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国家機密
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目を覚ますと知らない天井が見えた。
私の家にあるはずのない高級寝具。大慌てで上体を起こした。
窓から差し込む光の感じからすると、まだ午前中だ。でも、そこそこ日が高くなるまで寝ていたようだ。
周囲をキョロキョロする。意識を失う前にいたラヴェンナ様の私室ではなさそうだ。置いてある家具の感じ、女の人が泊まることを想定している。
何となくそうかなと思って、部屋のクローゼットを開けてみると、女性用にしてはやけにサイズの大きなワンピースやドレスが入っていた。
多分、この部屋は私が暮らすことを前提に整えられている。全体に背の高い人に向いた家具なのに女性的という珍しいものが揃えられていて、私の髪と似た色で飾られていた。
「こ…公爵家の財力を舐めてた……」
私相手にここまでするのかっ!!!
部屋の中を動き回っていると、入り口のドアがノックされた。メイドの格好をした女性が入ってきて、身支度を手伝われた。その後、部屋に朝食が運ばれてきた。
こんなの正直遠慮したいのだけど、私は王太子殿下に寄越された身で、公爵邸の人にとって、それを雑に扱うことは絶対にできないそうだ。
もう、どうしていいか分からなくて、されるがままになってしまった。
朝食後、ラヴェンナ様に呼ばれて彼の執務室に向かった。
目の前のラヴェンナ様はいつも通り優しそうな雰囲気だが、この部屋には私と彼の他に誰もおらず、さらに、高度な盗聴防止結界が張られていた。
「気分はどうかな、クロスフォード男爵」
「はい。お蔭様でよく眠れてすっきりしております」
服とかお礼を言うべきかな。
でも、防諜結界まで張られてるなら、それどころじゃない重要な話がくるんだろうな。
「体調の変化は?」
「おそらく、魔力量が上がっています。試してみないと何ともですが」
感知系は苦手だから、正確には分からない。でも、元気が有り余ってる気がする。騎士団の訓練所に戻って、鍛錬でもしていたいなぁ。
「うん、そうだね。今だと、下位の宮廷子爵と同じくらいになってるよ。でもこれ、まだ途中なんだけどね」
「途中、ですか?」
「昨日と同じことを何回か繰り返して、最終的には宮廷伯爵になれるくらい上がると思う。」
「は…はくしゃ……」
宮廷貴族最上位じゃないか!
声に出すと顎が外れそうだ。もう限界なくらい驚いている。でも、ラヴェンナ様はニコニコしながら容赦なく追撃してきて、
「ものすごい国家機密に触れちゃったね?」
イケメンの爽やかな笑顔で、精神的に粉々にされた。
「王国騎士団の寮から、必要な荷物はこちらに全部運んできて。今はまだバレないと思うから、顔を見ておきたい知り合いとも会っておきなさい。君はこれから、私がとても気に入って側から離さない女性ってことになるから」
「……はい」
そのための、愛人設定だったのか。やっと謎が解けた。
「外国貴族との婚姻ってね、もともとは王族の血が濃くなりすぎたときの調整に使われるやり方なんだ。今の王太子、カルロス様は歴代の王族の良いところ取りをしたみたいな能力をお持ちでね、素晴らしいけど、次代には新しい血が必要になる」
それが、外国貴族を母に持つエリカ王太子妃か。
「今までだと、次代のほとんどは能力が下がり、その中で比較的安定した者と、国内貴族の優秀な者とを婚姻させて、徐々に血を強めていくという流れだった」
私の祖母は王の孫でありながら魔力に恵まれなかった人だ。でも、その弟は領地持ちの女侯爵に婿入りしていた。そうやって、血を混ぜていたのか。
「他所の国でも似たようなやり方で血統を管理している。けれど、昨日の術式の開発が進めば、他国貴族の優れた能力を、王国人に取り込むことができる」
……どうやら私は、とんでもない機密情報を抱える身体になってしまったようだった。
私の家にあるはずのない高級寝具。大慌てで上体を起こした。
窓から差し込む光の感じからすると、まだ午前中だ。でも、そこそこ日が高くなるまで寝ていたようだ。
周囲をキョロキョロする。意識を失う前にいたラヴェンナ様の私室ではなさそうだ。置いてある家具の感じ、女の人が泊まることを想定している。
何となくそうかなと思って、部屋のクローゼットを開けてみると、女性用にしてはやけにサイズの大きなワンピースやドレスが入っていた。
多分、この部屋は私が暮らすことを前提に整えられている。全体に背の高い人に向いた家具なのに女性的という珍しいものが揃えられていて、私の髪と似た色で飾られていた。
「こ…公爵家の財力を舐めてた……」
私相手にここまでするのかっ!!!
部屋の中を動き回っていると、入り口のドアがノックされた。メイドの格好をした女性が入ってきて、身支度を手伝われた。その後、部屋に朝食が運ばれてきた。
こんなの正直遠慮したいのだけど、私は王太子殿下に寄越された身で、公爵邸の人にとって、それを雑に扱うことは絶対にできないそうだ。
もう、どうしていいか分からなくて、されるがままになってしまった。
朝食後、ラヴェンナ様に呼ばれて彼の執務室に向かった。
目の前のラヴェンナ様はいつも通り優しそうな雰囲気だが、この部屋には私と彼の他に誰もおらず、さらに、高度な盗聴防止結界が張られていた。
「気分はどうかな、クロスフォード男爵」
「はい。お蔭様でよく眠れてすっきりしております」
服とかお礼を言うべきかな。
でも、防諜結界まで張られてるなら、それどころじゃない重要な話がくるんだろうな。
「体調の変化は?」
「おそらく、魔力量が上がっています。試してみないと何ともですが」
感知系は苦手だから、正確には分からない。でも、元気が有り余ってる気がする。騎士団の訓練所に戻って、鍛錬でもしていたいなぁ。
「うん、そうだね。今だと、下位の宮廷子爵と同じくらいになってるよ。でもこれ、まだ途中なんだけどね」
「途中、ですか?」
「昨日と同じことを何回か繰り返して、最終的には宮廷伯爵になれるくらい上がると思う。」
「は…はくしゃ……」
宮廷貴族最上位じゃないか!
声に出すと顎が外れそうだ。もう限界なくらい驚いている。でも、ラヴェンナ様はニコニコしながら容赦なく追撃してきて、
「ものすごい国家機密に触れちゃったね?」
イケメンの爽やかな笑顔で、精神的に粉々にされた。
「王国騎士団の寮から、必要な荷物はこちらに全部運んできて。今はまだバレないと思うから、顔を見ておきたい知り合いとも会っておきなさい。君はこれから、私がとても気に入って側から離さない女性ってことになるから」
「……はい」
そのための、愛人設定だったのか。やっと謎が解けた。
「外国貴族との婚姻ってね、もともとは王族の血が濃くなりすぎたときの調整に使われるやり方なんだ。今の王太子、カルロス様は歴代の王族の良いところ取りをしたみたいな能力をお持ちでね、素晴らしいけど、次代には新しい血が必要になる」
それが、外国貴族を母に持つエリカ王太子妃か。
「今までだと、次代のほとんどは能力が下がり、その中で比較的安定した者と、国内貴族の優秀な者とを婚姻させて、徐々に血を強めていくという流れだった」
私の祖母は王の孫でありながら魔力に恵まれなかった人だ。でも、その弟は領地持ちの女侯爵に婿入りしていた。そうやって、血を混ぜていたのか。
「他所の国でも似たようなやり方で血統を管理している。けれど、昨日の術式の開発が進めば、他国貴族の優れた能力を、王国人に取り込むことができる」
……どうやら私は、とんでもない機密情報を抱える身体になってしまったようだった。
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