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国境
しおりを挟む「速く、身体の弱い方からこの薬を――」
「一体これは、何の騒ぎなんだ!?」
「子供が、子供が迷子何です!! 背丈はこの位で、誰か……子供を見てませんか!?」
街の外れでは、セラと街の若者が率先して避難を誘導する。
薬の効果なのか、街を少し離れても未だに体が毒に反応しない。
だが、セラはこの薬を自分に渡した事の重大さを分かっていた。
「……毒に耐えられない。老人や子供を連れて、逃げるんでしょ? あの、クソ医者から」
セラが最後の住民が街を離れたのを確認し、その後をゆっくりと進む。
街を出るには、セラ達が登ったこの山沿いの道しかない。であれば、セラの後に来る者達は――敵と言う事になる。
「……急いで、急いで森の中に!!」
セラが声を挙げる。すると、体が毒に反応を示す。
胸が苦しく、呼吸の仕方を忘れたような感覚に陥る。手足が痺れて、立っている事がやっとな状態になる。
木にもたれ掛かる。気付けば、周囲に同じ症状の者が溢れていた。
後は、時間との戦いだろうか。
黒が何かしらの解決策を用意している。それを信じて、セラは自分と同じ苦しみを味わう仲間に肩を貸す。
「……今は、ゆっくりでも……進む。……きっと、あの人が――」
セラは、心の底から信じていた。幼かった自分に母親が聞かせた他愛ない作り話――
その主人公の面影が黒に重なった。体の弱かった母親が唯一憧れた偉大な人物。
その人物と同じ《称号》を持って、同じ黒髪の男――
運命など、セラは信じていなかった。だが、母親が亡くなる前に言った言葉を思い出す。
『いつか、自分の夢を持って……こんな場所で、セラは産まれたけど……。ここを出て、ママの見れなかった世界を見て』
セラは諦めない。母親の墓前で誓った夢の為に、自分が母親の代わりに世界を見て回る。
その為の資金や生きる術も身に付けた。後は、この地獄から抜け出せば良いだけ。
気をしっかり持たなければ、意識を失ってしまう。
そんなギリギリの中でも、彼女は声を挙げる。同じ仲間を励ます為に。
「頑張れ、頑張って……この地獄から抜けだ――」
「はて? この状況は、何でしょうか?」
セラが目を見開く。目の前には、軍服の男が軍刀を片手に、帽子を僅かに挙げてセラの顔を見下ろす。
軍人と思われる男の仲間が、セラ達を取り囲む。そして、倒れた仲間を何処かへと運んでいく。
脳裏にあるのは、敵の事だけ――
肩を貸していた仲間を地面に下ろして、腰に忍ばせたナイフで目の前の男に襲い掛かる。
「モルモットに、殺される気分はどうだァ――ッ!?」
軍人の隙を突いて、ナイフを振り上げる。だが、そこで身体の自由が消える。
ナイフを地面に落として、前のめりに倒れる。このまま捕まれば、自分の夢所か明日すらも保証されない。
悔しさから涙を流すが、軍人が倒れたセラを抱き上げる。
「神経……いや、血液感染の毒ですか? はてはてはて、自然とは考えられない。人為的……非人道的な実験ですね。よく、耐えました。お嬢さん」
「――え?」
「もしや、ご存知ない? あなた方が無断で越えたのは、我々の国家とあなた方の国家を隔てる。国境ですよ?」
軍人の男が医者と思われる女性を呼ぶ。毒の処置を命じて、数名の部下と共に国境ギリギリまで向かう。
その先にある光景を見定める為に――
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