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四天と謳われ《Ⅰ》
しおりを挟む――それは、この世界では珍しい組織形態をした騎士団であった。
何せ、団員の者達よりも遥に階級が低い者が騎士団のトップに立っていたのだから。
従来ならば、トップが下の者達よりも階級が低い事など先ずあり得ない。
そんな事があれば、示しが付かない。そして、当然のようにトップは下に見られる。
そんな状態では、指揮系統に問題が生じる。内側から崩壊するのも時間の問題。
そんな異質な騎士団の中で、騎士団に在籍する者達は――異質であった。
異質な者達の中でも、ある者達は更に《異質》でもあった。
彼は周囲の者から『獰猛な獣』と呼ばれた。
または『恐れを知らない化物』とも呼ばれていたかもしれない。
多くの者達から『破壊の限りを尽くす悪魔』とも呼ばれ――
その姿は『恐怖』を従える――魔王。持ち得る力を躊躇う事無く行使し、力のままに視界に映る異形を殲滅した。
多くの異形を蹴散らし、畏怖の象徴となる。
だが、後に自分の力が引き寄せる《悲劇》に気付き、大切な者を守る為に彼らは力を抑えた。
その力の強大さに誰よりも敏感になってしまった事で、それ以降――本来の戦いをしなくなる。
しかし、それでは勝てる戦いも勝てない。守れる者達も守れない。
であれば、破壊する力よりも強大な《守る力》を備えれば良い。
メンバーの1人がそう提案し、4人の戦闘部隊に対して、12人の防衛部隊と言う異例の組織形態が構築された。
たった4人だけの戦闘員に対して――12人の防衛隊。
騎士団の結成当初、誰もがそんな彼らを鼻で笑った。
例え、たった1人が強大な力を有していても、その強さに付いて行けなければ意味はない。
たった4人で何が出来る――と、その言葉通りに世間は彼らを評価した。
盛大に笑って、彼らに指を指すのであった。その姿を存分に笑ってやると、彼ら4人の背中を指差し嘲笑う。
孤独な王の隣を歩くには、彼らは実力が足りない。埋まらない溝だと周囲の者達は嘲笑う。
そして、世界はひっくり返る。当時、最強と呼ばれた騎士団に彼ら4人は無謀にも戦いを挑んだのだ。
無論、誰もが彼らの挑戦は無謀だと口々に溢した。4人では、足らない。
それ程までの実力差があるのだと、誰もが彼らの戦いに見向きもしない。
結果は、シンプルであった。
――1人で、事足りた。
それが、名実共に世界最凶の騎士団が誕生した瞬間であった。
そして、それこそが――強さの秘密。
たった4人の世界を破滅させる事が理論上可能な化け物達の集まり。
そんな彼ら主力部隊を支援する事に徹した12人の師団長――
ミィーファの言葉を鵜呑みにするのであれば、間違いなく。空を駆けるあの存在こそが――そうだ。
現在も倭の空を真っ黒に染めている。その天候を変化させる程に強力な魔力領域を有する彼こそが、その4人の内の1人であるのは間違いない。
「《黒焔騎士団》所属――団長補佐。この世界で、トップ……いえ、最速の騎士。黒焔創設メンバーの1人にして、黒焔が戦闘部隊――階級《皇帝》の《藤宮翔》――」
藤宮――その名を聞いて、1人の老騎士がある皇帝の名を脳裏に呼び起こす。
雷雲を従え、黒竜帝を遥に凌ぐ速度を有する皇帝の中でも最速の皇帝。
「……縦横無尽の雷帝――」
翔が、再び刀を振るう。
一閃を放つ度に、群がる異形が消し飛ばされる。
そして、鞘に刀を納刀し、抜刀術の構えで――動いた。
キュイッッッン――
大気を切り裂く神速の音が、倭に響く。
そして、決まってその神速で動く音の後に一刀両断される異形の屍の山が広がる。
「さぁ、始めようか……皇帝の戦いをッ!!」
倭と空を自由に飛び回る。
金色に色付く雷を纏って、超速で異形の頭や残骸を足場に倭の空を駆ける。
海から倭へと侵攻する大型、飛行型が軒並み翔の攻撃で灰化する前にその身体が吹き飛ぶ。
金色の閃光が空に軌跡を描く。時間と共に、倭を囲む億を超える異形がその姿を消していく。
そして、その動きを可能にする為に支援に徹する十二師団長――
彼らが、翔の魔力による余波や衝撃などから倭の地を守る。
そう、師団長の役割は――《防衛》である。
皇帝が全力全開の大立ち回りをしても、その土地や人々が傷付かない為に、全力で結界や魔法で防衛支援をする。
「――凄い、これが皇帝なのか…」
「異形が減ってく……どんどん、とんでもない速さで灰になって行くぞ!!」
湧き上がる歓声、翔がその歓声に気付き異形を減らして、1人満足する。
なぁ、後は任せて良いよな? ――誰に掛けたのか分からない言葉を溢す。
そして、上空の雲を吹き飛ばす雷を放って、曇天の空が晴れる。
……バリッ! バリバリッッ!! バリバリバリッッッ――!!!!
異質な炸裂音が響く。晴れ渡る空の中で、大気中の微小な魔力残滓が翔の魔力に反応する。
漆黒の稲妻が翔を中心に大気中を幾度も走り、周囲数km一帯の小型、中型を大気中の魔力でダメージを与える。
だが、そのダメージと言っても、ただ大気中を走った稲妻に触れただけで、翔の攻撃ではない。
海の中からボロボロになったトレファがその魔力を前に、唖然とする。
「倭を落とそうとしたんだろ? なら、相手がどんな奴らなのか、当然知ってんだろなァッ!?」
翔が刀を振り上げ、その凝縮に凝縮させた魔力を一撃に込める。
今までの魔力が本気ではない。そう思わせるほどの凄まじい魔力――
天を切り裂いた魔力とも違う。この魔力は、世界を破壊するレベルの――力であった。
「――神鳴」
振り下ろした刃が標的を示す。
刀身から放たれた特大な雷が倭に集まる異形をまとめて葬り去る。
爆発、そんな生易しいレベルの魔法ではない。
その魔法の威力を目の当たりにした者達は、その存在の大きさに絶句する。
……あぁ、あれが本物なのか――
大空を切り裂き、大地を穿ち、大海を蒸発させる。
ラウサーが創り上げた人口の大地が丸々消える。焼け焦げた大地の焦げ臭さに鼻が曲がる。
隕石でも落ちたかのように巨大なクレータを前に、翔は自分の加減の無さに反省する。
そして、地形を変化させるほどの魔力であれば、隣接する倭の地ですら危険であった。
だが、無傷であった。正確には、倭という島国全体が巨大な純白の城に覆われて守られていた。
「流石は、黒竜の妹だ。……やべぇな……そろそろ、限界……」
腕時計のタイムリミットを知らせるタイマーが鳴る。そのタイマーが切れると同時に、翔が倭に向かってゆっくりと落下する。
「たく……人任せよね。大穴作って、海の生態系めちゃくちゃじゃない」
「わるぃ……久々過ぎて、加減……ミスった」
「ミスったじゃないのよ。翔が落とした場所、碧、茜もいたのよ。気付いてた?」
「当たり前だ……だから、全力で吹き飛ばしたんだよ。アイツなら、絶対に守るって知ってたからな」
翔の目線の先には、1人の男が大切な人を守る姿があった。
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