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【第39話:お礼に、キノコと卵のオムレツを】
「Lua~、今日さ……お願いがあってさ」
「……お願い?」
「うん。今日の訓練の後、ちょっとだけ肩が痛くなっててさ。
ピトンが頑張りすぎちゃって、バランス崩したときに、ドンって」
Luaはハルキの右肩をじっと見つめる。
少し赤くなっているけれど、大きな怪我ではなさそうだ。
「スキル、使ってみてくれない?」
「……え?」
「この前、あの女の子に使ったでしょ? なんか……あったかくなって、泣いちゃったって。
俺も、そういうの感じてみたくてさ」
Luaは一瞬迷った。
でも、ハルキのまっすぐな瞳に、嘘がないのがわかる。
「……わかった。でも、“治療”じゃないから……期待しすぎないで」
Luaはそっとラテを抱きかかえ、ハルキの肩に手を近づける。
「ラテ、お願い。……少し、わけてあげて」
白い光がふわりとハルキの肩を包む。
肩の痛みはじんわりと和らぎ、同時に――ハルキの表情が驚きに変わる。
「……あ。これ……なんか、胸の奥が、すごい……安心する」
ピトンが肩からLuaの腕に飛び乗って、ぴょこんと跳ねる。
Luaはふっと笑った。
「不思議な感じ……でしょ?」
「うん。……Luaのスキル、優しいんだな」
⸻
「お礼にさ、俺の家――あ、仮拠点だけど! 来ない?」
Luaは目を瞬かせる。
「……行ってもいいの?」
「キノコと卵なら、たぶんあるし。ほら、オムレツ作るって言ってたろ?
食材、貸すよ!」
⸻
小さな仮設の拠点には、木箱と布で作った簡易キッチンがある。
Luaは持参した道具を出して、手際よく料理を始めた。
「……塩は少なめ。キノコは焦げ目がつくまで炒めて……」
ハルキとピトンは隣でわいわい喋っているけれど、
Luaは料理に集中して、静かに時間が流れる。
ラテは、ピトンと一緒に足元で遊びながら時々Luaを見上げる。
そして――
「できた」
Luaの手で、ふわふわのオムレツが皿に並べられた。
「……ラテにも、味の薄いやつ、あるよ」
⸻
「……これ、めちゃくちゃうまい!!」
ハルキが目を見開いて感動の声を上げる。
Luaは目をそらしてつぶやく。
「……そっか。よかった」
ラテが「わんっ」と短く鳴いて、Luaの足元にすり寄った。
ハルキはふとLuaの横顔を見て、小さく笑った。
「やっぱLuaって、すごいよ。戦いも、料理も、癒しも。
……あんま、自分で気づいてないんだろうけどさ」
Luaは一瞬、言葉に詰まり、それでも――
「……ありがと。そう言ってくれて」
「Lua~、今日さ……お願いがあってさ」
「……お願い?」
「うん。今日の訓練の後、ちょっとだけ肩が痛くなっててさ。
ピトンが頑張りすぎちゃって、バランス崩したときに、ドンって」
Luaはハルキの右肩をじっと見つめる。
少し赤くなっているけれど、大きな怪我ではなさそうだ。
「スキル、使ってみてくれない?」
「……え?」
「この前、あの女の子に使ったでしょ? なんか……あったかくなって、泣いちゃったって。
俺も、そういうの感じてみたくてさ」
Luaは一瞬迷った。
でも、ハルキのまっすぐな瞳に、嘘がないのがわかる。
「……わかった。でも、“治療”じゃないから……期待しすぎないで」
Luaはそっとラテを抱きかかえ、ハルキの肩に手を近づける。
「ラテ、お願い。……少し、わけてあげて」
白い光がふわりとハルキの肩を包む。
肩の痛みはじんわりと和らぎ、同時に――ハルキの表情が驚きに変わる。
「……あ。これ……なんか、胸の奥が、すごい……安心する」
ピトンが肩からLuaの腕に飛び乗って、ぴょこんと跳ねる。
Luaはふっと笑った。
「不思議な感じ……でしょ?」
「うん。……Luaのスキル、優しいんだな」
⸻
「お礼にさ、俺の家――あ、仮拠点だけど! 来ない?」
Luaは目を瞬かせる。
「……行ってもいいの?」
「キノコと卵なら、たぶんあるし。ほら、オムレツ作るって言ってたろ?
食材、貸すよ!」
⸻
小さな仮設の拠点には、木箱と布で作った簡易キッチンがある。
Luaは持参した道具を出して、手際よく料理を始めた。
「……塩は少なめ。キノコは焦げ目がつくまで炒めて……」
ハルキとピトンは隣でわいわい喋っているけれど、
Luaは料理に集中して、静かに時間が流れる。
ラテは、ピトンと一緒に足元で遊びながら時々Luaを見上げる。
そして――
「できた」
Luaの手で、ふわふわのオムレツが皿に並べられた。
「……ラテにも、味の薄いやつ、あるよ」
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「……これ、めちゃくちゃうまい!!」
ハルキが目を見開いて感動の声を上げる。
Luaは目をそらしてつぶやく。
「……そっか。よかった」
ラテが「わんっ」と短く鳴いて、Luaの足元にすり寄った。
ハルキはふとLuaの横顔を見て、小さく笑った。
「やっぱLuaって、すごいよ。戦いも、料理も、癒しも。
……あんま、自分で気づいてないんだろうけどさ」
Luaは一瞬、言葉に詰まり、それでも――
「……ありがと。そう言ってくれて」
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