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合流、倭へ
しおりを挟むオーレスティから少し離れた半壊した家屋の前で、セラがもう一度端末の位置情報と照らし合わせる。
茂みに隠れているので、人が隠れていれば気付き難い。そして、エドワードから黒にだけ告げられた情報では、2人は隠密系の能力に秀でた精鋭である。
「――そこ、か?」
黒が指差した先で、物音が聞こえる。セラが振り向くよりも先に、黒の背後へと回った人影が懐から取り出したナイフと拳銃をセラと黒へと突き付ける。
が、黒の両手に突き付けていたナイフと拳銃が見えた。
「動きは、速いな。でも、脅すにはたりないな」
「流石ですね。でも、弟はどうです?」
セラが拳銃を取り出して構えるよりも先に、建物の影から飛び出した人影が黒の後頭部に銃口を突き付ける。
両手からナイフと拳銃を落として、両手を上げる。降参だ――と、黒が手をヒラヒラ揺らす。
「流石は、姉さん。自分から囮になるなんて」
「私が、可愛い弟にそんなマネすると思う? それと、自己紹介がまだでしたね――」
黒縁メガネを掛け直す男性が、隣で拳銃をスカートにしまう妹と並んで自己紹介へと移る。
だが、セラが目の前で淡々と名を告げた2人の言動が矛盾している事に気付いた。
男の姿をしているのに、彼女は『姉』と呼んだ。『弟』である彼は、女の姿をしている。
セラが黒へと小声で、2人の矛盾について意見を求める。このままその話題に触れて良いものか、触れない方が良いものか。
「なぁ……2人は、男装と女装が趣味なのか?」
「「まぁ、そんな所ね」」
セラの意見を聞いた上で、黒はストレートに尋ねる。セラの予想を上回る2人の軽くあしらった言動。
長年、2人が自分達の見た目の事に関して、突っつかれていたのかあまり気にはしていない。
互いに同じ金髪だが、弟の《ロルト・パドレ》――長いロングヘアーに女装と言う。一見、声を聞かなければ男女の判断は難しい。
姉の《ナドレ・パドレ》――弟のロルトとは正反対に、髪は短いショート。そして、男装姿と言う。これまた声を聞かなければ男女の判断は困難を極める。
男装の姉、女装の弟と言う。濃いメンツが揃った4人で、黒と共に倭へと向かう。
道中の敵襲を警戒したが、何事もなくオーレスティを出て、次の目的地へと向かう。
その道中で、黒は改まった話を3人へ投げ掛ける。
「――ロルト、ナドレ。セラもだが……。俺は、お前らの事を信用して良いんだよな?」
日が落ちた森の中で、黒の右隣から、セラ、ロルト、ナドレの順で焚き火を囲んでいる。
中央の焚き火で煮込まれている鍋で、グツグツと汁物が煮込まれている。
それを見詰めながら、黒は倭へと向かう本当の目的を告げようとしていた。
黒のこれから話す内容によって、この旅を降りるのならここがそうだ――と、黒は再度釘を刺す。
それでもこの旅から降りない3人の真剣な目を見て、黒は口を開く。
「まず、この旅で重要な1つ目が――俺とは別に、2年前の大規模戦闘で生き残った皇帝と接触する事だ」
2年前に起きた大規模な《異形対騎士》の戦い。そこで、黒は家族と大勢の仲間を失う。
だが、話はそこで終わらなかった。大勢の騎士を失った劣勢な騎士側へと、猛攻撃を仕掛ける異形の軍勢をたった1人で殲滅した騎士が居た。
「……俺と同じ、皇帝と呼ばれる騎士の1人《メリアナ・ペンドラゴン》――倭に残った若い騎士や老騎士など、倭に関する全てを統括している。現最強の騎士――」
3人が生唾を呑み込む。それは、黒の口から直接《最強》と言う単語が出たからであった。
皇帝の中でも、さらに上位に位置する黒の口から最強と呼ばれる存在に興味が湧いた。
黒の話は、やや脱線気味であった。だが、それもこの一言を捻り出す為の時間稼ぎ――
「彼女は、必死になって戦った。そして、異形の一掃に力を使い果たした彼女は――いや、言い訳だな……。俺は、倭を見捨てたんだ」
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