難攻不落の黒竜帝 ――Reload――

遊木晶

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新章 序章は終わりを告げる――【佇む『観測者』は、脚本を綴る】

祝福は、1つの願いを繋ぐ

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  2年年前の大規模作戦によって、消息を絶った騎士や皇帝達が2年の時を経て帰還――
  倭は大いに湧き上がり、感動の再会を果たす。
  2年間の異形との攻防で損傷した防衛線の修復や建物や家屋の立て直しも異形との戦いとの並行しながら進む事であろう。
  だが、もう守りに関する心配はない。かつての騎士が大勢帰還し、倭の防衛を担う。
  これで、かつての活気が戻る。

  ――が、そんな倭の歓喜に満ちた空気であっても、1人の男は暗い顔をする。

  本来ならば、2年ぶりの再会を祝して夜通し騒ぐ筈だ。
  だがしかし、この男の頭にはそんな余裕はない。
  皆の前では痩せ我慢して、無理な笑みを浮かべながら「悪い、少し疲れてな……久しぶりの戦いだからかな?」と言って、1人部屋へと消える。
  柔らかなベッドの上に倒れ、まぶたを瞑って眠る。
  それを許さないかのように、ベッドの上の黒へと人影が倒れる。

  「――ぐッ!」

  目を覚ました黒が起き上がるよりも先に、背中に貼り付いた人物の細い指先が黒の体を抱き締める。
  甘い、果実のような匂い――。そして、暖かな体温は、優しさそのものであった。
  太陽の様に、誰かを温める。優しい陽射しが見ず知らずの誰か心の闇を払ってくれる。
  しかし、今だけは黒だけの独占――。否、黒という男を彼女が独占している。

  「……驚いたよね。みんなが生きてて」
  「あぁ、嬉しいのに……複雑だ」

  未来の指が黒の頬に触れる。細い指先で、頬を摘んで遊ぶ。
  一通り弄くって満足したのか、未来の手が頬から離れる。
  2人の間に僅かな沈黙が続いて、再び未来が黒を抱き締める。

  「1人で、抱え込もうとしてない?」
  「――!?」
  「1人じゃ、無いよ。もう、1人じゃないんだよ……ハートくんが、翔くんが、暁が、私が……付いてるよ」

  背中から更に熱い温もりを感じる。
  2年ぶりの体温が全身に電流の様に走る。そして、耐え切れなくなる。
  堪えていた筈なのに、枕に顔を埋めて涙を流す。
  激しい戦闘では一切涙は流れない。腕が、足が、体の一部が吹き飛ぼうとも、ダメージにはならない。
  だが、友が不意に現れて黒に告げた。


  夢を奪った――


  万が一、あの日の誓いが――
  3人の墓前で誓った筈の夢が幻であれば、黒がこれまで行ってきた行為や積み上げた功績のは全て無駄となる。
  否、友の夢を奪って、その奪われた夢を友の前で見せびらかしていたも同然である。
  今のお前達では、到底叶えれない夢だぞ――。とでも言うかのように、振りかざして優越感に浸る。
  黒のこれまでの行為は、全て無駄であった。

  「……っ……俺、は……何の…為に……」
  「いいよ……泣いていいよ。だって、1人で、頑張ったんだもん……私の前では、皇帝じゃない。昔の黒ちゃんに戻っていいよ」

  起き上がって、未来の胸に顔を埋める。
  赤ん坊のように泣いて、子供のように甘える。
  だが、誰も彼もがこの男の事を勘違いしている。

  ――この男は、強い訳じゃない。

  弱いからこそ、大切な者達だけでも守れるように、奪われないようにと血の滲む努力で力をここで研ぎ澄ました。
  並外れた魔力と魔物を有していても、精神は不安定なまでに矛盾していた。
  激痛の鍛錬にも耐え切れるほどの精神力であるのに、直ぐに精神が崩れる。

  ――オバケが嫌いで、すぐ泣く泣き虫で、好きな人の前では甘えて、ここぞとばかりにカッコつける。

  そして、誰よりも孤独を嫌い。誰よりも、人を愛している――

  強大な力を秘めて、幼い頃から友達が少なく。帝国では1人だった黒にとって、倭での友人は一生の宝物であった。
  故に、生きていたと知った時は、誰よりも嬉しい筈だった。
  だが、現実は残酷であった。
  彼らが向けたのは、黒に対する《憎しみ》と《怒り》――
  そして、告げられたのは託されたと思った。友の《夢》を奪った事実――
  子供のように、未来に抱き着いて涙を流す。

  黒は、皇帝であって騎士であって、竜でもあって人でもあって、何一つ他の者達と違いはない。
  甘えん坊な一人の男の子で、その背中は誰かが支えなければ途端に崩れてしまう。
  それほどまでに、脆く弱々しい。

  だから、未来は彼を支え続ける。否、だから好きになったのだ。
  1人では生きていけない。そんな彼を、支えてあげたくなった。
  時々、後先考えず飛び出して失敗するダメな所があって、その上、おっちょこちょい。
  でも、子供のように笑っては子供の中に混じってしゃぐ黒を――未来は、好きになった。

  だから、支える。
  もう、壊させない為に――


  「今度は、私も背負うよ。一緒に、背負ってあげる――」


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