断罪済み悪役令嬢に憑依したけど、ネトゲの自キャラ能力が使えたので逃げ出しました

八華

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ダンジョンに行きました1

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 早朝。
 日が昇ると同時に、アンジェラさんの家を訪問した。先方も準備できていたみたいで、すぐに出てきてくれた。

「おはようございます。お待たせしましたか?」

「いや、時間通りだったよ」

 と、答えてくれたのは、昨日も会った男の冒険者のジョンさん。15歳のときからアンジェラさんとパーティーを組んでいる盾術士だそうだ。現在19歳。

「おはよう。今日はよろしくね」

 女性の方は魔術士。17歳のローラさん。アンジェラさんとはパーティーを組んで1年になるらしい。
 現在のアンジェラさんパーティーはこの3名だそうだ。
 アンジェラさんは有望な冒険者の若者とパーティーを組んで育てている。その有望な若者をしっかり優秀な冒険者に育てると、より強い冒険者に紹介して迷宮都市に送り出しているそうだ。今はちょうど、2人の冒険者をBランクにして見送ったところということだった。

「実はジョンもBランクなんだ。ただ、こいつはローラが上がるまで待つと言ってうちに居座ってるんだよ」

 とは昨日聞いた話。ジョンさんとローラさんは恋仲だそうだ。

「それじゃあ、行こうか。」

 アンジェラさんを先頭に、王都の北門に向かって歩き出した。
 目的のダンジョンはここから北の街道を進んだところにあり、専用の竜馬車で移動できるらしい。



 ダンジョンは洞窟タイプで、ときどき分岐する迷路のような道が続いていた。ところどころに光る石があり、視界は確保されている。
 出てくる魔物はゲームの設定と同じならレベル20前後だと思う。ただ、鑑定はできなかった。
 ゲームとだいたい同じ設定にはなっていそうだけど、自分以外のレベルやステータスを見る手段は不明のままだ。
 教会の巨大水晶で分かるのは大まかな適正。冒険者ギルドの水晶玉で分かるのは、登録された名前とジョブ、犯罪歴だけだった。

 冒険者ギルドのランクと適正ダンジョンの組み合わせから見るに、
 ランクD:レベル10~
 ランクC:レベル20~
 ランクB:レベル30~
 ランクA:レベル40~
 程度になると予想している。

 ランクCのダンジョンを1人足りない4人パーティーでさくさく進められるアンジェラさんパーティーは、全体でランクBに近い実力だと思う。
 怪我で動きが鈍っているアンジェラさんだけど、攻撃力自体はAランクの強さだから、この辺の魔物だと一撃で倒せることが多い。
 回避にやや難のあるアンジェラさんなので、盾役のジョンさんがしっかり守らないといけないんだけど、そのジョンさんもBランクだ。
 この2人だけでもこのダンジョンは踏破可能っぽい。けれど、今はランク上げが必要なローラさん主体で戦っていた。

「ライトヒール!」

 私は時々ジョンさんとローラさんに初級の回復魔法をかけていた。
 ゲームでちょっとだけHPが減ったくらいの状態は、この世界だと筋肉疲労や神経の疲れにあたるようだ。特に、魔物の攻撃を盾で受けるジョンさんは、防御に成功しても衝撃ダメージが蓄積するらしい。

「ありがとう。さっきから時々ヒールをもらっていると全然疲れない。ヒーラーがいなくても、怪我をしなければ大丈夫だと思っていたけど、全然違うな」

「私も。いくら魔法を打ってもいつもの頭痛がこないからびっくりしたわ」

 アンジェラさんの以前のパーティーにヒーラーはいなくて、怪我をしたら回復薬を使っていたそうだ。
 ゲームでのバランスだと、ヒーラーが不足することはなかったけど、それは、バトルしかすることのないゲームだったからだ。
 現実になれば、ヒーラーは街で十分仕事を見つけられる。ダンジョンに入るヒーラーは少ない。冒険者はヒーラーなしで、回復薬を常備して、実力より低いダンジョンに入っているようだ。
 レイナの記憶から推測すると、この世界でレベル40以上の人はかなり少ないと思う。ゲームとちがって負けたら現実に死亡する上に、ヒーラーまで希少なのだ。みんな、安全なダンジョンを選ぶから、獲得経験値が少なくなる。レベル上げは難しいみたいだった。


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