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王太子妃様
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ルクソール公爵邸に戻ると、本格的にラヴェンナ様の施術が始まった。
少しずつ魔力回路を開き、何でも良いから魔法を使って身体を慣らして、続きの回路を開いていく。
増えた魔力を動かす訓練は、ルクソール邸の敷地内だけで目立たずやらなきゃいけないので、私は結界魔術で練習した。身体を鈍らせないために剣の素振りは毎日続けたけど、敷地の制限があるから、身体強化に慣らすのは後回しだ。
このまま、ヒューゴ様に言われた通り、障壁専門の魔導士になろうかな。信じられないくらい魔力量が上がってきたので、今なら障壁専門でも十分働けると思う。
「今日は一緒に王宮に来てもらうよ。妹に何度も言われて、断りきれなかった」
引きこもりの毎日で、久しぶりの外出は、まさかの王太子妃様との謁見だった。
「その前に、ちょっと失礼」
ラヴェンナ様が私の額に指先で触れると、そこから私の身体を覆う魔術式の膜のようなものができた。
「この屋敷の中は多種の結界が設置されているからいいけど、外に出るときは気を付けないとね」
私の増えた魔力を誤魔化すための魔法らしい。そんな術があるなんて、聞いたこともない。
「珍しい魔法でしょ。使える人は世界でも少ないよ」
国どころか世界レベルですか。
馬車に乗って王宮へ向かい、王太子妃様がいらっしゃる奥の宮まで進む。
私は仕事の出来そうな黒いスーツ姿で、ラヴェンナ様の後ろに従っていた。周囲からは華奢で繊細な公子を護る武官に見えているだろう。絶対に愛人枠ではない。
王太子妃様の待つ部屋に入ると、中には、王太子妃様と、他に2人の可愛らしい女性がいた。
中央にいらっしゃるラヴェンナ様とそっくりのお顔の方が、王太子妃のエリカ様だ。今の王国で最も愛される容姿とされている。
ラヴェンナ様と同じ肌理の細かい肌に、少し吊り目でお顔立ちはキリっとされている。それだけだとキツく見えそうだが、骨格が細く華奢な輪郭が、壊れやすい硝子細工のような魅力を生んでいた。
隣の、ピンクのふわふわの髪にパステルカラーのドレスがこれでもかと似合っていらっしゃるのは、エリカ様の親友といわれるマリア様。宰相家の長男の奥方だ。
マリア様の向かいのソファに座られている金髪の小さな女の子は、おそらくカレン王女だろう。まだ幼い方なので、私は遠目にも拝見したことがなかったけど。
彼女はドアが開いてからずっと、ラヴェンナ様に視線がくっついたまま離れなくなっていらっしゃる。キラキラした瞳には、本当に彼しか映っていなさそうだ。
しかし、この部屋全体が高貴なオーラで溢れているいるなぁ。調度品も細部まで繊細に作られていて、主人を引き立てているようだ。中にいる方々は、同じ人間と思えないくらい可愛い、妖精かなんかに見えるよ。
「お兄様、後ろの女性が噂のお気に入りの愛人? 残念ですけど、釣り合っていませんわよ」
可愛らしい妖精さんの口から、いきなりナイフがぶっ飛んできた。
「私も驚きましたわ。私たちと近い年齢に、こんなに目を惹く麗人がいたなんて」
隣のマリア様からもよく分からない嫌味?が飛んできた。マリア様、見た目は性格良さそうなんだけどなぁ。
マリア様が私を知らないのは当然ですよ。下っ端男爵と上流貴族の方は、同じ夜会に出たとしても居るエリアが違うんで。
「ひょろモヤシのお兄様の横に置いておくのは勿体ないわ。別れなさい」
何ていうか、ご兄妹で同じ顔をされているけど、性格は全然違うんだなぁ。エリカ様の方が思ったことをズバズバ言われるらしい。
「あはは、エリカは相変わらずだね」
ラヴェンナ様はマイペースに微笑んでいらっしゃる。この感じがご兄妹の自然体なんだろうか。
少しずつ魔力回路を開き、何でも良いから魔法を使って身体を慣らして、続きの回路を開いていく。
増えた魔力を動かす訓練は、ルクソール邸の敷地内だけで目立たずやらなきゃいけないので、私は結界魔術で練習した。身体を鈍らせないために剣の素振りは毎日続けたけど、敷地の制限があるから、身体強化に慣らすのは後回しだ。
このまま、ヒューゴ様に言われた通り、障壁専門の魔導士になろうかな。信じられないくらい魔力量が上がってきたので、今なら障壁専門でも十分働けると思う。
「今日は一緒に王宮に来てもらうよ。妹に何度も言われて、断りきれなかった」
引きこもりの毎日で、久しぶりの外出は、まさかの王太子妃様との謁見だった。
「その前に、ちょっと失礼」
ラヴェンナ様が私の額に指先で触れると、そこから私の身体を覆う魔術式の膜のようなものができた。
「この屋敷の中は多種の結界が設置されているからいいけど、外に出るときは気を付けないとね」
私の増えた魔力を誤魔化すための魔法らしい。そんな術があるなんて、聞いたこともない。
「珍しい魔法でしょ。使える人は世界でも少ないよ」
国どころか世界レベルですか。
馬車に乗って王宮へ向かい、王太子妃様がいらっしゃる奥の宮まで進む。
私は仕事の出来そうな黒いスーツ姿で、ラヴェンナ様の後ろに従っていた。周囲からは華奢で繊細な公子を護る武官に見えているだろう。絶対に愛人枠ではない。
王太子妃様の待つ部屋に入ると、中には、王太子妃様と、他に2人の可愛らしい女性がいた。
中央にいらっしゃるラヴェンナ様とそっくりのお顔の方が、王太子妃のエリカ様だ。今の王国で最も愛される容姿とされている。
ラヴェンナ様と同じ肌理の細かい肌に、少し吊り目でお顔立ちはキリっとされている。それだけだとキツく見えそうだが、骨格が細く華奢な輪郭が、壊れやすい硝子細工のような魅力を生んでいた。
隣の、ピンクのふわふわの髪にパステルカラーのドレスがこれでもかと似合っていらっしゃるのは、エリカ様の親友といわれるマリア様。宰相家の長男の奥方だ。
マリア様の向かいのソファに座られている金髪の小さな女の子は、おそらくカレン王女だろう。まだ幼い方なので、私は遠目にも拝見したことがなかったけど。
彼女はドアが開いてからずっと、ラヴェンナ様に視線がくっついたまま離れなくなっていらっしゃる。キラキラした瞳には、本当に彼しか映っていなさそうだ。
しかし、この部屋全体が高貴なオーラで溢れているいるなぁ。調度品も細部まで繊細に作られていて、主人を引き立てているようだ。中にいる方々は、同じ人間と思えないくらい可愛い、妖精かなんかに見えるよ。
「お兄様、後ろの女性が噂のお気に入りの愛人? 残念ですけど、釣り合っていませんわよ」
可愛らしい妖精さんの口から、いきなりナイフがぶっ飛んできた。
「私も驚きましたわ。私たちと近い年齢に、こんなに目を惹く麗人がいたなんて」
隣のマリア様からもよく分からない嫌味?が飛んできた。マリア様、見た目は性格良さそうなんだけどなぁ。
マリア様が私を知らないのは当然ですよ。下っ端男爵と上流貴族の方は、同じ夜会に出たとしても居るエリアが違うんで。
「ひょろモヤシのお兄様の横に置いておくのは勿体ないわ。別れなさい」
何ていうか、ご兄妹で同じ顔をされているけど、性格は全然違うんだなぁ。エリカ様の方が思ったことをズバズバ言われるらしい。
「あはは、エリカは相変わらずだね」
ラヴェンナ様はマイペースに微笑んでいらっしゃる。この感じがご兄妹の自然体なんだろうか。
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