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憧れの人
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「エリーゼ、なんか以前より強くなってるんじゃない?」
友人の1人に指摘されたけど、体調が良かった程度でごまかした。1日で数人と手合わせすると、さすがにくたびれた。周りにも呆れられて、早めに訓練を上がろうかとしていると、
「今日はヒューゴ副団長がここの訓練場を使っているそうだよ」
と、教えてもらえた。
「それじゃ、見学に行こうかな」
ヒューゴ副団長は、私の2歳年上で、カルロス王太子やラヴェンナ様と同じ20歳。
現在の騎士団長のご子息なんだけど、騎士団に入って1年で副団長になられたのは、実力でだ。とにかくお強い。
もちろん魔力も高いけれど、身体強化魔法を使ったインファイトが得意な方で、私とスタイルが似ているので、参考にさせてもらっている。彼が訓練場を使う日は、よく見学に行っていた。彼を見られるのも、今日が最後になるかもしれない。
ヒューゴ副団長が訓練されている場所には人垣ができているので、簡単に見つけることができた。
今は他の騎士団員と手合わせをされているところのようで、重そうな大剣を片手で軽々と振っておられる。2メートル近い長身でがっしりされているがスピードもある。肌はよく日に焼けていて、髪の毛は地味なこげ茶色だけど、イケメンだから女性からは黄色い声があがっていた。
ヒューゴ様は魔力を抑えて、剣の腕のみで手合わせされているようだ。しばらくして決着がつくと、自然と拍手が起こっていた。
彼は周囲の歓声に手を振って応えながら私たちの方を見回してくれたので、私もミーハーよろしく手を振ってみた。
「?」
一瞬、ヒューゴ様と目が合った気がした。アイドルを見たファンの心境かな。学生時代、女友達がよく話していた。
「今日はたくさん見にきたな。折角だから、この中から何人か手合わせするか」
突然のヒューゴ様の提案に、ギャラリーが歓声をあげた。自分を指さしてアピールする者もいる。
ヒューゴ様は最初に、そのよくアピールしていた男性と試合されることにした。その人も男爵だったみたいで、普通に戦うと弱すぎてヒューゴ様の相手にならない。でも、ヒューゴ様は自分の魔力使用を制限して何度か打ち合った後、彼にいくつかアドバイスされていた。羨ましすぎる。
「じゃあ次は、そこの赤い髪の彼女、いってみる?」
3人目の相手に、ヒューゴ様はまさかの私を指名された。
これは、一生の思い出にできそうだ。
「君は・・・、エリーゼ・クロスフォード男爵だったな」
「はい。よろしくお願いします」
さすがヒューゴ副団長。下っ端の名前まで全部覚えていらっしゃる。
「君は好きに魔法を使っていい。俺の方は、男爵が使う程度まで魔力を抑えておく」
「はい」
私の戦闘スタイルは、右手に剣、左に盾の代わりに、自分の魔術でシールドを出す。剣は重めだが、ヒューゴ様ほどじゃない。
先に私から仕掛けるようなので、身体強化して斬りかかった。私の剣は簡単に押し返され、ヒューゴ様の大剣が迫る。とっさに魔法のシールドで受けると、すごい音がした。
「今ので割れないのか。魔力量の割に強度が高い、結界系魔術が得意なタイプか」
何度か打ち合っていると、ヒューゴ様は剣戟の間に左手で器用に火魔法を飛ばしてこられた。
威力自体は男爵でも予備動作なしで出せる程度のものだから、慌てず魔法障壁で打ち消した。
「大体分かった」
それからヒューゴ様は徐々に剣戟の速度を上げられ、追いつけなくなった私が降参したところで手合わせは終わった。
「これだけ上手いと、障壁専門にしてもいいくらいだが……」
お褒めいただくのは嬉しいけど、男爵の魔力じゃ、ちょっと強い魔導士や魔獣相手に結界だけじゃ持たないのよ。
「動けた方が有利という考え方か。集団戦でフォローにまわったときが強そうだな。面白い戦いだった」
「ありがとうございます!」
めっちゃ褒められた。
もうこれだけで、心残りなく王都を離れられそうだ。
友人の1人に指摘されたけど、体調が良かった程度でごまかした。1日で数人と手合わせすると、さすがにくたびれた。周りにも呆れられて、早めに訓練を上がろうかとしていると、
「今日はヒューゴ副団長がここの訓練場を使っているそうだよ」
と、教えてもらえた。
「それじゃ、見学に行こうかな」
ヒューゴ副団長は、私の2歳年上で、カルロス王太子やラヴェンナ様と同じ20歳。
現在の騎士団長のご子息なんだけど、騎士団に入って1年で副団長になられたのは、実力でだ。とにかくお強い。
もちろん魔力も高いけれど、身体強化魔法を使ったインファイトが得意な方で、私とスタイルが似ているので、参考にさせてもらっている。彼が訓練場を使う日は、よく見学に行っていた。彼を見られるのも、今日が最後になるかもしれない。
ヒューゴ副団長が訓練されている場所には人垣ができているので、簡単に見つけることができた。
今は他の騎士団員と手合わせをされているところのようで、重そうな大剣を片手で軽々と振っておられる。2メートル近い長身でがっしりされているがスピードもある。肌はよく日に焼けていて、髪の毛は地味なこげ茶色だけど、イケメンだから女性からは黄色い声があがっていた。
ヒューゴ様は魔力を抑えて、剣の腕のみで手合わせされているようだ。しばらくして決着がつくと、自然と拍手が起こっていた。
彼は周囲の歓声に手を振って応えながら私たちの方を見回してくれたので、私もミーハーよろしく手を振ってみた。
「?」
一瞬、ヒューゴ様と目が合った気がした。アイドルを見たファンの心境かな。学生時代、女友達がよく話していた。
「今日はたくさん見にきたな。折角だから、この中から何人か手合わせするか」
突然のヒューゴ様の提案に、ギャラリーが歓声をあげた。自分を指さしてアピールする者もいる。
ヒューゴ様は最初に、そのよくアピールしていた男性と試合されることにした。その人も男爵だったみたいで、普通に戦うと弱すぎてヒューゴ様の相手にならない。でも、ヒューゴ様は自分の魔力使用を制限して何度か打ち合った後、彼にいくつかアドバイスされていた。羨ましすぎる。
「じゃあ次は、そこの赤い髪の彼女、いってみる?」
3人目の相手に、ヒューゴ様はまさかの私を指名された。
これは、一生の思い出にできそうだ。
「君は・・・、エリーゼ・クロスフォード男爵だったな」
「はい。よろしくお願いします」
さすがヒューゴ副団長。下っ端の名前まで全部覚えていらっしゃる。
「君は好きに魔法を使っていい。俺の方は、男爵が使う程度まで魔力を抑えておく」
「はい」
私の戦闘スタイルは、右手に剣、左に盾の代わりに、自分の魔術でシールドを出す。剣は重めだが、ヒューゴ様ほどじゃない。
先に私から仕掛けるようなので、身体強化して斬りかかった。私の剣は簡単に押し返され、ヒューゴ様の大剣が迫る。とっさに魔法のシールドで受けると、すごい音がした。
「今ので割れないのか。魔力量の割に強度が高い、結界系魔術が得意なタイプか」
何度か打ち合っていると、ヒューゴ様は剣戟の間に左手で器用に火魔法を飛ばしてこられた。
威力自体は男爵でも予備動作なしで出せる程度のものだから、慌てず魔法障壁で打ち消した。
「大体分かった」
それからヒューゴ様は徐々に剣戟の速度を上げられ、追いつけなくなった私が降参したところで手合わせは終わった。
「これだけ上手いと、障壁専門にしてもいいくらいだが……」
お褒めいただくのは嬉しいけど、男爵の魔力じゃ、ちょっと強い魔導士や魔獣相手に結界だけじゃ持たないのよ。
「動けた方が有利という考え方か。集団戦でフォローにまわったときが強そうだな。面白い戦いだった」
「ありがとうございます!」
めっちゃ褒められた。
もうこれだけで、心残りなく王都を離れられそうだ。
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