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適材適所

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 「何で、置いていったのか説明が欲しい」
 「単なる実力不足だ」
 「弱いなら、橘さんも変わらない気がしますが?」
 「……うるせぇ」
 「あっ、逃げた」

 ナドレ、ロルト、トゥーリから必要に説明を迫られる。そして、ガゼルに羽交い締めされたローグが黒との話し合いで出た。セラの扱いについて吐く。

 「すまん。橘、コイツらにこの先も尋問されるとなるとこっちが折れそうになる」
 「もう少し粘れよ。貧弱……」

 黒とローグの2人がガゼルの能力によって造り出された鋼の檻に収容され、早々にローグが折れる。

 「まず、橘の話だと……彼女の修行は専門的な部分が多いらしい。魔物ギフトがあれば別だが、魔物を持たない黒と魔物の扱いが雑な俺らで……彼女の潜在能力を引き出せない。だから、残した」
 「そこに、1つ付け加えるなら……セラの能力は特別だ。即死した状態からでも生き返る。それは、この場でも必要なレベルでだ。が、イシュルワや他の手から確実に守れる保証も無ければ、確実に能力を操れるかも不確定だ。だから、残した」

 この場に集まる6人の騎士と船を動かすための乗組員と艦長を含めた大人数。彼ら全員を無傷で倭へと到達する事がセラには可能。
 しかし、能力を操れるのが前提として挙げられる。この場で、セラに能力を教えれるのは――黒、ただ1人。
 このメンバーで、《能力》を手にしている。トゥーリ、ガゼルでは、セラに力の使い方を指導出来ても抑え込む・・・・事は出来ない。
 そして、ビフトロと言う場所は海域の関係上。倭から四大陸へと向かう唯一の港でもある。
 倭から向かうのであれば、多少強引だが何処へでも向かう事が可能。しかし、安全面を考慮するとなると《ビフトロ》だけである。
 その上、倭側からの航路ではほぼ確実にイシュルワからの攻撃が予想される。最も安全かつ妨害が少ないのは、ビフトロだけである。
 そうなれば、如何にビフトロが攻略されないかが重要視される。

 それを、言って挙げれば良かったと思うのですが――と、トゥーリの疑問に付いて、ローグもそれは1度思ったと便乗する。
 が、黒はその意図を伝える事はしなかった。すれば、ビフトロの為に必死になって鍛練する。
 だが、結果的に力を手に入れて、ビフトロの為になっても――セラの為にはならない。

 ――それでは、意味がない。

 「……《魔物ギフト》ってのは、宿主の精神と肉体のバランスによって力関係が変わる。今のセラは、肉体と精神が完全成長するよりも前に魔物が覚醒した。かなりイレギュラーなケースだが、加えて《能力 》にも目覚めている」


 魔物の《覚醒》には、精神の部分が大きく左右している。
    宿主である自分自身の心に、魔物が共鳴し呼び覚まされるケースが非常に多い。
     しかしながら、魔物に覚醒する条件は、様々ではある。が、ある程度の条件は解明もされている。

 前提として、黒が述べたように肉体または精神のどちらかが、魔物の力に耐えうるレベルに成長する事――
 その上で、心が共鳴する。それによって、魔物は覚醒へと至る。
 しかし、極々稀に魔物を制御する《精神》と魔物の力に耐える《肉体》が完成するよりも先に魔物が顕現するケースも確認されている。
 その場合は、覚醒した者以上・・の力を有した者でなければ、止められない。

 その点、ビフトロはその全てを兼ね揃えている。

 「だから、適材適所って事だよ。セラの力は、今後の四大陸で必要だ。俺らよりも重要な場面でな」

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