86 / 146
9章
11
しおりを挟む
第85話『まあるい空気、まあるい一歩』
*
王都・しろくま通り仮店舗、プレオープン初日。
「ぴぴぴぃぃ! 開店準備完了ぉぉ! 氷はよし! カップはよし! 弟子は?」
「はいっ! セリル、準備万端ですっ!! 今日は氷の“気配”が…あっ、違いました! 店長のオーラです!」
「ぴ(このテンション、事故の匂いがする……)」
店先ではモルが絵本を並べ、ユルは「まあるい音の場所」でカップを整えていた。
リィナは奥で最後の確認。
「緊張してる……けど、行こう。“おかえり”って言えるお店にしよう」
*
開店直後、王都の人々は遠巻きに見ていた。
「これが噂の“共存モデル”か…」
「でも…魔物が店に立ってるなんて、大丈夫なの?」
少しざわついた空気が流れた――そのとき。
「ぴ(おれの出番)」
ピノが氷をくるくると舞わせて、透明なジェラートカップに淡い色の氷花を咲かせる。
「ぴぴ、“まあるいアイス”、ご試食いかが?」
まるくて淡い、魔法のジェラート。
一人の子どもが、勇気を出して受け取った。
「……おいしい! ひんやりして、ふわふわしてる!」
その一言に、周囲の空気が、すっと和らいだ。
*
一方、セリルは気合いを入れすぎて試食トレーをひっくり返し――
「うわあああ!? ジェラートがぁぁぁっ!!」
「……おとした?」
「すみませんユルさん! 修行が足りませんでした!!」
ユルは静かにしゃがんで、落ちたカップの破片を片づけながら言った。
「……失敗は、“まあるい日”の途中にあるもの。つぎ、きをつければいい」
「……ユルさん…はいっ、気をつけます!」
近くにいた王都の婦人が、微笑んだ。
「“まあるい日”…ふふ、いい言葉ね」
*
午後には、店の空気はすっかりほぐれ、
リィナのクッキーセットは「甘くて懐かしい」と大評判に。
そして、王都評議員のひとりがふと呟いた。
「まるで、ひとつの小さな町が、ここに移ってきたみたいだ」
リィナはその言葉を聞いて、胸がじんわりと温かくなる。
(そうだ。わたしたち、町を“そのまま”運んできたんだ)
*
王都・しろくま通り仮店舗、プレオープン初日。
「ぴぴぴぃぃ! 開店準備完了ぉぉ! 氷はよし! カップはよし! 弟子は?」
「はいっ! セリル、準備万端ですっ!! 今日は氷の“気配”が…あっ、違いました! 店長のオーラです!」
「ぴ(このテンション、事故の匂いがする……)」
店先ではモルが絵本を並べ、ユルは「まあるい音の場所」でカップを整えていた。
リィナは奥で最後の確認。
「緊張してる……けど、行こう。“おかえり”って言えるお店にしよう」
*
開店直後、王都の人々は遠巻きに見ていた。
「これが噂の“共存モデル”か…」
「でも…魔物が店に立ってるなんて、大丈夫なの?」
少しざわついた空気が流れた――そのとき。
「ぴ(おれの出番)」
ピノが氷をくるくると舞わせて、透明なジェラートカップに淡い色の氷花を咲かせる。
「ぴぴ、“まあるいアイス”、ご試食いかが?」
まるくて淡い、魔法のジェラート。
一人の子どもが、勇気を出して受け取った。
「……おいしい! ひんやりして、ふわふわしてる!」
その一言に、周囲の空気が、すっと和らいだ。
*
一方、セリルは気合いを入れすぎて試食トレーをひっくり返し――
「うわあああ!? ジェラートがぁぁぁっ!!」
「……おとした?」
「すみませんユルさん! 修行が足りませんでした!!」
ユルは静かにしゃがんで、落ちたカップの破片を片づけながら言った。
「……失敗は、“まあるい日”の途中にあるもの。つぎ、きをつければいい」
「……ユルさん…はいっ、気をつけます!」
近くにいた王都の婦人が、微笑んだ。
「“まあるい日”…ふふ、いい言葉ね」
*
午後には、店の空気はすっかりほぐれ、
リィナのクッキーセットは「甘くて懐かしい」と大評判に。
そして、王都評議員のひとりがふと呟いた。
「まるで、ひとつの小さな町が、ここに移ってきたみたいだ」
リィナはその言葉を聞いて、胸がじんわりと温かくなる。
(そうだ。わたしたち、町を“そのまま”運んできたんだ)
21
あなたにおすすめの小説
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
【完結】没落令嬢、異世界で紅茶店を開くことにいたしました〜香りと静寂と癒しの一杯をあなたに〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
夜会で父が失脚し、家は没落。屋敷の裏階段で滑り落ち、気づけば異世界――。
王国貴族だったアナスタシアが転移先で授かったのは、“極上調合”という紅茶とハーブのスキルだった。
戦う気はございませんの。復讐もざまぁも、疲れますわ。
彼女が選んだのは、湖畔の古びた小屋で静かにお茶を淹れること。
奇跡の一杯は病を癒やし、呪いを祓い、魔力を整える力を持つが、
彼女は誰にも媚びず、ただ静けさの中で湯気を楽しむのみ。
「お代は結構ですわ。……代わりに花と静寂を置いていってくださる?」
騎士も王女も英雄も訪れるが、彼女は気まぐれに一杯を淹れるだけ。
これは、香草と紅茶に囲まれた元令嬢の、優雅で自由な異世界スローライフ。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ
蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。
とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。
どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。
など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。
そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか?
毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~
夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力!
絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。
最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り!
追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?
【完結】パパ、私は犯人じゃないよ ~処刑予定の私、冷徹公爵(パパ)に溺愛されるまで~
チャビューヘ
ファンタジー
※タイトル変更しました。
「掃除(処分)しろ」と私を捨てた冷徹な父。生き残るために「心を無」にして媚びを売ったら。
「……お前の声だけが、うるさくない」
心の声が聞こえるパパと、それを知らずに生存戦略を練る娘の物語。
-----
感想送っていただいている皆様へ
たくさんの嬉しい言葉や厳しい意見も届いており一つ一つがすごく嬉しいのと頑張ろうと感じています。ご意見を元に修正必要な部分は随時更新していきます。
成長のため感想欄を閉じませんが公開はする予定ありません。ですが必ず全て目を通しています。拙作にお時間を頂きありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる