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セラ・アルディール《Ⅰ》
しおりを挟む男に無理矢理床に押し付けられる。力無く抵抗するも男の腕力に敵わない。
セラを上から押し付ける男の目線の先には、男を従える残虐な彼女が居た。
ロルトをボコボコに叩き潰した上で、そのボロ雑巾の上から銃の引き金を引いた。
トドメとばかりに――心臓へと。
息の根を止めたロルトを一瞥する事無く。セラの前で、彼女はその悍ましい顔を見せ付ける。
そして、これからセラの前で何をするのか聞いてきた。セラの前方には、頭から血を流している子供が1人――
「……!? まさか――」
「その、まさかよ。フフッ」
部下が持ってきた道具をセラの前で開く。中には、拷問道具と思しき刃物類が多数収納されていた。
「……やめろ、やめろ!! 私で良いでしょ! その子は、ただの子供で関係は無いはずだ!!」
「そんなの知ってるわ。でも、イイでしょ? この子を惨たらしく拷問して、その《悲鳴》と《苦痛に歪んだ表情》を見たいの」
「……何を、言ってる?」
セラの目の前に立っている女は、異常者であった。他人の不幸を栄養に育つ植物のように、他人の不幸を楽しんでいる。
列車だけを狙ったのも黒達に守られる為もあったが、本当の狙いは阿鼻叫喚を存分に楽しむだけであった。
頭のネジが飛んだかのように、壊れた人形のように高い笑い声を上げながら意識を失った子供の隣に拷問道具を並べる。
ワザと叩いて子供を起こして、その並べられた拷問道具を見せ付けながら悍ましい狂気に染まった笑みを向ける。
「さて、どの子で遊んで欲しい?」
泣いて助けを求める女の子を助けようと藻掻くセラだが、背中に乗った男の腕力には勝てない。
女が爪を丁寧に剥ぐ為の道具を持って、子供の手を掴む。泣きじゃくる子供の悲鳴と声で、セラの我慢が限界に達する。
「止めろォォォォォォォッ――!!」
黒を葬った男の首から上が破裂する。破裂音に気付いて、彼女が振り返るよりも先に瞬時に肉薄したセラの拳が火を吹いた。
炎による燃焼に加え、魔力が反応する事で生じる稲妻が彼女の肉体に大ダメージを与える。
口から血を吐いて、子供の前から吹き飛ばされる。地面を転がって勢いを軽減する。
が、受けたダメージの大きさは尋常ではなかった。咄嗟の魔力防御が一瞬で消し飛ぶ。
1番信頼しており、尚且つそれなりの実力派の筈の男ですら一撃で葬られている。
何が起きたかは分からない。だが、1つ分かるのは――彼女の中に眠る何かを起こした事だけだ。
「人の命を何だと思ってる……」
「弱者は、強者に虐げられる。モノよ……強者には、弱者を道具扱いする権利がある!!」
「ふざけるな。人の価値を……お前が決めるな!! 罪のない人を殺めて、当然のように楽しみやがって――」
セラの全身から、魔力が満ち溢れる。満ち溢れた魔力がセラから漏れ出る。
栓が壊れた水道のように、途端に魔力の勢いが強まる。セラは、騎士でも無ければ兵士でもない。
少しだけ、戦闘訓練を受けただけの一般人であった。道中の戦いで、極限状態にまで追い込まれたセラには、1つの想いが宿った。
力があるのならば、誰かの為に人の役に立つ使い方を――
倭へと向かう長い道の中で、セラはナドレやロルト。黒から様々な体験談や経験を話として聞いていた。
初めは、母親から託された夢の為などの言ってしまえば、軽い気持ちでこの旅に同行しようと思っていた。
だが、傷付きながらも誰かの幸せの為に戦う黒の背中や仲間の話を聞いて、いつか話してくれた母親の作り話と重なった。
ママが作った作り話を私が、実現する。主人公のように、誰かの幸せの為に戦う――
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