難攻不落の黒竜帝 ――Reload――

遊木晶

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君を想う《Ⅲ》

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 未来の胸元にトレファの手が触れる。嫌がる未来が地面へと投げ捨てられる。
 衣服が乱れた未来がトレファを睨み付ける。そして、直ぐに笑みを浮かべる。

 「どう? 自分の計画が破綻した気分は……」
 「貴様……謀ったな。この、女狐が……私を、謀っかァ――ッ!?」

 未来の首を力任せに締め付けながら持ち上げる。
    もがく未来が必死に抵抗しながら、最後の悪足掻きとしてトレファを睨み付ける。
 トレファの目的は、黒の持つ黒竜バハムートの魔力。それが、黒から消えた本当の理由は2年前の大規模作戦時に未来が奪って、別次元へと未来ごと隠れてしまった事にあった。
 故に、八雲の魔力で黒とパスを繋げた未来を入れ替える事で、魔力を宿した未来から奪う手筈であった。

 しかし、その魔力が彼女から欠片も無かった。まるで、元から持っていなかったかのように――

 「この、女狐ガァァァァァ――ッ!!!!」

 地面に叩き付け、血を吐き出した未来の顔を勢い良く踏み付けようとする。
 だが、そこでトレファの動きは、ピタリ――と、止まる。

 トレファが動き止めた同時刻、倭の結界を維持し続ける為に、全魔力を集中していた橘梓たちばな あずさが異変を瞬時に感じ取る。
    梓の少し後に、騎士数名が異変に気付く。

 「ッ!? 地震……? このタイミングでか……?」
 「何だ! 揺れてる!? 地響きだ!!」
 「おい、見ろよ。地面だけじゃねーぞ……雲も、空も揺れてる!?」

 倭の周辺一帯で、異常が起こり始めた。
 小さな揺れ、地震とは何か違う揺れが一定のリズムで起きる。
 そして、地面と同様に木々や植物も当然揺れる。だが、揺れる方向・・が全て違っていた。
 人によって、――横揺れだ。という者や――縦揺れだ。という者も現れる。
 その上、積乱雲の規模で発生していた筈の雲も散り散りに細かく疎らになる。
 海も渦潮が発生する筈の無い海域や流れの穏やかな河川でも、渦潮が発生する。
 極め付けは、倭を中心――否、四大陸などの世界全土に響く。

 巨大な和太鼓・・・の響き――

 耳を閉じても、まるで心臓がその太鼓を奏でているかのように、奥底から聞こえる。
 次第に、太鼓の響きは増して行く。近付く様に、太鼓の響きが増し始める。

 「何だ……何だよ、コレ」
 「なに、なに……何なのよ!!」
 「怖い……怖いよ、ママぁ 」 
 「大丈夫よ、大丈夫……ママが一緒よ」

 太鼓の響きに合わせて、大地、大空、大海が揺れる。
 そして、そこで気付いた者は――涙を流した。

 「あぁ、あぁ……来た・・

 1人の老騎士が、避難民が集まる倭のテントの中で、トレファと未来達の居る方角を指差す。
 その老人の後に続いて、梓や藤乃ふじの文乃ふみのが涙を滲ませる。

 「長らく、お待ちしてました……」

 藤乃が深々と頭を下げ、そのまま崩れる落ちる様に涙を堪え切れずに溢れさせる。
  文乃も梓も藤乃に釣られて涙を流してしまう。
    まだ、姿形は見えはしない。が、確かにこちらへと向かっている事だけはハッキリと分かる。
 その根拠は、と聞かれれば……そんな物など有りはしない。そう、答えるだろう。
    だがしかし、1つだけ上げるとすれば――家族・・だからであろう。


 「……獲物が、自分から来るとは……願ってもない!」

 八雲を天高く掲げて、トレファの合図で倭へと攻め入ろうとしていた異形の全てが、その場から反転する。
 攻撃対象を倭ではなく。倭へと目指して歩を進める者へと向けられる。
 空を覆い隠すほどの巨大な空間が開かれ、次々と異形種が海へと着水する。
 大型、飛行型、中型、小型、そのどれもが今までの規模とは比べ物にならない規模。
 倭全域、四大陸にすら攻め入れる事が可能なレベルの大規模な異形の数――
 その数、数十億は優に超えていた。
 トレファが魔力を吐き出し、空間を更に押し開く。全ては、この日のこの時の為にと、これまで長い年月を費やした。
 数多くの異形を作り続け、練りに練った異形種の進化――。それも、全ては黒竜帝バハムートと呼ばれる騎士を殺す為である。

 「見ろ!! この数、この規模をッ!! 全ては、お前を殺す為に、私が作り上げた特殊個体達だ。その数に怯えて、苦しんで倭と共に死にやがれッ!!」

    トレファが送り込んだ異形。その数は、歴史上最も多い数おおよそ――数百億以上。
 特異型数十程度の規模であっても、現在の倭に抗う戦力は残っていない。
 その事実によって、黒の敗北。それ即ち、倭の壊滅となった。
 ――この規模には勝てないと高を括って、高笑いするトレファの横で、未来は大粒の涙を流す。
 地面の土を強く握って、堪えながも押し寄せて溢れてくる言葉や感情が未来を苦しめる。
 ――不安、恐怖、痛み、焦り――多くの感情が、未来へと濁流となって押し寄せ続ける。

    抑え切れない感情の濁流の中で、未来は震える唇で呟いた。


    「……遅い、よ…」


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