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四天と謳われ《Ⅱ》
しおりを挟む倭を守る巨大な結界を1人の女性がすり抜ける。
結界を壊すのでもなく。ただ、すり抜けた。
その肩を借りていた翔がぐったりする隣で、駆け寄ってきた着物姿の梓が、その者の顔に触れる。
触れた途端に梓の目から涙が溢れ、彼女を抱き締める。
「痛いよ……梓様」
「生きてた……本当に、生きていた」
梓に遅れて、藤乃、文乃の姉妹が彼女の前に立った。
実に2年ぶりの再会となる。かの大規模作戦の訃報を信じられず、何日も涙した。
しかし、心の片隅で信じていた。
「お帰りなさいませ……白様――」
「藤乃、ただいま――」
藤乃、文乃を抱き締める。――黒の双子の妹にして、碧、茜の実の姉である。橘白が倭に集った一族の者達に2年ぶりの笑みを見せる。
「……元気そうだな。白」
「父さん……元気そうだね」
父、竜玄も娘との再会に少し涙を滲ませる。
感動の再会に水を差すつもりは無かった。だが、地面で横になる翔が白に向かって指を差す。
「感動の再会を邪魔して悪いけど……異形が来てる」
翔の指摘に、その場の騎士がザワつく。
既に海岸線を埋め尽くす程に配置された異形の数は、数える気すら芽生えない。
しかし、白は笑って答えた。
「あら? 翔は、この程度の数でビビるの?」
「あぁ、魔力切れ何でな。この状態だと1人で、歩けもしねーからな」
「はぁー……全力出し過ぎよ」
倭の地に足を踏み入れた異形に向けて、白は指を鳴らす。
倭全域を覆っていた純白の城が光を放って、光剣を頭上から降り注ぐ。
耐久力の高い大型、的が小さな小型などが多く残りつつも大半の異形は灰となる。
メリアナが扱う光剣よりも精度と本数が多い白の光剣が、異形の頭上に雨のように降り注ぐ。
海岸線を灰一色に染め上げ、一息付いた白の視線の先にある地点から魔力の信号が確認出来た。
その信号の意味を理解して、自分のすぐ隣に一定の範囲を確保する。
そして、魔法によって別の場所から飛ばされた者達が倭の結界へと直線送り込まれた。
当然、突然の出現に多くの者達が驚き動きを止める。だが、直ぐに白が脇目を振らず走り出した。
そして、碧、茜の2人を全力で抱き締める。
「――ケガはない?」
目を丸くする碧、茜の2人だったが、直ぐに大粒の涙を滲ませる。
姉との再会を待ち望んだ。たった一人の姉であって、黒と瓜二つの顔に兄以上の優しさと温もりを持っている彼女――橘白を2人は力強く抱き締める。
「「お姉ちゃん――」」
「2年ぶりね……元気そう。それに、2年前よりもずっと可愛くなってる」
大粒の涙を流し、碧、茜は大好きな姉の前で泣きじゃくる。
ようやく会えた姉の温もりは、かつての物と同じであった。
「そっちも、会えたみたいね」
「うん、黒ちゃんは約束を破らないから――」
未来が涙を拭いながら、黒との再会が叶う。
時間にして、数分程度の再会――しかし、数分程度でもあの場で言葉を交わせれた事に未来は満足している。
この戦いが終われば、これまでの失った時間を取り戻す事が出来る。
好きなだけ、好きな人の隣で甘える事ができる。だから、今少しの辛抱。
とはいえ、2年も待ったのだ。数時間程度の時間であれば我慢はできる。
だが、未来は数分程度の再会で――ダメになってしまった。
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