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脱獄しました4
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時刻は真夜中。
最低限の警護を除き、王都の住人は皆寝静まっていた。
出会った者に片っ端から“スリープ”をかけて、私は何とか王宮から脱出に成功した。
使用人の通用門を出て街へと向かう。
王都は街の中心にいくほど身分の高い人が住む構造だ。中央に王の住む宮殿、周囲に貴族街があって、その外に商業区、平民の居住区となっている。
「貴族街までは、レイナの顔を覚えている人がいて気が抜けない。でも、平民の居住区に入ればたぶん大丈夫だろうな」
この世界では顔より名前が重要だ。逃亡者を探すときは、特殊な水晶玉を使い、名前を鑑定して罪人か判定する。偽名を使っていても、真の名は変えられない。だから、変装できる外見よりも、水晶が映し出す名前の方に信頼が置かれていた。
仮にレイナの外見を知っている人がいて、見た目が似ていると思われたとしても、名前が違えば見逃されるはずだ。
平民の居住区で“鈴木麗奈”として生活基盤を作る。そうすれば、“レイナ・ヴェネディクト”のしがらみから解放されると思う。
「麗奈のジョブが神聖術士で良かった。いわゆるヒーラーだから、仕事に使えそう」
ゲーム世界では、みんな戦闘系のジョブを取っていたけど、実際の街にいる人のジョブは、“町人”とか“〇〇職人”とかそんなのだと思う。治癒能力があれば、何かしらお金を稼ぐ手段になるだろう。
貴族街を通り抜ける。
周囲は真っ暗だ。
魔道具のランプはそこそこ希少で、燃料の魔石にも費用がかかる。貴族と言えど、夜中にずっと煌々と明かりをつけてはいられない。
貴族街から商業区に抜けるところにまた門があった。
門兵を素早く“スリープ”で眠らせる。
スリープの魔法にかかった者は、立ったまま寝る。ゲーム画面で見ていても違和感があったけど、目の前の人が脚を踏ん張りながら寝ているのはさらに変だった。効果時間は相手のステータスによるが、長くても15分程度だから、急いで移動した。
牢獄以外の門や壁は破壊せず逃げられたから、痕跡は残らないはずだ。これで、追跡を振り切って、レイナは忽然と姿を消したことになるといいんだけど。
最低限の警護を除き、王都の住人は皆寝静まっていた。
出会った者に片っ端から“スリープ”をかけて、私は何とか王宮から脱出に成功した。
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「貴族街までは、レイナの顔を覚えている人がいて気が抜けない。でも、平民の居住区に入ればたぶん大丈夫だろうな」
この世界では顔より名前が重要だ。逃亡者を探すときは、特殊な水晶玉を使い、名前を鑑定して罪人か判定する。偽名を使っていても、真の名は変えられない。だから、変装できる外見よりも、水晶が映し出す名前の方に信頼が置かれていた。
仮にレイナの外見を知っている人がいて、見た目が似ていると思われたとしても、名前が違えば見逃されるはずだ。
平民の居住区で“鈴木麗奈”として生活基盤を作る。そうすれば、“レイナ・ヴェネディクト”のしがらみから解放されると思う。
「麗奈のジョブが神聖術士で良かった。いわゆるヒーラーだから、仕事に使えそう」
ゲーム世界では、みんな戦闘系のジョブを取っていたけど、実際の街にいる人のジョブは、“町人”とか“〇〇職人”とかそんなのだと思う。治癒能力があれば、何かしらお金を稼ぐ手段になるだろう。
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・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
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