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【第6話:あなたの痛みを、わかりたい】
ギルドから少し離れた厩舎(きゅうしゃ)には、小さな幻獣たちが集められていた。
その多くが、荷運びや配達に使われている働きもの。
だけど、中には体調を崩していたり、擦り傷を負った子もいた。
Luaが案内されたのは、白っぽい毛並みの小型幻獣のケアエリアだった。
怯えたように身体を縮こませている小さな獣が一匹、隅にうずくまっている。
「……怖がってる?」
「この子、最近あまりごはんを食べなくて。
飼い主NPCが交代したせいか、すっかり元気なくしてて……」
NPCの飼育員が申し訳なさそうに言った。
Luaはラテに目配せしてから、静かに近づいた。
「大丈夫……何もしないよ。怖くない」
小さく声をかけながら、そっと手を差し出す。
幻獣ははじめビクッとしたが、ラテがその隣にちょこんと座ると、少しだけ顔を上げた。
「……ラテは、こういうとき本当にすごいよね。
“だいじょうぶ”って、言葉にしなくても伝えられるんだもん」
Luaの手が幻獣の額に触れた瞬間、ぬるい光がにじんだ。
《“タッチヒール Lv.1” 発動》
《感応判定:成功》
《対象の安心度:上昇》
《食欲回復:兆しあり》
幻獣の小さな鼻先が、Luaの手のひらをくんくんと嗅ぎはじめた。
NPCの飼育員が、目を丸くする。
「……初めて見ました、この子が誰かに懐くの。あなた、幻獣に好かれる力があるんですね」
「そんな、ただ……一緒にいただけなんです」
「……それが、いちばん難しいんですよ」
Luaは、少しだけ照れくさそうに笑った。
⸻
クエスト完了報告をしてギルドを出た帰り道、
Luaはラテと並んで歩きながら、ふと思った。
「ねぇ、ラテ。……“わかってあげたい”って思ったときって、
本当は相手じゃなくて、自分が一番、誰かにわかってほしいのかもね」
ラテは、きゅうっと鳴いた。
Luaの言葉を理解したかのように、そっと彼女の手に鼻先を寄せた。
ギルドから少し離れた厩舎(きゅうしゃ)には、小さな幻獣たちが集められていた。
その多くが、荷運びや配達に使われている働きもの。
だけど、中には体調を崩していたり、擦り傷を負った子もいた。
Luaが案内されたのは、白っぽい毛並みの小型幻獣のケアエリアだった。
怯えたように身体を縮こませている小さな獣が一匹、隅にうずくまっている。
「……怖がってる?」
「この子、最近あまりごはんを食べなくて。
飼い主NPCが交代したせいか、すっかり元気なくしてて……」
NPCの飼育員が申し訳なさそうに言った。
Luaはラテに目配せしてから、静かに近づいた。
「大丈夫……何もしないよ。怖くない」
小さく声をかけながら、そっと手を差し出す。
幻獣ははじめビクッとしたが、ラテがその隣にちょこんと座ると、少しだけ顔を上げた。
「……ラテは、こういうとき本当にすごいよね。
“だいじょうぶ”って、言葉にしなくても伝えられるんだもん」
Luaの手が幻獣の額に触れた瞬間、ぬるい光がにじんだ。
《“タッチヒール Lv.1” 発動》
《感応判定:成功》
《対象の安心度:上昇》
《食欲回復:兆しあり》
幻獣の小さな鼻先が、Luaの手のひらをくんくんと嗅ぎはじめた。
NPCの飼育員が、目を丸くする。
「……初めて見ました、この子が誰かに懐くの。あなた、幻獣に好かれる力があるんですね」
「そんな、ただ……一緒にいただけなんです」
「……それが、いちばん難しいんですよ」
Luaは、少しだけ照れくさそうに笑った。
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「ねぇ、ラテ。……“わかってあげたい”って思ったときって、
本当は相手じゃなくて、自分が一番、誰かにわかってほしいのかもね」
ラテは、きゅうっと鳴いた。
Luaの言葉を理解したかのように、そっと彼女の手に鼻先を寄せた。
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