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第3章
第4話
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「私はこれからリンダ嬢の研究内容について、より深いご考察をうかがうつもりなので、出来ればご遠慮いただきたいのだが」
「それをさせないために、ダンスにお誘いしているのですわ」
紅い目がリンダをまぶしそうに見下ろす。
「私はここで、歓迎されていないのかな」
「歓迎していればこそですわ。私と二度も踊れることを、名誉としてくださってかまいませんのよ」
「ルディさまは、ぜひもう一度私と踊りたいと」
「リシャール殿下と踊れるのなら、私にとってもこれほど誇らしいことはございませんわ」
リシャールはまだ離れたくないのか、握ったリンダの手を離そうとしない。
「ほら。早くしてくださいませ。次の曲が始まってしまいますわ」
彼の目の前で、ヒラヒラと手を振る。
はしたないし無礼な振る舞いだと分かっている。
だけど、こうせずにはいられない。
ムッとしたリシャールの横で、リンダは声をあげて笑った。
「あはは。殿下。私とはまた話す機会もあります。今夜はルディさまとのダンスを楽しんでください」
「あなたはそれでよろしいのですか?」
「もちろんです。お二人には、ぜひ仲良くなっていただきたいので」
「全く。困った方ですね」
リシャールは渋々彼女の手を放すと、仕方なく私の手を取った。
そこに礼儀的にキスをする。
「リンダ嬢にそう言われては、仕方がありません」
彼の手が腰に回り、重ねた手がグイと引かれた。
王子さまらしい機敏で無駄のないステップで、あっという間に広間の中央へ躍り出る。
にこやかに笑みをたたえた気品あふれる上品な顔のまま、彼は本心を吐き出した。
「お前、正気か。俺に気でもあるのか」
「あるわけないでしょ。他の女の子と踊られるくらいなら、私は恥も外聞も気にしないということですわ」
「チーズみたいに?」
「チーズみたいに!」
「そうか、分かった。お前のその根性だけは認めてやる」
爽やかな笑顔のままそんなことを言い放つこの人は、やっぱり信用ならない。
「私が聖女でなくて残念でしたわね」
「あぁ、そうだな。それを知る前は、危うく無駄に口説いてしまっていた。身分といい聖女の資格といい、丁度よかったのにな」
隣のカップルとぶつかりそうになって、ステップが乱れる。
彼は私が転ばないよう、体を支え華麗にそれを避けた。
「さっさと終わらせるぞ」
大きなステップで一歩を踏み出す。
その力に引かれ、大胆に体が傾いた。
彼は私の体を支えながら、きらめく笑みを浮かべる。
「俺はここへ、仕事に来てるんだ」
「そんなもの、存じ上げておりますわ」
「ならいい。これ以上余計なマネをするな。さっきエマさまにも、釘をさされたばかりだ」
腕の中で振り回されるように踊りながら、なんとか彼を見上げる。
真っ直ぐに前を向いた横顔は、もう愛想笑いを浮かべてはいなかった。
「余計なマネ」ってどういうこと?
お姉さまと、どんな話をしたの?
どんなに嫌がられても、彼を邪魔することは止められない。
卒の無いステップで、ダンスが終わる。
それ以上何も話さないまま、私たちは踊り終えてしまった。
お辞儀が終わると、彼はサッと立ち去る。
その後ろ姿を追いかける気には、もうなれなかった。
「殿下とのダンスはどうだった?」
リンダが口いっぱいにジジルのパスタをほおばりながら、近づいてくる。
「どうだったもなにも、別に初めてじゃないですもの」
「楽しかった?」
もぐもぐと咀嚼した後でゴクリとそれを飲み込むと、リンダは興味津々と尋ねてくる。
「楽しくなんかないわ。これは仕事よ。仕事であって、義務でもあるわ」
振り返ると紅髪の彼は、今度は兵士たちに囲まれていた。
リラックスした様子で語らうその姿は、女の子たちと接している時とは全然違う。
「リンダこそ、もうあの方とはお話しにならなくてもよろしくて?」
「さぁ、どうなんだろ。殿下しだいじゃない?」
リンダは今度はサンドイッチに手を伸ばすと、それを口いっぱいにほおばった。
どれだけ食べても太らない体質なのが、うらやましい。
「帰ろっかな」
何だか少し、疲れてしまった。
「え。殿下の邪魔しなくていいの?」
「……。もう、邪魔はしないわ。彼も仕事だもの。それにさっき、余計なことをするなって叱られたばかりだわ」
自分が彼の迷惑になっていることが、なぜだか申し訳ない。
「そんなことで、ルディがへこむ?」
「きっと疲れてるのよ。色々あったし。もうパーティーも終わりの時間だわ。早めに休むから、殿下に何か聞かれたら、よろしく言っておいてくださらない?」
リンダは返事の代わりに、「うんうん」とうなずく。
今度は口に、ミートボールが詰め込まれていた。
賑やかに語らう殿下を残して、会場を後にする。
彼に嫌われてまで、彼の邪魔はしたくない。
「それをさせないために、ダンスにお誘いしているのですわ」
紅い目がリンダをまぶしそうに見下ろす。
「私はここで、歓迎されていないのかな」
「歓迎していればこそですわ。私と二度も踊れることを、名誉としてくださってかまいませんのよ」
「ルディさまは、ぜひもう一度私と踊りたいと」
「リシャール殿下と踊れるのなら、私にとってもこれほど誇らしいことはございませんわ」
リシャールはまだ離れたくないのか、握ったリンダの手を離そうとしない。
「ほら。早くしてくださいませ。次の曲が始まってしまいますわ」
彼の目の前で、ヒラヒラと手を振る。
はしたないし無礼な振る舞いだと分かっている。
だけど、こうせずにはいられない。
ムッとしたリシャールの横で、リンダは声をあげて笑った。
「あはは。殿下。私とはまた話す機会もあります。今夜はルディさまとのダンスを楽しんでください」
「あなたはそれでよろしいのですか?」
「もちろんです。お二人には、ぜひ仲良くなっていただきたいので」
「全く。困った方ですね」
リシャールは渋々彼女の手を放すと、仕方なく私の手を取った。
そこに礼儀的にキスをする。
「リンダ嬢にそう言われては、仕方がありません」
彼の手が腰に回り、重ねた手がグイと引かれた。
王子さまらしい機敏で無駄のないステップで、あっという間に広間の中央へ躍り出る。
にこやかに笑みをたたえた気品あふれる上品な顔のまま、彼は本心を吐き出した。
「お前、正気か。俺に気でもあるのか」
「あるわけないでしょ。他の女の子と踊られるくらいなら、私は恥も外聞も気にしないということですわ」
「チーズみたいに?」
「チーズみたいに!」
「そうか、分かった。お前のその根性だけは認めてやる」
爽やかな笑顔のままそんなことを言い放つこの人は、やっぱり信用ならない。
「私が聖女でなくて残念でしたわね」
「あぁ、そうだな。それを知る前は、危うく無駄に口説いてしまっていた。身分といい聖女の資格といい、丁度よかったのにな」
隣のカップルとぶつかりそうになって、ステップが乱れる。
彼は私が転ばないよう、体を支え華麗にそれを避けた。
「さっさと終わらせるぞ」
大きなステップで一歩を踏み出す。
その力に引かれ、大胆に体が傾いた。
彼は私の体を支えながら、きらめく笑みを浮かべる。
「俺はここへ、仕事に来てるんだ」
「そんなもの、存じ上げておりますわ」
「ならいい。これ以上余計なマネをするな。さっきエマさまにも、釘をさされたばかりだ」
腕の中で振り回されるように踊りながら、なんとか彼を見上げる。
真っ直ぐに前を向いた横顔は、もう愛想笑いを浮かべてはいなかった。
「余計なマネ」ってどういうこと?
お姉さまと、どんな話をしたの?
どんなに嫌がられても、彼を邪魔することは止められない。
卒の無いステップで、ダンスが終わる。
それ以上何も話さないまま、私たちは踊り終えてしまった。
お辞儀が終わると、彼はサッと立ち去る。
その後ろ姿を追いかける気には、もうなれなかった。
「殿下とのダンスはどうだった?」
リンダが口いっぱいにジジルのパスタをほおばりながら、近づいてくる。
「どうだったもなにも、別に初めてじゃないですもの」
「楽しかった?」
もぐもぐと咀嚼した後でゴクリとそれを飲み込むと、リンダは興味津々と尋ねてくる。
「楽しくなんかないわ。これは仕事よ。仕事であって、義務でもあるわ」
振り返ると紅髪の彼は、今度は兵士たちに囲まれていた。
リラックスした様子で語らうその姿は、女の子たちと接している時とは全然違う。
「リンダこそ、もうあの方とはお話しにならなくてもよろしくて?」
「さぁ、どうなんだろ。殿下しだいじゃない?」
リンダは今度はサンドイッチに手を伸ばすと、それを口いっぱいにほおばった。
どれだけ食べても太らない体質なのが、うらやましい。
「帰ろっかな」
何だか少し、疲れてしまった。
「え。殿下の邪魔しなくていいの?」
「……。もう、邪魔はしないわ。彼も仕事だもの。それにさっき、余計なことをするなって叱られたばかりだわ」
自分が彼の迷惑になっていることが、なぜだか申し訳ない。
「そんなことで、ルディがへこむ?」
「きっと疲れてるのよ。色々あったし。もうパーティーも終わりの時間だわ。早めに休むから、殿下に何か聞かれたら、よろしく言っておいてくださらない?」
リンダは返事の代わりに、「うんうん」とうなずく。
今度は口に、ミートボールが詰め込まれていた。
賑やかに語らう殿下を残して、会場を後にする。
彼に嫌われてまで、彼の邪魔はしたくない。
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