13 / 31
差し迫った危機
冬の到来
——冬が来た。
徐々に下がっていく気温。
鈍く動かなくなる身体。
草は初めての冬に戸惑い、まだ青葉を茂らせている。
地上よりも、水中の方が温かい事が増え。
地中で殻をまとって冬眠するよう指示を出したスライムたちは、土の中へと潜り。
身体の水分を凍らないようにしたスライムたちは、それでも冷える身体を水に沈め。
体温を手に入れたスライムたちは、まだ元気に動いていた。
(寒いというより、痛い……)
何も対策をしなければどうなっていたのか。
それを確かめるため、俺自身は夏の戒めのためにも、“進化”を保留していた。
自分自身に遺伝子操作を行なうのは、すぐにできるからと言うのもある。
(凍り付いてしまった身体を無理矢理動かそうとするのは、人間でいう“肉離れ”みたいだ)
川に浸かって温まりながら、俺は身体の水分を不凍液化させた。
踏みつけた、凍ってしまっていた青葉は砕け、一歩間違えれば俺自身もこうなるのだろうかと身震いする。
(やはり“進化”の保留は間違っていたのか?)
川の流れに身を任せ、陸を眺める。
今の所は大丈夫だが、身体を不凍液化させるには、それなりの魔力が必要だった。
体温を持つようにしたスライムたちが体温を保つのなら、魔力は使い続けなければならないだろう。
(空気中などから吸収できる魔力には、限界がある。もし、使用する魔力が吸収魔力を上回ってしまったら…?)
水に身を沈めながら、俺はごく自然な疑問を抱いていた。
(俺はこのまま川に流されてしまえば、海に出られる。でも他のスライムたちはそうじゃない)
海底に沈んでしまえば、地上の冷たさからは逃れられるだろう。
しかし海に辿り着けず、魔力も枯渇してしまう個体が現れれば。
(——そのスライムは死んでしまう)
それは運命ではない。
自然でもない。
これは明確な俺の罪だ。
俺自身が選ばせた、仲間の“死”への道。
ふと、遠くの“共鳴”が途絶える。
仲間のひとつが、完全に沈黙した。
(俺が選んだ、最初の“死”だ)
間に合わなかった仲間が、これから次々と死に絶えていくだろう。
この手の届かない所で、静かに凍って。
ただ降り積もる雪の中に、埋もれていった“命”だった。
——海の底は、静かだった。
波の音さえ遠く、陸の冷たさも感じない。
海面に居たクラゲは凍ってしまった事で、夏と同じように死んでしまったが、大半の生物は生きている。
(海は、優しい……)
仲間を死なせるしかなかった俺も、受け入れてくれる。
(——俺は神じゃない)
全ての結果が分かる訳ではないし、思い通りにできる訳でもない。
(俺は“親”だ)
生き物たちは俺の意思で、俺の手で生み出した子供たち。
環境の厳しさに直面したのだとしても、全て淘汰されてしまうのは防がなければいけない。
創る事と守る事。
それが俺がこの世界にできる事だ。
徐々に下がっていく気温。
鈍く動かなくなる身体。
草は初めての冬に戸惑い、まだ青葉を茂らせている。
地上よりも、水中の方が温かい事が増え。
地中で殻をまとって冬眠するよう指示を出したスライムたちは、土の中へと潜り。
身体の水分を凍らないようにしたスライムたちは、それでも冷える身体を水に沈め。
体温を手に入れたスライムたちは、まだ元気に動いていた。
(寒いというより、痛い……)
何も対策をしなければどうなっていたのか。
それを確かめるため、俺自身は夏の戒めのためにも、“進化”を保留していた。
自分自身に遺伝子操作を行なうのは、すぐにできるからと言うのもある。
(凍り付いてしまった身体を無理矢理動かそうとするのは、人間でいう“肉離れ”みたいだ)
川に浸かって温まりながら、俺は身体の水分を不凍液化させた。
踏みつけた、凍ってしまっていた青葉は砕け、一歩間違えれば俺自身もこうなるのだろうかと身震いする。
(やはり“進化”の保留は間違っていたのか?)
川の流れに身を任せ、陸を眺める。
今の所は大丈夫だが、身体を不凍液化させるには、それなりの魔力が必要だった。
体温を持つようにしたスライムたちが体温を保つのなら、魔力は使い続けなければならないだろう。
(空気中などから吸収できる魔力には、限界がある。もし、使用する魔力が吸収魔力を上回ってしまったら…?)
水に身を沈めながら、俺はごく自然な疑問を抱いていた。
(俺はこのまま川に流されてしまえば、海に出られる。でも他のスライムたちはそうじゃない)
海底に沈んでしまえば、地上の冷たさからは逃れられるだろう。
しかし海に辿り着けず、魔力も枯渇してしまう個体が現れれば。
(——そのスライムは死んでしまう)
それは運命ではない。
自然でもない。
これは明確な俺の罪だ。
俺自身が選ばせた、仲間の“死”への道。
ふと、遠くの“共鳴”が途絶える。
仲間のひとつが、完全に沈黙した。
(俺が選んだ、最初の“死”だ)
間に合わなかった仲間が、これから次々と死に絶えていくだろう。
この手の届かない所で、静かに凍って。
ただ降り積もる雪の中に、埋もれていった“命”だった。
——海の底は、静かだった。
波の音さえ遠く、陸の冷たさも感じない。
海面に居たクラゲは凍ってしまった事で、夏と同じように死んでしまったが、大半の生物は生きている。
(海は、優しい……)
仲間を死なせるしかなかった俺も、受け入れてくれる。
(——俺は神じゃない)
全ての結果が分かる訳ではないし、思い通りにできる訳でもない。
(俺は“親”だ)
生き物たちは俺の意思で、俺の手で生み出した子供たち。
環境の厳しさに直面したのだとしても、全て淘汰されてしまうのは防がなければいけない。
創る事と守る事。
それが俺がこの世界にできる事だ。
あなたにおすすめの小説
追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件
言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」
──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。
だが彼は思った。
「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」
そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら……
気づけば村が巨大都市になっていた。
農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。
「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」
一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前!
慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが……
「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」
もはや世界最強の領主となったレオンは、
「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、
今日ものんびり温泉につかるのだった。
ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。