5 / 40
第2章
第1話
しおりを挟む
今朝はいつもより少し早めに起きて、丁寧に髪を櫛で解く。
短いおかっぱの黒髪だなんて、自分はなんでこんな流行らないダサい髪型してるんだろうって、今さらながらそんなことを思ってる。
今まで気にしたこともなかったのに。
昨晩はお風呂にしっかり入って念入りに体も髪も洗ったから、変な臭いとかもしてないはず。
これならもし、うっかり隣に並ぶことになっても大丈夫。
スマホ画面の中にある、彼のアイコンを眺めている。
クラスで作ったグループだから、ここから個別にメッセージを送ることも可能だ。
なんか送ってみちゃおうかな。
なんて送ろう。
いきなり送ったら変に思われないかな。
「おはよう」のスタンプくらいだったら大丈夫?
やっぱいきなりはダメ?
送りたくても送れないで悩み続ける指先は、なんども打ち込んだ文字と削除と送信ボタンの上を彷徨っている。
彼に関する情報をどれだけ持っているのか、自分の記憶を呼び起こした。
もっとちゃんと、みんなの話を聞いておけばよかった。
彼はどの電車に乗って来るんだったっけ。
電車通学なのは知ってたし、出身中学も聞いたことはある。
だけど、聞いたことは覚えていても内容までちゃんと覚えていなかった。
バカだな私って。
いっつもそう。
校舎から入ってすぐの、靴箱のところで待ち伏せしようかな。
それなら待ち伏せされてたなって、バレない?
ストーカーだとかは絶対に思われたくないから、もうちょっと別の場所にしようかな。
廊下の途中とか、教室の前とか。
だけどそれでも、知らない人から見たら完全にヤバい奴だよね、私。
無理無理。やっぱ大人しく教室に入ろう。
そしたら絶対会えるし。
同じクラスって幸せ。
彼が教室入って来たら、すれ違うフリして「おはよう」って言えばいいんだ。
クラスメイトだし、それくらいは許されるよね。
大人しく教室に入って、自分の席につく。
彼の席は私から3列廊下寄りの2段前にあった。
こんなに離れてたっけ?
初めてちゃんと確認した気がする。
ということは、彼が来たらぐるっと回って前方の入り口から外に出れば、すれ違うことが出来るよね。
教室入る時も、絶対に前から入ろう。
彼の横を通るようにしよう。
そうしよう。
早めに学校に来たところで実際することはなんにもなくて、スマホで撮った英単語小テストの出題範囲単語を見ているフリして、じっと彼が来るのを待っている。
朝の時間って、こんなにゆっくりだったっけ。
いつもなら登校した瞬間すぐに始まるホームルームも、まだ始まらないし、彼もやってこない。
当然単語は頭に入らない。
そういえばスマホゲームのログインボーナス、今日の分まだもらってなかったな。
ゲームアプリを立ち上げ、あっという間にデイリーミッションもクリアしてしまった。
本気でやることがなくなってからようやく、彼が教室に入って来た。
やっと来た。
何度も何度も頭の中でシミュレーションした通り、ゆっくりとさりげなく立ち上がる……つもりだったのに、ガタンと椅子が不自然に大きな音をたてた。
失敗した。
だけど彼が自分の席に着くまでに、絶対にすれ違いたい。
違和感を持たれないよう一旦教室後ろのロッカー前まで下がると、早足で彼の机が並ぶ列に入る。
急がないと彼の方が先に着席してしまう。
途中他の男子とガツンと肩がぶつかって、「イテーよ」とか言われたけど、そんなこと気にしている場合じゃない。
「ゴメン」とちゃんと謝っておいたから今は許して。それどころじゃない。
「おはよ」
「え? あ、あぁ。おはよ……」
緊張していたうえに急いだせいか、息は切れてるし随分低い声になってしまったけど、返事を返してくれた。
うれしい。
恥ずかしさにそのまま廊下へ飛び出し、ようやくホッと立ち止まる。
一呼吸置いてから、こっそり後ろの扉から教室に戻った。
本当は前の入り口から入って様子を確認したかったけど、さすがにワザとらしいので今回ばかりは後ろの入り口から入る。
彼はいつもの仲良し男子グループと一緒になっていた。
白いシャツに大きな背が笑っている。
いつか私も、その輪の中に入っていけたらいいのにな。
「どした美羽音。なんかの発作?」
絢奈が一仕事終えた私を、怪訝な顔つきでのぞき込む。
「何が?」
「急に凄い勢いで教室出て行ったと思ったら、すぐに戻ってきたから」
「……。あぁ、トイレ行こうかと思ったけど、そうでもなかっただけ」
「お腹痛い?」
「……と、思ったけど、速攻で治った」
授業中に目が合った回数とか、休み時間にすれ違った回数を指折り数えている。
自分から話しかけられたのは、朝の「おはよう」の一回だけ。
普段は全く接点のない人だから、どう話しかけていいのか分からない。
どう近づいていいのかも分からない。
せっかく同じクラスになれたのに。
なんでこれまで話しかけたりしていなかったんだろう。
こんなカッコいい人がこの世にいただなんて、気づけただけでよかった。
ちょっと遅かったもだけど、まぁいいです。
同じクラスにしてくれて、本当に神さまありがとう。
もう一生神さまの悪口なんていいません。
4時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。
待望の昼休みだ。
私と絢奈は、いつも教室で二人でご飯食べてるけど、坂下くんはどうしてるんだろ。
二年生になってからの一ヶ月半、どうしてそんなことすら気にならなかったんだろう。
もうこんなチャンスはないかもしれないのに、どうしてこんな大切なこと、今まで知ろうともしなかった?
いつもならすぐにお弁当箱を持って絢奈のところに行くのに、今日は教科書を片付けるフリをしながら彼の様子をじっとうかがっている。
隣の席の女の子と、チラッとなにかしゃべったみたいだけど、まぁそこは大丈夫。
彼が誰とでも仲良く気さくに話せる人だっていう証拠。
彼は机の上のシャーペンを筆箱に片付け始めた。
メタリックブルーのきれいなシャーペン。
どこのメーカーだろう。
今度そこもチェックしておかないと。
彼の所に、いつも一緒にいる男子二人がやって来た。
あの二人の名前、何だったっけ。
それくらいは今度覚えておこう。
いつも三人でご飯食べていたのか。
彼らは坂下くんの机を中心に、お昼のセッティングを始めた。
あの二人ともお友達になっておけば、接触の機会が増えるかもしれないよね。
ことわざにもあるじゃない、将を射んとする者はまず馬を射よみたいな感じ?
ガタガタと移動を終えた彼と、ふと目があった。
今日はこれで6回目。
ちょっと多くない?
休み時間ごとに見てたら、そのたびに彼と目が合った。
もしかして向こうも気にしてこっち見てんのかな。
やった。
また目が合ったと思った瞬間、彼がフッと笑った。
「え?」
気のせいかと思ったけど、絶対気のせいなんかじゃない。
確実に笑ってる。
すぐに前を向いて友達男子と笑いながら何かしゃべってるけど、本気で私を見て微笑んだ。
間違いない!
「美羽音。なにやってんの?」
いつまでも動かない私の所へ、絢奈の方からやって来た。
「ね、いま坂下くんと目が合ったの! そしたらね、私を見て笑ってくれたの!」
「は? なんかバカにされた? ケンカでも売られたの?」
彼女は腕を組むとチッと舌打ちし、イラっとした表情で彼らをにらみつける。
短いおかっぱの黒髪だなんて、自分はなんでこんな流行らないダサい髪型してるんだろうって、今さらながらそんなことを思ってる。
今まで気にしたこともなかったのに。
昨晩はお風呂にしっかり入って念入りに体も髪も洗ったから、変な臭いとかもしてないはず。
これならもし、うっかり隣に並ぶことになっても大丈夫。
スマホ画面の中にある、彼のアイコンを眺めている。
クラスで作ったグループだから、ここから個別にメッセージを送ることも可能だ。
なんか送ってみちゃおうかな。
なんて送ろう。
いきなり送ったら変に思われないかな。
「おはよう」のスタンプくらいだったら大丈夫?
やっぱいきなりはダメ?
送りたくても送れないで悩み続ける指先は、なんども打ち込んだ文字と削除と送信ボタンの上を彷徨っている。
彼に関する情報をどれだけ持っているのか、自分の記憶を呼び起こした。
もっとちゃんと、みんなの話を聞いておけばよかった。
彼はどの電車に乗って来るんだったっけ。
電車通学なのは知ってたし、出身中学も聞いたことはある。
だけど、聞いたことは覚えていても内容までちゃんと覚えていなかった。
バカだな私って。
いっつもそう。
校舎から入ってすぐの、靴箱のところで待ち伏せしようかな。
それなら待ち伏せされてたなって、バレない?
ストーカーだとかは絶対に思われたくないから、もうちょっと別の場所にしようかな。
廊下の途中とか、教室の前とか。
だけどそれでも、知らない人から見たら完全にヤバい奴だよね、私。
無理無理。やっぱ大人しく教室に入ろう。
そしたら絶対会えるし。
同じクラスって幸せ。
彼が教室入って来たら、すれ違うフリして「おはよう」って言えばいいんだ。
クラスメイトだし、それくらいは許されるよね。
大人しく教室に入って、自分の席につく。
彼の席は私から3列廊下寄りの2段前にあった。
こんなに離れてたっけ?
初めてちゃんと確認した気がする。
ということは、彼が来たらぐるっと回って前方の入り口から外に出れば、すれ違うことが出来るよね。
教室入る時も、絶対に前から入ろう。
彼の横を通るようにしよう。
そうしよう。
早めに学校に来たところで実際することはなんにもなくて、スマホで撮った英単語小テストの出題範囲単語を見ているフリして、じっと彼が来るのを待っている。
朝の時間って、こんなにゆっくりだったっけ。
いつもなら登校した瞬間すぐに始まるホームルームも、まだ始まらないし、彼もやってこない。
当然単語は頭に入らない。
そういえばスマホゲームのログインボーナス、今日の分まだもらってなかったな。
ゲームアプリを立ち上げ、あっという間にデイリーミッションもクリアしてしまった。
本気でやることがなくなってからようやく、彼が教室に入って来た。
やっと来た。
何度も何度も頭の中でシミュレーションした通り、ゆっくりとさりげなく立ち上がる……つもりだったのに、ガタンと椅子が不自然に大きな音をたてた。
失敗した。
だけど彼が自分の席に着くまでに、絶対にすれ違いたい。
違和感を持たれないよう一旦教室後ろのロッカー前まで下がると、早足で彼の机が並ぶ列に入る。
急がないと彼の方が先に着席してしまう。
途中他の男子とガツンと肩がぶつかって、「イテーよ」とか言われたけど、そんなこと気にしている場合じゃない。
「ゴメン」とちゃんと謝っておいたから今は許して。それどころじゃない。
「おはよ」
「え? あ、あぁ。おはよ……」
緊張していたうえに急いだせいか、息は切れてるし随分低い声になってしまったけど、返事を返してくれた。
うれしい。
恥ずかしさにそのまま廊下へ飛び出し、ようやくホッと立ち止まる。
一呼吸置いてから、こっそり後ろの扉から教室に戻った。
本当は前の入り口から入って様子を確認したかったけど、さすがにワザとらしいので今回ばかりは後ろの入り口から入る。
彼はいつもの仲良し男子グループと一緒になっていた。
白いシャツに大きな背が笑っている。
いつか私も、その輪の中に入っていけたらいいのにな。
「どした美羽音。なんかの発作?」
絢奈が一仕事終えた私を、怪訝な顔つきでのぞき込む。
「何が?」
「急に凄い勢いで教室出て行ったと思ったら、すぐに戻ってきたから」
「……。あぁ、トイレ行こうかと思ったけど、そうでもなかっただけ」
「お腹痛い?」
「……と、思ったけど、速攻で治った」
授業中に目が合った回数とか、休み時間にすれ違った回数を指折り数えている。
自分から話しかけられたのは、朝の「おはよう」の一回だけ。
普段は全く接点のない人だから、どう話しかけていいのか分からない。
どう近づいていいのかも分からない。
せっかく同じクラスになれたのに。
なんでこれまで話しかけたりしていなかったんだろう。
こんなカッコいい人がこの世にいただなんて、気づけただけでよかった。
ちょっと遅かったもだけど、まぁいいです。
同じクラスにしてくれて、本当に神さまありがとう。
もう一生神さまの悪口なんていいません。
4時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。
待望の昼休みだ。
私と絢奈は、いつも教室で二人でご飯食べてるけど、坂下くんはどうしてるんだろ。
二年生になってからの一ヶ月半、どうしてそんなことすら気にならなかったんだろう。
もうこんなチャンスはないかもしれないのに、どうしてこんな大切なこと、今まで知ろうともしなかった?
いつもならすぐにお弁当箱を持って絢奈のところに行くのに、今日は教科書を片付けるフリをしながら彼の様子をじっとうかがっている。
隣の席の女の子と、チラッとなにかしゃべったみたいだけど、まぁそこは大丈夫。
彼が誰とでも仲良く気さくに話せる人だっていう証拠。
彼は机の上のシャーペンを筆箱に片付け始めた。
メタリックブルーのきれいなシャーペン。
どこのメーカーだろう。
今度そこもチェックしておかないと。
彼の所に、いつも一緒にいる男子二人がやって来た。
あの二人の名前、何だったっけ。
それくらいは今度覚えておこう。
いつも三人でご飯食べていたのか。
彼らは坂下くんの机を中心に、お昼のセッティングを始めた。
あの二人ともお友達になっておけば、接触の機会が増えるかもしれないよね。
ことわざにもあるじゃない、将を射んとする者はまず馬を射よみたいな感じ?
ガタガタと移動を終えた彼と、ふと目があった。
今日はこれで6回目。
ちょっと多くない?
休み時間ごとに見てたら、そのたびに彼と目が合った。
もしかして向こうも気にしてこっち見てんのかな。
やった。
また目が合ったと思った瞬間、彼がフッと笑った。
「え?」
気のせいかと思ったけど、絶対気のせいなんかじゃない。
確実に笑ってる。
すぐに前を向いて友達男子と笑いながら何かしゃべってるけど、本気で私を見て微笑んだ。
間違いない!
「美羽音。なにやってんの?」
いつまでも動かない私の所へ、絢奈の方からやって来た。
「ね、いま坂下くんと目が合ったの! そしたらね、私を見て笑ってくれたの!」
「は? なんかバカにされた? ケンカでも売られたの?」
彼女は腕を組むとチッと舌打ちし、イラっとした表情で彼らをにらみつける。
1
あなたにおすすめの小説
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
愛のかたち
凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。
ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は……
情けない男の不器用な愛。
課長と私のほのぼの婚
藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。
舘林陽一35歳。
仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。
ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。
※他サイトにも投稿。
※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。
求婚されても困ります!~One Night Mistake~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「責任は取る。僕と結婚しよう」
隣にイケメンが引っ越してきたと思ったら、新しく赴任してきた課長だった。
歓迎会で女性陣にお酒を飲まされ、彼は撃沈。
お隣さんの私が送っていくことになったんだけど。
鍵を出してくれないもんだから仕方なく家にあげたらば。
……唇を奪われた。
さらにその先も彼は迫ろうとしたものの、あえなく寝落ち。
翌朝、大混乱の課長は誤解していると気づいたものの、昨晩、あれだけ迷惑かけられたのでちょーっとからかってやろうと思ったのが間違いだった。
あろうことか課長は、私に求婚してきたのだ!
香坂麻里恵(26)
内装業SUNH(株)福岡支社第一営業部営業
サバサバした性格で、若干の世話焼き。
女性らしく、が超苦手。
女子社員のグループよりもおじさん社員の方が話があう。
恋愛?しなくていいんじゃない?の、人。
グッズ収集癖ははない、オタク。
×
楠木侑(28)
内装業SUNH(株)福岡支社第一営業部課長
イケメン、エリート。
あからさまにアプローチをかける女性には塩対応。
仕事に厳しくてあまり笑わない。
実は酔うとキス魔?
web小説を読み、アニメ化作品をチェックする、ライトオタク。
人の話をまったく聞かない課長に、いつになったら真実を告げられるのか!?
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
12年目の恋物語
真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。
だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。
すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。
2人が結ばれるまでの物語。
第一部「12年目の恋物語」完結
第二部「13年目のやさしい願い」完結
第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中
※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる