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君を想う《Ⅱ》
しおりを挟むメリアナの隣から、金髪、青眼の赤色のドレス衣装に身を包みながら軽装な鎧を身に付けた女性が現れる。
麗しい女性の姿をした人型の魔物が、トレファへとその手に携えた剣を突き付ける。
紙一重で避けるトレファだが、避けた先でメリアナの蹴りが待ち受けていた。
手でメリアナの蹴りを寸前で塞ぐ。しかし、メリアナのその笑みの正体に気付く。
笑みの正体。それは、トレファの背後で振り上げた剣を振り下ろした魔物――《アストレイア》であった。
漆黒の稲妻が大気中を走り、肩から血を滴らせるトレファの悲痛な叫びが聞こえるよりも先にメリアナとアストレイアが動く。
『「――エクスカリバー!!」』
メリアナとアストレイアが用いる魔法の中で、最も威力、速度が優れている魔法を2方向から同時に放つ。
如何に、トレファが八雲の再生能力にあやかっていても、聖剣の破壊力を2つ同時に防ぐ事は至難の技。
そして、そんな威力の魔法を2方向から受けて、2ヶ所の再生には相当な時間が掛かる。
「アストレイア――ッ!!」
『えぇ、畳み掛けます』
唸るトレファの肉体へとメリアナの刃先が炸裂――
八雲を握る手が、空へと飛ぶ。だが、肉体は再生を始める。
その瞬間を狙って、アストレイアの聖剣が八雲の付近に集まる肉片をその魔力で焼却する。
これで、トレファの手から八雲が消える。
再生による肉体の回復、無限に等しい魔力の補給、トレファの相手をする上での脅威とされる要素の2つが消える。
「私の……私の、八雲が………私の八雲がァァァァァァァァァ――ッ!!!!」
八雲へと手を伸ばすトレファの視界の片隅で、メリアナは聖剣を構えていた。
ただ、一刀。全てを込めて、目の前の敵を葬る――
エクスカリバー――
その高濃度な魔力がトレファの肉体を消し飛ばす。――筈だった。
トレファとメリアナの間に、飛来したのは八雲であった。
メリアナの全力のエクスカリバーを正面から防ぎ、まるで持ち主を守るかの如く動きで周囲一帯を魔力の刃で吹き飛ばす。
メリアナの前へと出たアストレイアが体の一部を損傷しながらも、宿主であるメリアナを守る。
が、メリアナの目の前でアストレイアの半身が切り裂かれる。
八雲を手にし、完全に再生を終えたトレファの凶刃によって、アストレアが顕現体を維持できなくなる。
『ごめんなさい……宿主――』
アストレイアが肉体を失って、メリアナの中へと戻る。
そして、魔物の《完全顕現》によって底上げされた魔力、力、それら全てが元に戻る。
魔力を大きく消耗し、地に倒れるメリアナをトレファが踏みつける。
八雲がまるで意志を宿したように、トレファを守ると言う想定外が起きなければ、勝利の女神はメリアナに微笑んでいた。
結局、勝利の女神が味方をしたのは――トレファであった。
「フハ……フハハ、フゥッハハハハハハハハハハハハッッ――!!!!」
手で顔を押さえて、歓喜に満ち満ちた笑みを浮かべて何度も無抵抗なメリアナを足蹴にする。
顔、腹、腕、腰、全身を踏む。蹴る。劣勢な状況下のストレスを発散する様に暴力を振りかざす。
メリアナの髪を掴んで、無理矢理立たせた後に顔を必要に殴る。
憎たらしい程に整った顔立ちを惨たらしい物へと変貌させる為に、トレファが暴力の限りを尽くす。
「やめろ――ッ!!」
未来が割って入っても状況は変わらない。もはや、この倭で、トレファを止める相手はいない。
割って入って来た未来の顔を殴り、倒れた所を力一杯踏み付ける。
背中の骨から折れる様な音が聞こえ、未来の悲鳴が木霊する。
血まみれのメリアナが未来に手を伸ばす。ボロボロで、指先が震えていた。
視界が霞む中でも、未来が自分の為に立ち上がる。
だが、メリアナよりも魔力や魔物を持たない未来には、勝てない。
子供の相手をする様に、トレファは未来を転ばせ上から拳を何度も振り下ろす。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ――――」
異質なトレファの笑い声に、メリアナの目から涙が流れる。
それは、これまでの自分の苦労や努力が水の泡に消える感覚が胸を締め付ける。
どんなに努力しても、結局自分は大切な恩人を守れなかった。
ボロボロになって、泥でぐちゃぐちゃになった未来にトレファは手を伸ばす。
そこで、再び邪魔が入る。後方から、自分達の姉を守る為に、恐怖にムチを打って碧、茜が未来を助ける。
しかし、トレファからすれば2人はただの虫けらも同然の相手――
飛び掛る碧の鳩尾につま先をめり込ませ、その後に続いた妹と仲良く地面に縫い付ける。
そして、その上から腹部を踏み付ける。
胃の内容物を吐き出した姉妹の首を掴んで、ぐちゃぐちゃの顔を地面に力任せに叩き付ける。
未来が叫び、動かなくなった姉妹の姿に泣き叫ぶ。そして、伸ばした手が地面に倒れる。
もはや、戦う気力もない。
「さて、頂きますか……魔力を!」
未来へと、トレファの血に塗れた手が迫る。
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