7 / 7
7話 今までありがとう、私のことは放っておいてくださいね! 元婚約者さん!
しおりを挟む
それから、数ヶ月後。
カスタリア国とドラゴンとの間に、正式に同盟が結ばれた。
そして、私とリンドヴルムはカスタリア国王との謁見に臨んでいたのである。予想外で、そして少し痛快だったのは、あのアレンというクソ野郎が、王との謁見に臨む私とリンドヴルムの事を、狐につままれたような表情で、唖然として見ていたと言う事であった。
「リンドヴルム殿、これより長きにわたり、このカスタリア国とそなたらドラゴンとの間に良好な関係が築かれることを儂は願っているぞ」
「はは、我々も同じことを願っております。そして、彼女こそ、人間とドラゴンとの友好の証となってくれるでしょう」
手を取り合うリンドヴルムと王。ここに、正式に人間とドラゴンとの同盟が結ばれたと言うわけである。その場にいた皆々も、拍手をして盛り上がった。なにせ、人間にとって、何よりも脅威だったドラゴンとの史上初の同盟なのだ。
ただ1人、アレン・カルミナを除いては。
そして、リンドヴルムとの握手を終えた王は、隣にいた私へと言葉をかけてきた。
「シャルロット・アストルフィア。そなたこそがこの同盟の架け橋。そなたには感謝の言葉以外無い。大義であった」
大義と言われてもぴんとこない。別に王国のために、リンドヴルムと結婚を決めたわけではない。彼が、彼なら信じられると、私がそう思ったからだ。
その時である。突然に、王に向かって口を開いたのは、隣にいたリンドヴルムであった。
「王様、一つ私よりお話したいことがあるのですが」
「なんだリンドヴルム殿? このカスタリア国王で聞ける話であれば、是非聞かせて頂きたい」
「これより話すは、私がどうしてシャルロットという女性に惚れたのかという話です」
「ほほっ、それは是非聞かせてもらいたいの」
リンドヴルムの提案に、笑顔を浮かべた王。そんなものを聞いたところで、何が楽しいのかは私にはわからないが、何か、リンドヴルムにも考えがありそうだし、私は何も言わずにいた。
「シャルロットは、元々この国の人間と婚約しておりました。その者の名は『アレン・カルミナ』」
リンドヴルムの言葉に、一気に周囲がざわつく。私自身、突然のリンドヴルムの話に困惑していた。そして、王はリンドヴルムに向かって話の続きを問いかけたのだ。
「カルミナか? だが、どうして婚約していたのに……」
「それは、カルミナが彼女を手にかけようとしていたからに他なりません」
更にざわつく周囲。流石にカルミナも顔色を変えて、声を荒げる。
「何を言っている! 貴様!」
「黙れカルミナ。この者は我々の同盟相手だ。そなたごときが口を出すでない」
王の一喝により、カルミナは黙りこんだ。流石のアレンという男も、王の前では大人しくなるらしい。周囲のざわつきなど全く気にする素振りもなく、リンドヴルムは更に話を続ける。
「彼はシャルロットと婚約していたのにもかかわらず、他の女性に恋をした。そして、彼にとってシャルロットが邪魔になった。だから、彼は彼女を始末しようとしたのです。それも、モンスターに襲われた様に偽造して」
王の間に呼ばれていた重臣達の目が一気にアレン・カルミナへと注がれる。冷たい視線を一身に受けたアレンは、焦ったように叫んだ。
「どこにそんな証拠があると言うんだ! 言いがかりもいい所だ!」」
その言葉を待っていたかのように、リンドヴルムは懐より一枚の紙を取り出した。それはまさしく、私を始末するという約束が記載された契約書。そこには、他でもないアレン自身のサインが乗っていたのだ。
「王よ、これを見て頂きたい」
「……これは」
アレンは、その書類が残って居るだなんて想像もしていなかったのだろう。書類を見るやいなや、血の気が引いたように顔が青ざめていく。もはや言い逃れは出来ない。
「衛兵! そやつを捕らえろ!」
王の号令の直後、鎧を着た兵士達がアレンを取り囲む。すぐに身を拘束され、地に膝をつけたアレンは、懇願するように私の方を見上げていた。
「……シャルロット!」
縋るような声を私にかけるアレン。契約が破棄された今、私とアレンはもはや、全くの他人。私が彼を助けるような理由も、義理も無いのである。それに、彼は私を殺そうとしたのだ。
それでも、彼が私の婚約者であったという事実は変わらない。彼が与えてくれた思い出だってある。楽しい思い出、そうじゃないもの、様々だけど。だからこそ、私は、彼に笑顔を向けた。
「アレン、あなたのお陰で、素敵な人と出会えたわ。本当にありがとう。私を殺そうとしてくれて!」
カスタリア国とドラゴンとの間に、正式に同盟が結ばれた。
そして、私とリンドヴルムはカスタリア国王との謁見に臨んでいたのである。予想外で、そして少し痛快だったのは、あのアレンというクソ野郎が、王との謁見に臨む私とリンドヴルムの事を、狐につままれたような表情で、唖然として見ていたと言う事であった。
「リンドヴルム殿、これより長きにわたり、このカスタリア国とそなたらドラゴンとの間に良好な関係が築かれることを儂は願っているぞ」
「はは、我々も同じことを願っております。そして、彼女こそ、人間とドラゴンとの友好の証となってくれるでしょう」
手を取り合うリンドヴルムと王。ここに、正式に人間とドラゴンとの同盟が結ばれたと言うわけである。その場にいた皆々も、拍手をして盛り上がった。なにせ、人間にとって、何よりも脅威だったドラゴンとの史上初の同盟なのだ。
ただ1人、アレン・カルミナを除いては。
そして、リンドヴルムとの握手を終えた王は、隣にいた私へと言葉をかけてきた。
「シャルロット・アストルフィア。そなたこそがこの同盟の架け橋。そなたには感謝の言葉以外無い。大義であった」
大義と言われてもぴんとこない。別に王国のために、リンドヴルムと結婚を決めたわけではない。彼が、彼なら信じられると、私がそう思ったからだ。
その時である。突然に、王に向かって口を開いたのは、隣にいたリンドヴルムであった。
「王様、一つ私よりお話したいことがあるのですが」
「なんだリンドヴルム殿? このカスタリア国王で聞ける話であれば、是非聞かせて頂きたい」
「これより話すは、私がどうしてシャルロットという女性に惚れたのかという話です」
「ほほっ、それは是非聞かせてもらいたいの」
リンドヴルムの提案に、笑顔を浮かべた王。そんなものを聞いたところで、何が楽しいのかは私にはわからないが、何か、リンドヴルムにも考えがありそうだし、私は何も言わずにいた。
「シャルロットは、元々この国の人間と婚約しておりました。その者の名は『アレン・カルミナ』」
リンドヴルムの言葉に、一気に周囲がざわつく。私自身、突然のリンドヴルムの話に困惑していた。そして、王はリンドヴルムに向かって話の続きを問いかけたのだ。
「カルミナか? だが、どうして婚約していたのに……」
「それは、カルミナが彼女を手にかけようとしていたからに他なりません」
更にざわつく周囲。流石にカルミナも顔色を変えて、声を荒げる。
「何を言っている! 貴様!」
「黙れカルミナ。この者は我々の同盟相手だ。そなたごときが口を出すでない」
王の一喝により、カルミナは黙りこんだ。流石のアレンという男も、王の前では大人しくなるらしい。周囲のざわつきなど全く気にする素振りもなく、リンドヴルムは更に話を続ける。
「彼はシャルロットと婚約していたのにもかかわらず、他の女性に恋をした。そして、彼にとってシャルロットが邪魔になった。だから、彼は彼女を始末しようとしたのです。それも、モンスターに襲われた様に偽造して」
王の間に呼ばれていた重臣達の目が一気にアレン・カルミナへと注がれる。冷たい視線を一身に受けたアレンは、焦ったように叫んだ。
「どこにそんな証拠があると言うんだ! 言いがかりもいい所だ!」」
その言葉を待っていたかのように、リンドヴルムは懐より一枚の紙を取り出した。それはまさしく、私を始末するという約束が記載された契約書。そこには、他でもないアレン自身のサインが乗っていたのだ。
「王よ、これを見て頂きたい」
「……これは」
アレンは、その書類が残って居るだなんて想像もしていなかったのだろう。書類を見るやいなや、血の気が引いたように顔が青ざめていく。もはや言い逃れは出来ない。
「衛兵! そやつを捕らえろ!」
王の号令の直後、鎧を着た兵士達がアレンを取り囲む。すぐに身を拘束され、地に膝をつけたアレンは、懇願するように私の方を見上げていた。
「……シャルロット!」
縋るような声を私にかけるアレン。契約が破棄された今、私とアレンはもはや、全くの他人。私が彼を助けるような理由も、義理も無いのである。それに、彼は私を殺そうとしたのだ。
それでも、彼が私の婚約者であったという事実は変わらない。彼が与えてくれた思い出だってある。楽しい思い出、そうじゃないもの、様々だけど。だからこそ、私は、彼に笑顔を向けた。
「アレン、あなたのお陰で、素敵な人と出会えたわ。本当にありがとう。私を殺そうとしてくれて!」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」
公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。
忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。
「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」
冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。
彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。
一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。
これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。
離婚と追放された悪役令嬢ですが、前世の農業知識で辺境の村を大改革!気づいた元夫が後悔の涙を流しても、隣国の王子様と幸せになります
黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢リセラは、夫である王子ルドルフから突然の離婚を宣告される。理由は、異世界から現れた聖女セリーナへの愛。前世が農業大学の学生だった記憶を持つリセラは、ゲームのシナリオ通り悪役令嬢として処刑される運命を回避し、慰謝料として手に入れた辺境の荒れ地で第二の人生をスタートさせる!
前世の知識を活かした農業改革で、貧しい村はみるみる豊かに。美味しい作物と加工品は評判を呼び、やがて隣国の知的な王子アレクサンダーの目にも留まる。
「君の作る未来を、そばで見ていたい」――穏やかで誠実な彼に惹かれていくリセラ。
一方、リセラを捨てた元夫は彼女の成功を耳にし、後悔の念に駆られ始めるが……?
これは、捨てられた悪役令嬢が、農業で華麗に成り上がり、真実の愛と幸せを掴む、痛快サクセス・ラブストーリー!
断罪される令嬢は、悪魔の顔を持った天使だった
Blue
恋愛
王立学園で行われる学園舞踏会。そこで意気揚々と舞台に上がり、この国の王子が声を張り上げた。
「私はここで宣言する!アリアンナ・ヴォルテーラ公爵令嬢との婚約を、この場を持って破棄する!!」
シンと静まる会場。しかし次の瞬間、予期せぬ反応が返ってきた。
アリアンナの周辺の目線で話しは進みます。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。
かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。
謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇!
※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる