無愛想な仕立て屋と、ふわふわ受付嬢 〜ぬいぐるみ仕立て屋さんの日常〜

miigumi

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【第8話:ここにいて、いいですか】

「……やっぱり、正式採用はまだ難しいそうです」

 ココは、いつものように棚を整えながら言った。
 ゼクの手が、布を折っていた途中でふと止まる。

「ギルドの受付。ちゃんとやってるつもりなんですけど……
“空気がふわっとしすぎてる”って……それって、変ですかね」

「……空気は、固いよりいい」

 ぽつりと、ゼクが言った。

 それだけなのに、ココの胸の奥がじわりとあたたかくなる。

「……でも、ここにいてもいいのかなって思っちゃう時があるんです。
ぬいぐるみも裁縫も、うまくできるわけじゃないし……」

 自分の手の中の布が、少しだけ震えた。
 ベリィが棚の上で、まるで心配するようにこちらを見ている気がした。

「私、ゼクさんの仕事、ちゃんと助けになってますか?」

 針を持っていたゼクの手が止まり、そしてそっと、布を彼女の手元に置いた。

「これ、誰が色合わせたと思ってたんだ」

 それは、今作っているぬいぐるみ服の布地だった。
 やさしいミルクティーベージュに、ココが先日選んだくすみピンクの裏地。

「……おまえの選ぶ色は、どれも“やわらかい”」

 ココは目を見開く。

 ゼクは、それ以上何も言わなかった。
 けれど、それだけで十分だった。

 ああ、私は――この場所にいて、いいんだ。

 ベリィが、そっと背筋を伸ばしたように見えた。


 その夜、ギルドの近くで他の受付見習いに会ったとき、
 ココは初めて「私、ぬいぐるみ屋も手伝ってるの」と話した。

 誇らしく、どこか胸を張って。
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