灰燼の少年

本編【拷問師のカレン】

エピローグ

　ロイ・フェニックスの自宅、ことフェニックス邸は深夜を迎えていた。

　「お前の『人形』が、よりによってお前の学校の教師だなんてな」
　新聞記事を読み終えたエリオットがため息混じりに言った。
　記事によれば、彼はなぜか真夜中に外出後、郊外の山奥の山道で交通事故に遭って亡くなっている。
　ことの顛末をロイから聞いたエリオットは心配そうに眉を顰めた。
　「いいのか？　人間を一人消しているんだぞ」
　「それは僕のせいではありません。アシュリー家の家の人間の問題です」
　「それはそうだが」
　「あの教師を差し出したら大物が釣れたんです。仲介屋でもない、本物の拷問一族の次期当主です」
　「確かにすごいけどな。お前らと同じ年頃なんだろ？」
　「そうですね。ただし、スパイとして使い物になるかは話が別です。訓練しないと。あれでは無理です」
　「そうか。必要なものがあればなんでも言ってくれ。俺もエドワードさんに掛け合ってみる」
　エドワード・フェニックスは、この家の主で、ロイとアリスの『父親』である。
　「ありがとうございます。それでは、おやすみなさい」