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鎮魂歌
紫霄学院を今更ながら懐かしく、愛しく感じる。
歳月を重ねれば重ねるほど、『自分』の原点がここだと思えた。
すべてはここから始まった。
武自身の人生もここから始まった様なものだ。それ以前の記憶は存在していないわけではないが、転居に次ぐ転居で記憶の場所がどこだったのか、曖昧なものが多い。
紫霄に来てからの記憶は、ゲートで夕麿が出迎えてくれた瞬間から、自分でも驚くほどに細やかに様々なことを憶えている。
隠れて自分で作った弁当を食べた唐橘の茂みは今はなくなっている。職員に聞いてみると、枯れたのだと言う。あれほどの茂みが実は一株から成り立っていたそうだ。
いや、それだからこそ空洞があったのかもしれない。
螢の霊と出会った旧特別室の跡には、現在は若くして薨去した宮たちの慰霊碑が建てられている。
六条ヶ原の宮に石室を設けて、三人の宮とその伴侶の遺骨を奉じてはいる。それでも螢の魂がここにいたように、他の二人も学院都市のどこかにいるのかもしれない。そう思って慰霊碑に花と水を供えた。
「やっとここを手に入れました。ここの悲劇は終わらせると約束します」
その為にここに戻って来たのだから。
周が古びた錠前をこれまた古びた鍵で開けた。
「中はホコリまみれですが、渡米前に僕が入ってから誰も踏み入れた形跡はありません」
この日、周が案内したのは学院都市の行政区の奥にある、戦前の建造物とわかる古い倉庫だった。
武以前の特別室の宮たちの記録を観たのは周だけ。そこで自分も見たいと頼んだ。
本来ならば武が入室するための掃除を命じるところだが、彼らは職員たちを信用はしていない。九條家が失脚しても長年のここの慣習を守って来た者たちには、武たちに見られたくないものや知られたくないものが山ほどあるはずである。しかし、武が最も必要としているのは彼らが隠したいものなのだ。
前に周が入った時は『久我』の名を傘に着て、無理やりに押し切った。この時に覚えた保管場所から、今回は堂々と鍵を取り出した。
学院都市の行政は今や武の支配下にある。異議を唱える者は排除するだけだ。
何も知らない者がみればとんでもない圧政だろうが、これまでの行政には実家から疎まれた生徒の『排除』が仕事の中に含まれていのだ。武にすれば到底、許せるものではない。
彼らによって何人、いや、何十人……もしかしたらもう一桁上の罪なき者の生命が奪われたのだ。もちろんそれを望み、依頼した貴族たちも許せはしない。ここに閉じ込めるだけではなぜにいけなかったのか。彼らは『死』によって『何』を得て、『何』を隠蔽したのか。
埃まみれの書類に記されていたのは、『凄惨』という言葉では足りないほどの記録だった。
その人物の実家等からの『消去』依頼……そう、人の生命を奪う行為が共通して『消去』という、まるでデジタル記録を消し去るように表現していた。
そして殺害後の検死記録。これは雫と貴之が観て絶句していた。あきらかな『殺害』の形跡を書いておきながら、最終的な判断は『自害』という、古い言い回しで片付けられている。
彼らの墓はどこにあるのかという記載はなかなか見つからなかった。蛍宮たちの墓陵は記録の最期にきちんと記載されていた。だが闇に葬られた者たちの墓所は発見されていないのだ。
これでは無念の最期を迎えた者たちの魂を改めて弔うことができない。御影兄弟と蓮がいれば葬送の儀式を執り行い、万が一、彼らの御霊が迷っているのならば黄泉路へと導けるはずなのだ。
身分も立場もなく全員が懸命に埃だらけになりながら、棚から書類を降ろし中を確認した。
「あ、ありました。おそらくはこれだと思います」
声を上げたのは御園生の企業を投げ出せないゆえに、残って経営を続ける影暁に代わって参加していた、時雨 圭だった。
その声に全員が手にしていた書類を棚に投げ出して集まった。
「はあ!?あんな所に?」
慌てて地図を広げた義勝が叫んだ。
記載されていた場所は中等部の寮のその向こう、切り立った断崖の底だった。そこは誰も近付けない所で、大地の裂け目の様な地形だった。
「これは……弔いもせずに投げ入れていたのか?」
学院都市には生涯をここで生きた人々の墓地も存在している。土地が少ないためすべて火葬の後に小さな墓石を設けて埋葬されている。だが完全に闇から闇に葬られた者には、墓さえ用意されていなかったのだ。
「行ってみよう」
武の言葉に全員が首を横に振った。
「親王であらしゃる武さまは、近付かれるべきではありません」
そこは謂わば『穢れ』の吹き溜まりの様な場所になっているだろう。
「どうか我々にお任せください」
「第一、現状を確認もせずに行かれるのは危険です」
武にしても危険であろうことはわかっている。だがせめて上から現場を見たい気持ちがあった。
「こうされては如何でしょう。実際のその場所はお避けになられ、せめてあの断崖だけでもご覧いただくというのは」
こう言ったのは雅久だった。
「そうか……一応は中等部の寮に続いている」
義勝が言った。そこはかつて絶望した夕麿が飛び降りようとした場所でもあった。
「わかった、そうする」
行くことを強く望めば彼らは折れるだろう。だがどう見ても全員が止めようとしているのがわかる。
「あの辺り、どれだけの深さになる?」
雫が聞いた。
全員が首を傾げて考え込む。誰も近付いたことすらない場所だったからだ。
「中等部の寮の辺りで建物に相当すると3~4mくらいか?」
「多分……」
そもそも寮の屋上に出ないと亀裂の状態は見えない様に、危険を避けるために配慮されている。屋上に張り巡らされたフェンスも、よじ登って越えるのはかなり難しい構造にしてあった。
「うわっ!ここでもかなり深いねぇ」
義勝に案内されて訪れた場所から覗き見るそこは、建物の高さも加わってかなりの深さに感じられた。
「向こうはここよりも深いんだよね?」
「俺も行ったことはないが、地図だとここの倍以上はあるみたいだな」
現在、下へ降りる道が発見できず、断崖をロープで下るのが検討するチームと、引き続き道を探すチームに別れて行動している。
「亡くなっているのが見付かってる人もいるんだよね?さすがにその人は共同墓地に葬られているかな?」
「どうだろうな。荼毘に付す現場に生徒は立ち会えない。しかも墓地には合葬ゾーンもある」
「その違いは何だろ?」
「多分……だが、自分の墓の区分を買えるかどうかなんだろう」
学院都市はぐるりと山と断崖に囲まれているため、使える土地に制限がある。もちろん現在も元の原生林が残されているのだが、そこは岩が多かったり、次に何かを建設するための木材として温存されている。
また、鬱蒼とした木々に包まれた光景は、ここの閉鎖性を強調する働きもあった。
「俺はお前のお陰でそんな心配はしなくて良くなったけどな」
「俺だって似たようなもんだよ」
武にも閉じ込められるリスクはあった。一応、身分上は小さいながらも陵墓は存在していた。
誰も訪れる人のいない、知られることもなかった陵墓が。
「一体、どれくらいの人が谷底にいるんだろう?」
「ここ十年近くはその疑いがある事件はなかった……って雫さんがいってたから、白骨化してるだろうから人数の確認は難しいかもな」
義勝の言葉に「知り合いがいなくて良かった」と思ってはしまう自分に呆れてしまう。
すると義勝が背中を軽く叩いた。
「人間なんて皆、そんなもんだぞ?見ず知らずの相手に同情して、哀悼の気持ちを持つことはできる。それでも知っている相手の方に強く気持ちが傾くのは当たり前の感情だ」
「うん……」
「その差を非難する奴も存在はする。思うんだが……そういう人は本当の意味で身近な誰かを失った経 験が少ないのかもしれん」
目の前で理不尽に誰かの生命が奪われてしまう。義勝にすればホンの半年前に、主君であり弟でもある武を失う経験をしたばかりだ。ここに黄泉返りによって戻って来た。
それでも自分の無力さに天を呪った。嘆いても嘆き切れない想いに心身がバラバラになりそうだった。
見ず知らずの誰かの生命が失われても、そのような状態にはならないだろう。
準備が整った数日後、谷底の遺体を引き揚げる作業が行われた。
クレーンからロープに吊り下げられた担架で、一体一体引き揚げられていくのを、武は少し離れた場所で見つめていた。
ほとんどが白骨化しているため、袋に入れられてあがってくる。それを雫と貴之が確認していく。
中には制服を着たままの遺体もあり、内側に刺繍されている名前を確認したのもあった。
かなりの広さはあるとは言っても投げ込む場所が同じだったのだろう。古い年代の上に新しいものが重なっている。ただ書類上では武が編入する少し前あたりからの記録がない。武にはそれだけが救いだった。
おそらくは周たちの同級生であった、堀田 三角が最後の犠牲者だろう。
改めて武は黙祷した。
すると遺体の確認をしていた雫の動きが止まった。言葉も出ないらしく愕然としている。驚いた貴之が声をかけて我に返った雫が貴之に何事かを告げ、急ぎ足でその場を離れた。
武のいる場所からは彼らの様子はうかがえても、会話も声も聞こえないのだ。傍らには武を守るべく康孝が控えている。
しばらくして雫が戻り、身元確認が再開された。
ただ、すべての遺体を引き揚げるのはこの時点では難しかった。
新しいものから古いものへ。幾重にも折り重なっていて、バラバラになり土に埋もれた状態だった。谷底のどこからどこまでが遺体なのか、足を進めるのもためらわれるほどであった。
義勝などは自分の両親がここに閉じ込めることで満足し、存在を忘れてそれ以上の何かを求めなかったことに安堵した。
閉じ込められていた者にはいつでも、谷底に無惨な姿で横たわる自分を見ていたからだ。
武にしても他人事では決してない。身分上は螢たちのような過去の宮のように、小さいながらも墓はつくられたかもしれない。
しかしそれもあくまでも希望的なものだ。九條家の異様さからして、墓をつくってもそこに葬られたとは限らない。
武暗殺の企ての全容が明らかになるにつれ、あまりにも理不尽な理由に皆が言葉を失った。
一件の首謀者は元『弘徽殿の御息所』こと、九條 嵐子であった。彼女は先帝が皇后を生涯愛し、薨御した武の父……准皇を溺愛に近い形で愛していた。彼もまた父帝に応えるべく努力を惜しまず、周囲の信頼も厚い皇子だった。嵐子の生んだ現帝も懐の深い、穏やかな良い人物である。が……嵐子は不満だった。
そして……遺児としての武の出現。九條家は周囲を巻き込んで、本人が何も知らぬのであればそのまま、市井一人として生涯を過ごさせるのが妥当であると、先帝に諦めさせる方向へ話を向けようとした。
実際に生母である小夜子もそれに不満を持ってはいなかったのだ。
皇子であることの大変さは、准皇を見ていたからわかっていた。できればそんなことは知らないままでいさせたかったのだ。
けれども先帝はこれを承諾しなかった。
ゆえに武の不安定な立場が決定され、この学院に閉じ込められる決定がされたが、先帝の反対により夕麿との縁組がなされた……という経緯があった。
憎き女の孫が生きて市井に出る。ただそれだけで嵐子には許せないことであった。
同時に虚弱な自分の息子に代えて、武を次の東宮にと先帝が言い出さないか、という妄想がさらに拍車をかけた。
誰かの生命が失われても、彼女には取るに足らないものだった。
それでも最初は一応、皇家の尊き血を受け継ぐ武を暗殺するのには躊躇いがあったらしい。だから夕麿を何とかしようとした。彼を武から引き離すことができれば、武を学院都市に幽閉できる。
存在していないことにしたかったのだ。
けれど打つ手打つ手がことごとく失敗に終わり、とうとう武の生命を直接狙うしかない。嵐子は次第にこの様な妄執に雁字搦めになった。
同時にその実弟で九條家の当主も、姉の妄執に影響されていく。
先帝が生存中はまだ、存在そのものがストッパーになって、彼女たちは実行には移せずにいた。
しかしその時間は逆に武をどの様に殺害するのか、その方法を模索する恐ろしい時間になってしまう。
結果、月下百合に含まれる猛毒を使用するに至ったのだ。月下百合の毒は、万が一にも生命を取り留めたとしても、長期にわたる全身の激痛に耐え切れずに発狂するか、自ら生命を立つ……もしくは、結局は衰弱死すると言われていた。
憎い女の孫に最大の苦しみを……彼女の妄執に実の息子である現帝は戦慄した。嫉妬がここまて醜く悍ましく、残虐なものであるといつ事実に。それが母の生き様であることに。
『理由』として見るのであれば、これほどに愚かで馬鹿馬鹿しいものはない。誰かの生命を犠牲にしてまで、自分の中の『欲』を満たそうとする行為は許されるはずもない。
だが十年以上も武や周囲の者を脅かして、彼女は満足したのであろうか?埋められない心の空洞と怨みをどうにかできたのか?
否。
できるはずがない。たとえ武があのまま黄泉返らなかったとしても、満足は一時的なものであったと考える。
何故ならば『嫉妬』や『怨恨』の類は、対象となる人間にあるわけではないからだ。
亡き先帝の皇后や准皇が、嵐子に何かしたわけではない。もちろん現帝にも何かしたことはない。ましてや武は嵐子に、正月参賀で初めて会ったのだ。
そう、『嫉妬』も『怨恨』も外に存在している訳ではない。その感情は抱いている本人のものだ。自らの心の闇に自分自身を縛り、その苦しみや不自由さの原因を外に求めたに過ぎない。
もし黄泉返らなかった武が怨霊になって、嵐子に付きまとったら彼女はどうしたのだろう。
ふとそんなことを思い付いて、武は不謹慎にも苦笑してしまった。
「武さま?」
傍らで警護に付いている康孝が不思議そうな顔で声をかけた。
武がたった今思い浮かんだのを口にすると、康孝は顔をしかめた。
「やっぱり蓮が祓いににてくれるのかな」
「縁起でもない……おやめください」
「あはは、ゴメン」
実際には黄泉路を下っていたのであるから、怨霊になどなりようがなかったのではあるが。
「思えば千種は最初に声を上げて応えてくれたよな」
「何です、今頃」
「人の死を目の前にすると昔のことが思い浮かぶってやつ」
「はあ……」
刻々と時間は過ぎて行く。何かをしていても何をしなくても。ならば何かをできるだけやりたい。後に残る者たちのために。何よりも黄泉路をもう一度下る自分自身のために。
武を大切に想ってくれた皆へのせめてもの餞に。
数日後、御影兄弟や蓮、学院都市内にいる祭祀系の者が集結して、大々的に鎮魂祭が執り行われた。
氏名がわかった者は個々に墓を築き、身元不明の者や既にバラバラになった者は、無縁仏用として設けられている塔の中に安置される運びになった。
むろん…まだまだ谷底に眠る遺体はある。時間をかけて引き上げるつもりではあるが、何年かかるのかわからない。
古い時代ほど多く存在して、その当時の学院生の生命が、如何に軽く考えられていたのかがわかってしまう。
彼らが読み上げる葬送の祝詞が、鎮魂歌の様に聴こえる。
完全に彼らの御魂が癒されるのかはわからない。未だ谷底に眠る数知れぬ者には届かないかもしれない。それでも御魂安かれと祈らずにはいられなかった。
そこへ祈りの列から敦紀が出て、武に駆け寄った。
「武さま。蓮からの伝言です。『あまり死者の想いに同調なさいませんように。取り込まれます』と」
「あ……そう、だったな。つい、気を付ける」
普段でも武の能力はいろいろと面倒を引っ張り寄せる。まして今は黄泉路に近い場所に立っているのも同じだ。
ハッとした武を遠目で確認したらしい蓮が頷くのが見えた。
「ついな、自分と重ねてしまうんだよ」
そのまま傍らに立つ敦紀に呟いた。
「御身分お立場も違っていらっしゃるのですから、谷底に眠られることはなかったと思われますが」
「俺がこうしていられるのは祖父、先帝陛下のお陰だ」
もし、DNAが一致していても先帝が認めなければ、一人の生徒として葬られた可能性は考えられた。九條家ならば容易かっただろう。
周の代の一人を最後に理不尽で残酷非道な行為は止まりはした。それでも過去に失われた生命は戻らない。
この光景を決して忘れてはならない。そこに居合わせた誰もがそう感じていた。
ただ……敦紀は腹を立てていた。怒りを自らの内側に押し込めることに苦労していた。
今、ここに夕麿の姿がないからである。
それどころかここ数ヶ月、武は時折は六条ヶ原の宮に戻りつつも、懸命に紫霄学院と都市の改革と過去の事実の把握に苦心して来た。
貴之がかなりの頻度で武に随行していたし、敦紀自身も同行することが何度かあった。
今日は歴代の生徒会長はできるだけ出席して欲しいと要請したにもかかわらず、ここに夕麿の姿がないのはどういう了見なのかと問い詰めたくて仕方がなかった。
当然ながら響もここにはいない。
正巳ですら特別に許可をもらって、目立たぬ場所で祈りを捧げている。
この事実はいずれ何某かの問題を巻き起こすだろう。
それを夕麿はわかっているのだろうか。
彼が武の中身を疑っているのは彼も聞いている。
ならば何故確かめない?
武と夕麿だけが知っていることは数多くあるはずだ。それは敦紀たちがどう頑張っても教え込むことは不可能だと気付かないのか。
旧都療養中の武の苦しむ姿を見ているからこそ、自分で選んで来なかった夕麿の行動の数々の理不尽さは、敦紀には到底許せるものではなかった。
そして……武は、夕麿のや姿がないのが答えであると思っていた。多分もう、自分が生き残る道はないだろう。
そこに神の妨害が働いたとしていても、最後に選択するのは夕麿自身だからだ。
六条ヶ原に帰宅しても夕麿と顔を合わせることはほぼなかった。彼はそのままペントハウスに滞在しているからだった。
武自ら訪ねる気力もなく、ただ時間が過ぎ去るのを眺めていた。
これで良いのかもしれない。
一度黄泉路を下ったのだ。今更何を欲する。
ただ、静かな哀しみが心を満たしていた。
歳月を重ねれば重ねるほど、『自分』の原点がここだと思えた。
すべてはここから始まった。
武自身の人生もここから始まった様なものだ。それ以前の記憶は存在していないわけではないが、転居に次ぐ転居で記憶の場所がどこだったのか、曖昧なものが多い。
紫霄に来てからの記憶は、ゲートで夕麿が出迎えてくれた瞬間から、自分でも驚くほどに細やかに様々なことを憶えている。
隠れて自分で作った弁当を食べた唐橘の茂みは今はなくなっている。職員に聞いてみると、枯れたのだと言う。あれほどの茂みが実は一株から成り立っていたそうだ。
いや、それだからこそ空洞があったのかもしれない。
螢の霊と出会った旧特別室の跡には、現在は若くして薨去した宮たちの慰霊碑が建てられている。
六条ヶ原の宮に石室を設けて、三人の宮とその伴侶の遺骨を奉じてはいる。それでも螢の魂がここにいたように、他の二人も学院都市のどこかにいるのかもしれない。そう思って慰霊碑に花と水を供えた。
「やっとここを手に入れました。ここの悲劇は終わらせると約束します」
その為にここに戻って来たのだから。
周が古びた錠前をこれまた古びた鍵で開けた。
「中はホコリまみれですが、渡米前に僕が入ってから誰も踏み入れた形跡はありません」
この日、周が案内したのは学院都市の行政区の奥にある、戦前の建造物とわかる古い倉庫だった。
武以前の特別室の宮たちの記録を観たのは周だけ。そこで自分も見たいと頼んだ。
本来ならば武が入室するための掃除を命じるところだが、彼らは職員たちを信用はしていない。九條家が失脚しても長年のここの慣習を守って来た者たちには、武たちに見られたくないものや知られたくないものが山ほどあるはずである。しかし、武が最も必要としているのは彼らが隠したいものなのだ。
前に周が入った時は『久我』の名を傘に着て、無理やりに押し切った。この時に覚えた保管場所から、今回は堂々と鍵を取り出した。
学院都市の行政は今や武の支配下にある。異議を唱える者は排除するだけだ。
何も知らない者がみればとんでもない圧政だろうが、これまでの行政には実家から疎まれた生徒の『排除』が仕事の中に含まれていのだ。武にすれば到底、許せるものではない。
彼らによって何人、いや、何十人……もしかしたらもう一桁上の罪なき者の生命が奪われたのだ。もちろんそれを望み、依頼した貴族たちも許せはしない。ここに閉じ込めるだけではなぜにいけなかったのか。彼らは『死』によって『何』を得て、『何』を隠蔽したのか。
埃まみれの書類に記されていたのは、『凄惨』という言葉では足りないほどの記録だった。
その人物の実家等からの『消去』依頼……そう、人の生命を奪う行為が共通して『消去』という、まるでデジタル記録を消し去るように表現していた。
そして殺害後の検死記録。これは雫と貴之が観て絶句していた。あきらかな『殺害』の形跡を書いておきながら、最終的な判断は『自害』という、古い言い回しで片付けられている。
彼らの墓はどこにあるのかという記載はなかなか見つからなかった。蛍宮たちの墓陵は記録の最期にきちんと記載されていた。だが闇に葬られた者たちの墓所は発見されていないのだ。
これでは無念の最期を迎えた者たちの魂を改めて弔うことができない。御影兄弟と蓮がいれば葬送の儀式を執り行い、万が一、彼らの御霊が迷っているのならば黄泉路へと導けるはずなのだ。
身分も立場もなく全員が懸命に埃だらけになりながら、棚から書類を降ろし中を確認した。
「あ、ありました。おそらくはこれだと思います」
声を上げたのは御園生の企業を投げ出せないゆえに、残って経営を続ける影暁に代わって参加していた、時雨 圭だった。
その声に全員が手にしていた書類を棚に投げ出して集まった。
「はあ!?あんな所に?」
慌てて地図を広げた義勝が叫んだ。
記載されていた場所は中等部の寮のその向こう、切り立った断崖の底だった。そこは誰も近付けない所で、大地の裂け目の様な地形だった。
「これは……弔いもせずに投げ入れていたのか?」
学院都市には生涯をここで生きた人々の墓地も存在している。土地が少ないためすべて火葬の後に小さな墓石を設けて埋葬されている。だが完全に闇から闇に葬られた者には、墓さえ用意されていなかったのだ。
「行ってみよう」
武の言葉に全員が首を横に振った。
「親王であらしゃる武さまは、近付かれるべきではありません」
そこは謂わば『穢れ』の吹き溜まりの様な場所になっているだろう。
「どうか我々にお任せください」
「第一、現状を確認もせずに行かれるのは危険です」
武にしても危険であろうことはわかっている。だがせめて上から現場を見たい気持ちがあった。
「こうされては如何でしょう。実際のその場所はお避けになられ、せめてあの断崖だけでもご覧いただくというのは」
こう言ったのは雅久だった。
「そうか……一応は中等部の寮に続いている」
義勝が言った。そこはかつて絶望した夕麿が飛び降りようとした場所でもあった。
「わかった、そうする」
行くことを強く望めば彼らは折れるだろう。だがどう見ても全員が止めようとしているのがわかる。
「あの辺り、どれだけの深さになる?」
雫が聞いた。
全員が首を傾げて考え込む。誰も近付いたことすらない場所だったからだ。
「中等部の寮の辺りで建物に相当すると3~4mくらいか?」
「多分……」
そもそも寮の屋上に出ないと亀裂の状態は見えない様に、危険を避けるために配慮されている。屋上に張り巡らされたフェンスも、よじ登って越えるのはかなり難しい構造にしてあった。
「うわっ!ここでもかなり深いねぇ」
義勝に案内されて訪れた場所から覗き見るそこは、建物の高さも加わってかなりの深さに感じられた。
「向こうはここよりも深いんだよね?」
「俺も行ったことはないが、地図だとここの倍以上はあるみたいだな」
現在、下へ降りる道が発見できず、断崖をロープで下るのが検討するチームと、引き続き道を探すチームに別れて行動している。
「亡くなっているのが見付かってる人もいるんだよね?さすがにその人は共同墓地に葬られているかな?」
「どうだろうな。荼毘に付す現場に生徒は立ち会えない。しかも墓地には合葬ゾーンもある」
「その違いは何だろ?」
「多分……だが、自分の墓の区分を買えるかどうかなんだろう」
学院都市はぐるりと山と断崖に囲まれているため、使える土地に制限がある。もちろん現在も元の原生林が残されているのだが、そこは岩が多かったり、次に何かを建設するための木材として温存されている。
また、鬱蒼とした木々に包まれた光景は、ここの閉鎖性を強調する働きもあった。
「俺はお前のお陰でそんな心配はしなくて良くなったけどな」
「俺だって似たようなもんだよ」
武にも閉じ込められるリスクはあった。一応、身分上は小さいながらも陵墓は存在していた。
誰も訪れる人のいない、知られることもなかった陵墓が。
「一体、どれくらいの人が谷底にいるんだろう?」
「ここ十年近くはその疑いがある事件はなかった……って雫さんがいってたから、白骨化してるだろうから人数の確認は難しいかもな」
義勝の言葉に「知り合いがいなくて良かった」と思ってはしまう自分に呆れてしまう。
すると義勝が背中を軽く叩いた。
「人間なんて皆、そんなもんだぞ?見ず知らずの相手に同情して、哀悼の気持ちを持つことはできる。それでも知っている相手の方に強く気持ちが傾くのは当たり前の感情だ」
「うん……」
「その差を非難する奴も存在はする。思うんだが……そういう人は本当の意味で身近な誰かを失った経 験が少ないのかもしれん」
目の前で理不尽に誰かの生命が奪われてしまう。義勝にすればホンの半年前に、主君であり弟でもある武を失う経験をしたばかりだ。ここに黄泉返りによって戻って来た。
それでも自分の無力さに天を呪った。嘆いても嘆き切れない想いに心身がバラバラになりそうだった。
見ず知らずの誰かの生命が失われても、そのような状態にはならないだろう。
準備が整った数日後、谷底の遺体を引き揚げる作業が行われた。
クレーンからロープに吊り下げられた担架で、一体一体引き揚げられていくのを、武は少し離れた場所で見つめていた。
ほとんどが白骨化しているため、袋に入れられてあがってくる。それを雫と貴之が確認していく。
中には制服を着たままの遺体もあり、内側に刺繍されている名前を確認したのもあった。
かなりの広さはあるとは言っても投げ込む場所が同じだったのだろう。古い年代の上に新しいものが重なっている。ただ書類上では武が編入する少し前あたりからの記録がない。武にはそれだけが救いだった。
おそらくは周たちの同級生であった、堀田 三角が最後の犠牲者だろう。
改めて武は黙祷した。
すると遺体の確認をしていた雫の動きが止まった。言葉も出ないらしく愕然としている。驚いた貴之が声をかけて我に返った雫が貴之に何事かを告げ、急ぎ足でその場を離れた。
武のいる場所からは彼らの様子はうかがえても、会話も声も聞こえないのだ。傍らには武を守るべく康孝が控えている。
しばらくして雫が戻り、身元確認が再開された。
ただ、すべての遺体を引き揚げるのはこの時点では難しかった。
新しいものから古いものへ。幾重にも折り重なっていて、バラバラになり土に埋もれた状態だった。谷底のどこからどこまでが遺体なのか、足を進めるのもためらわれるほどであった。
義勝などは自分の両親がここに閉じ込めることで満足し、存在を忘れてそれ以上の何かを求めなかったことに安堵した。
閉じ込められていた者にはいつでも、谷底に無惨な姿で横たわる自分を見ていたからだ。
武にしても他人事では決してない。身分上は螢たちのような過去の宮のように、小さいながらも墓はつくられたかもしれない。
しかしそれもあくまでも希望的なものだ。九條家の異様さからして、墓をつくってもそこに葬られたとは限らない。
武暗殺の企ての全容が明らかになるにつれ、あまりにも理不尽な理由に皆が言葉を失った。
一件の首謀者は元『弘徽殿の御息所』こと、九條 嵐子であった。彼女は先帝が皇后を生涯愛し、薨御した武の父……准皇を溺愛に近い形で愛していた。彼もまた父帝に応えるべく努力を惜しまず、周囲の信頼も厚い皇子だった。嵐子の生んだ現帝も懐の深い、穏やかな良い人物である。が……嵐子は不満だった。
そして……遺児としての武の出現。九條家は周囲を巻き込んで、本人が何も知らぬのであればそのまま、市井一人として生涯を過ごさせるのが妥当であると、先帝に諦めさせる方向へ話を向けようとした。
実際に生母である小夜子もそれに不満を持ってはいなかったのだ。
皇子であることの大変さは、准皇を見ていたからわかっていた。できればそんなことは知らないままでいさせたかったのだ。
けれども先帝はこれを承諾しなかった。
ゆえに武の不安定な立場が決定され、この学院に閉じ込められる決定がされたが、先帝の反対により夕麿との縁組がなされた……という経緯があった。
憎き女の孫が生きて市井に出る。ただそれだけで嵐子には許せないことであった。
同時に虚弱な自分の息子に代えて、武を次の東宮にと先帝が言い出さないか、という妄想がさらに拍車をかけた。
誰かの生命が失われても、彼女には取るに足らないものだった。
それでも最初は一応、皇家の尊き血を受け継ぐ武を暗殺するのには躊躇いがあったらしい。だから夕麿を何とかしようとした。彼を武から引き離すことができれば、武を学院都市に幽閉できる。
存在していないことにしたかったのだ。
けれど打つ手打つ手がことごとく失敗に終わり、とうとう武の生命を直接狙うしかない。嵐子は次第にこの様な妄執に雁字搦めになった。
同時にその実弟で九條家の当主も、姉の妄執に影響されていく。
先帝が生存中はまだ、存在そのものがストッパーになって、彼女たちは実行には移せずにいた。
しかしその時間は逆に武をどの様に殺害するのか、その方法を模索する恐ろしい時間になってしまう。
結果、月下百合に含まれる猛毒を使用するに至ったのだ。月下百合の毒は、万が一にも生命を取り留めたとしても、長期にわたる全身の激痛に耐え切れずに発狂するか、自ら生命を立つ……もしくは、結局は衰弱死すると言われていた。
憎い女の孫に最大の苦しみを……彼女の妄執に実の息子である現帝は戦慄した。嫉妬がここまて醜く悍ましく、残虐なものであるといつ事実に。それが母の生き様であることに。
『理由』として見るのであれば、これほどに愚かで馬鹿馬鹿しいものはない。誰かの生命を犠牲にしてまで、自分の中の『欲』を満たそうとする行為は許されるはずもない。
だが十年以上も武や周囲の者を脅かして、彼女は満足したのであろうか?埋められない心の空洞と怨みをどうにかできたのか?
否。
できるはずがない。たとえ武があのまま黄泉返らなかったとしても、満足は一時的なものであったと考える。
何故ならば『嫉妬』や『怨恨』の類は、対象となる人間にあるわけではないからだ。
亡き先帝の皇后や准皇が、嵐子に何かしたわけではない。もちろん現帝にも何かしたことはない。ましてや武は嵐子に、正月参賀で初めて会ったのだ。
そう、『嫉妬』も『怨恨』も外に存在している訳ではない。その感情は抱いている本人のものだ。自らの心の闇に自分自身を縛り、その苦しみや不自由さの原因を外に求めたに過ぎない。
もし黄泉返らなかった武が怨霊になって、嵐子に付きまとったら彼女はどうしたのだろう。
ふとそんなことを思い付いて、武は不謹慎にも苦笑してしまった。
「武さま?」
傍らで警護に付いている康孝が不思議そうな顔で声をかけた。
武がたった今思い浮かんだのを口にすると、康孝は顔をしかめた。
「やっぱり蓮が祓いににてくれるのかな」
「縁起でもない……おやめください」
「あはは、ゴメン」
実際には黄泉路を下っていたのであるから、怨霊になどなりようがなかったのではあるが。
「思えば千種は最初に声を上げて応えてくれたよな」
「何です、今頃」
「人の死を目の前にすると昔のことが思い浮かぶってやつ」
「はあ……」
刻々と時間は過ぎて行く。何かをしていても何をしなくても。ならば何かをできるだけやりたい。後に残る者たちのために。何よりも黄泉路をもう一度下る自分自身のために。
武を大切に想ってくれた皆へのせめてもの餞に。
数日後、御影兄弟や蓮、学院都市内にいる祭祀系の者が集結して、大々的に鎮魂祭が執り行われた。
氏名がわかった者は個々に墓を築き、身元不明の者や既にバラバラになった者は、無縁仏用として設けられている塔の中に安置される運びになった。
むろん…まだまだ谷底に眠る遺体はある。時間をかけて引き上げるつもりではあるが、何年かかるのかわからない。
古い時代ほど多く存在して、その当時の学院生の生命が、如何に軽く考えられていたのかがわかってしまう。
彼らが読み上げる葬送の祝詞が、鎮魂歌の様に聴こえる。
完全に彼らの御魂が癒されるのかはわからない。未だ谷底に眠る数知れぬ者には届かないかもしれない。それでも御魂安かれと祈らずにはいられなかった。
そこへ祈りの列から敦紀が出て、武に駆け寄った。
「武さま。蓮からの伝言です。『あまり死者の想いに同調なさいませんように。取り込まれます』と」
「あ……そう、だったな。つい、気を付ける」
普段でも武の能力はいろいろと面倒を引っ張り寄せる。まして今は黄泉路に近い場所に立っているのも同じだ。
ハッとした武を遠目で確認したらしい蓮が頷くのが見えた。
「ついな、自分と重ねてしまうんだよ」
そのまま傍らに立つ敦紀に呟いた。
「御身分お立場も違っていらっしゃるのですから、谷底に眠られることはなかったと思われますが」
「俺がこうしていられるのは祖父、先帝陛下のお陰だ」
もし、DNAが一致していても先帝が認めなければ、一人の生徒として葬られた可能性は考えられた。九條家ならば容易かっただろう。
周の代の一人を最後に理不尽で残酷非道な行為は止まりはした。それでも過去に失われた生命は戻らない。
この光景を決して忘れてはならない。そこに居合わせた誰もがそう感じていた。
ただ……敦紀は腹を立てていた。怒りを自らの内側に押し込めることに苦労していた。
今、ここに夕麿の姿がないからである。
それどころかここ数ヶ月、武は時折は六条ヶ原の宮に戻りつつも、懸命に紫霄学院と都市の改革と過去の事実の把握に苦心して来た。
貴之がかなりの頻度で武に随行していたし、敦紀自身も同行することが何度かあった。
今日は歴代の生徒会長はできるだけ出席して欲しいと要請したにもかかわらず、ここに夕麿の姿がないのはどういう了見なのかと問い詰めたくて仕方がなかった。
当然ながら響もここにはいない。
正巳ですら特別に許可をもらって、目立たぬ場所で祈りを捧げている。
この事実はいずれ何某かの問題を巻き起こすだろう。
それを夕麿はわかっているのだろうか。
彼が武の中身を疑っているのは彼も聞いている。
ならば何故確かめない?
武と夕麿だけが知っていることは数多くあるはずだ。それは敦紀たちがどう頑張っても教え込むことは不可能だと気付かないのか。
旧都療養中の武の苦しむ姿を見ているからこそ、自分で選んで来なかった夕麿の行動の数々の理不尽さは、敦紀には到底許せるものではなかった。
そして……武は、夕麿のや姿がないのが答えであると思っていた。多分もう、自分が生き残る道はないだろう。
そこに神の妨害が働いたとしていても、最後に選択するのは夕麿自身だからだ。
六条ヶ原に帰宅しても夕麿と顔を合わせることはほぼなかった。彼はそのままペントハウスに滞在しているからだった。
武自ら訪ねる気力もなく、ただ時間が過ぎ去るのを眺めていた。
これで良いのかもしれない。
一度黄泉路を下ったのだ。今更何を欲する。
ただ、静かな哀しみが心を満たしていた。
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