蓬莱皇国物語 Ⅲ~夕麿編

翡翠

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   Confined Person Sad Fate

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「お前はここから出るな」

 命令だと言われれば反論も抗いも出来ない。 警護官たちや警護の警官たちに囲まれたまま寮の部屋に、ひとりとり残された夕麿は言い知れぬ不安に耐えながら武の帰りを待ち続けた。

 どれくらいの時間が経過したのだろう? 窓の外はもう夕闇に閉ざされ始めていた。

 扉のセキュリティーが解除されたのを知らせる音が響いた。 弾かれたように立ち上がった夕麿の目に飛び込んで来たのは、雫に抱き上げられて血の気のない顔で眠っている武の有様だった。

「武!? 成瀬さん、周さん、何があったのです…?」

「説明は後だ、夕麿」

 武が寝室に運ばれ周が点滴を打つのを見届けて、説明を聞く為にリビングに降りた。

「説明していただけますか、周さん。 発熱して休んでいた武を、わざわざ呼び出した理由は何ですか?」

 口調は穏やかだがその目には咎めるような色があった。

「私からお話致しましょう」

 雫が進み出た。

「いえ、私は周さんから話していただきたく思います。 話していただけますね?

 ここを出て行く時、武は相当に怒っていました。 熱で臥せっているのを承知で呼び出した理由は、余程の事だったのでしょう?」

 周は少し迷ったように雫を見てそれから口を開いた。

「物井教諭が昼過ぎから生徒会室に来て、僕たちに絡んで来て…… 僕がいろいろ言われるのは、まあ自業自得だけど。

 ところが彼はお前や武さまがやって来た事まで…その、無能呼ばわりし始めたんだ。 ……余りにも言葉が過ぎるので……行き掛かりで武さまを呼べと」

「だから呼んだと言うのですか? それだけで武があんなに怒るとは、思えないのですが、私は」

 肝心な部分でしどろもどろになる周を、夕麿は不審に感じていた。

「それは…」

「つまり何か私に関わる事、それも私には聴かせたくない事があったのですね? 私には話すな…武があなた方に命じたのでしょう?」

 夕麿の言葉に周と雫、それに武の警護に行っていた警護官たちが、気まずそうな顔で視線をそらした。

「あの教諭は再三、私にも酷い事を言って来ました。 だから何となく予想がつきます。 彼は私を…淫乱だと言ったのではありませんか?」

 周と雫の顔から血の気が引いた。

「やっぱり…」

 夕麿は悲痛な面持ちで天を仰いだ。

「私が慈園院 司から生徒会長を引き継いだ時から…言われて来ました」

 物井は司たちにもよく絡んでいるのを目撃している。そもそも貴族と皇家の血筋が中心に在学しているこの学院で、身分や立場などを一切考える事が出来ない彼が、教員を続けていられる自体が奇異であるとも言えた。長い時の流れで閉ざされた学院はここだけが、時代に取り残され澱み歪んでしまっている。その澱みすら見る事が許されなかった自分たちがいた。もしかしたら今であればあの無礼な男に何か言えるかもしれない。

 周が腕時計を見た。

「夕麿、そろそろ武さまが目を覚まされる」

「では上に上がらせていただきます」

「僕は夕食に行く。

 成瀬さん、一緒に如何ですか?」

「良いですね」

「夕麿、お前と武さまの食事を運ばせよう」

「お願いします」

「君たちは隣室の者と交代で食事に行きたまえ」

「はっ!」

 警護官たちが立ち上がって雫に敬礼した。

 夕麿は踵を返して螺旋階段を駆け上がって行く。 そっと寝室のドアを開けると武が寝返りを打つのが見えた。 ベッドに近付き腰を下ろすと、武がゆっくりと目を開けた。

「夕…麿…?」

「気分はどうですか、武? まだ痛みますか?」

「まだ少し痛い…」

「痛み止めを預かっていますが、飲みますか?」

「大丈夫、それ程じゃない」

 ぐったりと横たわる武の顔色はまだ白い。

 夕麿はベッドの軋みが武の傷に響かないようにゆっくり移動する。 手をのばして柔らかな髪を指で梳くように撫でた。

「お願いですから、無茶をしないでください。 成瀬さんが意識のないあなたを連れ帰って来たのを見て、心臓が止まりそうな程驚いたのですから」

「うん…ごめんなさい。 まさか、突き倒されるとは思ってなかったんだ」

「そうですね…確かに予想外ですね」

 物井は悪態を吐き嫌がらせの言動が絶えない教師ではあった。 だが夕麿の知る限り一度も暴力に出た事はなかった筈だった。言葉の暴力で相手を傷付けその反応を楽しんでいた感じがあった。 特に同性愛への言葉攻撃は残忍で容赦がなかった。 一年以上、その被害にあって来た夕麿が一番に知っているとも言えた。

 物井は優等生で誇り高い夕麿を、一番の標的にしていた気配があったのだ。 それを彼は甘んじて受けていた。 さもなくば武に被害が及ぶ可能性があった。いや、武だけではない。 義勝や雅久、そして恋人と離れ離れになっていた麗にまで、物井の嫌がらせの被害を及ぼす訳にはいかなかったのだ。

 卒業して全てが武に行ったのではないかと心配をしてはいた。 だが常に行長か敦紀が武に付き従っていた為に、さほど酷い被害にはあってはいないと聞いていた。

「あなたに彼の嫌がらせの話を、ちゃんとしておけば良かったと後悔しています」

 向けられる事の余りの酷さに、夕麿は事実を口にする事が出来なかった。 そして…際限なく武を求めてしまう自分を、物井の言葉通りなのかもしれないと心のどこかで思っていた。

「嫌がらせって…」

「彼が今日、あなたに言ったのと同じ言葉です」

 武が目を見開いた。

「周さんや成瀬さんが話したのではありません。 ただ物井教諭の名前が出て、ここを出て行くあなたの怒り方から判断出来ました」

「…卒業するまで、言われてたのか…あんな事を…!?」

 怒りに怪我を忘れて身を起こしそうになる武を、夕麿は慌てて手で押さえた。

「何故黙ってた!? 兄さんたちや貴之先輩にも隠してただろう!?」

 武の怒りに対して夕麿は少し哀しげな笑みを浮かべた。

「良いのです…ある意味、あれは事実ですから」

「どこが事実なんだよ? バカな事を言うな! 俺以外が手に触れただけで体調崩すのに、どうしてそんな事を思うんだ? 言っとくが俺とお前の間で際限がなくなるのはお互い様だろうが?

 第一、夫婦が相手を欲しいって思うのは、普通の事じゃないのか?」

「武…」

「つまらない暗示にかかるなよ…夕麿。 俺は俺の前でだけ、俺を欲しがる夕麿が好きだよ? 抱かれる時に欲しがられるのは、とっても嬉しいし…抱いている時の夕麿は綺麗だといつも思う」

「綺麗…? 私が…ですか? あんなに…欲深く淫らな私を、あなたは綺麗だと言ってくださるのですか?」

 浅ましい姿をさらしても、武を欲しいと思ってしまう。 みっともなさを剥き出しにしているだけだと思っていた。

「綺麗だよ?色っぽくて…自分に歯止めが利かなくなって、いつも夕麿が気を失うまで抱いてしまう。

 ね、気が付いてないだろう?」

 武が悪戯っぽく笑う。

「何をですか?」

「次の日の朝の夕麿は、物凄い色気を放って目茶苦茶に綺麗だって」

「次の…朝?」

 先日、武に抱かれた翌朝の周と雫、警護官たちの奇妙な反応を思い出した。

「あれは…そういう…意味だったのですか?」

「ん? ああ、この前の? ふふ、そうだよ?」

「そんな……」

 夕麿は耳まで真っ赤になった。

「あれを指してあんな事を言うなら、それは夕麿が悪いんじゃなくて俺の責任だろ?」

 武に抱かれているという事実を皆に知られている。

「今更困っても遅いよ、夕麿?」

「そんな…」

 どんな顔をして皆の前に出ろというのか。 穴があったら入りたい気分だった。

「どうして物井教諭の事を俺に言わなかったんだよ?」

「それは…」

 言えば武は自分の立場を利用してでも物井を排除しただろう。 夕麿には知らされていないが多々良 正恒の処分が、武の意向に添って行われたらしい事がわかっていた。

 元々は優しく穏やかな彼を、残酷で残忍な方向へ向かわせてしまう。 しかも夕麿を愛するが故に。 武自身が傷付いても誹謗されても、彼はそれを黙ってひとりで背負う。 六条家を巡る騒動で夕麿の為に武がやった事に対して、義勝と真っ向から対立した。

 あれは義勝だったから和解出来た。 佐田川 和喜の逆恨みも、あれは貴之がいた幸運に救われた。 学院での武の人気はその人柄を慕われての事だ。

 夕麿はこれ以上、武にそんな事はさせたくはない。

「私ひとりが我慢すれば、済むレベルの事です」

「結局は済んでいないじゃないか」

 武の言葉に夕麿は微笑みで返した。

「誤魔化すな…ン…ンン…」

 この話題はもう続けたくなかった。 だから唇を重ねて封じてしまう。 武が夕麿の生命を守るというなら、夕麿は武の名誉や誇り優しくて純粋で素直な心を守りたい。

 夕麿も守られるだけでは嫌だった。 その気持ちは武と同じなのだ。

「誤魔化すなって!」

「不愉快な話はこれ以上したくはないだけです」

 柔らかで滑らかな頬を撫でる。

「今回の夏休みは複雑でしたね。 でもあなたが私をどんなに想ってくださっているのか、骨身に沁みてわかりました」

「夕麿…俺だって、そうだよ? 離れているといろんな事があって、わからない事とかわかった事とか、お互いにあるよな?」

「そうですね…私たちは、思い込みが激しいのは似てる…というのがよくわかりました」

「確かに…」

 顔を見合わせて吹き出す。

「妙なところが同じだったって初めて気付いた」

「私もあなたも、悩むと自分ひとりで抱え込んでしまう」

 クスクスと笑い声が漏れる。

「武がすぐにヒステリーを起こすのもわかりました」

「あ、なんだよ、それ! すぐにブチギレすんのは、夕麿の方だろうが!?」

 互いにからかい合うのもじゃれ合いの一つだ。ベッドの中で二人はいつまでもクスクスと笑い続けていた。

「言ってくれますね?誰が悪いんです?」

「さあ?」

「可愛くないですね?そんな憎まれ口を叩くのは、この口ですか?」

 夕麿は武の頬を指で掴んで軽く抓った。

「いてッ!抓るなよ…痛いッ!

 もう、夕麿!」

 たわいないじゃれあいをすっかり忘れていた。ここで二人で生活していた時は喧嘩にならない言い合いで、じゃれあいからそのまま抱き合う事があった。夕麿はシーツの上から、武に馬乗りになって唇を重ねる。

「ン…ンン…ふゥン…」

 武の右腕が夕麿の背を抱く。夕麿はシーツ越しに膝で、武の脚を割開く。

「ヤ…あン…夕麿ァ…」

 太腿で股関を押されて、武が快感に身悶える。

「武…武…可愛い…」

 パジャマのボタンを外して、剥き出しになった胸を撫で回す。

「あン…ああ…」

「武、腕は痛まないですか?」

「…う…ん…大丈夫…シて…」

 甘い声で答える。夕麿がその胸に口付けようとした時だった。不意に背後で寝室のドアがノックされた。夕麿が苛立たしげに身を起こすと、周が困った顔で入って来た。

「お邪魔だったかな?」

「見ればわかるでしょう?」

 うんざりした顔で夕麿が言う。

「周さん、こういう時の邪魔をすると馬に蹴られて、豆腐の角に頭をぶつけますよ?」

「ちょ、夕麿、それ…」

 武が吹き出して、思わず左腕を動かして悶絶する。 夕麿が口にしたのは夏休み中に武が小夜子を、部屋から追い出した折に言った言葉だった。 言われた周は意味がわからないらしく、奇妙な顔をして夕麿を見返していた。

 それを見て武はもっと笑う。

「痛ッ…痛た…夕麿…笑かすな…」

「そんなに笑わなくても…」

「いや、だって…意味わかってないだろ…?」

「お義母さんがこの前、仰有ってたではないですか」

「だからって…」

 武は怪我の痛みと笑い過ぎの両方で、涙を浮かべてまだ笑っていた。

 ひとり蚊帳の外の周は、深々と溜息を吐いた。

「どうでも良いが…今日は止めろ、夕麿。

 武さま、また痛くなりますよ?」

 周の言葉に武は膨れっ面をして横を向く。 夕麿も恨みがましい眼差しを周に向けた。周はそれを見て天を仰いで再び溜息を吐く。

「夕食を運ばせたが、こっちに運ぶか?」

「武、どうします?」

「起きて良いの?」

御徒おかちはお控えくださいますならば」

「歩いてという意味ですよ、武」

 『御徒』の意味がわからない武に耳打ちして説明すると、彼の顔がパッと明るくなった。

「じゃあ下で食べる」

「承知いたしました」

 周は武に礼をして寝室を出て行った。

「ダメだって…つまんないの」

 武が拗ねたように言う。

「私も残念です……

 さあ、食事に行きましょう?」

 夕麿は武を起こして、パジャマのボタンを留め直して抱き上げた。

「痛かったら言ってください」

「うん」

 互いに視線を合わせて微笑み合う。 優しい時間が流れた。


 学祭の出し物に悩む武の相談にのっている時だった。ドアホンがなり雫が応対に出た。学部長が来たと言う。武が許可したのでそう答えた。

「お会いになられるそうです」

「わかりました」

 雫がセキュリティー・ロックを解除して玄関へと向かう。夕麿は仕方なく立ち上がって、学部長を迎えるべくリビングの入口へ進んだ。

「夜分に申し訳ございません」

 学部長はにこやかな笑みを浮かべて歩みよった。実は夕麿は彼が余り好きではない。笑顔がいつも仮面のように感じられ、本心が逆のように思えるからだ。

「このような時間に何でしょうか?」

「申し訳ございません」

 繰り返される口だけとわかる謝罪に幾分、苛立ちを覚えて聞く。どうせ物井の事でも言い訳に来たのだろう。適当に距離を取っていたのに踏み込んで来た。不快さに離れようとすると背後から武が叫んだ。

「夕麿、そいつから離れろ!!」

「え!?」

 驚いて振り返った途端、背後から押さえられ首に刃物が当てられた。

「あっ…何を!?」

 かろうじて目にしたのは自分の首に当てられたのが、ゾリンゲンというドイツメーカーの剃刀らしい事だった。持つ手の僅かな震えと夕麿自身の呼吸の動きで、皮膚が切れるのがわかる。 刃物傷特有の痛みが走る。

「学部長、夕麿さまを離しなさい!」

 雫が銃を構えて威嚇するが、撃つことは出来ずにいる。 学部長を狙撃すれば、反動で剃刀は夕麿の首を切り裂くだろう。 彼らは銃を構えたまま身動きが出来ない。

 夕麿はこのまま殺される覚悟をした。

 周も武を庇うように移動したまま、身動きが出来なくなっている。

 しかしこの緊迫した中で武が立ち上がった。

「武さま、お動きにならないでください」

 学部長が言う。

「俺が動こうが動くまいが、夕麿を殺しに来たんだろう?」

 武の手には銀色に光るものが握られている。周が慌てた。 どうやら所持していたメスをいつの間にか武が手にしているらしい。

「いつの間に…」

 周が自分の迂闊うかつさに唸る。

「動かないでください!」

 学部長が武の行動に動揺する。 手が震るえ刃先が喉の皮膚を切る。こうやって少しずつ切り裂かれて行くのだろうか?

「殺れよ。 だがよく覚えておけ。俺は夕麿ひとりを死なせるつもりはない」

「武!」

「武さま!」

 また自分を傷付けるつもりだと、夕麿はいたたまれなくなる。 武が手にしたメスの切っ先が首に当てられる。

「お前が夕麿の喉を切り裂いた瞬間、俺もこれで頸動脈を切る」

「う、嘘を申されるな!」

 学部長の動揺が激しくなる。更に震えだした手に傷付けられているのは感じるが、武の言葉に注意が散漫になり始めている。

「嘘? 嘘を言って何の意味がある? 俺は夕麿を犠牲にしてまで、生きたいとは思っていない。

 夕麿か周さんに聞いてみろよ? 俺は本当にやるって言うぞ?」

 頷けば刃が喉を切り裂く。 横目で学部長を見て瞬きで答えた。次いで周が口を開く。

「武さまは過去に2度、同じようになさっている。 そうだな、夕麿」

 もう一度同意の瞬きをする。

「主治医の高辻医師によると、武さまは自傷傾向がおありになる。 ご自分が傷を負われる事に、武さまは恐怖をお持ちになられない…」

 常に連絡を取り合う周が言うのだから、本当に高辻医師の診断なのだろう。

「まだ疑う? これでも?」

 武が指先に力を入れてメスを僅かにうごかした。

 夕麿は恐怖に声も出ない。 この状況では武の行為を止められない。

 切り裂かれた傷が口を開き、血が玉のように浮かび、みるみるうちに流れ落ちる。 武が着ている淡いブルーのパジャマの襟が血に濡れて染まった。だが武はそれを一向に気にしない。

「ね、学部長。 聞いていいかな? 何で俺をここへ閉じ込めたいわけ? 誰かに頼まれたから…だけじゃないよね?」

 問い掛ける武は恐ろしい程冷静だ。

 何だろう? いつもこんな事をする彼は、もっとヒステリックに過敏になっている。

「そんな事…どうでもよろしいでしょう!」

「…ッ…」

 学部長の興奮と動揺して、先程よりも深く剃刀の刃が喉を切る。 鋭い痛みに声にならない呻きをあげてしまう。 シャツも既に傷から流れ出した血で濡れた感触がする。

「関係あるよ? 俺も夕麿も何で死ななきゃならないか…くらい知りたいからね。

 ……ごめん、夕麿……守れなかった。 でもひとりじゃ逝かせないから。 約束通りまた、来世で逢おう」

 武の瞳は何かを待っている気がした。

「…武…必ず、私を探してください」

 そう答えると武は笑みを浮かべた。 やはり彼は冷静だ。だが武を余りしらない雫は息を呑んでいる。彼の立場を考えても、武の言動は理解不能かもしれない。どうやら周も武が何かを企んでいるらしい事に気付いている。

 武の物言いには余裕が感じられる。 ここは愛する人をを信じよう。 たとえ失敗してもこの状況が進むだけだ。

「40年だ…私がここに閉じ込められて…学部長になど、なりたくはなかった。 私は双子の弟だというだけで、ここに投げ込まれ…閉じ込められた。 後任が出れば、解放してもらえる筈だった。

 24年待った。 ただひたすらに待ち続けた。 夕麿さまに初めておめもじした時、やっと見付けた後任に相応しい方が現れたと思った」

 それの言葉を聴いて夕麿は学部長の自分に対する認識を初めて理解した。後任にされようとしていたとは。

「六条夫人から彼をここから出れなくなるようにしてくれと頼まれた時は、八百万の神々の思し召しであると歓喜に涙が止まらなかった程だ。

 夕麿さま、あなたは優秀だし…人望もある。だからあなたを後任に押すつもりでいた」

 またあの女が出て来た。そこまで彼女が自分を憎み、排除する必要がどこにあったのだろう?今更ながら不思議に思う。武が彼女を止めた今、恨みも憎しみもなく、そんな風にしか生きられない彼女を哀れに感じていた。

「そこへ俺が編入して来た…というわけか?」

「夕麿さま以上にあなたこそ私の後任に最も相応しいと感じました。第一、皇家の方は学院都市に入られたら、二度と外に出られないのが創立の時よりの慣例。従ってあなたが私の後任になられる事は何の差し障りもおありになられない。

 けれど御園生家と小夜子さまがあなたをここへ閉じ込めない措置を取られていた」

 時折、小夜子はどこから得るのか…と思う程、様々な事を知り尽くしている。のほほんとしているようで本当の姿がわからない。だがその彼女に救われたのだと夕麿は思う。

 雫ではなく自分を武の伴侶の候補として彼女が、選んでくれたからこそ義勝や雅久も救われた。何よりも武との愛に生きられる。

「夕麿や義勝兄さんまで出してしまったからな、俺は」

「諦めたんだ、それでも一度は!」

 武をここへ閉じ込めたい人間が現れ、学部長の望みが叶えられようとしていた。 だから彼は此処まで追い詰められているのだろう。

「もう一つ聞きたい。

 多々良を学院都市に入らせたのはお前だろう? あれで俺と夕麿の間が壊れると思ったか?」

「あれは…六条夫人に脅迫されたんだ!」

 事ある毎に出て来る名前。 結局、何もかもがそこへ終始してしまう。 あの肺炎で死んでいれば、ここまでの事態は防げたのだろうか。 そんな風にも思ったが多々良 正恒が、中等部に来た経緯を聞いて、夕麿は脱力感と虚しさに襲われた。

「株式で失敗して…学院の金に穴を開けてしまったんだ。 佐田川 省蔵は…それを補填してくれた」

「業務上の横領をなさっていたのですか、あなたは… 株式取引の才能もないのに、大金をつぎ込むからです」

 うんざりする。 この男の身勝手で自分や司をはじめとした、何人もの生徒が傷付けられたのか。 そんな理由で…自分は苦しみのどん底に堕とされたのか。 怒りよりも虚しさが勝つ。 憎しみよりも哀れさが募る。

 泣き叫んで今、首を裂く剃刀で自ら生命を断ってしまいたい衝動が襲う。

「佐田川はもとから、学院の生徒を欲しがっていたんだ。 出来れば手付かずの子供を」

「それで中等部か…慈園院さんたちを殺したって、自覚はあるのかな? 呆れたよ」

 武の声に我に返った。 自分が死ねば武も死ぬ。 早まってはいけない。 こんな愚かな男の所為で、武を死なせてはならない。

「私は…私は…」

 武の冷めた言葉に学部長は改めて罪の意識にかられたらしく、狼狽して一瞬、剃刀を持つ手が離れるのがわかった。

 今だ!

 それは合図を交わしたわけではない。 だが夕麿の行動に武は素早く反応した。 滑るように学部長の腕の束縛を抜けて、しゃがみ込んだ夕麿の横を何かが通り抜け、学部長が後方へ吹き飛んだ。

 それが合気道の気合い投げの一種だとわかる。 貴之が武の才能を口にしていたのは知っていたが、僅か一年足らずでここまで使えるとは知らなかった。

 駆け寄って銃を突き付けた雫から感嘆の声が挙がった。

「武さま、お見事です!」

 その言葉にハッとしたような表情を浮かべた武が突然、ガクリと膝を付いてしまった。 夕麿は慌てて這うように武の側へ行った。

 見ると泣きながら全身を激しく震わせている。 無理もない。 極度の緊張が緩んだのだ。

「ごめっ…ごめん…夕麿…俺…俺…」

 口にした言葉に緊張から解かれた武の罪悪感がにじみ出ていた。

「俺…酷い…言った…」

 腕の中で激しく泣きじゃくる姿を痛ましく思う。 だが武の勇気と機転がなければ、夕麿は即刻殺されていた筈である。 全ては夕麿を救う為だったとちゃんとわかっていた。

「武、武、落ち着いて。 私は大丈夫です。 あなたが助けてくださったのです。 全部わかってますから、ね?」

 武の背を撫でながら噛んで含めるような事を口にした。 それでも武は震えながら泣きじゃくっていた。

 そこへ誰かに電話をしていた周が、それを切りながら声を掛けて来た。

「夕麿、立てるか?」

「大丈夫です。」

 そうは答えたものの、夕麿自身も指先の震えを止められずにいた。

「武さまを寝室へ。

 二人とも傷の手当てをする」

 武を抱いて立とうとするが、震える手では抱き締めるのがやっとだ。 見かねた雫が武を抱き上げ、夕麿は周の手を借りて立ち上がった。 脚も震えていてそのまま周の手を借りなければ、歩く事もままならなかった。

 雫は武をベッドに横たると階下へ降りて行った。

「夕麿、そこへ座れ」

 周の言葉に夕麿は思わず首を振った。 武より先に自分が治療を受けるなどとても出来ない。

「武を先に」

「武さまの傷よりお前の傷の方が酷い。 このような場合は、傷の酷い方から優先するものだ」

「でも…」

「黙れ、武さまの手当てを早くさせたかったら、素直に従え夕麿」

 周の剣幕に慌てて座って返事をしてしまう。

「…はい」

「少し上を向け……浅い傷ばかりだ…沁みるぞ?」

「…ッ…」

 ピンセットの先の綿球が血の色に染まる。 自分の血とはいえあまり見たくはない。 視線をそらしている間に治療は終了した。

 武は心身共に疲れ果てているらしく、身体を投げ出すようにして横たわったままだった。 声を掛けても返事は返って来るが、どこか虚ろな響きがあった。

  パジャマを着替えさせて、駆け付けた校医が眠らせる為に注射を打つ。 武は数回瞬きをしてゆっくりと目を閉じて眠ってしまったのを見て、やっと夕麿は肩の力を抜いてホッとする。 同時に自分もどれだけ張り詰めていたのかを自覚した。

「夕麿、お前も着替えて横になれ」

「しかし…」

 このまま二人とも眠っても良いのだろうか…と思ってしまう。

「良いから言う通りにしろ」

「わかりました」

 パジャマを手に隣へ行って着替えベッドに入った。 校医がその腕に武と同じように注射を打つ。 内心、そこまでしなくても…と思いながら、深い眠りの底へ堕ちて行った。

 周は眠った夕麿の顔をみつめて思った。極度のストレスや緊張の反動を、夕麿は無意識に抑圧して自覚しない。 だからそれがパニック発作を悪化させる一因になってしまう。 今回も恐怖や動揺、躊躇いや嫌悪、焦燥感などに精神はギリギリまで追い詰められていた筈である。これは学部長が取り押さえられた後の反応でもわかる。 だが寝室に上がった彼は、それすらねじ伏せてしまった。

 表面的には意図していない。 だから始末が悪いのだ。 無理やり眠らせてでも心身共に休ませなければ、次に発作に陥った時が怖い。

 第一、後数日で再びロサンゼルスへ渡るのだ。 武のいない場所での強い発作は出来るだけ、防ぐか軽度になるように配慮しなければ夕麿本人に負担がかかる。

 これが高辻が周にした指示であった。



 武は17歳の誕生日を迎えた。 決定された身分を武は今、執務室で武は告げられている。 立ち会えるのは介添えに指名された周だけ。

 伴侶と言えども夕麿は外で待っているしかない。 側にいてやりたいと思う。 なぜ武自身が一番望まない身分になってしまうこの瞬間に。 辛い勅命を強制的に承諾しなければならない武をしっかりと抱き締めてやりたい。

 心痛な面持ちで座っていると、会長執務室のドアが開いて、勅使が夕麿に会釈して帰って行った。彼はここへ来てまず夕麿に新しいパスポートを手渡した。 それから会長執務室へと入って行った。 今朝方、理事証明書も新しく手渡された。

 全ての準備が整えられ、夕麿も否応なく武の運命に巻き込まれて行く。 だがそれはもとより覚悟の上だ。 身を呈して守ってくれた武の愛情に応える。 自らの全てを捧げ尽くしても。

「武…大丈夫ですか?」

「夕麿…俺…訳わかんない」

 双方共に拒否する言葉は口に出来ない。 夕麿は科せられた宿命に戸惑う華奢な身体をしっかりと抱き締めた。 本来ならば祝いの言葉を並べるところだが、武が一番望んでいないものを与えられたと知っている彼らはただ黙して立っていた。

 不意に武は顔を上げて、ドアの側に立つ周に声をかけた。

「ね、周さん。 夕麿は、夕麿の立場はどうなるの?」

「御園生家では夕麿…いえ、夕麿さまはあなたの婿君ですが、紫霞宮家ではお妃の立場になられます」

「え? 夕麿が今度はお嫁さんなの? …あっちとこっちでは逆転しちゃうんだ?」

 武が目を丸くして言った言葉に苦笑してしまう。

「お二人の間柄そのままではありませんか」

 周が意味有りげに笑いながら意地悪く答えた。 武と視線が合い顔が熱くなる。

「えっと…こっち側の夕麿の名前は、どうなるの? 御園生のまま?」

 赤い頬で誤魔化すように武が聞いた。 夕麿は先程受け取ったパスポートを開いて差し出した。

「たった今、受け取りました」

 武はそこに記述された、夕麿の新しい名前を見て笑いながら言う。

「妃はつかないんだ?」

「からかわないでください、武」

「からかったつもりはないけどね。 まあ、表向き書けないか。 ふふふ…よろしくね、俺のお妃さま」

 からかったつもりはない…と言いながら、しっかり口調は悪のりしている。 挙げ句に『お妃さま』と言われて赤面してしまう。

「周さん、今日はお疲れさまでした。 介添えをありがとうございました。 これは武さまからの御礼の品でごさいます」

 作法に則り夕麿が周に武の御印の刻印された蒔絵細工の小箱を手渡した。

「ありがとうございます。 久我 周、生涯の宝とさせていただきます」

 恭しく周が受け取り、武は安堵の笑みを浮かべた。

「周さん、お願いがあるのですが…」

 帰ろうとした周に慌てて声を掛けた。

「なんでしょう、夕麿さま?」

「…それをやめていただきたいのです。 必要な場所では仕方がありませんが…」

 今なら武が夕麿や義勝たちに、変わらぬ態度を望んだ気持ちが理解出来る。 第一、同じく2つの立場を分けて使わなければならなくなった今、使い分けは必要だとも言える。

「周さん、表向きの事もあるから、使い分けをお願いするよ。 夕麿とは従兄弟同士なんだから、いろいろ面倒だと思うし」

 武が言葉を添えてくれる。

「承知いたしました。

 では、僕はこれで…あ、夕麿、ロサンゼルスにはいつ発つ?」

 すかさず切り替えてくれる心遣いが嬉しい。

「3日後の夕方に学院を出る予定です」

 もっと武の側にいたいが、UCLAの入学式に合わせて帰国しなければならない。 それが譲歩出来るギリギリの日数だった。

「半日で良い、青紫に会いに行って欲しい。 武さまのお怪我から考えても、しばらくは誰も乗ってはやれないだろう?」

「そうですね、今日の夕方にでも顔を出します」

「そうしてやってくれ。 また、僕の愛馬に噛み付かれたらかなわない。

 では武さま、失礼いたします」

「うん、お疲れさま!」

 周には世話になりっぱなしだった。 以前の放蕩無頼ぶりが完全に消えて、穏やかで武に真心から忠義を尽くす姿は、周の本来のもののような気がした。

 貴之にフラレたのが初めての失恋だと零していた。

 夕麿の知る昔の周は優しい兄のような人柄だった。 変わってしまったのは…いつからだろう? 中等部の時は自分の事で手一杯だった。 だからその時期の周の事はよく知らない。知ろうともしていなかった事に今更気付いた。彼の余りの変わり様に戸惑って、以前のように側に近付くのをやめた。あれは周を傷付けたのではないか……と思う。
 
 立ち去って行く周を全員が見送った。

「武さま、少し早いですが昼食に参られませんか?」

 行長の言葉に腕時計を見ると11時半を少し過ぎたところだった。 武は笑顔で頷いたが食欲があるようには見えない。 夕麿はそっと武の腰を抱いて、寮側の食堂へ向かって共にあるき出した。

 食堂には既に疎らに昼食を摂る生徒がいた。 彼らは夕麿と武が来たのを見て、一斉に立ち上がり礼をとった。 ちょっとげんなりした顔で武は、救いを求めるように夕麿を見上げた。 武の気持ちがわかるから、夕麿は生徒たちに呼び掛ける。

「皆さん、武さまの事はもう聞かれたと思います。 しかし武さまはお立場が変わられても、皆さんに今までと変わらない姿勢をお望みです」

 食堂にいた生徒たちは納得してくれた様子で返事をして頭を下げる。

「出来ればここにいない人にも、今の話を伝えていただけますか?」

 ここだけにしない為にもそう頼み込む。 学院を離れる夕麿には後々のフォローは出来ない。だが、行長や周にはそこまで気を回す事を求めるのは、酷だとも思う。 自分や義勝たちのような捨て身で、武を支え守る覚悟は求められない。

 あくまでも彼らには自分の生き方と忠義であって、自分たちのように武に寄り添うのが人生とは思ってはいないだろう。 伴侶として或いは家族として共に歩く選択をした者と、そうではない者とは違うのだという認識が夕麿にはあった。それで良いのだとも思っていた。 だから打てる手は今打っておく。 後から後悔しないように。 共に歩いて行くからこそ自分に出来る事を。

 武が夕麿の袖を掴んで小さく呟いた。

「ありがとう、夕麿」 と。

 それだけで幸せだった。

  
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