断罪された悪役令嬢は騎士に救われ、闇を越えて再び咲く

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【第20章】「揺れる心、閉ざされた瞳（セイラン視点）」

　マリマンヌの泣き顔を見るたびに、胸が痛んだ。

　けれどそれは、かつてレイシアが何も言わずに傷ついていたあの姿にも似ていた。

　──どうして、俺は気づかなかったのだろう。

「セイラン様、聞いてください！　レイシアさんが、また……！」

　怯えた顔、袖を掴む小さな手、ふるえる声。

　でも、その声が――どこか作られたもののように、最近は聞こえるようになっていた。

　クラウスがレイシアをかばうように接している姿も、目障りだと感じながらも否定しきれない。

　自分が「守る」と言った相手に、あのまま冷たくしてよかったのか？

（……あのとき、俺が傍にいたら──）

　悔やんでも遅い。
　それでも、ほんの少しの罪悪感が胸に巣食い始めていた。

　自分は何も見ようとしなかっただけなのかもしれない。
　マリマンヌの可愛らしさに、甘える声に、守らなければと錯覚していただけかもしれない。

　けれど──そんな弱さも、貴族としての責任も、重く圧し掛かる。

　どちらが正しいのか。
　どちらが嘘をついているのか。
　なぜ自分は、こうも迷ってしまうのか。

（本当に……俺が隣に立つべきは、誰だった？）