難攻不落の黒竜帝 ――Reload――

遊木晶

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襲撃《Ⅱ》

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 黒の拳が刺客の1人を後ろへと後退させる。
 黒の渾身の拳を前にしても余裕な表情で、難なく防御して見せる。
 後退はさせれても、深手とは言えない。拳一発で、せいぜい防御を崩せるか崩せないかと言った所。
 エースダルの傭兵とは、明らかにレベルが違う。エースダルからここまで、可能な限り魔力を抑えて顔も隠してきた。
 どこで黒の事が漏れたかは、この際どうでも良くなる。単純に、オリンポス側から黒の存在がバレたのが自然。
 エースダルの人間は、口が固いと言った印象がある。エースダルから漏れるにしては速すぎる。

 「オリンポスの刺客か?」
 「……」
 「はぁー……頼むから、無視は止めろよ」

 刺客が地面蹴って、黒へと肉薄する。
 透かさずアンプルを腰のポーチから取り出して、上へ指で弾いて飛ばす。
 アンプルに視線を向けること無く黒へと肉薄し、携えた短刀を振る。
 指先に限定して、魔力を集中させた黒とつばぜり合いが始まる。
 刺客の手数に翻弄されながらも、黒にかすり傷は未だ与えられない。
 その事に、刺客が焦ったのか攻撃の手が鋭さを増す。伸ばした腕から短刀を離し、空中に短刀を置くかのように黒の目の前で短刀が停止する。
 黒の目線は、刺客と短刀の2つに限定される。無意識の内に短刀へと視線が誘導される。
 それを待っていたとばかりに、刺客が短刀を踵で蹴って黒へと投擲する。
 至近距離から、蹴りによって勢いを増した短刀が黒の真横を抜けて、地面に突き刺さる。
 間一髪で短刀を避けた黒だが、一瞬だけ刺客の姿を見失う。懐に潜り込んだ刺客の渾身の魔力が黒へと炸裂する。
 空気を歪ませ、淡い閃光と共に陶器の割れる様な音が周辺一帯に響く。

 「……」

 魔力の余波で立ち込める砂埃の中で、刺客が懐から新しい短刀を抜く。
 当然のように、あの程度の攻撃で仕留めていないだろうと予感し、黒の煙幕に乗じた攻撃を警戒する。
 そして、あらかじめ上へと弾いていた回復用のアンプルが地面へと落ちる。
 容器がその衝撃で破損する。だが、その中身が既に無くなっていた事に気付く。
 しかし、刺客がアンプルの違和感に気付くよりも先に、黒の拳が刺客の脇腹を捉えていた。

 漆黒の魔力が大気の中を走り、可視化された高濃度な魔力が周囲の魔力を刺激する。
 砂埃を吹き飛ばし、黒色の雷を纏った黒の拳が刺客の体を一撃で沈める。
 雷が体を貫き、防御すらも意味を成さない攻撃に耐えれず。地面を数回跳ねて、刺客の1人が意識を失う。

 「……ふぅ、知ってるか? アンプルって、結構するんだぜ?」

 雷を纏った拳を払って、魔力を急激に抑える。魔力はアンプルの摂取で上限以上を保っている。
 だが、それでもこの先の事を考えてアンプルは節約しなければならない。
 その為、アンプルによる補助無しで出来得るならば刺客を仕留めなければならない。

 「――そっち、終わった?」

 セラの声に気付いた黒がセラの方へと振り返る。セラの横で横たわる刺客の1人から持ち物を物色する。
 セラも黒が奥へと飛ばした刺客の持ち物を物色する。何か、手掛かりになる物でもあれば十分であった。
 どこの国から依頼されたどこの組織なのかなど、ワッペン的な組織の所属を表す簡単な物が欲しかった。

 「……無い」
 「こっちもだ……」

 襲撃を画策した組織の手掛かりに繋がる物は1つも出ては来なかった。
 その上、僅かな時間とは言え激しい戦闘が起きたこの場所に、止まるのは避けるべきと判断したセラが黒を連れてその場を後にする。
 セラが黒の腕を引いて、近くの路地へと実を隠すように急いで走る。

 もっと時間を掛ければ何か出てきたかもしれない。
 しかし、なにもでない可能性とあれ以上の騒ぎになる事を天秤にする場合、後者の場合がデメリットの割合が高い結果となる。
 セラの咄嗟の判断は正しい。だが、一歩遅かったと黒が呟く。
 路地裏へと続く道を歩く2人の前に、防弾防刃仕様のコートを羽織った集団が待ち構えていた。

 「――わお」
 「ちょっと、私達2人に対して……多過ぎでしょ」

 背後、頭上、前方の逃げ道を塞いだ陣形で黒とセラの2人を囲む。
 アンプル入りのポーチに手を伸ばした黒を止めるセラの手が、震えている。
 流石に、この状況で震えないほど精神は強くなかった。黒がアンプルの残量を気にしなければこの数程度なら造作もない。
 が、セラはこの場を抜けた先の事まで考えていた。予測可能なすべての状況を瞬時に頭の中で構築する。

 「アンプルは使うなってか?」
 「最悪を想像して……。この場を脱しても、残りのアンプルの残量でこれ以上の数が来たら? 先は、長いのよ」

 セラが上着を脱ぎ捨てる。肩まで露出した薄着になって、息を吐き出す。
 吐き出した後に、深く息を吸い込む。心を落ち着かせて、全身に魔力を巡らせる。
 髪の毛が魔力によって、微かに靡く。研ぎ澄ました魔力を全身に巡らせ続ける事で、驚異的な反射神経と身体能力を実現する。
 黒の腕を掴んだまま、肉薄する刺客達の相手を単身で行う。黒の魔力を無駄にしない為に、1人ですべての相手をすると決意する。

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