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学祭再開
様々なトラブルはあったものの、静麿たちは学祭の日を迎えることができた。
葵の言動の一番の結果は、中・高・大の分断を生んでしまっていた。特に大学は未だに葵の信奉者が在校しているため、様々な妨害があった。しかしそんなことで静麿たちはめげなかった。繰り返し学生会に足を運んで説得にあたった。
決して彼らは納得したわけではなかったが、やはりこのまま学祭がない状態が続くのは問題であると考えた。大学部の中には学祭のOB訪問で大切な人と再会するのを楽しみにしている者もいる。これを妨げる権利はないと言われてしまえば、彼らも妥協するしかなかった。
中等部の方は昨年は静麿の発案と指揮で学祭の縮小版を独自に行っていたため、従来のものが復活するのを諸手を挙げて歓迎した。
それでもどの学部も問題ばかりが山積している状態で、会場を都市部と高等部に限定するしかなかった。通常は各学部の校庭に設置する本部テントを、今回は高等部校庭に合同設置することとなった。校庭に盆踊りの櫓を建設したのも合わさって学院でも一番の広さを持っている高等部だが、さすがにかなりの手狭になったがこれが逆に互いの間に生じてしまった摩擦を解消できればと静麿は考えていた。
特に高等部のテントは武たちを迎えるために他よりも広くした。彼と兄のための席を用意した。また周に依頼して救護テントに常駐してもらうことになった。静麿も校医を信用してはいなかった。
「どうか思いっきり祭りを楽しんでください!」
伝統通りに高等部生徒会長である静麿が開会の宣言を行い、二年ぶりの学祭が始まった。
武がこの瞬間を観たがったため、前日の夕方から特別室に入っていた。
「お疲れ」
テントの入り口で武は待っていた。
「もう一度俺も開会宣言やりたいな~」
いつもよりも校舎寄りに設置されたステージを見上げて武が呟いた。
「確かご自身が会長をされていた時もおっしゃっていましたよね?」
成美が茶化す。
「カッコイイだろ?」
歳月を重ねても変わらない姿に在学中の彼を知る者は苦笑する。
「それは今は置いといて、静麿、学祭の再開おめでとう。そして……ありがとう」
「こちらこそ多大なご援助をいただきましたことを感謝いたします」
二年間の中断は武の側には原因はあるはずもなく、責任を感じる必要はない。それでも葵が変わってしまった事実に、自分と間違えて襲撃されて拉致誘拐されたのを心苦しく思っていた。だからこそ自分は治療で動けない中でも、静麿のバックアップの指示を出し続けた。
昨今の少子化が紫霄にも影響がある上に、葵の言動に反発を感じた生徒が転校してしまい、高等部は二年生が少なくなっている。三年生も通常ならば半数以上が六月末の早期卒業以後も残っているが、この年は十数人しかいなかった。
これはそれだけ学院側の収入が減り、当然ながら生徒会への予算も減ってしまう結果となった。
武たちはこの現状にOBとして応えたのだった。
「どうぞこちらへ」
高等部の本部テントの奥へと武たちは案内され、この懐かしい光景を眺めた。
「さすがに今回は鋸を使う宮さまは見られませんねえ」
成美が楽しそうに言った。
「?」
傍らにいた夕麿が不思議そうに首を傾げた。
「あ~俺たちが卒業したあと、鋸使えるのがいなかったのか」
義勝が呟く。
「金槌で釘もですよね」
康孝が笑って言う。
「確か下河辺が『鋸ひいて釘打つ宮さまがどこにいるんだ』とか言ってたな?」
周が横から茶化す。
「だ~か~ら~俺がやらなかったら、準備が進まなかっただろうが」
うんざりした顔で武が言うと全員が吹き出した。
その場にいた者もいなかった者も、鋸を手に汗をかく武の姿がありありと浮かんで来る。
「だから私の年からは不足分を必要サイズに切った物を購入しました」
極力同じものは毎年使い回すと言い出したのも武だった。学祭終了後は業者に引取ってもらっていたのだ。手数料もかかる。だがこれを誰も無駄をしていると思い至らなかった。まさに目からウロコの発想だった。
「それが今回は使えなかったんだよ、武さま」
月耶が悔しそうに言った。彼が副会長を途中まで務めた一昨年は、学祭の準備段階までは進んでいたと言う。
「その時に確認したから覚えてる。ちゃんと綺麗に丁寧に保管管理されて、いつでも使用できる状態だった」
月耶が抜けた後に管理を投げ出したとは考え難いらしい。昨年の春、生徒会の執行部を決定できず不在状態となり、教職員の誰かが生徒会室を含む生徒会関連の施設や設備を封鎖、その時に空調などが停止されたと考えられた。
おそらくは彼らではきめ細かい管理が難しかったのだろう。
「だから今期の執行部はよく頑張った!」
ある程度の状態を撮影して、行長や月耶が送ってくれていたため、武たちは彼らの努力に感謝していた。ゆえに武の言葉に全員が頷いた。
「失礼します」
不意にテントの入口から声がかかった。
一斉に彼らが振り返ると大学部の学生会のトップたちが、怯んだ顔で立っていた。
「どうした?」
すぐさま月耶が対応に出た。
「紫霞宮さまが御出ましだと伺ったので……」
チラチラとこちらを見ながら言い淀む。
「話か?」
「はい」
「お伺いするから待ってろ」
身分的には月耶の方が上なのだろう。学生会も身分で役職が決められるはずだ。確かに月耶の実家の御影家は清華貴族としては上位に位置する。しかし本来の紫霄にはもっと身分の高い者が多い。そこから鑑みても学院都市から、今現在は身分の高い者がいなくなっているのがわかる。
武の了承を得て彼らを武と夕麿が座る場所から少し離れた位置に誘導した。
清方と周がそれぞれの近くに立つ。直接言葉を交わさせないつもりだ。学生たちは不満げに顔を歪ませた。
「伺いましょう」
清方が武が頷いたのを見て口を開いた。護院家は紫霞宮の後ろ盾であり、清方の弟が宮大夫を拝命して任にあたっている。清方は父からは武の側近く仕えて、でき得る限りのことを尽くすように命じられている。元よりそのつもりであったし、不用意に彼の側に人を近付けさせないためにも自ら進んで前に出ていた。
清方が不在の時には朔耶か周が行い、普段は雅久が行っていた。今日も取次は雅久でよかった。本来は取次は身分の低い側仕えが行うものだからだ。そこを敢えて武には清方が、夕麿には周が付くことで、学祭の最中に乗り込んで来る暴挙をしている学生会の幹部をけん制したのだ。
清方の言葉に彼らは互いに顔を見合わせた。
「まさか君たちは直接お二方と会話できると思っていたのですか」
溜息交じりに言ったのは二人の側に控えていた敦紀だった。
「あきれますね、紫霄はそこまで落ちたのですか。身分による線引きについてはきっちりと教えられるはずですが」
朔耶もうんざりした声を上げた。それを見て彼らは鋭い眼差しを向けて来た。おそらくは彼らにも葵は朔耶が裏切ったと言っていたのだろう。朔耶本人は欠片も思ってはいないのだが。
夕麿が周をチラリとみて何事かを囁く。彼は頷いてから口を開いた。
「不満があるのならば直ちに立ち去れ、と仰っておられる」
礼を欠いた行為に夕麿は本気で怒っていた。武は治療のためにずっと病院にいたのだ。ようやく外の空気を吸って笑っている今を汚さされた様な気分だった。周も彼の気持ちをりかいしているからこそ、取り次いだ口調が険しいものになっていた。
そんな夕麿をなだめる様に武がテーブルの下で、軽く彼の膝を叩いた。振り返った夕麿と武の視線が絡む。瞬時に夕麿の表情が和らいだ、武も微笑んで返す。尖ったような空気がすっと穏やかなものに変わった。二人を見つめる周囲の者の眼差しは穏やかだ。
この光景にまた学生たちが顔を見合わせた。葵は武のことをどんな風に彼らに言っていたのだ……と朔耶は再度あきれ返った。
「お側の方に申し上げます。我々が知りたいのは薫さまと葵さまが、現在はどちらにいらっしゃられるのかをお伺いしたいのです」
やはりそのことかと全員が思った。
「そのことについては俺から答えよう」
「あなたはどなたですか?」
「名前は成瀬 雫、紫霞宮家専任の警護室の長だ。表向きは特務室になっているが」
そこまで言って雫は一旦言葉を切って、ゆっくりと彼らを見つめ直した。
「現在、薫さまはある場所におられると聞いている。残念ながらこちらが踏み込めない所だが、お元気でいられるそうだ」
「……不確かなんですね」
少し責めるような口調で一人が言った。
「まあな。だがこの情報をもたらしてくれたのは、信用できる人物だ。確認に行けないだけだ」
もちろん情報源は清方の父、久方である。彼も自身で確認には池はしないが審議が怪しい情報は口にはしないだろう。
「問題は葵さまだ。彼が薫さまと同じ場所にいらっしゃらないらしい。だが実家である三条家に戻られた形跡はない。三条家の所有する不動産にも、関係者の物にもいらっしゃるご様子はうかがえない。
また、我々が最後にお会いした折には精神的に不安定なままでいらっしゃった。なのでどこぞへのご療養なども考えてお探ししたが、現在のところはどこにもお姿は確認できていない」
おそらくは葵を人質にして、薫を彼らの都合の良いように動かしている……と雫たちは見ていた。だがそこまで彼らに話す必要はないだろう。
「皇国から外には出られてはいないのは確認できている」
雫たちが手を出せない場所に連れて行かれたと全員が考えていた。
「葵は必ず見つけ出す」
武の声が響いた。誰もがその響きにハッとする。学生たちが何を考えてここに来たのかは何となくは感じている。だが二人の行方を一番に心配しているのは、他ならぬ武本人である。雫たちはかれのその想いに応えるべく、葵がどこにいるのかを探り続けていた。
「だそうだ。あんたたち、何でもかんでも『武さまが……』ってのはやめろよな。顔を知ってるくらいだろうが」
月耶にすれば自分たちだけが薫と葵を理解して、その身を心配していると言わんばかりの態度を続けて来られたのが腹立たしい。葵のことは朔耶や行長がよく知っているし、薫のことは自分たち三兄弟が乳兄弟として共に成長して来た。二人が行き方知れずになっているのをずっと心配している。
武だってそうだろう。
「少しは自分たちが無神経なんだと自覚しろよな」
彼らの前に立ち塞がって吐き捨てるように言った。
彼らはその言葉にムッとした顔をしたが、そこにいる全員の視線が自分たちに集中しているのに気付いて、逃げるように立ち去ってしまった。
「なんだよ、挨拶もしないで逃げるのか!」
さらなる月耶の言葉に彼らは飛び上がって、一目散に逃げて行った。
「やれやれ、何がしたかったんだろうな」
義勝が溜息吐く。
「自分たちだけで通じていたものが、ここでも通じると考えていたのでしょう」
お茶を淹れ直して来た雅久が、それぞれに配りながら応えた。
「会議でも準備でも散々嫌がらせしてくれたからな」
月耶の言葉には現在の執行部の全員が同意した。
「元の葵さまは細やかなお心遣いをされる、とても思いやり深い方でした。彼らの中にはそのままのあの方のイメージが生きているのでしょう」
少し上を見るようにして言った朔耶の言葉は、何よりも誰よりもこの事態を嘆いているのが感じられた。
大学部の学生たちの後、武たちが来ているのを聞きつけたOBたちが次々と尋ねて来た。その対応に少し困りながらも、彼らは決して無碍な扱いはしなかったが、夕麿は心底心配した。武に過度の負担がかかってしまわないかを期していた。治療でかなりの体力を削られている。何事もないような顔をして笑っているが、気を抜いた瞬間に倒れてしまいそうで見ていてハラハラする。ゆえにどうしても周の顔を見てしまう。
いくら何でも心配し過ぎだと周は笑う。何のために自分がここに詰めているのかとあきれて溜息吐く。朔耶もその横で苦笑していた。だが同時に二人の仲睦まじく幸せそうな姿に、学生たちのことで尖った気持ちがほぐれたのも確かだった。
「お邪魔いたします」
そう言ってテントに顔を見せたのは一条 響だ。彼は中等部の生徒らしい少年を連れていた。
「ご挨拶が遅くなり申し訳ございません」
「響さん、わざわざありがとうございます」
夕麿が立ち上がって出迎えた。清方もそれに続く。
この光景に溜息を吐いたのは武だ。仕方がないのかもしれないが、近衛家の血を引く人間で寄り集まってしまう彼らは、同じ『従兄』の立場でありながら取り残されてしまう周に気が付かない。身分が違うと言ってしまえばそれまでだ。縁続きの人間を彼らは認めないとでも言いたげだ。肝心の夕麿すら彼のことを失念してしまう。武はハッキリ言ってそこが不快だった。
突然現れた、これまで交流が皆無だった一条家が武に、いや正式には夕麿に寄って来た。今上皇帝が崩御した瞬間に立場が危うくなる武に近付いて何が得られるというのだろうか。
「ご紹介します。彼は近衛 彩月君。本年度中等部に入学しました。我々の母の兄の孫にあたります」
高子姉妹の兄とは現近衛家当主のことだ。彼は武のこととについては中立だったはずだ。
「また近衛か……」
いつの間にか側に来ていた雫が、彼らに聞こえない声で呟いた。
「雫さん、ちょっとウロウロしたい。周さん、いいよね?」
「わかりました、僕も同行します」
「でしたら私もご一緒させてください」
周の返事に続いて朔耶も同行を願い出た。
雫は貴之と成美に夕麿の警護を任せ、自ら武の警護に就いてテントを出た。このことに清方だけが気付いて頷いた。
もしかしたら彼はこの状況を申し訳なく思っているのかもしれなかった。清方にとって周はずっと身近にいてくれた血の繋がらない身内のようなものなのかもしれない。年齢の離れた弟のような、かつて肌を重ねた間だからなのか、恋愛とは違う深く強い情があるために周が弾かれてしまうのに気が付いているのだろう。
外は10月にしては気温が高く、歩いていると軽く汗ばむようだった。
紺と白の制服を着た生徒が行き来し、OBらしき人々が懐かしき母校を眺めながら歩いている。武が知っている光景だった。これを取り戻せたことが一番に喜ばしく思っていた。
「月耶、今年のおすすめは?」
都市部への坂道を下りながら朔耶が問いかけた。
「あ~定番もあるけど、俺のおすすめは新しくオープンした店のリゾットかな?」
武があまり刺激物を口にできない話は、月耶も朔耶から聞いている。口にしやすく刺激の少ないものを前以て調べておいたのだ。
「リゾット?」
「はい。チーズとトマトと海鮮と蟹……えっとオマール海老の五種類の味があります」
続いて答えたのは周だった。彼は身動きが取れない武と夕麿に代わって、学祭の準備状況や支援が必要な物を調べに来ていた。そのついでに都市部の店の学祭時のメニューを調べておいたのだ。
「うわっ、迷うな、それ」
基本的に好き嫌いもアレルギーもない武は、食が細くはあっても好きな食べ物は多い。
「俺のおすすめはチーズとオマールかなぁ。各メニューにチーズトッピングも可能だそうだよ」
周にメニューを言われた月耶は負けじとばかりに、わざわざ店側に聞いておいたことを話す。
「では少し早い時間ですが食事にいたしましょう」
雫が笑顔で告げた。
「え、でも……」
夕麿の食事はどうするのか、戸惑った顔を向けた武は口にしない気持ちを物語っていた。
「おそらくはあのノリでは彼らで別に行くでしょう」
そう答えたのは朔耶だった。実は彼は周を無視する響に対してある懸念を抱いていた。それを弟の三日月に話、最終的に雫にのみ相談したのだ。
朔耶の懸念……それは響、いや一条家と近衛家が夕麿を武から引き剝がしを企んでいるのではないか、というものだった。思い至った理由の一つに響が挨拶だけして後は武を無視することだった。今しがただって彼は武に軽く挨拶をしただけで、連れて来た近衛家の少年を夕麿にしか紹介しなかった。
雫の見解は今上皇帝が崩御して新皇帝が即すれば、武の立場はなくなるのははっきりわかる。その時に夕麿が巻き込まれないように保護するつもりなのだろう……と。もちろん夕麿はそんなことは微塵も思ってはいないだろう。身内の縁の薄い彼にとっては、血の濃い身内が増えるのを純粋に喜んでいるだけだと思えた。
「様々なことに敏くていらっしゃる方も、身内の情を武器にされると弱くあらしゃるわけだ」
雫は忌々しいと言いたげに呟いた。武の身内であるからこそ、そこにある強みも弱みもわかるのだ。
結局この話は、その場に居合わせた三人だけが知っていることだ。雫もさすがに清方にこの話はできなかった。朔耶のも周には話してはいない。そして清方は先ほどの態度から見ると周を仲間外れにする状況を、気にかけてはいる様子で張った。しかし彼らの懸念には気付いてはいないみたいだった。
今日はもう日の高いうちには夕麿は戻っては来ないだろう。
武は周が仲間外れにされることだけを気にしている。周本人は身分が違うことであるから仕方がないことであると認識している様子だ。それでも誰よりも夕麿の近くにいたのだから、突きつけられた現実は寂しくはあるはずだ。
もしも高子が近衛に意向に動いてしまったなら、武は完全に丸裸になってしまう。万が一を考えて準備をしていた方が良いのかもしれない。
再び二つの勢力ができてしまうのかもしれない。朔耶と周がその間で迷い苦しんだように、今度は雫が清方との間で同じような事態になるかもしれなかった。ただ雫はその場合は武の側に残ると決めていた。
少年の日に恋人を切り捨てたように、またそうしなければならなくなるようなのは避けたくはあった。だが自分は紫霞宮武王の専任警護官なのだ。彼を生涯の主と定め、誓いを立てて臣下として仕えると決意した人間だ。忠義の前には身内の情も恋愛も捨てて動く時が必要とされることもある。
何よりも武自身が祖父皇帝を失った時に自分を襲うであろう凶事に対して、しっかり腹を据えて覚悟しているのがわかっている。主が迷わないのであれば臣下が何を迷うというのだろう。
華やかに賑やかな学祭の空気の中、雫は自分の覚悟が未来永劫に必要とされないことを祈るのだった。
葵の言動の一番の結果は、中・高・大の分断を生んでしまっていた。特に大学は未だに葵の信奉者が在校しているため、様々な妨害があった。しかしそんなことで静麿たちはめげなかった。繰り返し学生会に足を運んで説得にあたった。
決して彼らは納得したわけではなかったが、やはりこのまま学祭がない状態が続くのは問題であると考えた。大学部の中には学祭のOB訪問で大切な人と再会するのを楽しみにしている者もいる。これを妨げる権利はないと言われてしまえば、彼らも妥協するしかなかった。
中等部の方は昨年は静麿の発案と指揮で学祭の縮小版を独自に行っていたため、従来のものが復活するのを諸手を挙げて歓迎した。
それでもどの学部も問題ばかりが山積している状態で、会場を都市部と高等部に限定するしかなかった。通常は各学部の校庭に設置する本部テントを、今回は高等部校庭に合同設置することとなった。校庭に盆踊りの櫓を建設したのも合わさって学院でも一番の広さを持っている高等部だが、さすがにかなりの手狭になったがこれが逆に互いの間に生じてしまった摩擦を解消できればと静麿は考えていた。
特に高等部のテントは武たちを迎えるために他よりも広くした。彼と兄のための席を用意した。また周に依頼して救護テントに常駐してもらうことになった。静麿も校医を信用してはいなかった。
「どうか思いっきり祭りを楽しんでください!」
伝統通りに高等部生徒会長である静麿が開会の宣言を行い、二年ぶりの学祭が始まった。
武がこの瞬間を観たがったため、前日の夕方から特別室に入っていた。
「お疲れ」
テントの入り口で武は待っていた。
「もう一度俺も開会宣言やりたいな~」
いつもよりも校舎寄りに設置されたステージを見上げて武が呟いた。
「確かご自身が会長をされていた時もおっしゃっていましたよね?」
成美が茶化す。
「カッコイイだろ?」
歳月を重ねても変わらない姿に在学中の彼を知る者は苦笑する。
「それは今は置いといて、静麿、学祭の再開おめでとう。そして……ありがとう」
「こちらこそ多大なご援助をいただきましたことを感謝いたします」
二年間の中断は武の側には原因はあるはずもなく、責任を感じる必要はない。それでも葵が変わってしまった事実に、自分と間違えて襲撃されて拉致誘拐されたのを心苦しく思っていた。だからこそ自分は治療で動けない中でも、静麿のバックアップの指示を出し続けた。
昨今の少子化が紫霄にも影響がある上に、葵の言動に反発を感じた生徒が転校してしまい、高等部は二年生が少なくなっている。三年生も通常ならば半数以上が六月末の早期卒業以後も残っているが、この年は十数人しかいなかった。
これはそれだけ学院側の収入が減り、当然ながら生徒会への予算も減ってしまう結果となった。
武たちはこの現状にOBとして応えたのだった。
「どうぞこちらへ」
高等部の本部テントの奥へと武たちは案内され、この懐かしい光景を眺めた。
「さすがに今回は鋸を使う宮さまは見られませんねえ」
成美が楽しそうに言った。
「?」
傍らにいた夕麿が不思議そうに首を傾げた。
「あ~俺たちが卒業したあと、鋸使えるのがいなかったのか」
義勝が呟く。
「金槌で釘もですよね」
康孝が笑って言う。
「確か下河辺が『鋸ひいて釘打つ宮さまがどこにいるんだ』とか言ってたな?」
周が横から茶化す。
「だ~か~ら~俺がやらなかったら、準備が進まなかっただろうが」
うんざりした顔で武が言うと全員が吹き出した。
その場にいた者もいなかった者も、鋸を手に汗をかく武の姿がありありと浮かんで来る。
「だから私の年からは不足分を必要サイズに切った物を購入しました」
極力同じものは毎年使い回すと言い出したのも武だった。学祭終了後は業者に引取ってもらっていたのだ。手数料もかかる。だがこれを誰も無駄をしていると思い至らなかった。まさに目からウロコの発想だった。
「それが今回は使えなかったんだよ、武さま」
月耶が悔しそうに言った。彼が副会長を途中まで務めた一昨年は、学祭の準備段階までは進んでいたと言う。
「その時に確認したから覚えてる。ちゃんと綺麗に丁寧に保管管理されて、いつでも使用できる状態だった」
月耶が抜けた後に管理を投げ出したとは考え難いらしい。昨年の春、生徒会の執行部を決定できず不在状態となり、教職員の誰かが生徒会室を含む生徒会関連の施設や設備を封鎖、その時に空調などが停止されたと考えられた。
おそらくは彼らではきめ細かい管理が難しかったのだろう。
「だから今期の執行部はよく頑張った!」
ある程度の状態を撮影して、行長や月耶が送ってくれていたため、武たちは彼らの努力に感謝していた。ゆえに武の言葉に全員が頷いた。
「失礼します」
不意にテントの入口から声がかかった。
一斉に彼らが振り返ると大学部の学生会のトップたちが、怯んだ顔で立っていた。
「どうした?」
すぐさま月耶が対応に出た。
「紫霞宮さまが御出ましだと伺ったので……」
チラチラとこちらを見ながら言い淀む。
「話か?」
「はい」
「お伺いするから待ってろ」
身分的には月耶の方が上なのだろう。学生会も身分で役職が決められるはずだ。確かに月耶の実家の御影家は清華貴族としては上位に位置する。しかし本来の紫霄にはもっと身分の高い者が多い。そこから鑑みても学院都市から、今現在は身分の高い者がいなくなっているのがわかる。
武の了承を得て彼らを武と夕麿が座る場所から少し離れた位置に誘導した。
清方と周がそれぞれの近くに立つ。直接言葉を交わさせないつもりだ。学生たちは不満げに顔を歪ませた。
「伺いましょう」
清方が武が頷いたのを見て口を開いた。護院家は紫霞宮の後ろ盾であり、清方の弟が宮大夫を拝命して任にあたっている。清方は父からは武の側近く仕えて、でき得る限りのことを尽くすように命じられている。元よりそのつもりであったし、不用意に彼の側に人を近付けさせないためにも自ら進んで前に出ていた。
清方が不在の時には朔耶か周が行い、普段は雅久が行っていた。今日も取次は雅久でよかった。本来は取次は身分の低い側仕えが行うものだからだ。そこを敢えて武には清方が、夕麿には周が付くことで、学祭の最中に乗り込んで来る暴挙をしている学生会の幹部をけん制したのだ。
清方の言葉に彼らは互いに顔を見合わせた。
「まさか君たちは直接お二方と会話できると思っていたのですか」
溜息交じりに言ったのは二人の側に控えていた敦紀だった。
「あきれますね、紫霄はそこまで落ちたのですか。身分による線引きについてはきっちりと教えられるはずですが」
朔耶もうんざりした声を上げた。それを見て彼らは鋭い眼差しを向けて来た。おそらくは彼らにも葵は朔耶が裏切ったと言っていたのだろう。朔耶本人は欠片も思ってはいないのだが。
夕麿が周をチラリとみて何事かを囁く。彼は頷いてから口を開いた。
「不満があるのならば直ちに立ち去れ、と仰っておられる」
礼を欠いた行為に夕麿は本気で怒っていた。武は治療のためにずっと病院にいたのだ。ようやく外の空気を吸って笑っている今を汚さされた様な気分だった。周も彼の気持ちをりかいしているからこそ、取り次いだ口調が険しいものになっていた。
そんな夕麿をなだめる様に武がテーブルの下で、軽く彼の膝を叩いた。振り返った夕麿と武の視線が絡む。瞬時に夕麿の表情が和らいだ、武も微笑んで返す。尖ったような空気がすっと穏やかなものに変わった。二人を見つめる周囲の者の眼差しは穏やかだ。
この光景にまた学生たちが顔を見合わせた。葵は武のことをどんな風に彼らに言っていたのだ……と朔耶は再度あきれ返った。
「お側の方に申し上げます。我々が知りたいのは薫さまと葵さまが、現在はどちらにいらっしゃられるのかをお伺いしたいのです」
やはりそのことかと全員が思った。
「そのことについては俺から答えよう」
「あなたはどなたですか?」
「名前は成瀬 雫、紫霞宮家専任の警護室の長だ。表向きは特務室になっているが」
そこまで言って雫は一旦言葉を切って、ゆっくりと彼らを見つめ直した。
「現在、薫さまはある場所におられると聞いている。残念ながらこちらが踏み込めない所だが、お元気でいられるそうだ」
「……不確かなんですね」
少し責めるような口調で一人が言った。
「まあな。だがこの情報をもたらしてくれたのは、信用できる人物だ。確認に行けないだけだ」
もちろん情報源は清方の父、久方である。彼も自身で確認には池はしないが審議が怪しい情報は口にはしないだろう。
「問題は葵さまだ。彼が薫さまと同じ場所にいらっしゃらないらしい。だが実家である三条家に戻られた形跡はない。三条家の所有する不動産にも、関係者の物にもいらっしゃるご様子はうかがえない。
また、我々が最後にお会いした折には精神的に不安定なままでいらっしゃった。なのでどこぞへのご療養なども考えてお探ししたが、現在のところはどこにもお姿は確認できていない」
おそらくは葵を人質にして、薫を彼らの都合の良いように動かしている……と雫たちは見ていた。だがそこまで彼らに話す必要はないだろう。
「皇国から外には出られてはいないのは確認できている」
雫たちが手を出せない場所に連れて行かれたと全員が考えていた。
「葵は必ず見つけ出す」
武の声が響いた。誰もがその響きにハッとする。学生たちが何を考えてここに来たのかは何となくは感じている。だが二人の行方を一番に心配しているのは、他ならぬ武本人である。雫たちはかれのその想いに応えるべく、葵がどこにいるのかを探り続けていた。
「だそうだ。あんたたち、何でもかんでも『武さまが……』ってのはやめろよな。顔を知ってるくらいだろうが」
月耶にすれば自分たちだけが薫と葵を理解して、その身を心配していると言わんばかりの態度を続けて来られたのが腹立たしい。葵のことは朔耶や行長がよく知っているし、薫のことは自分たち三兄弟が乳兄弟として共に成長して来た。二人が行き方知れずになっているのをずっと心配している。
武だってそうだろう。
「少しは自分たちが無神経なんだと自覚しろよな」
彼らの前に立ち塞がって吐き捨てるように言った。
彼らはその言葉にムッとした顔をしたが、そこにいる全員の視線が自分たちに集中しているのに気付いて、逃げるように立ち去ってしまった。
「なんだよ、挨拶もしないで逃げるのか!」
さらなる月耶の言葉に彼らは飛び上がって、一目散に逃げて行った。
「やれやれ、何がしたかったんだろうな」
義勝が溜息吐く。
「自分たちだけで通じていたものが、ここでも通じると考えていたのでしょう」
お茶を淹れ直して来た雅久が、それぞれに配りながら応えた。
「会議でも準備でも散々嫌がらせしてくれたからな」
月耶の言葉には現在の執行部の全員が同意した。
「元の葵さまは細やかなお心遣いをされる、とても思いやり深い方でした。彼らの中にはそのままのあの方のイメージが生きているのでしょう」
少し上を見るようにして言った朔耶の言葉は、何よりも誰よりもこの事態を嘆いているのが感じられた。
大学部の学生たちの後、武たちが来ているのを聞きつけたOBたちが次々と尋ねて来た。その対応に少し困りながらも、彼らは決して無碍な扱いはしなかったが、夕麿は心底心配した。武に過度の負担がかかってしまわないかを期していた。治療でかなりの体力を削られている。何事もないような顔をして笑っているが、気を抜いた瞬間に倒れてしまいそうで見ていてハラハラする。ゆえにどうしても周の顔を見てしまう。
いくら何でも心配し過ぎだと周は笑う。何のために自分がここに詰めているのかとあきれて溜息吐く。朔耶もその横で苦笑していた。だが同時に二人の仲睦まじく幸せそうな姿に、学生たちのことで尖った気持ちがほぐれたのも確かだった。
「お邪魔いたします」
そう言ってテントに顔を見せたのは一条 響だ。彼は中等部の生徒らしい少年を連れていた。
「ご挨拶が遅くなり申し訳ございません」
「響さん、わざわざありがとうございます」
夕麿が立ち上がって出迎えた。清方もそれに続く。
この光景に溜息を吐いたのは武だ。仕方がないのかもしれないが、近衛家の血を引く人間で寄り集まってしまう彼らは、同じ『従兄』の立場でありながら取り残されてしまう周に気が付かない。身分が違うと言ってしまえばそれまでだ。縁続きの人間を彼らは認めないとでも言いたげだ。肝心の夕麿すら彼のことを失念してしまう。武はハッキリ言ってそこが不快だった。
突然現れた、これまで交流が皆無だった一条家が武に、いや正式には夕麿に寄って来た。今上皇帝が崩御した瞬間に立場が危うくなる武に近付いて何が得られるというのだろうか。
「ご紹介します。彼は近衛 彩月君。本年度中等部に入学しました。我々の母の兄の孫にあたります」
高子姉妹の兄とは現近衛家当主のことだ。彼は武のこととについては中立だったはずだ。
「また近衛か……」
いつの間にか側に来ていた雫が、彼らに聞こえない声で呟いた。
「雫さん、ちょっとウロウロしたい。周さん、いいよね?」
「わかりました、僕も同行します」
「でしたら私もご一緒させてください」
周の返事に続いて朔耶も同行を願い出た。
雫は貴之と成美に夕麿の警護を任せ、自ら武の警護に就いてテントを出た。このことに清方だけが気付いて頷いた。
もしかしたら彼はこの状況を申し訳なく思っているのかもしれなかった。清方にとって周はずっと身近にいてくれた血の繋がらない身内のようなものなのかもしれない。年齢の離れた弟のような、かつて肌を重ねた間だからなのか、恋愛とは違う深く強い情があるために周が弾かれてしまうのに気が付いているのだろう。
外は10月にしては気温が高く、歩いていると軽く汗ばむようだった。
紺と白の制服を着た生徒が行き来し、OBらしき人々が懐かしき母校を眺めながら歩いている。武が知っている光景だった。これを取り戻せたことが一番に喜ばしく思っていた。
「月耶、今年のおすすめは?」
都市部への坂道を下りながら朔耶が問いかけた。
「あ~定番もあるけど、俺のおすすめは新しくオープンした店のリゾットかな?」
武があまり刺激物を口にできない話は、月耶も朔耶から聞いている。口にしやすく刺激の少ないものを前以て調べておいたのだ。
「リゾット?」
「はい。チーズとトマトと海鮮と蟹……えっとオマール海老の五種類の味があります」
続いて答えたのは周だった。彼は身動きが取れない武と夕麿に代わって、学祭の準備状況や支援が必要な物を調べに来ていた。そのついでに都市部の店の学祭時のメニューを調べておいたのだ。
「うわっ、迷うな、それ」
基本的に好き嫌いもアレルギーもない武は、食が細くはあっても好きな食べ物は多い。
「俺のおすすめはチーズとオマールかなぁ。各メニューにチーズトッピングも可能だそうだよ」
周にメニューを言われた月耶は負けじとばかりに、わざわざ店側に聞いておいたことを話す。
「では少し早い時間ですが食事にいたしましょう」
雫が笑顔で告げた。
「え、でも……」
夕麿の食事はどうするのか、戸惑った顔を向けた武は口にしない気持ちを物語っていた。
「おそらくはあのノリでは彼らで別に行くでしょう」
そう答えたのは朔耶だった。実は彼は周を無視する響に対してある懸念を抱いていた。それを弟の三日月に話、最終的に雫にのみ相談したのだ。
朔耶の懸念……それは響、いや一条家と近衛家が夕麿を武から引き剝がしを企んでいるのではないか、というものだった。思い至った理由の一つに響が挨拶だけして後は武を無視することだった。今しがただって彼は武に軽く挨拶をしただけで、連れて来た近衛家の少年を夕麿にしか紹介しなかった。
雫の見解は今上皇帝が崩御して新皇帝が即すれば、武の立場はなくなるのははっきりわかる。その時に夕麿が巻き込まれないように保護するつもりなのだろう……と。もちろん夕麿はそんなことは微塵も思ってはいないだろう。身内の縁の薄い彼にとっては、血の濃い身内が増えるのを純粋に喜んでいるだけだと思えた。
「様々なことに敏くていらっしゃる方も、身内の情を武器にされると弱くあらしゃるわけだ」
雫は忌々しいと言いたげに呟いた。武の身内であるからこそ、そこにある強みも弱みもわかるのだ。
結局この話は、その場に居合わせた三人だけが知っていることだ。雫もさすがに清方にこの話はできなかった。朔耶のも周には話してはいない。そして清方は先ほどの態度から見ると周を仲間外れにする状況を、気にかけてはいる様子で張った。しかし彼らの懸念には気付いてはいないみたいだった。
今日はもう日の高いうちには夕麿は戻っては来ないだろう。
武は周が仲間外れにされることだけを気にしている。周本人は身分が違うことであるから仕方がないことであると認識している様子だ。それでも誰よりも夕麿の近くにいたのだから、突きつけられた現実は寂しくはあるはずだ。
もしも高子が近衛に意向に動いてしまったなら、武は完全に丸裸になってしまう。万が一を考えて準備をしていた方が良いのかもしれない。
再び二つの勢力ができてしまうのかもしれない。朔耶と周がその間で迷い苦しんだように、今度は雫が清方との間で同じような事態になるかもしれなかった。ただ雫はその場合は武の側に残ると決めていた。
少年の日に恋人を切り捨てたように、またそうしなければならなくなるようなのは避けたくはあった。だが自分は紫霞宮武王の専任警護官なのだ。彼を生涯の主と定め、誓いを立てて臣下として仕えると決意した人間だ。忠義の前には身内の情も恋愛も捨てて動く時が必要とされることもある。
何よりも武自身が祖父皇帝を失った時に自分を襲うであろう凶事に対して、しっかり腹を据えて覚悟しているのがわかっている。主が迷わないのであれば臣下が何を迷うというのだろう。
華やかに賑やかな学祭の空気の中、雫は自分の覚悟が未来永劫に必要とされないことを祈るのだった。
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