断罪された悪役令嬢は騎士に救われ、闇を越えて再び咲く

miigumi

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静かなる余韻と、恋のはじまり

断罪から数日が過ぎ、学園はようやく日常を取り戻しつつあった。

レイシアは祖父のもとで公爵令嬢としての学びを再開しながら、学園にも引き続き通っていた。
これまでの誤解や疑念は少しずつ解け、彼女のまわりには、あたたかな空気が戻りつつあった。

しかし、レイシアはまだ戸惑っていた。

(……私は、本当に守られたんだろうか?)

教室の窓際で、風に揺れる金の髪を梳きながら、ふと彼の姿を思い出す。

「クラウス…さん…」

彼は、いつもそっと手を差し伸べてくれた。
追い詰められたあの夜、誰よりも強く、誰よりも優しく、彼女の名を呼んだのは――彼だった。

けれど、レイシアの心にはまだ“恋”という感情がはっきりとは形を成していなかった。
彼は「他国の騎士」であり、どこか別世界の人のように思っていたから。

***

そんな彼女の前に、今日もまたクラウスが現れる。

「体調はどうだ? 最近は少し、眠れているか?」

「はい。……あなたのおかげで」

「それは違う。君が自分の足で立ったからだ、レイシア」

優しい声に、胸がきゅうと鳴った。
(どうして…この人の言葉は、こんなに響くんだろう?)

「君は誇り高く、美しい。それを知っている人は、必ず君の味方になる」

その言葉に照れくさくなって、レイシアは俯いた。
彼の目を、まっすぐに見返せなかった。

(こんなふうに、誰かを意識するのは初めて)

だけど、まだそれが“恋”だと、レイシアは気づいていなかった。

***

夜。バルコニーに出たレイシアは、空を見上げる。

月の光に照らされたその姿を、クラウスは遠くから見ていた。
彼は一言だけ、誰にも届かぬように、そっと呟く。

「……好きだよ、レイシア」

その声は、風に溶けて夜空へ消えていった。
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