は令嬢とは言え、弱小貴族の生まれで、ただの人間と言っても過言ではないのだ。
だから、私はリンドヴルムへと問いかけた。
「それは、ドラゴンの一族のため? それとも、あなた個人の願いなの?」
「ドラゴンの一族のためではないと言えば、嘘になる。だけど、これは俺個人の願いだ」
その言葉に、私も決意した。リンドヴルムは、私に真っ直ぐ向き合ってくれている。だったら、私の答えは一つ。
「……いいわ。リンドヴルム、私なんかで良かったら」
「そなたが良いのだ、シャルロット。そしてもう一つ、俺は考えたことがある」
「何?」
「人間の国、そなたの生まれ育ったカスタリア国と、同盟を結ぶつもりだ。カスタリア王との謁見にそなたもついてきてもらいたい」
「私が?」
「ああ、王との謁見の時、そなたのことも紹介する」
「私は遠慮しておくわ。あのクソ野郎共の顔なんて見たくないもの」
「大丈夫だ。あくまで王との謁見に過ぎない。頼む」
「……仕方ないわね」
こうして、私はリンドヴルムと共に、王の下へと向かうこととなったのだ。
『呪い』自体は消えたわけではない。やはり一度発症してしまった以上、そう簡単には治せない。だが、ドラゴン達、特に若い者は野菜や果物の摂取により、すぐに体調が良くなった。痛みに苦しむ者も次第に減っていき、しばらく経つ頃には、皆すっかり健康で生き生きとした暮らしを過ごせるようになっていったのだ。
もちろん、食事のアドバイスをしている間、私は何もしていなかったわけではない。できる限りの範囲で、彼らの健康上の悩み相談に乗った。いつの間にか、ドラゴンたちは私を仲間と受け入れてくれるようになったのだ。
そんなある日のことである。私はリンドヴルムに呼び出されたのだ。
「何の用事なの、リンドヴルム?」
「ああ、シャルロット、そなたのお陰で、ドラゴンの一族の皆もずいぶんと元気になった。それに、今や皆がそなたにここに残って欲しいと願っている……」
確かに、私も少しだけここが心地よくなっては来ていた。全てを失っていたと思っていた私に、久しぶりに居場所が出来たような気はしていた。
そんな私に向かって、リンドヴルムは更に言葉を続ける。
「そこでだな…… シャルロット、そなたさえ良かったら、あの話、もう一度考えてはもらえないか?」
「あの話?」
一体なんの話かと問いかけた私。リンドヴルムは、緊張しているようで、深く息を吸い込み、そして、覚悟を決めた表情でその言葉を継げたのだ。
「……俺の妻になってもらえないだろうか? シャルロット」
私の頭の中が真っ白になる。
「もう一度、言って貰ってもいい?」
「俺の妻になって欲しい、シャルロット」
やっぱり聞き間違えではなかったようだ。だけど、リンドヴルムはドラゴンの一族の王子、そして私は令嬢とは言え、弱小貴族の生まれで、ただの人間と言っても過言ではないのだ。
だから、私はリンドヴルムへと問いかけた。
「それは、ドラゴンの一族のため? それとも、あなた個人の願いなの?」
「ドラゴンの一族のためではないと言えば、嘘になる。だけど、これは俺個人の願いだ」
その言葉に、私も決意した。リンドヴルムは、私に真っ直ぐ向き合ってくれている。だったら、私の答えは一つ。
「……いいわ。リンドヴルム、私なんかで良かったら」
「そなたが良いのだ、シャルロット。そしてもう一つ、俺は考えたことがある」
「何?」
「人間の国、そなたの生まれ育ったカスタリア国と、同盟を結ぶつもりだ。カスタリア王との謁見にそなたもついてきてもらいたい」
「私が?」
「ああ、王との謁見の時、そなたのことも紹介する」
「私は遠慮しておくわ。あのクソ野郎共の顔なんて見たくないもの」
「大丈夫だ。あくまで王との謁見に過ぎない。頼む」
「……仕方ないわね」
こうして、私はリンドヴルムと共に、王の下へと向かうこととなったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」
公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。
忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。
「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」
冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。
彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。
一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。
これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。
離婚と追放された悪役令嬢ですが、前世の農業知識で辺境の村を大改革!気づいた元夫が後悔の涙を流しても、隣国の王子様と幸せになります
黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢リセラは、夫である王子ルドルフから突然の離婚を宣告される。理由は、異世界から現れた聖女セリーナへの愛。前世が農業大学の学生だった記憶を持つリセラは、ゲームのシナリオ通り悪役令嬢として処刑される運命を回避し、慰謝料として手に入れた辺境の荒れ地で第二の人生をスタートさせる!
前世の知識を活かした農業改革で、貧しい村はみるみる豊かに。美味しい作物と加工品は評判を呼び、やがて隣国の知的な王子アレクサンダーの目にも留まる。
「君の作る未来を、そばで見ていたい」――穏やかで誠実な彼に惹かれていくリセラ。
一方、リセラを捨てた元夫は彼女の成功を耳にし、後悔の念に駆られ始めるが……?
これは、捨てられた悪役令嬢が、農業で華麗に成り上がり、真実の愛と幸せを掴む、痛快サクセス・ラブストーリー!
断罪される令嬢は、悪魔の顔を持った天使だった
Blue
恋愛
王立学園で行われる学園舞踏会。そこで意気揚々と舞台に上がり、この国の王子が声を張り上げた。
「私はここで宣言する!アリアンナ・ヴォルテーラ公爵令嬢との婚約を、この場を持って破棄する!!」
シンと静まる会場。しかし次の瞬間、予期せぬ反応が返ってきた。
アリアンナの周辺の目線で話しは進みます。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。
かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。
謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇!
※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる