15 / 29
想い
しおりを挟む雅久と義勝がマンションへ移って、瞬く間に数週間が過ぎた。毎日、舞いを稽古し、竜笛の音に心を満たした。
研修医として病院に勤務する義勝は、時々、夜勤で不在になる。その時は同じマンションに住む、榊が足を運んで二人で旧都弁三昧で話し込む。また主治医として清方が時折、カウンセリングに訪れていた。
不安定ながらも転居してからは、一定の落ち着きを見せていた。その陰で武の気持ちも、統括秘書を失ってドッと多忙になった夕麿の苦労も、雅久には知らされていないままだった。何故ならば彼らが望むのは雅久の幸せだったからだ。義勝は心底、申し訳ないと思っている。
9年前に全ての記憶を失った雅久が新しい生活に溶け込んで生きれたのは、武が彼を兄として手放しに慕い愛したからだ。
兄弟が欲しかった……
武のその言葉に嘘や偽りがないのは、同じように兄と呼ばれて慕ってもらっている、義勝がよく知っている事でもあったのだ。
それが今は…真逆な状態になってしまっている。雅久は武に対してあくまでも仕える立場を崩さない。
それが武を傷付ける。
悲しませる。
今の彼には大夫としての役目を果たすのは無理だと判断した周が、雅久の病気療養の間のみと言って大夫の代理を願い出た。
これまで時間をかけて作り上げて来たものが、雅久が抜けてしまった事で機能停止を起こしかけていた。それでも何とかしようとそれぞれが懸命に自分の出来る事と向き合っていた。
しかし…それでは済まない事態がとうとうやって来た。
国賓を迎えての宮中晩餐会に、納曾利を舞う約束が前々からあり、それへの予定通りの出演依頼が来たのだ。周は雅久の病を理由に自分と夕麿の二人舞いで、代役を努めると必死で交渉したのだが…どうしても雅久でと言われてしまったのだ。確かに身体的には異常はないゆえにどうにもできなかった。
武は直接にマンションへ出向いて、雅久に事の次第を説明して詫び、その上で出演を依頼した。
雅久は本当は辞退したかった。今上が気に入っているのは、失われた記憶の中の自分だ。今の自分にそれが務まるのかが、不安で不安で仕方がなかったのだ。
武はこう答えた。
「9年前、全部の記憶を失ってしまった時も、兄さんはちゃんと舞えた。大丈夫だから……俺は信じる」
真っ直ぐに雅久を見て断言した彼の姿に、何故か気持ちが落ち着いて出演する事を承諾した。
当日、武は控え室から出ないという約束で、夕麿と共に宮中へと同行した。
緑色の裲襠(納曾利の衣装)に身を包んだ雅久は微かに震えていた。この衣装は彼が初めて宮中で『蘭陵王』を舞った時に今上が、『納曾利』も観たいと仰せになり、雅久が応えた報奨として与えられたものだった。
9年間の記憶がない彼にとって、これが紫霄学院の外での初舞台なのに、招かれている多くの人々はの中には、雅久の舞いを何度も観ている者がいる。失敗すれば…大勢の中で大恥をかき、雅久の舞いを愛でてくださる今上を失望させ、自分の後見である武の面目を潰してしまう。自分だけの失敗では済まないのだ。
ここから逃げ出したい……
逃げられないのはわかっているけれど…逃げてしまいたい。唇を噛み締めていると武が握り締めている手にそっと優しく手を置いた。
「俺はあり得ないとは思ってるけどさ…失敗しても良いんだよ?療養中だから無理って何度も断ったのに、無理矢理引っ張り出したのはあっちなんだし…俺ははそんな事で傷付いたりしない」
「宮さま…」
「雅久、あなたは昔…私と周さんに、『上手く舞おうとするのではなく、心のままに楽しんでください』と言ってくれました」
「ああ…そうだったな。僕も夕麿も失敗が怖かった…UCLAで失敗すれば、皇国貴族全体の恥晒しになりかねなかった」
それは武の知らない話だった。
「兄さんは舞いが好きだろう?」
武の言葉にしっかりと頷いた。
「だったら、出来不出来じゃないだろう?観客とか外交とかは今の兄さんは気にしなくて良いから。大好きな舞いを思う存分にしておいでよ。
義勝兄さん、黙ってないで何か言ってあげたら?兄さんまで緊張してどうするのさ」
「え…ああ」
緊張していた訳ではなかった。義勝はずっと雅久とどう向き合って良いのかがわからなかったのだ。医師としてならば向き合えた。雅久の状態を観察して対処する。自分で手に負えない時は、清方に連絡する…だが、共に寄り添って生きて来た記憶がない雅久と、どう向き合えば良いのか迷ってしまうのだ。愛情が消えた訳ではない。ただ今の自分では過去の時間に取り残された雅久を、傷付けてしまいそうで怖いのだ。
「大丈夫だ…お前は自分のおもうままに舞え」
「あなたも私には出来ると思うのですか、義勝?」
「当たり前だろう?お前にとって舞いは呼吸と同じだ。息をするのに上手い下手があるものか」
それは純粋な気持ちだった。9年前、全ての記憶を失った雅久は舞いを忘れてはいなかった。竜笛を忘れてはいなかった。
「お前の舞いや竜笛は、神々から授けられたものだ。だから魂が記憶しているんだろう…それを解放して来い…俺の伽具耶姫……」
不安に揺れる瞳を覗き込むと言葉が自然に溢れた。愛しい気持ちで胸が満たされる。
「ちゃんと観ててやるから力一杯やって来い」
「はい」
不思議だった。義勝の言葉で震えが止まった。
そこへ出番を告げる声がした。雅久は立ち上がった。そして舞台へと歩いて行った。
武たちはじっと控え室で待つ事しか出来なかった。中を窺うカメラは設置されてはいない。マスコミも途中から排除されて、雅久の舞いは記録されない。
彼がどのように舞ったのか。
武たちにはわからないのだ。
それでも舞台は終わった。不安に思っていると久方がやって来た。
「お疲れさま、雅久君。素晴らしい舞いだった。今上陛下も大層ご満足であらしゃいます」
着替えを済ませて、義勝にスポーツドリンクを飲ませてもらっている時だった。雅久は慌てて身を起こして深々と頭を下げた。
「ありがとうございます」
「まるで神竜が降臨したかのようでした」
その言葉を聞いて武が叫んだ。
「俺、観たかった~」
「録画いたしましたので、のちほどお届けいたします」
「え…やった!」
無邪気に素直に喜ぶ姿に全員が苦笑する。
時折見せる幼い姿。武の本来的な性格もあるが、やはり脳のダメージの一つの現れだと医師たちは考えていた。
今日の雅久の舞いを久方が撮影したのは、治療に必要だからと清方に依頼されたからだ。コピーをとって武と清方の双方に手渡すつもりでいた。
「雅久、動けるか?」
武が招待客と接触しない為には、晩餐会が続いている間に、宮中から退出しなくてはならない。
「大丈夫です」
しっかりと立ち上がったのを確認して雫が廊下を窺うかがった。
「人払いは済んでいるようです。お急ぎください、皆さま」
促されて部屋を出て通用口へと急いだ。
久方は彼らを見送りながらも皇家の一員でありながら、こそこそと隠れなければならない武を心底気の毒にも哀れにも感じていた。もし皇家の一員として表舞台に出ていたならば、青年の皇家としてどれ程輝いていただろうと考えてしまう。もったいないと思う。
いや、宮内省も外務省ももったいないと思うからこそ、彼を難しい状況の国へ公務に向かわせるのかもしれない。
「雫さん、何処かによって行こう。俺、お腹空いた」
無理もない。晩餐会の数時間前に入って、飲物以外は口にしていないのだ。豪華な料理が表では並べられていても、その欠片すら武たちには与えられる事はない。しかも今回、飲物と薬品は持ち込みの許可が出たが、何故か食物は持ち込みの許可が出なかったのだ。
普通は逆だ。液体の混合で爆発物が作れる時代だ。一番に警戒されるのは、液体の持ち込みの筈なのだ。
誰かが作為的に根回しをした嫌がらせとしか考えられなかった。
無論、武には知らせてはいない。ここのところ、ギリギリで発作には至っていない。雅久の事で意気消沈して、それでも彼の為に心を砕く武にこれ以上の負担を掛けない配慮だった。
駐車場への出入口を過ぎて外に出て、ほのかな灯りの中を足早に車へと急いだ。国賓が招待されている今夜は、いつもより警備が厳重だ。部外者がこの時間に御所の敷地内にいる可能性は低い。だが武の敵は関係者にいたとしても、不思議はないのである。
足早に車に向かって歩いて来た時である。車の影から人影が二つ、待ちかねたように飛び出して来た。
雫が武を、貴之が夕麿を庇った。
立っていたのは戸次 輝久・《直久》なおひさの兄弟だった。彼らを見て雅久が息を呑んで立ち竦んだ。
そうだ…今の彼は兄たちを覚えている。気付いた義勝が庇うよりも速く、直久の手が雅久の腕を鷲掴みにした。と…次の瞬間、輝久が振り上げた手で力一杯、雅久に打ち付けた。
雅久は小さな声をあげて駐車場の地面に倒れた。
「雅久!!」
義勝が駆け寄るのと直久が引き起こそうとするのがほぼ同時だった。義勝は倒れた雅久を渡すまいと覆い被さるようにして庇う。彼を引き剥がそうと二人が寄った途端に、彼らは次々に吹き飛ばされた。
武が鬼神のような表情で立っていた。
「こいつら…酔ってやがる…」
雫に命じられて近付いた貴之が、不愉快極まりない様子で吐き捨てるように言った。
その後、知らせで駆け付けて来た衛士に彼らを引き渡した。御所の敷地内での暴挙。それなりの裁断になるだろう。
「久我です、特別病棟に緊急搬送の準備をお願いします」
響いた周の声に武たちが振り向いた。義勝に抱き起こされた雅久は、ぐったりとして意識がない。
「雫さん、急いで病院に…意識が回復しない上に、不整脈を起こしている」
「わかった」
頷いて車へと駆け出した彼を確認して、今度は清方に連絡を入れた。雫が寄せた車に急いで乗って、一路病院へと急いだ。
職員通用口にストレッチャーが待っていた。そのまま全員で特別病棟へと上がり、雅久は集中治療室へ運び込まれた。駆け付けて来た清方も中へ入ったが、彼も今、雅久を襲う症状の見当がつかない。
「血圧、下がり続けています」
次々と飛び交う言葉に、義勝は集中治療室内でただ立ち尽くしていた。
外で硝子越しに見詰める武と夕麿は、抱き合ってこの光景に震えていた。中の声は聞こえない。それでも周たち医師と看護師が、険しい顔で慌ただしく動いている事、雅久の身体に取り付けられた器具の多さで、ただならぬ事態に陥っていると判断出来る。
小夜子たちも病院に駆け付けて来た。
駐車場で叩かれて倒れた時に、頭は打ってはいない筈だ。その前の事故の時には、徹底的に検査を行っている。
このような状態になった理由がわからないのだ。
清方が出て来た。
「先生…」
小夜子が駆け寄った。記憶を全てなくして真っ白な状態で9年前、雅久を母として彼女は懸命に受け止めた。雅久もまた、彼女を実の母のように大切に愛していた。血の繋がりがなくても、二人は9年間、確かに母子だった。
「外傷は…殴打された顔だけです。これは私の予測に過ぎませんが…雅久君は脳内で今、9年前の経験を辿っているのかもしれません」
「そんな……」
ショックと恐怖で記憶を全て失ってしまった程の経験を、もう一度脳は繰り返していると言うのか…
「先生…どうなるのです。また記憶を失うのですか?」
「今の状態が続けば、生命の危険が考えられます。もし乗り越えられたとしても、正気を保っていられるかどうか…」
その言葉にズルズルと武が床に座り込んだ。
「俺が…無理を言ったから…兄さんは嫌がっていたのに…」
「武…」
「俺の…所為だ…」
床を叩いて嘆く武を、夕麿は膝をついて抱き締めた。
武に責任はない。
全ては戸次家の醜い嫉妬の結果だ。二人の息子の状態に失望した、彼らの父 則久が求めたのは旧都の芸妓だった。彼女は舞妓時代から歌舞や和楽器の天才と言われる女性だった。しかも傾国の美女とはこういう美貌を言うのかもしれないと噂に高い売れっ子の芸妓。則久がどう口説きとしたのかはわからないが、彼女はすぐに雅久を身籠った。
産まれた子は美しく成長するにつけて、舞も和楽器の演奏もみるみるうちに習得していった。5歳である神社の奉納舞として「迦陵頻伽」を舞って、他の子供たちがたどたどしい中を1人、雅久は天の鳥が地上に舞い降りたと絶賛されたのだ。それを観た則久は雅久を引き取った。母親も息子が心配で芸妓を辞めて、戸次家の近くに移り住んだ。
せめて彼女が生きていたら…ここまでの事態にはならなかったのではないか。雅久の生い立ちを調査して知っている貴之はそう思ってしまう。
その時だった。清方が突然、慌てて中へ戻った。彼が開いたドアから漏れ聞こえたのは雅久の絶叫だった。
全員が硝子窓に飛び付いた。
「押さえろ!!」
「鎮静剤を」
その言葉に義勝が反応した。これでは9年前と同じだ。彼は錯乱して暴れる雅久を抱き締めた。
「大丈夫だ…もう、お前に酷い事をする者はいない。ここは安全な場所だ、雅久」
雅久の悲鳴は止まない。彼が味わった恐怖がどれだけ凄まじいものだったのかを物語っていた。
腕の中で暴れる雅久を抱き締めながら、義勝は純粋に真っ直ぐに思った。記憶なんてどうにでもなる。忘れたらまた新しい想い出を重ねていけば良い。大切なのは雅久が生きて側にいてくれる事。
「雅久…大丈夫だ…」
引っ掻かれても打たれても、手を放そうとは思わなかった。
「どんなお前でも俺は愛している。俺の伽具耶姫…」
ベッドに組敷いて唇を塞いだ。
「うっ…」
その唇を雅久は噛み付いて拒否した。思わず離した義勝の唇から鮮血が滴り落ちる。周が慌てて差し出したガーゼで拭うともう一度唇を重ねた。
開いた唇から舌を差し入れる。噛み切られる可能性はあった。それでも良かった。愛する者を救えるならば。
―――――だが、どうだろう。錯乱して大きく見開かれていた目は細められ、今しがた彼の頬を引っ掻いた指は何かを求めるように差し出された。
「雅久、俺がわかるか?」
確かな光を取り戻した瞳を覗き込んで問い掛けた。
「…義勝…」
微かな呟きが漏れ柔らかで美しい笑みを浮かべて、ゆっくりと目蓋が閉じられた。雅久は再び意識を失った。
酸素マスクが再び掛けられ、器具が取り付けられた。モニターに映し出された数値や心臓の鼓動を見て周が告げた。
「心拍はまだ弱いが不整脈は治まった。血圧はまだかなり低い。それでも…安定したと一応は言える」
全員にホッとした空気が流れた。
「明日の朝まで様子を見て、悪化する兆しが見られなければ病室に移そう」
取り敢えずは危機は去ったと清方が外の武たちに説明した。何か変化があれば連絡する。 そう言って武たちを無理矢理に帰宅させた。
武を思い詰めさせると発作を起こす可能性があった 帰宅させて病院の空気から引き離す事で、思い詰めた気持ちを緩和させるが目的だった。夕麿や小夜子もそれはわかっている筈だ。
彼らを見送ってから、清方は雅久の手を握り締めて見守る義勝を見た。
彼が雅久の状態に戸惑っているのはわかっていた。敢えて助言しなかったのは、彼自身が自分で答えに辿り着かなければ意味がなかったからだ。そして雅久自身も戸惑い怖れていた。 二人がそれでも寄り添って、懸命に道を模索する。時間はかかるが愛情がきっと道標になる。
雅久のカウンセリングを続けながら、清方はそれをずっとサポートしていたのだ。そこに真実の愛があるならば、何が一番大切であるのかが見える時が必ず来る。
清方は自分自身の経験を踏まえてそう信じていたのだ。
次の日の夕方、武は拓真に伴われて見舞いに来た。容態が安定している為、午後に雅久が病室に移されたと聞いたからだ。夕麿が一緒ではないのはやはり雅久がいない為に、スケジュールの調節がどうしても彼に片寄ってしまうからであった。武がひたすら雅久を心配する姿を見ていると、これ以上思い詰めさせない為にも病院に行かせた方が良いように夕麿には感じられたのだ。
武はまず、今の雅久の状態を周から説明された。
「血圧も心拍も徐々に正常値へと回復すると判断いたしました。生命の危機は脱したと断言出来ます」
肉体的な状態の安定と意識の回復は別であり、今後目覚めた雅久の記憶がどういう状態になっているか。今の段階では誰にも答えられなかった。それでも生命の危機は去ったと聞いて、武は安堵の表情になった。
今更ながら周は自分の仕える主の家族愛の深さに感動していた。 武は誰も見捨てたりはしない。 夕麿をずっと恋い焦がれていた自分さえ、武は心穏やかではなかった筈なのに…受け入れてくれた。 どれだけ自分は支えられて来たであろうか。こうして医師として歩き出せたのも、自分の目指す道が見付けられたのも、全ては武の優しい思い遣りのお陰だと思っている。
相変わらず母親の嫌がらせに脅かされてはいるが、それでも善き医師を目指して過ごす日々は充実していた。 だからこそ雅久が9年間の記憶をもう一度持って目覚めて欲しいと思う。 武にこれ以上、悲しい想いや辛い想いをしてもらいたくはない。その立場だけで十分に苦しい筈だから。
「ありがとう、周さん」
向けられる笑顔が眩しい。 立ち上がって病室へと歩いて行く武と拓真を、周は深々と頭を下げて見送った。
「義勝兄さん、これ」
武が差し出したのは手作りのお弁当だった。
「母さんから預かって来た。ご飯はちゃんと食べるように、だって」
小夜子の心遣いに涙が零れそうになった。 両親の愛情を知らずに成長した義勝はこの9年間、小夜子によって母の愛情を教えてもらった。 武に兄と呼ばれる事で、兄弟の情を自分も兄として弟を思う気持ちを持てるようになれた。 そして…家族みんなや友人たちと迎える様々な行事が、義勝をすっかり変えていた。
昔は家族をさほど大切だとは思っていなかった。 夕麿や雅久のように家族に傷付けられる者を紫霄で見る度に、そんな厄介なものと縁が切れて良かったと思っていたのだ。 今から思えば家族とは何であるのかを、そもそも理解していなかった気がする。そんな自分を愚かだとも思うし、子供だったとも今は思っている。
座って食べ始めた義勝にお茶を淹れてから、武はベッドの横にある椅子に座った。
「どんな姿でも雅久兄さんは綺麗だね。俺…もうどんな状態でも良いよ。雅久兄さんが元気に笑って、大好きな舞いが出来るなら、わがままは言わない」
武もまた義勝と同じ想いへと辿り着いていた。
「ごめんなさい、義勝兄さん。俺、自分勝手だった」
「いや、実は俺も迷っていたんだ。この9年間の雅久にすっかり慣れていたからな」
「そっか…」
そう呟いて武は雅久の手を取った。元々体温の低い雅久だが、その手はもっとひんやりしていた。少しでも温めようと両手で包み込む。すると…その手がかすかに動いた!
「義勝…兄さん…」
武のすがるような声に、箸を置いて立ち上がった。
「手が…動いた!」
その言葉に慌てて手を取った。すると弱々しく指が動く。
義勝はナースコールに飛び付くように押して、周と清方を呼ぶように指示した。その間もそっと握ると、今度はもっと確かに握り返された。
「兄さん…雅久兄さん…」
武が呼び掛けた次の瞬間、雅久は小さな溜息を吐いた。そして…駆け付けた周と清方の目に前でゆっくりと目蓋を開いた。
「雅久、俺がわかるか?」
周が眼球の反応を診ると焦点が定まっていなかった目が、ゆっくりと定まっていくのがわかった。
「義…勝…?」
吐息のような声で呼ばれて義勝は手を握り締めた。記憶はどのような形であれ消えてはいない。その事実に全員がホッとした。
「良かった…無事なのですね?貴之は?彼は大丈夫ですか?」
どうやら事故に巻き込まれて、意識を失った時間へ記憶が戻った状態らしい。
「3人とも無事ですよ、雅久君。あなたが一番、状態が悪かったのです」
「私が…一番…?」
「既に事故からかなりの日数が経過しています。あなたは数日間眠った後、記憶の混濁が見られました。昨日、倒れて再び意識を失って今、目を覚ましたわけです」
宮中で舞った事実はいずれは言わなければならないが、今は簡単な説明だけをする。雅久の記憶がどういう状態かはこの時点で判断は出来ない。
「そうでしたか…皆さまにご心配をお掛けしたのですね」
そう言って視線を巡らした。武は邪魔にならないように、後ろで黙って隠れるように立っていた。雅久の記憶がもっと遡るならば彼の中から武は消えてしまう。過去の記憶の中にいた雅久が周囲に、警戒心を抱いていたのに、武は敏感に気付いていたのだ。
それは武自身にも経験がある事だった。過去に最愛の人に忘れられた経験がこのような場面での武を臆病にする。まして一度は過去に記憶が遡った雅久に、兄と呼ばれる理由はないと拒絶されている。武はそのまま隠れるようにして、ドアの前の衝立ついたての向こうへとそっと身を移動させた。
拓真に合図して病室を出た。9年間の記憶を取り戻したならば、義勝か周が知らせてくれる筈だ。そうでなければその事実も。今、事故の事を口にしても、元通りという意味ではないかもしれない。だから今はこの場から立ち去るのが一番なのだ。
拓真は黙って帰宅する事を選んだ武に、紡ぐ言葉が見つからなかった。ただそっと側にいて、彼が孤独を感じないようにするので精一杯だった。
「わかりました」
夕麿は社で未だ仕事をしている時に、雅久が目を覚ましたと連絡を受けた。同時に見舞いに行っていた武が、いつの間にか病室から姿を消していたとも。清方は夕麿に今日は早く帰宅するようにと言った。
武が何を恐れているか。身近で大切に想う相手に忘れられたり背を向けられる事は、武には自分の存在の意味を否定されるのとイコールだった。
今回、中途半端に戻った9年間の記憶は、雅久に周囲への警戒心を呼び起こし、一番に対象になったのが武だった。中等部からの同級生はわかっていても、外部編入して来て交流がまだ浅かった武に『兄』と呼ばれる違和感は、雅久の中では警戒する材料に変換されていた。当時の夕麿もあくまでも生徒会長として、上級生としての対応を崩してはいなかった。その記憶が更に猜疑心を呼んだ。
武が紫霞宮と呼ばれる皇家の一員であると義勝に聞かされていた為、身分が下の者としての姿勢を常にとってはいた。当時ながらそれを敏感に察知した武が罪はないとわかっていながらも、深く傷付いたとしても誰も二人を責める事は出来ない。
雅久が出社できない間はも連日、黙々と仕事を水曜日の休みを返上してこなした。それでも夕麿へのしわ寄せは軽減されず、先に帰宅する武は一人ぼっちで離れに戻る。いつ発作が起きてもおかしくない条件下でずっと何も言わずにいた。
夕麿は周を通じて清方から発作の可能性への警告がされてはいた。寡黙になって日常会話も減った状態をわかっていながら、社内でもすれ違いが多くどうにもこうにも出来ないジレンマに、夕麿も困り果てていた所だった。清方は敢えて口にはしなかったが、武が抱いている恐怖の根源の一端は自分にある。夕麿はそう思っていた。
それが発作への過程で増幅される。今がその状態であるならば武は苦しんでいる。今回の事故は武の依頼で出向いた。宮中の晩餐会への出演はどうしても断れずに武が頼み込んだ事だった。
玄関を通り居間にいる皆に挨拶をしてから、夕麿は武がいる自分たちの部屋へ急いだ。てっきり工房になっている自分の部屋にいると思っていたのに、武はリビングのソファで雑誌を開いていた。
「ん? 早いな、夕麿。ああ、病院から電話が行ったか」
早い帰宅の理由がわかって武は、立っている夕麿を見上げて苦笑した。
「逃げ出して来たのは確かだ」
雑誌を閉じて俯き気味に呟く。夕麿は武の隣に座ってそっと抱き寄せた。
「ごめんな…俺、いつになったら強くなれるんだろう。お前やみんなに心配かけてばっかりだ」
「今のままでも十分に強いと思います」
「どこが?」
目の前のシルクのネクタイを軽く引っ張って少し拗ねたように言った。
「私が部屋を別にした時、あなたは私を信じてくださいました。だから私は自分の答えを発見出来ました」
「最初は…疑った。俺といるのが嫌になったのだろうって。でも…そうだったとしても、お前は俺の事をちゃんと考えてくれる。だから信じて待とうと思っただけだ」
夕麿の幸せが一番大事だと思うから、本人が出す答えを待とうと思った。結果として別れを告げられても、受け入れるつもりでいたのだ。
「私が愛しているのはあなただけです、武」
頬に手を添えて上を向かせて、ゆっくりと覆い被さるように唇を重ねた。この口付けで心が伝わって欲しい。そう願わずにはいられない。
唇を放すと今度は武の方から重ねて来た。抱き締めて武の全身から力が抜けるまでたっぷりと甘い唇を貪った。
「上に行きましょう」
力の抜けた身体を支えて二人で階段を上がる。ベッドに腰掛けて触れるだけのキスを繰り返しながら、互いの衣服を脱がしていく。夕麿のネクタイを引き抜いた武は、鼻歌でも歌い出しそうな程の上機嫌だ。
「楽しそうですね…そんなにスーツを着ている私を脱がすのが楽しいですか?」
「まあな。紫霄の制服の時はどちらかと言うと格好良かったんだよ。でもスーツのお前は色っぽくて時々、自制するのに苦労する」
「は?」
それはいつの話かと首を傾げた。
「お前が執務室の隣にベッドなんか入れるから……」
「待ってください、武。あなたは社でそんな事を考えているのですか!?」
「お前が色気を振り撒くのが悪い」
「どうして私の所為になるのです!?」
隣の休息室にいる武と話していると時折困ったような顔をする。あれがそうだったのかと思うと夕麿は頬が熱く火照って来た。
「ここのところ忙しくて、会話もままならない状態だっただろう。正直言って欲求不満でさ…お前の一挙手一投足にこう…」
武の言葉に羞恥心がこみ上げて来て、夕麿は居たたまれない気持ちになって来た。と同時に武の成長を感じた。昨年の春に彼が逃げ出した時も同じような状態であった。けれど触れ合う事を望みながら、武は夕麿の多忙さに全てを呑み込んでしまった。しかし今はこうして、あけすけな事を口にして戸惑わせる。
自分が黙っていれば丸くおさまる。武はそう考える性格だった。でも今は自分の状態を冗談混じりに口にする。武は自分がまだ弱いと思っているがしっかりと成長している。それが本当に夕麿には嬉しかった。
「困った人ですね…いつからそんなにエロくなったのです、あなたは」
「エロいのはおまえだろう、夕麿」
「言ってくださいましたね?今夜は泣いても放してあげませんよ、覚悟してください」
「望むところだ」
組敷いた身体は熱く歓喜に微かに震えていた。ここのところは発作も発熱もなく、雅久の事で多少食欲の減退がみられる程度だ。ベッドに横たわった身体は、艶やかで滑らかだった。 白い肌にはシミも黒子もない。だから左腕の傷痕が余計に目に入る。中にはかなり薄く目立たなくなったものもあるが、一番大きな傷…腕を突き抜けた傷の痕は、はっきりとしたケロイドになっていた。それ以外に2~3年に一度、体内のGPS を取り替える為の小さな傷がある。
現在、埋め込む方法以外が検討されている。
白い肌を指先で撫でてみる。
「や…やめろよ…くすぐったいって…」
身悶えしながら夕麿の手を掴んで拒む。
「くすぐったい?感じるの間違いでしょう?」
真っ白な肌はしばらく触れ合う事がなかった証。口付けの跡すら消えてしまう程の期間、互いを求め合わなかったという事だ。笑いながらその肌に所有の印を付けていく。
「ぁ…ン…ああっ…夕麿…」
次第に桜色に染まっていく肌が夕麿の更なる欲情を煽る。思う存分に所有の印を付けた後、薔薇色に勃ちあがっている乳首を口に含んだ。
「ひゃ…ダ、ダメ…」
「何がダメなのです?」
理由はわかっているが敢えて訊いてみる。
「………イっちゃう…」
両手で顔を覆って恥ずかしげに告げた。
「一度イかせてあげましょう」
「え…あ…ダメ…」
身体をずらして蜜液を溢れさせて震えているモノを、根元からゆっくりと舐めた上げた瞬間………
「ああ…ぁあっ!!!」
武は耐えきれずに激しく吐精した。
「ごめん…」
ティッシュを手に起き上がった武は、今にも泣き出しそうな顔をしていた。夕麿を穢してしまったようで、居たたまれない気持ちがこみ上げて来た。顔を拭っていると夕麿は笑っていた。
「ふふふ…逸見君からもらう小説にはよく出て来ますが、実際に体験するのは初めてですね。これが『顔射 』というものですね……」
それを聞いて武は思いっきり脱力したのと同時に今度、逸見 拓真に会ったらどうしてやろうかと思った。
夕麿は華奢な身体を抱き締めた。
「愛しています…あなただけを」
もう一度、純白のシーツの上に組敷く。武の頬を零れ落ちた涙を、舌先で舐め取ってもう一度愛を囁いた。
「もっと…もっと言って…」
仕方がなかったとはいえ義勝が雅久を連れて、マンションへ移った事は武にダメージを与えていた。雅久と義勝にとっての最良の事を…と思う気持ちがダメージを更に深める。夕麿とのすれ違いが癒す場すらなくしてしまう。それでも武は堪えていたのだ。
「武…武…我が君、私はあなただけを愛しています」
言葉が欲しいのならば100万回でも繰り返す。それで愛しい人の心が満たされ、癒されるのであるならば。声が枯れ血を吐いてでも繰り返し続けてみせる。
「俺も…夕麿だけを愛してる」
一点の曇りも澱みもない瞳が、夕麿を真っ直ぐに見上げていた。
愛しい……
愛しい……
同時に夕麿もここのところの激務で、ささくれ立っていた心が満たされていく。自分たちはこんなに互いを渇望していたのだと今更ながら思い知ってしまう。
夕麿にとって欲情は100%愛情と連動する。その事実は今も変わらず武にしか身体は反応しない。
指に潤滑ジェルをのせて欲望にヒク付く蕾に塗る。
「ン…ああぁ…夕麿ァ…」
与えられる快感に腰が揺れるのを止められない。欲しい…確かな熱情を中で感じたい。
「も…挿れて…」
それに応えるように体内で動いていた指が引き抜かれた。すぐに熱くたぎったモノがあてられ、蕾を灼熱を伴って圧し開いて進む。
「あああッ…熱い…」
「くッ…武…少し緩めて…ください」
夕麿が苦痛に顔を歪めるのを見て、懸命に息を吐いて力を抜こうとする。しかし待ち望んだ熱を逃すまいとするように、中は激しく収縮して受け入れたモノに絡み付き締め付ける。全てをおさめ切った夕麿は、激しく息を乱していた。 浮き出た汗が滴り落ちる。
「ごめん…上手く力…抜けない…」
また、泣きそうな顔をする。今の武がいっぱい一杯で、ギリギリのところで踏み堪えているのだとわかる。既に発作を起こしかけているのかもしれない。
発作が起こるのは止める事が出来なくても、症状を少しは緩和出来るだろうか。
いや……そんな事より今は、愛し合いたい。
「武…武…」
口付けを繰り返ししっかりと抱き締める。武もそれに応えてぎゅっと抱き返して来る。互いの乱れた呼吸が同調して響き合う。
「あぁ…そこっ…イイ…」
大きく仰け反って熱い吐息混じりに、快感の声が唇から溢れた。
「ンぁ…あッ…ダメ…も…イきたい…」
絶頂が近い事を示して、中の収縮がより一層強く激しくなる。
「イってください…武…」
夕麿も既に限界だった。
「夕麿…夕麿…あああッ!!」
「ぅくッ…」
ほぼ同時に昇り詰めて武は互いの身体に、夕麿は愛する人の体内に、想いの全てを解き放ったかのように吐精した。余りの強い悦楽に放心している武に、繰り返し愛を囁いて口付け髪を撫でた。
「愛しています」
同時に愛されている事も感じていた。
「…夕麿ァ…」
少し我に返ったのか、甘えた声ですがって来る。 愛らしさは9年経った今も変わらない。
「武、もう一度良いですか? もっとあなたが欲しい…」
紅潮した顔が頷いた。もう一度唇を重ねて、夕麿はゆっくりと抽挿を再開した。
十分に求め合った後の余韻の中で、夕麿は武を抱き締めて言った。
「武、お願いがあります」
「ん? お願い?」
「雅久の事です。私を信じてくださったように、彼を信じてはくださいませんか。記憶がどのような状態になっても、彼はきっと家族として私たちの処へ戻って来てくれます。だから…待っていて欲しいのです」
確かに昔の雅久は生徒会のメンバー以外には、強い警戒心を持つ部分があった。この9年間の状態に慣れて、今回の事が起こるまですっかり忘れていたが。けれども本質的には彼は、自分を慕って来る人間を無碍にする性格ではない。
「わかった…信じて待つ」
「ありがとうございます」
感謝を込めて唇を重ねると武は嬉しそうに微笑んだ。そしてゆっくりと目蓋を閉じて、すぐに穏やかな寝息を始めた。
夕麿も静かに目を閉じてそのまま眠りへと落ちて行った。
0
あなたにおすすめの小説
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
うちの鬼上司が僕だけに甘い理由(わけ)
藤吉めぐみ
BL
匠が勤める建築デザイン事務所には、洗練された見た目と完璧な仕事で社員誰もが憧れる一流デザイナーの克彦がいる。しかしとにかく仕事に厳しい姿に、陰で『鬼上司』と呼ばれていた。
そんな克彦が家に帰ると甘く変わることを知っているのは、同棲している恋人の匠だけだった。
けれどこの関係の始まりはお互いに惹かれ合って始めたものではない。
始めは甘やかされることが嬉しかったが、次第に自分の気持ちも克彦の気持ちも分からなくなり、この関係に不安を感じるようになる匠だが――
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
【完結】君と風のリズム
いなば海羽丸
BL
舞台はイギリス、湖水地方のウィンダミア。
主人公、オリバー・トンプソンは、湖のほとりにある、ウィンダミア乗馬クラブで住み込みで働くことになり、ロンドン郊外から一人、やって来た。
のどかな地で出会ったのは、美しい暴れ馬、スノーケルピー。オリバーはその馬に魅せられるが……。
イギリスの湖水地方に伝わる馬の妖精、ケルピーと、傷を抱えた新米厩務員のファンタジーBL。
番外編・後日譚もあります!
illustration/ぽりぽぽ様♡
design/もみあげ様
黒豹拾いました
おーか
BL
森で暮らし始めたオレは、ボロボロになった子猫を拾った。逞しく育ったその子は、どうやら黒豹の獣人だったようだ。
大人になって独り立ちしていくんだなぁ、と父親のような気持ちで送り出そうとしたのだが…
「大好きだよ。だから、俺の側にずっと居てくれるよね?」
そう迫ってくる。おかしいな…?
育て方間違ったか…。でも、美形に育ったし、可愛い息子だ。拒否も出来ないままに流される。
愛され少年と嫌われ少年
透
BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。
顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。
元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。
【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】
※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる