難攻不落の黒竜帝 ――Reload――

遊木晶

文字の大きさ
124 / 231
新章 序章は終わりを告げる――【佇む『観測者』は、脚本を綴る】

託された物が、偽りだとしても

しおりを挟む

  まだ日は昇っていない朝方、ベッドから起き上がった黒が目を覚ます。
  夜まで未来の胸の中で泣いていたので、今はスッキリとした気分であった。
  隣の未来の頬に少し触れ、くすぐったそうにまくらに顔を埋める未来が、体を冷えないようにと布団を静かにかけ直す。

  洗面所で顔を洗って、ガラスに映る自分の顔を睨む。そして、覚悟を決める。
  上着を羽織って、ラフな服装に着替えて飛び出すように外へと出ていく。
  朝日が昇るまでまだ時間がある。1人、高層ビルの片隅で風を感じる。

  「昔は、こうして暇潰ししたよな……ハート、しょうあかつき――」
  「学生の頃の……面白みの少ない話か?」
  「まぁ、俺は楽しかったけどな。暁は?」
  「僕も楽しかったよ。最高にスリリングだったしね」

  黒、ハート、翔、暁の4人がビルの屋上に揃う。
  現在の黒焔騎士団を支え、倭や四大陸にその名を轟かせる最高峰の騎士――
  最高位騎士倭の皇帝である黒に、負けず劣らずの実力者揃いの彼らが見詰める先は、新しい1日を知らせる朝日――

  「2年ぶりの朝日か、綺麗だな……」
  「翔が感傷に浸るとはな……珍しい」
  「俺だって、感傷に浸る時くらいある。それに、今は特にな――」

  ハート、翔の視線の先で黒は朝日を見詰める。
  暁や翔が黒の精神状態を心配する中で、ハートはポケットに手を突っ込んで隣に立った。

  「相手は、アイツらだぞ。戦えても、メリアナやしろぐらいだ。言いたい事、分かるよな?」
  「あぁ、俺らが相手をするしかない。俺じゃねーと、戦いにならない」
  「……そうだ。分かってるなら、良い。何も言わねーよ」

  その言葉の後に、4人の中で沈黙が続く。
  そんな空気に耐え切れなかった翔が「さて、二度寝するかな」――と、言いながら踵を返す。
  その動きに続いて、ハート、暁も帰ろうとする。
  だが、黒の言葉で、全員が立ち止まる。

  「アイツらが託したって、俺が勝手に勘違いしてたのかな?」

  黒は、考えないようにしていたが、この言葉で核心に迫ろうとする。
  あの場で動けたのは自分だけであったが、最後まだ隣に居たのはハート達であった。
  瓦礫の下敷きになって、救出された3人を最期まで診ていたのは、ハートとメリアナだ。

  「なぁ、ハート……嘘は無しだぞ」
  「いや、託していた筈だ。可能性として考えるとすれば、アイツらは、誰かに蘇生された・・・・・。死後、時間がそれほど経ってなければ蘇生は可能だ。理論上だがな」
  「その後、誰かに頭の中をイジられた。そうすれば、従順な手駒が完成する。その上、黒ちゃんに敵意を持たせる事も出来る……」
  「暁の話も、ハートの蘇生が前提条件だろ? あの場で、死んだ奴らを俺らに気付かないで、蘇生出来るとでも言うのか? ――そんな奴、神様ぐらいだろ」

  ――翔が笑って、暁、ハートも笑う。
  考え過ぎて、頭が可笑しくなった。だが、黒は笑わない。

  「この際だ。誰でもいい……」

  ――ゾクッ……!!

  3人が全身に寒気を感じ、漆黒の魔力を漂わせる黒が自分が宿した魔物ギフトへと尋ねる。
  死後も魔物との接続が切れるのか、その問い掛けに魔物は答える。
  黒色のモヤの中から青色の目を光らせて、竜の魔物は言葉を続ける。

  『宿主マスターの質問の答えは、蘇生であれば魔物との繋がりは継続して繋がったままだ。――が、その場での蘇生で無ければ、宿主の死後。魔物は新たな宿主の元へと移る。つまり、あの3人は――確実に、蘇生されている。だが、通常の手段蘇生とは少し異なる手段の可能性がある』
  「あの場での蘇生は、不可能に近い。そうなると……なぁ、暁――」
  「うん、ハート。僕も考えたくはないけど、多分そうだよ。――わざと仮死状態にして、その後に誰にも知られず……誰かの手で無理矢理死人ネクロマンサーにされた。……虫唾が走るよ」

  天を仰ぐ。かつての友との戦いが強いられる事に対して、黒はこの場の誰よりも傷付いていた。
  ハートも、そんな黒の痛みを知る数少ない人物である。だが、泣いてでも黒を戦わせる。
  その事を真剣な表情で告げる。
  王の世代と呼ばれ、黒と互角だった人物を他の者達に任せれはしない。
  何より、友人であるからこそ――。友の手で、終わらせるべきであった。

  「あぁ、分かってる。だから、ハート……頼む。俺がアイツらと――」
  「――言わなくても、分かってる。自分でケリ付けるつもりなんだろ?」

  黒の言葉を遮って、ハートが黒の肩に手を置く。

  「――戦いの舞台には、お前とアイツらだけ・・が上がる。その邪魔をする奴らは……俺が潰す。同世代王の世代の仲間として……アイツらの友として・・・・

  ハートと同じ覚悟を抱いた。暁、翔はハートの決意を胸に刻む。
  死人として死後も利用される3人の為に、黒が出来ることは――真っ向勝負のみ。
  小細工無しの真剣勝負にて、3人の2度目の命を黒が奪い取る。
  嘘偽りだとしても、託された物を叶えた義務が黒にはある。
  ならば、3人の命を背負うのは当然の義務であった。一度は、背負ってここまで来た。
  再び背負うとしても、重さは変わらない。ただ、意味が違うだけだ。
  夢を託して、道半ばで散っていた者達に見せる。黒のその背中が、誇れる物であるべきかどうか。
  もう2度と失わない為に、今度こそ守り抜く為に――


  「……お前らが託した分まで、俺は皇帝3人の夢で在り続ける」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...