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2章
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◆第63話 「もう、手段は選ばない」
「……結界?」
カリスは椅子から立ち上がった。報告を受けたのは、町に潜入させていた密偵からだった。
「それは、魔族の気配か?」
「はい、確認されました。非常に精巧なもので……しかも、結界内の人物に“悪意”がなければ影響はないようです」
「つまり、“直接的な排除”ができなくなったということだな」
カリスの唇が歪む。
背後では、静かに控える騎士団の一人――かつて、店でごはんを食べ、心を揺らしたレオンの姿もあった。
だが、彼は黙っていた。
カリスの背中を、じっと見つめるだけ。
「ならば、もう別の手段に出るしかない」
カリスの手が机の上の布をめくる。そこに置かれていたのは、赤黒く光る**“封印札”**。
「“王命”の名のもとに、あの女を『違法魔族協力者』として拘束する。
魔族の加護を受けた人間は、“交渉の余地なく排除する”と定められている――な?」
「……法の運用次第ではあります」
「違う。“使いどころ”次第だ」
カリスの目が、どこまでも冷たい。
「このまま、魔族と馴れ合うなど、許されるはずがない」
それは、理屈ではなかった。
ただの「憎しみ」だった。
魔族に父を殺され、母が姿を消した。
カリスにとって魔族は、“災厄”以外の何者でもない。
あの女が、笑って魔族と料理を囲む姿が、何より癪だった。
「……準備しろ。“王都より預かった切り札”、使わせてもらう」
「……かしこまりました」
静かに命令が下り、部隊が動き始める。
その最前には、かつてミレイアの料理で涙を流した騎士――レオンもいた。
だがその瞳には、かすかに揺れる色が宿っていた。
「……本当に、これでいいのか……?」
誰にも届かない、小さな呟きが、風に消えた。
「……結界?」
カリスは椅子から立ち上がった。報告を受けたのは、町に潜入させていた密偵からだった。
「それは、魔族の気配か?」
「はい、確認されました。非常に精巧なもので……しかも、結界内の人物に“悪意”がなければ影響はないようです」
「つまり、“直接的な排除”ができなくなったということだな」
カリスの唇が歪む。
背後では、静かに控える騎士団の一人――かつて、店でごはんを食べ、心を揺らしたレオンの姿もあった。
だが、彼は黙っていた。
カリスの背中を、じっと見つめるだけ。
「ならば、もう別の手段に出るしかない」
カリスの手が机の上の布をめくる。そこに置かれていたのは、赤黒く光る**“封印札”**。
「“王命”の名のもとに、あの女を『違法魔族協力者』として拘束する。
魔族の加護を受けた人間は、“交渉の余地なく排除する”と定められている――な?」
「……法の運用次第ではあります」
「違う。“使いどころ”次第だ」
カリスの目が、どこまでも冷たい。
「このまま、魔族と馴れ合うなど、許されるはずがない」
それは、理屈ではなかった。
ただの「憎しみ」だった。
魔族に父を殺され、母が姿を消した。
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あの女が、笑って魔族と料理を囲む姿が、何より癪だった。
「……準備しろ。“王都より預かった切り札”、使わせてもらう」
「……かしこまりました」
静かに命令が下り、部隊が動き始める。
その最前には、かつてミレイアの料理で涙を流した騎士――レオンもいた。
だがその瞳には、かすかに揺れる色が宿っていた。
「……本当に、これでいいのか……?」
誰にも届かない、小さな呟きが、風に消えた。
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