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2章
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■第12話『おやつ市前夜と、優しい準備たち』
*
「――あっ、やばっ……プリン、焦げた!」
ぷしゅう、と鍋から立ち上る蒸気。
リィナは慌てて火を止めながら、オーブンの中の様子をのぞき込んだ。
「うぅ……今日に限って、火が強すぎた……」
「ぴぴ……」
ピノが隣で、心配そうに目を細めて見上げてくる。
その視線が優しすぎて、かえって申し訳ない気持ちになる。
「だ、大丈夫。これは試作用……“予備の予備”ってことで……」
おやつ市を明日に控え、リィナのキッチンは戦場のようになっていた。
プリンの材料、ゼリー用の果汁、瓶のリボン巻き……
どれも「少しだけの数」しか作ったことがないから、すべてが手探りだった。
*
「ピノ屋さん、大丈夫そうかい?」
昼頃、パン屋のおじいさんが様子を見に来てくれた。
続いて、八百屋のマルシェさんも、雑貨屋のマダムも、次々と顔を出してくれる。
「応援してるよ。町の誇りになるかもね、プリンとゼリー」
「……そんな、大げさな……!」
「でも事実でしょ? ほら、これ差し入れ。試食用にどうぞ」
みんなが差し出してくれた野菜や果物、使いかけの包材、ちょっとした道具。
そのどれもが、リィナの胸をあたたかくした。
「ありがとうございます……! 本当に、ありがとうございます……!」
「ぴっ!」
ピノが勢いよく羽ばたいて、お礼を代弁する。
誰にも頼らず、目立たずに生きていこうと思っていた。
でも今は、少しだけ頼ってもいいと思える。
それが、こんなにも心を軽くするなんて――
前の人生では、知らなかった。
*
夕方、外の風が少しひんやりしてきた頃。
扉をノックする、静かな音。
「……レオさん」
「こんばんは。準備、順調ですか?」
「いちおう……焦げちゃった分を除けば……」
「ふふ。プリンを焦がす人に初めて会いました」
「……うっ」
レオは控えめに笑いながら、店の奥に視線を向ける。
「明日は、たくさんの人が来るでしょう。……緊張してますか?」
「……はい。ちょっとだけ、こわいです」
「大丈夫ですよ。あなたは――ちゃんと、“伝わる味”を作れる人ですから」
優しいその声に、胸の奥がぎゅっとあたたかくなる。
リィナはうなずきながら、そっとつぶやいた。
「……レオさんって、なんでそんなに優しいんですか?」
「……さあ、なんででしょう」
その言葉のあと、レオはふと真剣な顔になり、低く一言だけ残す。
「明日、何かあっても、慌てないでください」
「……え?」
「何か」とは、何?
問いかける前に、レオはいつものように静かに去っていった。
*
夜、ピノと並んで座りながら、リィナは言った。
「なんか、ドキドキしてきたね。……でも、がんばってみる」
ピノがそっと肩にもたれる。小さな体は、あたたかい。
「わたしは、“モブ”だけど。……でも、この味だけは、私のものだから」
そう言って、リィナは眠る前の小さな決意を心に刻んだ。
――夜が明ければ、おやつ市が始まる。
*
「――あっ、やばっ……プリン、焦げた!」
ぷしゅう、と鍋から立ち上る蒸気。
リィナは慌てて火を止めながら、オーブンの中の様子をのぞき込んだ。
「うぅ……今日に限って、火が強すぎた……」
「ぴぴ……」
ピノが隣で、心配そうに目を細めて見上げてくる。
その視線が優しすぎて、かえって申し訳ない気持ちになる。
「だ、大丈夫。これは試作用……“予備の予備”ってことで……」
おやつ市を明日に控え、リィナのキッチンは戦場のようになっていた。
プリンの材料、ゼリー用の果汁、瓶のリボン巻き……
どれも「少しだけの数」しか作ったことがないから、すべてが手探りだった。
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「ピノ屋さん、大丈夫そうかい?」
昼頃、パン屋のおじいさんが様子を見に来てくれた。
続いて、八百屋のマルシェさんも、雑貨屋のマダムも、次々と顔を出してくれる。
「応援してるよ。町の誇りになるかもね、プリンとゼリー」
「……そんな、大げさな……!」
「でも事実でしょ? ほら、これ差し入れ。試食用にどうぞ」
みんなが差し出してくれた野菜や果物、使いかけの包材、ちょっとした道具。
そのどれもが、リィナの胸をあたたかくした。
「ありがとうございます……! 本当に、ありがとうございます……!」
「ぴっ!」
ピノが勢いよく羽ばたいて、お礼を代弁する。
誰にも頼らず、目立たずに生きていこうと思っていた。
でも今は、少しだけ頼ってもいいと思える。
それが、こんなにも心を軽くするなんて――
前の人生では、知らなかった。
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夕方、外の風が少しひんやりしてきた頃。
扉をノックする、静かな音。
「……レオさん」
「こんばんは。準備、順調ですか?」
「いちおう……焦げちゃった分を除けば……」
「ふふ。プリンを焦がす人に初めて会いました」
「……うっ」
レオは控えめに笑いながら、店の奥に視線を向ける。
「明日は、たくさんの人が来るでしょう。……緊張してますか?」
「……はい。ちょっとだけ、こわいです」
「大丈夫ですよ。あなたは――ちゃんと、“伝わる味”を作れる人ですから」
優しいその声に、胸の奥がぎゅっとあたたかくなる。
リィナはうなずきながら、そっとつぶやいた。
「……レオさんって、なんでそんなに優しいんですか?」
「……さあ、なんででしょう」
その言葉のあと、レオはふと真剣な顔になり、低く一言だけ残す。
「明日、何かあっても、慌てないでください」
「……え?」
「何か」とは、何?
問いかける前に、レオはいつものように静かに去っていった。
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夜、ピノと並んで座りながら、リィナは言った。
「なんか、ドキドキしてきたね。……でも、がんばってみる」
ピノがそっと肩にもたれる。小さな体は、あたたかい。
「わたしは、“モブ”だけど。……でも、この味だけは、私のものだから」
そう言って、リィナは眠る前の小さな決意を心に刻んだ。
――夜が明ければ、おやつ市が始まる。
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