難攻不落の黒竜帝 ――Reload――

遊木晶

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新章 序章は終わりを告げる――【佇む『観測者』は、脚本を綴る】

提案《Ⅰ》

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 未来、心の2人がキッチンで料理を作る間、黒はハートと共にメールの相手の話をしていた。
  メールでやり取りをして、直ぐに様子を確認する電話を掛けた。
  思いの他、元気で問題が特に無い事を確認してから、再三確認するように彼女・・の事を尋ねてきた。
  黒と似て、彼女の存在が何よりも嬉しい。今すぐにでもハグしに行きたい想いを言葉にする。

  だが、彼の立場は――それを許さない。

  「だから、俺らから会いに行く。いい考えだろ? 妨害? 問題ねーよ。……ハートが、何とかする」
  「おい、俺を利用すんな。まぁ、俺もアイツを敵に・・回したくないからな。死ぬ気で守ってやるよ」
  「頼もしいな……。あぁ、倭の守りはあかつきとかしょうがどうにかするだろ。帝国は、白と灰が何とかする。梓や竜玄もいるから、何とかするだろ」
  「適当だな……」

  通話を切って、テーブルに並ぶ豪勢な料理をハートと黒は平らげる。
  四大陸と渡る事への不安は無く。未来、心、黒、ハートが笑いながら昔を懐かしみながら夜が更ける。



  夜が更けて、人が寝静まった夜に動く人影を《獣》の眼光で狙う人物が、鮮血を撒き散らす。
  黒焔騎士団。第三師団師団長にして、獣人族の南共子みなみ きょうこが両手を血で染める。

  「姐さん……イシュルワの兵隊はコレで全部かと」
  「油断はしないでね~。この程度、皇帝が多い倭にはあり得ない。別の目的アリだよ」
  「はい、直ぐに周辺一帯の監視の強化と、未来様が倭を経つまでの護衛は徹底せます」

  そう一言残して、共子の前から部下の1人が闇に消える。
  月明かりが共子を頭上から照らす中で、黒とハートは月を見上げながらベランダで晩酌していた。

  「この魔力は、小さい隠しているが共子だな。共子が率いる獣人族は、昼は騎馬隊となって戦場を駆け抜ける。夜は、暗殺者となって夜間に動くバカを葬る。頼もしいな……」
  「獣人族だから、鼻も聞く。その上、耳も良いとくれば……適任だろ? その上、統率力も侮れない。こうやって、俺がお前の晩酌に付き合う余裕ぐらいは作ってくれる」
  「ありがたい事だよ。んで、その晩酌をダメにするお前は、何だよ。酒はいつになったら飲めるんだよ」

  黒を指さして、少し酔いが回ったハートが黒が酒を飲まない事に文句を付け始める。

  「仕方ねーだろ。竜人族は、酒に弱いんだよ。特に、俺はベロベロに酔い易い……知ってるだろ?」
  「まぁ、それは、そうだが……つまらん」

  グラスの中身を空にして、黒が手に持ったボトルの中身をグラスに注ぐ。
  沈黙が続くが、王の世代の中でも黒とハートは特別長い仲である。
  ここまで2人の関係が続くとは思っていなかった。途中で、どちらが離れるか――死ぬ。
  そのどちらかと思っていた筈なのに、気が付けば同世代を遠く引き離して、2人で独走していた。

  「なぁ……大丈夫だよな?」
  「急だな……酔いが回り過ぎたか?」
  「――真剣な話だ。この先の対局を見据えてるのかって、話だよ。それに、四大陸の皇帝だけじゃねーんだぞ。アイツらが手加減する事は無い。次は……無いんだよ」

  ハートの口にした――次は、無い。それは、手加減して相手されていた事を意味する。
  ウォン、エレメナ、ユーナと顔を合わせた時に、本気で、あれば黒はあの場で死んでいた。
  あの場で、黄の力は確実に黒の喉元に突き付けられていた。にも関わらず、見逃された。
  黄達が手加減していたから、黒は生きている。
  黒と同じく戸惑ったハートでも負傷は免れなかった。全力を出すタイミングがズレ、防戦一方の戦いを強いられてもおかしくはなかった。

  「次は、俺達・・だ。……分かってるよな?」
  「あぁ、次は・・だろ?」

  月光を見上げて、黒はボトルをテーブルに置いて外を眺める。
  月明かりだけの明かりは不気味でありながら、何処か神秘的な姿を映し出す。
  普段と何気ない景色でもそこには普段とは変わった顔の世界が広がる。


  「……色彩景色は、常に変化する。知らない所で、街も人も変わり続ける――」
  「ん? 何か言ったか、ハート……」
  「いや、ただの独り言だ。……独り言だ。クソッ……」

  街を見下ろす黒の背中を見るハート――。その目に映るのは、闇よりも深い色彩を纏った。
  数少ない友人であり、あかつき自分ハートの思惑に翻弄される男の背であった。


  「黒、悪いな……。暁からの提案には、乗るしかねーんだ。アイツ大切な人の為にも――」

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