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1章
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◆第9話 「推しがうろたえるなんて聞いてない」
「……来たのか」
店の裏手。
陽が落ちかけた森の中、ヴァル――シュヴァルツは、木にもたれかかるように立っていた。
その前に、静かに現れる黒い影。
金色の目が月明かりにきらりと光る。
「見たぞ。あの“ラテプレート”とやら。非常に、気に入った」
「……それは、よかったな」
「次はスープも頼むことにする。あと、あのプリン……“モフモフ”と言っていたか?」
「その名称は勘弁してほしい」
「ふん……貴様があの娘に、ここまで執着するとはな。愉快だ」
ディアボロスは肩をすくめ、にやりと笑う。
「推されている自覚はあるのか?」
「……やめろ」
「顔が赤いぞ、シュヴァルツ」
「黙れ」
* * *
「ヴァルさん、今日はこれ、よかったらどうぞ!」
営業終わり、厨房で余ったラテプレートのミニ版を、私はヴァルにそっと差し出した。
「えっ……?」
「ほら、こっそり推してる人が来てくれると、サービスしたくなっちゃうじゃないですか~」
「……推している、とは……?」
「え? あ、そ、そういう意味じゃなくてですね、えーと……」
「推しとは、具体的には?」
しまった!
顔が真剣すぎる。目がめちゃくちゃ真っ赤で真剣すぎる!
「あ、その……見るだけで嬉しい存在とか……癒しとか……」
「……私は、癒しか?」
「はい、もう、なんか存在が静かで癒しで……落ち着くというか……その、すごくありがたいんです!」
しまった。言いすぎた。
ヴァルさんの目が、明らかに固まってる。なんならスプーンを握る手も少し震えてる。
「……それは」
「え? え? だめでした!?」
「いや……嬉しい」
そのひと言のあと、ラテが足元で「もふ」とため息のように鳴いた。
私はというと――
(推しに感謝された……やばい……尊い……)
脳内で鐘が鳴っていた。
「……来たのか」
店の裏手。
陽が落ちかけた森の中、ヴァル――シュヴァルツは、木にもたれかかるように立っていた。
その前に、静かに現れる黒い影。
金色の目が月明かりにきらりと光る。
「見たぞ。あの“ラテプレート”とやら。非常に、気に入った」
「……それは、よかったな」
「次はスープも頼むことにする。あと、あのプリン……“モフモフ”と言っていたか?」
「その名称は勘弁してほしい」
「ふん……貴様があの娘に、ここまで執着するとはな。愉快だ」
ディアボロスは肩をすくめ、にやりと笑う。
「推されている自覚はあるのか?」
「……やめろ」
「顔が赤いぞ、シュヴァルツ」
「黙れ」
* * *
「ヴァルさん、今日はこれ、よかったらどうぞ!」
営業終わり、厨房で余ったラテプレートのミニ版を、私はヴァルにそっと差し出した。
「えっ……?」
「ほら、こっそり推してる人が来てくれると、サービスしたくなっちゃうじゃないですか~」
「……推している、とは……?」
「え? あ、そ、そういう意味じゃなくてですね、えーと……」
「推しとは、具体的には?」
しまった!
顔が真剣すぎる。目がめちゃくちゃ真っ赤で真剣すぎる!
「あ、その……見るだけで嬉しい存在とか……癒しとか……」
「……私は、癒しか?」
「はい、もう、なんか存在が静かで癒しで……落ち着くというか……その、すごくありがたいんです!」
しまった。言いすぎた。
ヴァルさんの目が、明らかに固まってる。なんならスプーンを握る手も少し震えてる。
「……それは」
「え? え? だめでした!?」
「いや……嬉しい」
そのひと言のあと、ラテが足元で「もふ」とため息のように鳴いた。
私はというと――
(推しに感謝された……やばい……尊い……)
脳内で鐘が鳴っていた。
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