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【第17話:春を縫う】
それは、いつもと変わらない、朝から始まった。
ココが持ってきたのは、桜色のリネン布。
淡いピンクに、ところどころ白がにじんでいて、まるで花びらが染みこんだようだった。
「……こんなの見つけたんです」
ゼクは一目見て、口を開いた。
「……いいな、それ」
自分でも驚くほど自然に出た言葉だった。
•
それから、静かな作業が始まった。
ゼクは布の感触を確かめ、細い針で試し縫いをする。
ココはそばで、リボンの色をいくつも並べて悩んでいた。
「ベリィさんには、白い縁取りが似合うかな……」
「ピンクが淡い分、縁が強すぎると浮く。これは却下だ」
言いながら、ゼクはさりげなく布を差し替えた。
ココはくすっと笑って、「ですね」と頷いた。
言葉は少ないけれど、針と糸が交わるたびに、ふたりの距離が少しずつ近づいていく。
•
途中、グルルが大きな声で鳴いたせいで糸が絡まったり、
モモちゃんがリボンの上でお昼寝してしまったり、
いつも通りの“ぬいぐるみ騒動”もありつつ――
気づけば、桜のふくはほぼ形になっていた。
リボンを結び終えたとき、ココが小さく呟いた。
「……完成、ですね」
「……ああ」
ゼクは針を置き、仕立て上がった服をベリィに着せてみた。
春の光が差し込む窓辺で、
ふわりと布が揺れる。
「……桜、咲いてるみたい」
ココの言葉に、ゼクもほんの少し、口元を緩めた。
•
ココはふと、そっと言った。
「ゼクさん。……この服、展示してもいいですか?」
「……売らねぇのか」
「売りません。
これは……“今の私たち”の、記録みたいなものだから」
ゼクは少しだけ、目を細めた。
「……なら、店の真ん中に置いとけ。ベリィがモデルだ」
「ふふ。きっと、よろこびますよ」
•
その日から、“桜のふく”を着たベリィは、春の間だけ店の真ん中に座ることになった。
訪れるお客さんたちも、そのぬいぐるみに目をとめ、少し笑顔をこぼしていく。
――ふたりが静かに縫い上げた春は、確かに、そこに咲いていた。
それは、いつもと変わらない、朝から始まった。
ココが持ってきたのは、桜色のリネン布。
淡いピンクに、ところどころ白がにじんでいて、まるで花びらが染みこんだようだった。
「……こんなの見つけたんです」
ゼクは一目見て、口を開いた。
「……いいな、それ」
自分でも驚くほど自然に出た言葉だった。
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それから、静かな作業が始まった。
ゼクは布の感触を確かめ、細い針で試し縫いをする。
ココはそばで、リボンの色をいくつも並べて悩んでいた。
「ベリィさんには、白い縁取りが似合うかな……」
「ピンクが淡い分、縁が強すぎると浮く。これは却下だ」
言いながら、ゼクはさりげなく布を差し替えた。
ココはくすっと笑って、「ですね」と頷いた。
言葉は少ないけれど、針と糸が交わるたびに、ふたりの距離が少しずつ近づいていく。
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途中、グルルが大きな声で鳴いたせいで糸が絡まったり、
モモちゃんがリボンの上でお昼寝してしまったり、
いつも通りの“ぬいぐるみ騒動”もありつつ――
気づけば、桜のふくはほぼ形になっていた。
リボンを結び終えたとき、ココが小さく呟いた。
「……完成、ですね」
「……ああ」
ゼクは針を置き、仕立て上がった服をベリィに着せてみた。
春の光が差し込む窓辺で、
ふわりと布が揺れる。
「……桜、咲いてるみたい」
ココの言葉に、ゼクもほんの少し、口元を緩めた。
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ココはふと、そっと言った。
「ゼクさん。……この服、展示してもいいですか?」
「……売らねぇのか」
「売りません。
これは……“今の私たち”の、記録みたいなものだから」
ゼクは少しだけ、目を細めた。
「……なら、店の真ん中に置いとけ。ベリィがモデルだ」
「ふふ。きっと、よろこびますよ」
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その日から、“桜のふく”を着たベリィは、春の間だけ店の真ん中に座ることになった。
訪れるお客さんたちも、そのぬいぐるみに目をとめ、少し笑顔をこぼしていく。
――ふたりが静かに縫い上げた春は、確かに、そこに咲いていた。
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