蓬莱皇国物語SS集

翡翠

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蛍火の歌

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 螢王の日記を最初に発見したのは朔耶だった。生徒会の資料室の書類棚の裏側から出て来たのだ。きっかけは長年の重量に棚がとうとう崩れた事にあった。中身を見て彼は密かにもう一度、螢王の日記を隠した。 

 だが武たちの会話から日記が、武たちの手に渡る事になった。 

 武たちは懸命に彼らの墓を探した。そして街の外れの森の中で、ひっそりと眠る4つの墓を発見した。螢の墓の横には光俊のらしい墓があった。武は学院が火葬である事を知って4つの墓を掘り起こさせた。 

 御園生邸の奥、かつて雑木林だった場所に墓所を造り、4つの墓から持って来た骨壺を安置した。 

 もちろん、螢と光俊の骨壺は並べて。 




 後日、貴之が長尾 光俊の調べを武に渡した。それによると長尾家は昔から美形の血筋だったという。光俊の妹は高瀬家に養女にはいり、名前を邦子から綾子に改めた。 

 そして彼女が嫁いだのは、戸次 利久…雅久の祖父だった。 

「なる程な、雅久の美貌は母親からだけじゃなく、父親に流れている長尾家の血でもあったんだ」 

 義勝はそう呟いた。 

「幸久が雅久に似ているのは、当然と言えば当然だったのですね」 

 長尾家の血……夕麿はそう言葉を紡いだ。 

「私が中等部の寮で雅久と同室になったのも、このような経緯があったからかもしれませんね」 

「つまり…雅久兄さんと夕麿は縁続きの親戚って事?」 

「そうなりますね」 

 夕麿の笑顔に雅久は少し含羞はにかんで答えた。「恐れ多い事でございます」 と。 

「雅久の父親の正室が、雅久や幸久を嫌う本当の理由は…姑に似ていたからじゃないのか?」 

「さあ…? 確かまだ御祖母さまは健在な筈ですが…」 

 今更、兄の辿った人生を知りたいと思うだろうか。 


 その後、かの学祭の紳士花房 紀久太郎は、武の計らいで螢の遺骨と再会した。日記のコピーを渡され、涙ながらに帰って行った。 

 奇しくも光俊が願ったように、螢の次に特別室の住人になった武は愛する人と結婚した。 

 学院の外で幸せに生きている。 

 螢を想い、彼の死に殉じた光俊の願い。 

 それは武に関わる全ての人間の願いでもあった。 



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