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二章:貴方に報復を
壊れた者は叩いて直せ
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フレイア達が向かった場所、アルカーヌムのある酒場は恐ろしいほど鎮まり帰っていた。
外も暗くなったというのに、上の階の酒場にも、下の階、即ちアルカーヌムからも物音一つ聞こえてこない。
普段は悪酔いした客や、ギャンブル中の男たちの雄叫びが嫌というほど聞こえてくるというのに。
試しにドアノブを引いてみると手応えがない。どうやら鍵はかかっていないようだ。
(やっぱり、どこかおかしいのよね)
フレイアが違和感を覚えたのは、マーガレット・ロベリア令嬢の素性調査。ロベルトの素性調査では余計な“純愛気取りのラブストーリー”まで書かれていたのに対して、マーガレットの素っ気ない調査結果は不自然極まりない。
情報源のエッカルトは簡潔にまとめられるたちではないし、自他共に認める快楽主義者だ。調査結果には必ず、“遊び心”を加えてくる。証拠に、ロベルトの調査結果は彼らの不貞を物語風にして書いていた。
(些細なことなのだし気のせいだと思うようにしていたのだけれど、すっきりしないから来てみたのよね)
実際、人の気配がないアルカーヌムは不自然だし、来てみて正解だと言えるのかもしれない。
フレイアたちは人の気配のない酒場にそのまま入り、ワインセラーへと向かう。
コレットとセレストを連れてワインセラーに入り、ワイン樽を動かす。
そこには地下のアルカーヌムに通じる階段があった。エッカルトの営んでいる賭場は正式に許可されたものではないので、入り口がわかりづらいようにしてあるのだ。
地下階段を降りると古い木でできたドアが現れた。
そのドアにも鍵がかかっていないようで、すんなりと開いた。
緊張感の漂うフレイアたちを出迎えたのは、中央の椅子に座ったエッカルトだった。
フレイアは思わず、声を掛けようとした。しかし、彼の様子を見て言葉を飲み込んだ。
エッカルトは、衰弱していた。分かりやすく痩せていた、という訳ではないのだが琥珀色の瞳はくすみ、その場から動かず、瞬きしかしない所を見ると衰弱しているとしか言いようがない。
例えるなら、寝ているような。
体は起きているけれど精神が眠っている、そう表現するのが妥当だった。
「エッカルト」
フレイアの声に反応してエッカルトの眉がぴくり、と動いた。フレイアは彼の反応を見ながら続ける。
「今はどういう状況?」
彼は答えない。静かに佇む彼に早くも痺れを切らしたセレストがビリヤード台を蹴る。
「なんでこいつ黙ってるんだ?壊れた絡繰人形みたいだな」
うんともすんとも言わないエッカルトを見て、フレイアに一つの考えが浮かんだ。
けれど、倫理的にはどうなんだろうか。
フレイアが唸っていると、コレットが一言こう言った。
「お嬢様の思うままになさっても宜しいと思います」
「いいんじゃねーの」
頭の後ろで腕を組みながら、セレストも同調する。
「本当にいいのかしら」
自分でも信じられない程の脳筋的思考。
フレイアは道徳的思考と脳筋的思考を天秤にかけた後、決断した。
道徳的思考を殴り捨てたフレイアは拳を振り上げた。
そのままエッカルトの頬に拳を炸裂させる。
「壊れた者は叩いて直せ、とよく言うでしょう?」
フレイアの言葉に二人は絶句した。
外も暗くなったというのに、上の階の酒場にも、下の階、即ちアルカーヌムからも物音一つ聞こえてこない。
普段は悪酔いした客や、ギャンブル中の男たちの雄叫びが嫌というほど聞こえてくるというのに。
試しにドアノブを引いてみると手応えがない。どうやら鍵はかかっていないようだ。
(やっぱり、どこかおかしいのよね)
フレイアが違和感を覚えたのは、マーガレット・ロベリア令嬢の素性調査。ロベルトの素性調査では余計な“純愛気取りのラブストーリー”まで書かれていたのに対して、マーガレットの素っ気ない調査結果は不自然極まりない。
情報源のエッカルトは簡潔にまとめられるたちではないし、自他共に認める快楽主義者だ。調査結果には必ず、“遊び心”を加えてくる。証拠に、ロベルトの調査結果は彼らの不貞を物語風にして書いていた。
(些細なことなのだし気のせいだと思うようにしていたのだけれど、すっきりしないから来てみたのよね)
実際、人の気配がないアルカーヌムは不自然だし、来てみて正解だと言えるのかもしれない。
フレイアたちは人の気配のない酒場にそのまま入り、ワインセラーへと向かう。
コレットとセレストを連れてワインセラーに入り、ワイン樽を動かす。
そこには地下のアルカーヌムに通じる階段があった。エッカルトの営んでいる賭場は正式に許可されたものではないので、入り口がわかりづらいようにしてあるのだ。
地下階段を降りると古い木でできたドアが現れた。
そのドアにも鍵がかかっていないようで、すんなりと開いた。
緊張感の漂うフレイアたちを出迎えたのは、中央の椅子に座ったエッカルトだった。
フレイアは思わず、声を掛けようとした。しかし、彼の様子を見て言葉を飲み込んだ。
エッカルトは、衰弱していた。分かりやすく痩せていた、という訳ではないのだが琥珀色の瞳はくすみ、その場から動かず、瞬きしかしない所を見ると衰弱しているとしか言いようがない。
例えるなら、寝ているような。
体は起きているけれど精神が眠っている、そう表現するのが妥当だった。
「エッカルト」
フレイアの声に反応してエッカルトの眉がぴくり、と動いた。フレイアは彼の反応を見ながら続ける。
「今はどういう状況?」
彼は答えない。静かに佇む彼に早くも痺れを切らしたセレストがビリヤード台を蹴る。
「なんでこいつ黙ってるんだ?壊れた絡繰人形みたいだな」
うんともすんとも言わないエッカルトを見て、フレイアに一つの考えが浮かんだ。
けれど、倫理的にはどうなんだろうか。
フレイアが唸っていると、コレットが一言こう言った。
「お嬢様の思うままになさっても宜しいと思います」
「いいんじゃねーの」
頭の後ろで腕を組みながら、セレストも同調する。
「本当にいいのかしら」
自分でも信じられない程の脳筋的思考。
フレイアは道徳的思考と脳筋的思考を天秤にかけた後、決断した。
道徳的思考を殴り捨てたフレイアは拳を振り上げた。
そのままエッカルトの頬に拳を炸裂させる。
「壊れた者は叩いて直せ、とよく言うでしょう?」
フレイアの言葉に二人は絶句した。
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