嘘つきな貴方を捨てさせていただきます

梨丸

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二章:貴方に報復を

奈落の底へ

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「流石にそれでは……」

「何するんだよ、お嬢」

コレットとセレストの想像に反して、エッカルトは“目覚めた”。エッカルトの瞳に光が戻る。
殴られた痕を手で抑えながら、拗ねた子供のようにフレイアを見つめる。

「実力行使と言ったところかしら」

真顔で謎の誤魔化しをするフレイアにエッカルトは吹き出した。

「なにそれ!本当にお嬢は面白いね」

フレイアとエッカルトの会話についていけないコレットたちは呆然としている。
そんな二人に気付いたのか、エッカルトは手を足の上で組み、喋り出した。

「魔法をかけられたんだ。概要はよくわからないけど……、俺は魔法っぽいので眠らされてから、ずっと夢を見てたんだ。恐らく人間を夢に閉じ込めるか、夢に干渉する魔法だろうね。その間に衰弱はしていないし、夢を見せている間はもぬけの殻になってて人間、と言うより人形の状態になるのかな」

「誰にやられたの?」

「マーガレットだよ。俺が調べてた

爽やかとも言える笑顔であっさりと答える。

「いやあ、お嬢が殴ってくれなかったらずっとこのままだったよ」

笑顔で頭を軽く掻いてから、身を乗り出し声のトーンを下げる。

「俺がお嬢にマーガレットの素性調査を送る時に魔法をかけられたみたいだし、彼女は俺の調べた情報を知られたくなかったんだろうね。まあ、理解はできるよ」

同情を含んだ声色でエッカルトは言う。

「マーガレットの素性調査、聞く?」

「勿論よ」

真っ直ぐなフレイアの眼差しにエッカルトは意気揚々と頷いた。

「じゃあ、教えてあげる」

そして、一枚の写真を取り出す。

「これ、誰でしょう」

写真の色白の少女は肩まで流したストロベリーブロンドを三つ編みにし、柔らかい笑みを浮かべていた。

「マーガレット……?」

「違うよ」

「じゃあ、誰?」

「マーガレットのお姉さん」

フレイアは目を瞬いた。

「……マーガレットには双子の姉がいたんだ。そっくりの、ね」

寂しさを感じさせる声色でエッカルトは呟いた。

その他にも沢山の資料が提示されていき、マーガレットのこれまでの行動が直線で結ばれていく。

「まさか──……」

フレイアは息を飲んだ。


──

実の父からの勘当宣言後、フレイアから慰謝料を請求されているという旨の連絡を受けたロベルトは頭を掻きむしった。もうどうにもならない。

「どうすればいいんだ……!」

醜聞が撒き散らされたことで社交界にもロベルトの居場所はなく、家からも見放された今、ロベルトには負債が積み上がっていた。公爵家の面汚しとして、もう直ぐ屋敷を出ないといけない。

絶望で頭が真っ白になった時、一人の令嬢が頭に浮かんだ。
それは、マーガレット。

(マーガレットと、駆け落ちしよう)

ロベルトが思い付いたのはこれだった。
駆け落ちさえすれば二人の純愛は護られるしハッピーエンドではなかろうか、と。

思い立ったが吉日。ロベルトはクローゼットからなけなしの宝石類をかき集め、鞄に詰め込んだ。
家の物を盗んだということからの罪悪感と高揚感がロベルトを支配し、心臓がドクドクと鳴る。

ロベルトは屋敷を抜け出し、ロベリア男爵家の屋敷へと向かった。

ロベルトが屋敷に到着し、どこから侵入しようかと試行錯誤しているとマーガレットが現れた。

「ロベルト、来てくれたの?」

感動からか、涙で瞳を潤ませてロベルトに縋り付く。

小さくて、可愛らしい僕のマーガレット。

ロベルトは優越感に浸りながらも、近くにいた馬車の御者に宝石を幾つか握らせて隣国へ行くようにと指示をした。

隣国にあともう少し、という所には急な崖があり、マーガレットは馬車が揺れるたびにロベルトにしがみついた。
可愛らしい悲鳴をあげながら。

ガタン、と大きく馬車が揺れた。
マーガレットは再びロベルトにしがみついた──まま、彼を抱きしめるようにしていつの間にか開いていた扉に体重を乗せた。

ロベルトは目を見開き、マーガレットの方を見やる。
彼女は今まで彼が見たことのないほど幸せそうな顔をして笑っていた。


──二人はそのまま宙を舞った。



────
第二章はこれで終わりです。
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