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新章 序章は終わりを告げる――【佇む『観測者』は、脚本を綴る】
託された物が、偽りだとしても
しおりを挟むまだ日は昇っていない朝方、ベッドから起き上がった黒が目を覚ます。
夜まで未来の胸の中で泣いていたので、今はスッキリとした気分であった。
隣の未来の頬に少し触れ、くすぐったそうにまくらに顔を埋める未来が、体を冷えないようにと布団を静かにかけ直す。
洗面所で顔を洗って、ガラスに映る自分の顔を睨む。そして、覚悟を決める。
上着を羽織って、ラフな服装に着替えて飛び出すように外へと出ていく。
朝日が昇るまでまだ時間がある。1人、高層ビルの片隅で風を感じる。
「昔は、こうして暇潰ししたよな……ハート、翔、暁――」
「学生の頃の……面白みの少ない話か?」
「まぁ、俺は楽しかったけどな。暁は?」
「僕も楽しかったよ。最高にスリリングだったしね」
黒、ハート、翔、暁の4人がビルの屋上に揃う。
現在の黒焔騎士団を支え、倭や四大陸にその名を轟かせる最高峰の騎士――
最高位騎士である黒に、負けず劣らずの実力者揃いの彼らが見詰める先は、新しい1日を知らせる朝日――
「2年ぶりの朝日か、綺麗だな……」
「翔が感傷に浸るとはな……珍しい」
「俺だって、感傷に浸る時くらいある。それに、今は特にな――」
ハート、翔の視線の先で黒は朝日を見詰める。
暁や翔が黒の精神状態を心配する中で、ハートはポケットに手を突っ込んで隣に立った。
「相手は、アイツらだぞ。戦えても、メリアナや白ぐらいだ。言いたい事、分かるよな?」
「あぁ、俺らが相手をするしかない。俺じゃねーと、戦いにならない」
「……そうだ。分かってるなら、良い。何も言わねーよ」
その言葉の後に、4人の中で沈黙が続く。
そんな空気に耐え切れなかった翔が「さて、二度寝するかな」――と、言いながら踵を返す。
その動きに続いて、ハート、暁も帰ろうとする。
だが、黒の言葉で、全員が立ち止まる。
「アイツらが託したって、俺が勝手に勘違いしてたのかな?」
黒は、考えないようにしていたが、この言葉で核心に迫ろうとする。
あの場で動けたのは自分だけであったが、最後まだ隣に居たのはハート達であった。
瓦礫の下敷きになって、救出された3人を最期まで診ていたのは、ハートとメリアナだ。
「なぁ、ハート……嘘は無しだぞ」
「いや、託していた筈だ。可能性として考えるとすれば、アイツらは、誰かに蘇生された。死後、時間がそれほど経ってなければ蘇生は可能だ。理論上だがな」
「その後、誰かに頭の中をイジられた。そうすれば、従順な手駒が完成する。その上、黒ちゃんに敵意を持たせる事も出来る……」
「暁の話も、ハートの蘇生が前提条件だろ? あの場で、死んだ奴らを俺らに気付かないで、蘇生出来るとでも言うのか? ――そんな奴、神様ぐらいだろ」
――翔が笑って、暁、ハートも笑う。
考え過ぎて、頭が可笑しくなった。だが、黒は笑わない。
「この際だ。誰でもいい……」
――ゾクッ……!!
3人が全身に寒気を感じ、漆黒の魔力を漂わせる黒が自分が宿した魔物へと尋ねる。
死後も魔物との接続が切れるのか、その問い掛けに魔物は答える。
黒色のモヤの中から青色の目を光らせて、竜の魔物は言葉を続ける。
『宿主の質問の答えは、蘇生であれば魔物との繋がりは継続して繋がったままだ。――が、その場での蘇生で無ければ、宿主の死後。魔物は新たな宿主の元へと移る。つまり、あの3人は――確実に、蘇生されている。だが、通常の手段とは少し異なる手段の可能性がある』
「あの場での蘇生は、不可能に近い。そうなると……なぁ、暁――」
「うん、ハート。僕も考えたくはないけど、多分そうだよ。――わざと仮死状態にして、その後に誰にも知られず……誰かの手で無理矢理死人にされた。……虫唾が走るよ」
天を仰ぐ。かつての友との戦いが強いられる事に対して、黒はこの場の誰よりも傷付いていた。
ハートも、そんな黒の痛みを知る数少ない人物である。だが、泣いてでも黒を戦わせる。
その事を真剣な表情で告げる。
王の世代と呼ばれ、黒と互角だった人物を他の者達に任せれはしない。
何より、友人であるからこそ――。友の手で、終わらせるべきであった。
「あぁ、分かってる。だから、ハート……頼む。俺がアイツらと――」
「――言わなくても、分かってる。自分でケリ付けるつもりなんだろ?」
黒の言葉を遮って、ハートが黒の肩に手を置く。
「――戦いの舞台には、お前とアイツらだけが上がる。その邪魔をする奴らは……俺が潰す。同世代の仲間として……アイツらの友として」
ハートと同じ覚悟を抱いた。暁、翔はハートの決意を胸に刻む。
死人として死後も利用される3人の為に、黒が出来ることは――真っ向勝負のみ。
小細工無しの真剣勝負にて、3人の2度目の命を黒が奪い取る。
嘘偽りだとしても、託された物を叶えた義務が黒にはある。
ならば、3人の命を背負うのは当然の義務であった。一度は、背負ってここまで来た。
再び背負うとしても、重さは変わらない。ただ、意味が違うだけだ。
夢を託して、道半ばで散っていた者達に見せる。黒のその背中が、誇れる物であるべきかどうか。
もう2度と失わない為に、今度こそ守り抜く為に――
「……お前らが託した分まで、俺は皇帝で在り続ける」
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