29 / 231
暁の任務《Ⅱ》
しおりを挟む「え? 僕じゃないとダメなの? 良いけど、自信無いなー……」
そう言っていたかつての自分が羨ましい。仲間が命を掛けた大作戦を実行せざるを得ない状況――
身に余る魔力を背負って、破裂寸前の体で仲間の身を案じる。友人が愛した人――
彼女は、今にも死にそうな自分の事よりも、自分を慕ってくれている仲間の身を第一に考えれる。
「あぁ、だから、黒は彼女を好きになったんだな」
――彼女の意志に報いよう。
例え、誰かの不幸の先に成り立った幸せなど、受け取れない。
そう、大泣きして拒絶されても――
「……ヴラド。『デッド・フォール』」
エースダルから遠く離れた誰も知らない遺跡。
その地に立ち寄った暁は、血液で拘束したその数十名の賊を体の内側から破壊した。
暁の手が触れた途端に、触れられた仲間の一人が拘束を引きちぎる程に激しく動く。
白目を向いて、激しく痙攣を始める。次第に痙攣の激しさは増していき、口や鼻、目や耳から血が流れ落ちる。
皮膚を突き破って、血の刃がその者の体を内側から破る。開かれた肉の隙間から骨が露出している。
綺麗に骨の肉を削ぎ落とし、背骨がゆっくりと肉体から外される。
触手のようにウネウネと動く血液が、肉と骨を綺麗に分ける。
「さて、用件は言わなくても良いよね? 僕は、殺しに来た訳じゃ無いって……言ったよな?」
「――ひッ!!」
怯える盗賊の頭と思われる男の顔を暁は踏みつける。足の裏と地面に挟まれ、地面にグリグリと押し当てられて行く頬の骨が軋む。
深紅の瞳を光らせ、暁は指先から伸びる血液を器用に操る。まるで、その触手の1本1本が意志を持っているかのように地面や壁紙に隠れていた伏兵を引きずり出す。
「あれあれー? 部下は、全員僕の前に並ばせろって言ったよねぇー……。僕の命令を聞いてなかったか?」
「ち……違――」
「――言い訳は、どうでも良いんだよ」
男の顔を踏み抜いて、ぐちゃぐちゃになった残骸から足を抜く。
血や肉片が付着していたが、肉片と共に血が綺麗に足の裏から離れる。
血の池の中からゆっくりと暁は歩く。僕かのように、血液を一滴たりとも残さずに男から抜き取られる。
カピカピのミイラと化した。骨と皮だけの男に指を向ける。
――僕の命令に絶対服従だ。さもなければ、次にミイラになるのは『お前達』の誰かだ。
暁の圧倒的な力を前に、盗賊は何一つ抵抗は出来ない。やったとしても、待ち受けるのは確実な死である。
抵抗すら無謀に思え、一人の賊が尋ねる。自分達は、何をすれば良いのか。
「簡単な事だ。君らがいつもやっている事をやって貰う。もちろん、僕の名前は伏せてね。さぁ、お仕事の時間だ――」
不気味に微笑む暁に賊達は、心底恐怖した。
だが、そんな恐怖すらも掠れる程の恐怖を本能で察した。
暁の背後で、暇そうにして長い白髪を弄る。彼らは、魔物の力を直接肌で感じた。
本来ならば、魔物の力を有する騎士が自分の実力を他者に探られまいと隠す所。
暁は、むしろ自ら発する。その研ぎ澄ました刃の如き魔力を持ってして、1人1人刺激する。
肌に小さな針を突き刺されるかのように、賊の顔色はみるみる青く変化する。
「……ねぇ、宿主様。そろそろ魔力を抑えないと、みんな発狂して死んじゃうわ」
「おっと、ごめんね。この先の事を考えてたら忘れてた」
暁が魔力を抑え、強烈な魔力から解放された賊に暁は詳細な指示を投げる。
指示を受けた賊達は、揃ってその場を後にする。脇目を振らずに、逃げるようにその場を後にする。
「さて、頼んだよ。カエラ――」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる